<社説>安和事故で抗議女性書類送検 慎重な原因究明求めたい


<社説>安和事故で抗議女性書類送検 慎重な原因究明求めたい
この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

 2024年6月、名護市の安和桟橋前の路上で、ダンプカーに衝突された警備員男性が死亡し、辺野古新基地建設への抗議行動をしていた女性が重傷を負った事故で、県警は抗議女性を重過失致死容疑で書類送検した。併せてダンプカーの男性運転手を自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑、ダンプカーを誘導していた別の警備員男性を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。

 重傷を負った歩行者が送検されたのは異例である。事故発生から送検まで2年を要したのも異例と言えよう。既に女性側が運転手や警備会社らを相手に損害賠償を求める民事訴訟が起きている。辺野古新基地に対する抗議行動の中で発生し、今日まで複雑な経緯をたどってきた事故はなぜ起きたのか、慎重な原因究明が求められる。

 事故は辺野古新基地建設に使われる土砂の運搬作業が行われている最中に発生した。安和桟橋から左折して国道に出ようとしたトラックが、入り口付近で抗議行動をしていた女性と警備員の男性に衝突した。

 通常の交通死亡事故ならば最も重い責任をトラック運転手に問うであろう。ところがこの事故では重過失致死の容疑で女性を書類送検した。県警はトラックの前方に出ようとした女性に重大な過失があったとみている。しかし、警備員死亡の責任として歩行者の女性に重過失致死罪を問うことが本当にできるのか疑問が残る。

 一方、事故の発生前から安和桟橋で抗議行動をしてきた市民の間から、桟橋を出る際の「2台出し」と呼ばれるトラックの運行が問題視されてきた。従来は桟橋から1台ずつ国道に出ていたが、国が建設工事を急ぐ中で現場の締め付けが強くなり、2台続けてトラックを出す危険な誘導が増えたというものだ。

 民事訴訟を起こした女性側は「事故は沖縄防衛局による強引な工事推進方針に起因する」と指摘する。女性は「事故は、安全性を無視して工事を急がせた危険なダンプ2台出しによって起こったもの」とコメントした。

 現時点で女性が起訴されるかどうかは未知数だ。仮に起訴された場合、事故発生時に車両の前に出たとされる女性の行動や警備員の誘導の在り方を巡って裁判で争われるだろう。ただ、事故の背景として、多くの県民の反対を押し切り、新基地建設工事を急ぐ国の姿勢も無視することはできないのではないか。抗議行動という「表現の自由」との関わりもある。

 新基地建設という国策が絡み、事故に関する論議が政治性を帯びるのは避けられない。県議会での審議も県政批判や与野党の対立も生んでいる。

 ネット上では、京都府の高校生と船長が亡くなった3月の辺野古沖小型船転覆事故と絡めて、辺野古新基地の抗議行動を批判する投稿が増えている。この動きが沖縄ヘイトに向かうことを憂慮する。冷静な視点を保ちながら事故とその背景の解明が解明されることを望みたい。

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