今年2022年に入り、数々の映像関係者が映画監督の榊英雄や園子温、俳優の木下ほうかなどによる性暴力をSNSやメディアで訴えた。これまでも映像業界では過酷な労働状況やハラスメントが問題視されていたが、性暴力がこれほど公に訴えられたことはなかった。
しかしながら、それから半年ほど経ってもなお、現場に大きな変化は起きていないと感じると語るのは、インティマシー・コーディネーターの西山ももこさんだ。
1979年8月23日、東京都生まれ。高校、大学時代にアイルランドで学び、チェコのプラハ芸術アカデミーでダンスを軸に表現活動を学ぶ。2008年に帰国し、翌年からアフリカ専門の撮影コーディネーターに。2020年にインティマシー・コーディネーターの資格を取得し、国内外の作品に携わる。
インティマシー・コーディネーターとは、ヌードシーン、未成年のキスシーン(通常、キスシーンだけだと立ち会わない)やセックスシーンなど親密な(インティマシー)シーンを撮影するときに起用される専門家。2018年以来、欧米諸国で数々のインティマシー・コーディネーターの団体が生まれているが、日本にはまだたったの2人しかいない。今回、西山ももこさんに#MetToo以降の業界の現状と、そんななか注目度が高まっているインティマシー・コーディネーターの仕事について聞いた。
俳優の「積極的なYES」を確認する仕事
――まず、インティマシー・コーディネーターのお仕事について教えてください。
西山:性的なシーンを撮影する俳優を身体的・精神的に守る仕事だと思われがちですが、実は、監督の世界観を言語化して、俳優の同意を取り、その上で表現を広げる仕事です。脚本を読み、俳優の「境界線」と「同意」を確認して、やりたくないと思った時は、萎縮せずに「NO」と言える環境を作ること。親密なシーンにおける制作側と俳優の間を調整する役割です。
特に日本の脚本はハリウッド式とは違い、ト書き部分が詳しく書かれていません。脚本に「キス」と書かれていたら、それは舌を入れるキスなのか、どこにキスをするのか、どれくらいの長さのキスなのか、といったことを細かに監督と確認し、俳優に伝えて俳優の「YES」、つまり「同意」を確認して調整します。
作品は一生残るもの。だから、「なんとなく」や「本当は嫌なんだけど」という気持ちがあってはいけない。「NO」と「NG」をはっきりさせた上で「積極的なYES」が何かを確認し、その中で演出できるかどうか監督に確認し、全員にとって安全で安心なシーンを作っていく手伝いをします。
――それは撮影前に行われて、契約書も作るのですか?
西山:はい。欧米作品の場合、撮影前、俳優の不安や懸念を含めたNGとOKな事をヒアリングし、それをもとにライダー(合意書)を交わします。重要なのは、俳優が署名した場合でも、気持ちが変われば撮影が終わるまでの間ならいつでも「NO」と言っていいということ。ただ、撮影後の素材に関しては口が出せません。
撮影当日は、現場に最少人数しかいないかどうか、ライダーに記されたこと以外の演技を撮影当日に俳優が求められていないかどうかも確認します。場合によってはそのシーンの動きなどの振り付けや助言もします。
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