「有罪か無罪かは警察が決める」脳裏に焼き付く25年前の言葉…85歳が訴える続ける「埋もれた冤罪」
「冤罪の被害者は、刑の軽重に関係なく、社会的にも『死刑』同然なんです」 20年以上前に執行猶予付きの有罪判決を受けた林肇輝(はやし・けいき)さん(85)は、今も無実を訴え続けている。 【写真】なんと、これを再利用?…林さんのスクラップ 国会では、「再審」制度の見直し議論が続いているが、注目を集めるのは死刑や殺人事件など重大事件が中心だ。 その陰で、声を上げることすらできず、社会から忘れられたまま、老い、病み、そして死んでいく人たちがいる。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●狙われたのは日中共同で開発した「抗がん剤」
林さんは2001年夏、薬事法違反の疑いで逮捕された。 岡山大学医学部の助教授だった林さんが、JICAの専門家として中国・大連医科大学に派遣されていた1990年代後半、日中共同で開発した抗がん剤「ヘプリピン」を、当時の厚生大臣や岡山県知事の許可なく製造、販売、広告したとされた。 林さんは一貫して容疑を否認し、裁判でも全面的に争った。 しかし、岡山地裁(榎本巧裁判長)は2004年12月、共犯者とされた男性の供述などを根拠に、林さんに懲役1年6カ月、執行猶予4年、罰金50万円の有罪判決を言い渡した。
●裁判中に浮上した「おとり捜査」の疑い
裁判では、捜査の端緒そのものをめぐって異例の展開もあった。 当時の報道によると、林さんへの捜査は、倉敷市に住む人物がヘプリピンを購入した後、警察署に通報したことがきっかけだった。 この人物は法廷で「母親ががんだと思い込み、抗がん剤を購入した」などと証言した。 しかし、林さんの弁護人が病院に照会したところ、カルテには「(母親の体調は)問題ない」という趣旨の記載があったという。 さらに林さんによると、この人物が営んでいた喫茶店には警察官が頻繁に出入りしていたことから、弁護側は「おとり捜査の疑いがある」と主張。一度は判決の言い渡しが延期される異例の経緯をたどった。
●「有罪か無罪かは警察が決める」脳裏に焼きつく言葉
「捜査機関は、これが僕を首謀者とする日中合作の巨大組織犯罪で、林が巨万の金を隠しているという筋書きで捜査を始めました」 林さんは、自身が中華系であることに触れながら、大学内での派閥争いや人種差別も事件の背景にあったという見方を示す。 取り調べ中、岡山県警のある警部補から、こんな言葉を投げかけられたという。 「ジジイ、お前は何も知らん。警察が仕事をやらないと検察は仕事がない。裁判官は無知、無能、無責任の人。だから、有罪か無罪かは警察が決める」 取材中、林さんはこの言葉を繰り返し語った。