盗撮カメラ探知機―精度は如何に。
盗撮カメラ探知機――精度は如何に。
それで本当に生徒を守れるのか
報道によれば、栃木県教育委員会は、県立高校で教員による盗撮事件が相次いだことを受け、県立学校に盗撮カメラ探知機を導入する方針を示したという。導入台数は30台とされている。
この対応そのものを、私は全否定するつもりはない。
盗撮カメラ探知機を学校現場に入れる。
それ自体は、何もしないよりは一歩前進だと思う。
しかし、プロとして盗撮被害の現場を見てきた立場から言えば、どうしても引っかかる。
たかが数十台の機材を導入して、それで本当に生徒を守れるのか。
私はそこに強い疑問を感じる。
盗撮カメラ探知機は、魔法の道具ではない。
機器には性能差があり、探知できるもの、探知しにくいものがある。
使い方を理解していなければ、持って歩いただけで終わる。
点検する場所、時間、頻度、記録方法、発見時の対応まで決めておかなければ、防犯体制とは言えない。
それ以上に問題なのは、
その作業を誰にやらせるのか
という点である。
私の息子は現職の教師である。
だから余計に思う。
今の教員は、もう限界に来ている。
授業、部活動、保護者対応、生徒指導、事務作業、校内トラブル、いじめ対応、進路指導、地域対応。
本来の教育活動だけでも過重なのに、そこへ今度は盗撮カメラの探索作業まで丸投げするのか。
何もかも教師に背負わせておいて、
「探知機を配りました」
「各学校で点検してください」
それで本当に対策をしたと言えるのか。
はっきり言って、馬鹿げている。
盗撮事件が起きた。
だから機材を買った。
だから学校で探せ。
これでは、現場に責任を押しつけただけである。
しかも、今回問題になっているのは、外部の不審者だけではない。
報道では、教員による校内での盗撮事件が背景にあるとされている。
ここが一番重大である。
つまり、
設置する側も教師である可能性がある。
そして、
探索する側も教師である。
この構造で、本当に内部犯行を防げるのか。
身内の中に加害者がいる可能性を前提にしなければならないのに、その点検作業を同じ組織内に丸投げする。
これで客観性が保てるのか。
見落としはないのか。
遠慮はないのか。
校内の力関係は影響しないのか。
管理職が本気で動くのか。
発見した場合に隠さず警察へ通報できるのか。
そこまで考えているのだろうか。
さらに、盗撮対策でやってはいけないことがある。
それは、
手口を不用意に公開すること
である。
「どこを点検します」
「どのような場所に注意します」
「この方法で探します」
「この機械を使います」
こうした情報を不用意に出せば、加害者側に対策を教えることになりかねない。
盗撮をする者は、そこまで馬鹿ではない。
探知される場所に、わざわざ設置するとは限らない。
点検の時間帯を避ける。
点検箇所から外す。
短時間だけ設置して回収する。
機器の弱点を突く。
そういう発想をする者がいるからこそ、盗撮犯罪は厄介なのである。
つまり、盗撮カメラ探知機を導入するなら、本来はこうでなければならない。
教師に丸投げするのではなく、
第三者性のある専門点検を入れる。
点検手順を外部に不用意に公開しない。
点検記録を残す。
更衣・着替え・身体の露出が生じる空間については、施設管理者として特別に管理する。
発見時の証拠保全、警察通報、被害生徒への説明、保護者対応まで事前に決めておく。
そこまでやって初めて、対策と言える。
探知機を買うことが目的ではない。
生徒を守ることが目的である。
しかし、行政の発表を見ていると、どうしても
「やった感」
が先に立っているように感じる。
探知機を導入しました。
学校に配備しました。
点検します。
再発防止に努めます。
聞こえはいい。
しかし、その裏で実際に動かされるのは誰なのか。
現場の教師である。
もう限界まで仕事を抱えている教師に、さらに防犯専門職のような役割まで負わせる。
その一方で、行政は「対策を講じた」と発表する。
これでは、本当の意味で生徒を守る体制とは言えない。
盗撮対策は、教育現場だけの問題ではない。
これは、防犯、施設管理、危機管理、証拠保全、被害者支援、刑事手続が絡む問題である。
教師にできることには限界がある。
そして、限界を超えた仕事を教師に押しつければ、教育現場そのものが壊れていく。
盗撮カメラ探知機を入れることは悪くない。
しかし、それを教師に持たせて校内を探させるだけなら、対策としては浅い。
必要なのは、機材ではない。
必要なのは、責任の所在を明確にした管理体制である。
学校は教育の場所である。
教師は教育の専門職である。
盗撮カメラ探索の専門職ではない。
子どもたちを守ると言うなら、行政は現場に機材を渡して終わりではなく、専門的な点検体制、第三者性、通報体制、被害者対応まで含めて整えるべきである。
「探知機を導入したから安心です」
そんな話ではない。
むしろ、その言葉が一番危ない。
盗撮犯罪は、道具だけでは防げない。
人の目、専門知識、運用体制、そして隠さない覚悟が必要である。
お上が「やった感」を発表するための対策なら、生徒は守れない。
本気で守る気があるのなら、教師に丸投げするな。
専門職を入れろ。
第三者の目を入れろ。
発見後の流れまで決めろ。
そして何より、学校現場にこれ以上、責任だけを押しつけるな。
盗撮から生徒を守るというのは、
探知機を配ることではない。
守れる仕組みを作ることだ。
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