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「男性はみんな好きだった」元祖・癒し系女優《飯島直子》が今、女性から逆転支持…「脅威解除」というフシギな現象のわけ

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飯島直子
飯島直子さんといえば男性人気を象徴するタレント。今、女性から熱視線を集めています(画像:BSフジ「飯島直子の今夜一杯いっちゃう?」公式サイトより)
  • 宮本 文幸 「見た目」戦略研究家/桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授

INDEX

俳優の飯島直子(58歳)への評価が、ここ数年で静かに、しかし確実に変わってきている。

2026年7月7日、飯島がインスタグラムを更新した。「握力低下。年齢を重ねると肩の力も抜け握るチカラも抜けます」「代謝は落ちるのに数値は上がる」——そう記された投稿には、水のボトルの蓋が開けられなかったという、なんともささやかなエピソードが添えられていた。

同時に公開されたのは、自宅のキッチンでフライパンを手にした、加工なしの“すっぴん”ショットだ。

「ありのまま」すぎる、と話題になった飯島直子さんのインスタ投稿(画像:飯島直子公式インスタグラム @naoko_iijima_705_officialより)

同じ“58歳”である「天海祐希」との違い

この投稿が紹介されたYahoo!ニュースには多くのコメントが寄せられ、《ありのままのすっぴん写真を出してくれるのは大変好感持てる》《スッピンてのはこういうことなんだよ、と堂々と示しているようでカッコいい》といった声であふれた。

《すっぴんと言いながら薄化粧している人が多い中、恐らく真のすっぴんでいる飯島直子さんは潔い》という指摘もあった。

一見、よくある「素顔がきれいな芸能人」の話に思えるかもしれない。だが、飯島直子という人物がこれまで歩んできた道のりを振り返ると、この現象はもっと複雑で、面白い構造をしていることに気づく。同性の魅力に対する警戒心が静かに解かれていく——いわば「脅威解除」とでも呼ぶべき現象が、起きているのだ。

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近年、飯島と同世代で、同じように白髪など“ありのままの姿”を見せて女性たちから称賛されていた俳優に、天海祐希(58歳)がいる。比較対象として、そのキャリアを振り返りたい。

天海は1987年3月、宝塚歌劇団に入団。男役として頭角を現し、93年に月組トップスターに就任した。宝塚の男役とは、女性でありながら男性以上に凛々しく、格好よくあることを追求する存在だ。舞台の上で、天海は「理想の男性」を演じ続け、それを見つめる女性ファンから絶大な支持を集めた。

95年12月の退団後は女優に転身し、ドラマ『BOSS』『緊急取調室』などのヒット作で、キャリアウーマンや刑事といった「強く格好いい女性」役を数多く演じてきた。芸歴約40年、常に「憧れられる側」に立ち続けてきた女優だ。

そんな彼女が2026年4月、NHK「あさイチ」で白髪を隠さずに出演し、「老化と呼ばず、進化と呼んでいる」と語った。この発言と姿に、多くの共感と称賛の声が寄せられた。ちなみに天海の白髪については、「大女優はOKで一般女性はNG」という評価の二重基準そのものを、別記事で取り上げている。

頭頂部に白髪が見えるという声が相次いだ、天海祐希さんのショット(画像:NHK「あさイチ」公式Instagramより)

だがこれは、驚くべきことではない。もともと「憧れの的」だった人物が、老いすら格好よく見せてしまう——いわば予定調和の中の意外性だ。大女優が新しい強さを見せてくれた、という物語である。

“嫉妬される女性”から逆転した「田中みな実」

一方、まったく別の出発点から女性人気を勝ち取った俳優がいる。田中みな実(39歳)だ。

09年にTBSに入社したアナウンサー時代の田中は、あざとい、計算高いといったイメージから、しばしば「嫌いな女子アナランキング」の上位に名を連ねていた。同性から向けられる視線は、決して好意的なものばかりではなかった。

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転機になったのは、フリー転身後の振る舞いだ。美容への並外れた努力や、婚活・恋愛での失敗談を包み隠さず語る姿を見せ続けたことで、「あざとい」という評価は次第に「誰よりも頑張っている」という評価へと変わっていった。今では女性誌の顔として、幅広い世代の女性から支持される存在になっている。

田中みな実の物語は、「最初は嫌われていたが、努力を見せることで仲間だと認められた」逆転劇である。

“男性ウケ”から一転、静かに女性支持を獲得していった「飯島直子」

そして、今回の主役である飯島直子の出発点は、この2人とも違う。

1988年に芸能界入りした飯島は、レースクイーンや水着キャンペーンガールとして注目を集め、セミヌード写真集も出版した。その後、94年の缶コーヒーCMをきっかけに「癒し系女優」のイメージで人気を獲得していくが、出発点はあくまで“男性ウケ”を軸にしたタレント像だった。

天海のように最初から女性に憧れられていたわけでも、田中のように明確に嫌われていたわけでもない。女性たちにとって飯島は、長らく「関心の外側」、あるいは「男性が好むタイプの女性」という、どこか距離のある存在だった。

58歳、そのナチュラルな美貌は変わらない(画像:飯島直子公式インスタグラム @naoko_iijima_705_officialより)

