「有罪か無罪かは警察が決める」脳裏に焼き付く25年前の言葉…85歳が訴える続ける「埋もれた冤罪」
●共犯とされた男性が供述覆すも、有罪が確定
共犯者とされた男性は逮捕後、20日以上の身柄拘束を経て、検察官に対して「林さんの指示でやった」と供述した。 しかし、公判では供述を覆した。 弁護側は捜査段階の供述の信用性を争ったが、裁判所は伝聞証拠の例外規定を根拠に供述調書を採用し、公判証言は退けた。 林さんは「あの警察官の言葉どおりになった」と振り返る。 控訴、上告も退けられ、2007年7月に有罪判決が確定した。
●「軽い事件」に埋もれる冤罪、「ほとんどは泣き寝入り」
執行猶予付き判決は、刑務所に入らずに済むことから「軽い処罰」と受け止められがちだ。 しかし、一度有罪判決が確定すると、それを覆すことは極めて難しい。 殺人事件などであれば、事件そのものが社会的な関心を集め続けることもあるが、比較的軽い事件は、ニュースになっても裁判が終われば忘れられてしまう。 一方、それが冤罪だったとしても、無実を訴え続ければ、再び事件を蒸し返し、偏見にさらされるリスクを負うことになる。 裁判のやり直しを求めようにも、多くの場合、日弁連などの組織の支援を受けられず、個人で関わってくれる弁護士や支援者を見つけることも相当困難だ。 林さんによると、ほとんどの人は現実的な負担を考えて、泣き寝入りせざるを得ないという。 「冤罪というと、新聞やテレビは重大犯罪しか扱いませんが、軽い事件を含めると相当の数が眠っているはずです。冤罪の被害者は死ぬまで牢獄に入れられているのと一緒です」 林さんはそう語気を強める。
●再審法改正案に問題多く、「このままでは検察独裁の制度に」
事件をきっかけに、林さんは日本の刑事司法そのものに強い危機感を抱くようになった。 日々、冤罪や違法捜査、人質司法に関するニュースを読み、気になった新聞記事は切り抜いて、線を引きながら読み込む。 自宅2階には、テーマごとに綴じた膨大な裁判資料のファイルがずらりと並んでいる。 国会では再審法改正の審議が進むが、「証拠の全面開示」規定が盛り込まれず、開示された証拠の目的外使用を禁止する規定が入るなど、冤罪被害者から「救済につながらない」との懸念が上がっている。 「事件後、僕は冤罪研究を始めました。なんでこんなバカなことが起きるんでしょうか。このまま法案が通れば、冤罪被害者のためなのか、検察独裁のためなのかわかりません」 林さんは、冤罪を早期に救済するためには、再審を専門に扱う第三者機関の設立が必要だとうったえる。
●2度目の再審請求へ「子孫に汚名を残したくない」
2009年、林さんは再審を請求した。 しかし、新たな証拠が開示されることはなく、請求は退けられた。 「(共犯者とされた男性の)供述調書が開示されたら、供述の変遷がわかる形で出てくると思うので、全調書の開示を求めたいです」 現在、林さんは2度目の再審請求に向けた準備を進めている。 「僕は悪いことを何一つしていません。子孫に犯罪者の汚名を残したくない。死ぬまでには必ず冤罪を晴らしたいです」
弁護士ドットコムニュース編集部