小説──カミーユ・サイア
私は、中学一年の頃は、こんなに苦しい思いをするなどと考えたことはありませんでした。娘の心臓は、中学入学当初の頃から徐々に機能不全に陥っていきました。中学校で新たな友人を作ることも、中学校の文化祭に参加することも、ままならないままでした。そんな楽しみを味わうことのできない、自分自身を娘は責めました。お母さんがわるいんじゃない、明里の身体がわるいんだよ、と何度も言っていました。明里をこれだけ苦しめるような病に罹ったことを私は自分のことのように苦しみました。ひとつだけ明里の希望は、お母さんと共苦体験ができたことでした。
主人は、ドナーに頼ろう、と臓器移植についての説明を私に、二、三分してくれました。脳死状態の方の心臓を移植すれば、明里は苦しまないで済む、というものでした。私と主人は、臓器移植の施設に車で三時間かけて向かいました。
移植施設の課長は、明里さんのための心臓が見つかり次第ですね、と移植に肯定的でした。課長と長話になりかけたとき、後ろから、スタッフと思わしき方が来訪して、私たちを一瞥しました。スタッフは、こちらに小走りでやって来て、「私には心臓が二つある」とはっきりとした声でいいました。私は、「心臓を移植してくれるんですか」と尋ねると、案の定、「ええ。心臓を明里さんに一つ提供したいと思います」と言ってくれました。
それから、手術も無事了り、娘の心臓は、前より少し大きいものとなりました。明里は、「私の心臓は活発なんだ」と明るく前向きに生きる姿勢を見せてくれました。真にありがとうございます。


コメント