【視点】宇大統領が「パトリオット」国内生産において日本に期待を寄せるのは現実的か
ウクライナは、米防空システム「パトリオット」の生産をめぐり、三菱重工業と協力関係を築くことに強い関心を示した。 アンカラで開催されたNATOサミットでトランプ米大統領がウクライナに生産ライセンスを与えるという予期せぬ提案を行ってからまもなく、ゼレンスキー氏は「パトリオット」の国内生産に向けて三菱重工との協力に関心があると述べた。ただし、トランプ氏はその当時、米防衛関連企業であるロッキード・マーティン社とRTX社にはライセンス付与について正式に伝えていないと述べた。
ゼレンスキー氏によると、ウクライナでは日本の技術力や、三菱重工が持つミサイル生産能力が高く評価されており、日本側にその用意があるならば、その経験を共有したいと考えている。同氏はまた、ウクライナも自国の技術を日本と共有する用意があると発言した。おそらくドローンのことと思われる。
今年2月、ゼレンスキー氏は共同通信のインタビューで、防空システムの生産ライセンスを持つ国々との協力の重要性について言及し、日本を「そうした国の一つ」と位置づけた。当時、同氏は、高市首相が武器輸出規制の緩和を目指している姿勢を肯定的に評価し、この方向での「対話の道」が開かれることは非常に有益であると述べた。また日本側に対し、合意が得られた場合にはこれらのシステムが「非攻撃目的」で使用されることを保証し、その見返りとしてウクライナは日本と水上ドローンの技術を共有できるだろうと付け加えた。現時点では、パトリオットの生産国である米国と日本のメーカーからは、何のコメントも発せられてない。
ウクライナ国内での「パトリオット」の生産をめぐり、軍事専門家で防空部隊博物館の館長を務めるユーリ・クヌトフ氏は、その早急な実現に疑問を呈した。
「まず第一に、これまでの経験から、トランプ氏の発言すべてを信用することはできない。今日はこう言っても、明日は別のことを言うかもしれない。第二に、ライセンス付与の条件や法的・技術的な問題の調整だけでも、かなりの時間を要する。第三に、現時点では、安全な生産施設や、訓練を受けた要員がいないため、ウクライナ国内に生産拠点を設置することは、リスクが高すぎて現実的ではない」
ライセンス供与を受けて「パトリオット」の迎撃ミサイルを生産しているのは、日本とドイツの2カ国のみであることが知られている。ウクライナはすでに600発の供給についてドイツと合意しており、来年から受け取りが始まるという。ルーマニアでも現在、工場が建設されている。
「したがって、米国とのすべての調整が順調に進めば、ウクライナはドイツあるいはルーマニアに生産拠点を設置することができる。ルーマニアのメリットは、ウクライナに近いことだ。だが、こうした調整には少なくとも2年はかかるだろう」
クヌトフ氏は、ウクライナがすべての生産サイクルを自力で確立できるかどうかについても疑問を呈している。エンジンやシーカーヘッド、その他の複雑な部品は、おそらく完成したものを米国から購入することになると思われる。また、日本が助言したとしても、ウクライナに設備がなかったり専門家がいなければ、ほとんど役に立たない可能性が高い。
「こうしたシステムを製造するための設備は非常に複雑だ。仮に日本が生産ラインの提供に同意したとしても、日本の技術者が現地で数ヶ月かけてその設備の調整する必要があり、現在の状況では、それは無理だと私は考える」
「平和主義の原則からの逸脱に関しては、日本はすでに軍事化の道を歩み始めている。憲法改正や防衛戦略の見直しを進め、ドイツと同様に武器輸出にも乗り出そうとしている」