ー仁人sideー
キィィィィィンッ
「っ……!」
耳の奥に鋭い音が刺さる。
その瞬間、さっきまでなんとか保っていたものが一気に崩れた。
(やば)
音が強い。
さっきの音だけじゃなくて、周りの声も足音も全部が一気に大きくなる。
逃げ場がない。
息を吸おうとする。
でも、入ってこない。
「は、……っ」
吸ってるのに足りない。
胸の奥が詰まったみたいに苦しい。
もう一回吸う。
浅い。速い。
頭では落ち着けってわかってるのに、体が全然言うことを聞かない。
勇「仁人?」
勇斗の声がする。
返事しなきゃと思うのに、声が出ない。
「は、っ……」
息だけが先に出る。
その感覚がさらに焦りになる。
勇「柔太朗!仁人やばい!」
遠くで勇斗の声が聞こえる。
そのおかげで少しだけ周りが静かになる。
でも、まだ怖い。
さっきの音が頭の中に残ってる。
また大きな音が聞こえるかもと思うと不安になる。
柔「よっしー」
すぐ近くで柔太朗の声。
「……っはぁはぁはぁ」
柔「大丈夫だよ」
柔「ここ静かだから、音もう出ないから」
「……っ、は……っ....グス....はぁはぁ....」
でも止まらない。
どうやって呼吸してたっけ。
「....っ....はっはぁはぁ....グス」
柔「いいよ、そのままでいい」
柔「俺と一緒にやろ」
「....はぁはぁ....っ、....グスっ....はっ....」
柔「よっしー、落ち着いて、ゆっくり合わせてねー」
柔太朗が優しく声をかけ続けてくれてる。
でも、
頭ではわかっているのに、体が先にいく。
呼吸のリズムが崩れて、吸うことばかりになる。
吐けていない。
それに気づいて、余計に焦る。
柔「吸って、吐いて」
「....っ、はぁ」
できない。
壊れちゃうんじゃないかと恐怖心が襲ってくる。
柔「いいよ、大丈夫だから、ゆっくりね」
「....っはぁはぁ....っ、グス」
「....グス....っはぁ....っ....はぁ」
なかなか戻らなくて悪化してる気がする。
勇「仁人!聞こえる?」
スタッフに伝えに行って戻ってきた勇斗の声。
勇「いい、焦らなくていいから」
勇「吐くだけでいいから」
「....っはぁ、....っ、グス....はぁはぁ」
やろうと思っても、上手くできない。
勇「大丈夫、大丈夫、ちょっとずつできてるよ」
「....はぁはぁはっ....グス....っはぁ」
怖い。
勇「仁人、音、完全に止まってるから」
勇「ここ安全だから」
その言葉がさっきよりもちゃんと入ってくる。
少し不安が消える。
勇「よし、もう一回いくよ」
勇「せーの、吐く」
「……っ、はぁ…はぁ」
勇「いい、その感じ」
勇「もう一回、せーの」
「....はぁ....はぁ」
少しずつ楽になってきた
勇「せーの」
「……はぁ…」
柔「そう、それ」
柔太朗が横で言う。
勇「大丈夫、戻ってきてる」
(戻ってる…?)
「……はぁ…」
さっきみたいな速さじゃない。
柔「いいよ、そのまま」
勇「一緒にいこ」
勇「せーの」
「……はぁ…」
まだ少し苦しいけど、
さっきよりもいい。
肩の力が抜ける。
柔「ほら、大丈夫」
柔「今ちゃんと呼吸できてる」
(できてる…)
「……はぁ…」
「……ごめん」
勇「謝んなくていい」
勇「ちゃんと戻ってるから」
(よかった)
勇「ゆっくりでいいからな」
柔「ここいるし」
呼吸がちゃんと自分のものに戻ってる気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。