高倉良一氏のもとに送られてきた女性の写真(写真は加工しています)
高齢者が陥りやすい「自分は賢い」という思い込み
詐欺の手口の前には教養や経験よりも他者からの肯定や賞賛の方が強い引力を持つことがよくわかる。高倉氏は自戒を込めてこう話す。
「まず今回の私のケースはフェイスブックなどSNSから接触する手口。インスタグラムやXなどに直接メッセージしてくる見知らぬ人は無視を貫くことが大事です」
この初接触さえ無視すれば騙されることはない。だが高倉氏はまず高齢者が陥りやすい“思い込み”にも触れた。
「私は自分が賢い人間だと思っていました。その自信を疑ったこともない。だから銀行の窓口で350万円もの大金を入金する際、窓口の女性から『詐欺ではないか』と念押しされた際も『そんなことがあるわけない』とさえ思った。自分は絶対ではない、間違うこともあるから他者の言うことに耳を傾けることが大事です」
高倉氏は詐欺だと気付いた2024年9月30日から10日後の10月10日に香川県高松北署に被害届を提出した。
「お金はもちろん1円も返ってきていません。今は弟から借りた金で友人に借金の一部を返済しました。弟には金を返す必要がありますが、71歳で取り返すのは金ではない。今後は詐欺被害に遭わないための防衛法を伝える全国講演はもちろん、できれば詐欺師を生まない社会作りを考えたい」
高倉氏は6月、被害体験を『70歳の法学者が、なぜロマンス詐欺に騙されたのか』(さくら舎)として一冊にまとめた。
大学の卒業生から、「先生はマイナスもプラスに捉えられる人」と称されたことが多かったという高倉氏。この災難をプラスに捉えて前を向く。
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【プロフィール】
河合桃子(かわい・ももこ)/1977年、東京都生まれ。ライター。週刊誌を中心に執筆。幅広く取材活動を行なっており、特に性風俗にまつわる事件などアングラな業界を長年取材している。第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞した『地面師連絡役カトウ』が6月に刊行。
※週刊ポスト2026年7月24・31日号