その飯島が、2023年にInstagramを開設して以来、一貫して見せてきたのが「隠さない」姿勢だ。白髪があること、化粧をしない日があること、老眼や握力の低下といった加齢の悩みを、飾らずに発信し続けている。世の中が「美魔女」を持てはやす流れとは逆に、あえて若作りをしない路線を貫いているのだ。

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象徴的なのが、自身の冠番組「飯島直子の今夜一杯いっちゃう?」(BSフジ)での一幕だ。渋谷の居酒屋で内田有紀(50歳)とサシ飲みをした際、内田が老眼鏡をかけた瞬間、飯島は「ちょっと!有紀ちゃんが老眼鏡だよ!」「凄いビックリした」と声を上げた。

"奇跡の50歳"と呼ばれるほど若々しい内田有紀の、ふとした老いの瞬間。それを驚きながらも親密に受け止める飯島の姿は、2人が「見た目を比べ合う関係」ではなく、「同じ悩みを共有する対等な関係」であることをよく表している。

内田有紀さんがゲストでやってきた回のサシ飲みの様子。2人とも理想的な年齢の重ね方をしていると話題に(画像:BSフジ「飯島直子の今夜一杯いっちゃう?」公式サイトより)

それにもかかわらず、いや、それだからこそ、女性からの支持がじわじわと広がっている。天海のような「予定調和の意外性」でもなく、田中のような「努力による逆転」でもない、第三の道筋がそこにはある。

飯島直子に起こった「脅威解除」というメカニズム

この現象を読み解く鍵は、心理学の「社会的比較理論」にある。人は他者と自分を比較することで自己評価を形成しており、とりわけ自分と似た属性を持つ相手(同性はその典型)との比較は、自己評価に強い影響を与えることが知られている(※1)。

さらに、自分に近い存在が優れた成果を上げている場合、その人物が心理的に「近い」ほど、比較によって自尊心が脅かされやすいことも指摘されている(自己評価維持モデル、※2)。魅力的な同性は、単なる「きれいな人」ではなく、無意識のうちに自分の評価を脅かしうる存在として処理されてしまうのだ。

女性は特に、外見に関する社会的比較を日常的に行う傾向が強いことも、複数の研究で示されている(※3)。だからこそ、「魅力的な同性への複雑な感情」は、女性たちにとって身近なテーマなのである。

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飯島直子は、まさにこの「比較対象」になりやすい立場からキャリアを始めた人物だ。近寄りがたい美人というより、まさに“癒し系”の身近に感じる美人ーー。そんな親しみやすさが男性人気を支えてきた。だからこそ、天海祐希のようなカチッとした美人女優よりも、女性が脅威に感じやすい存在だ。

そんな彼女が、老眼や白髪、握力の低下といった"隠したくなるはずの弱さ"を、あえて隠さず見せるようになった。

飯島さんのインスタグラムに投稿されているのは、手料理や外食などの食事の写真がほとんどだ。数枚の写真の最後に自身の写真、それもすっぴんなどオフの姿を掲載していることが多い(画像:飯島直子公式インスタグラム @naoko_iijima_705_officialより)

このとき起きているのは、単純な好感度アップではないだろう。「もう、この人と自分を比べる必要はない」——そう感じた瞬間、相手は“脅威”のカテゴリーから外れ、“同じ立場の仲間”へと変わる。比較の土俵そのものから、相手が自発的に降りてくれたように見えるからだ。

内田有紀との老眼鏡のエピソードは、まさにこの「対等な関係性」が実際に成立していることを示す例と言える。飯島に起きているのは、まさにこの「脅威解除」なのである。

「宝塚の男役」に憧れる女性は多いが、「女形」に憧れる男性は少ない

ここまでの話は、女性同士の視線を軸にしたものだ。男性読者の中には、「そんなに複雑な感情が働くものなのか」と、やや実感が湧きにくい人もいるかもしれない。

実は、この「同性への複雑な感情」は、男女で強度も表れ方も異なることが研究でも示されている(※3)。男性同士の比較は主に地位や能力を巡って生じやすいのに対し、女性同士では外見を軸にした比較がより頻繁に、より強く働く傾向がある。

女性が天海祐希のような宝塚の男役に憧れる気持ちも、実は男性にはやや理解しにくい構造を持っている。

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天海は「女性でありながら理想の男性を演じる」ことで女性ファンを魅了してきた存在だ。これをそのまま男性に置き換えると、「男性でありながら理想の女性を演じる」歌舞伎の女形に近くなるが、男性ファンが女形に同じような熱量で憧れを抱くケースは、宝塚ほど一般的ではない(※4)。つまり、同性への憧れ・脅威の感じ方そのものが、性によって違う土俵の上で動いているのだ。

このズレを踏まえたうえで、今回の飯島直子の現象は、女性読者にとりわけ強く響く話として理解してもらえるのではないかと思う。

“加工なし”のすっぴんだとわかるが、より肌のきれいさが伝わってくる(画像:飯島直子公式インスタグラム @naoko_iijima_705_officialより)

加齢そのものが「信頼を失わせる」わけではない

飯島直子への支持の広がりは、単なる「素顔がきれい」という表面的な話ではない。人が他人の"見た目"のどこに反応し、なぜ好意や警戒心を抱くのかという、無意識の心理メカニズムそのものを映し出している。

さらに興味深いのは、加齢そのものが必ずしも「信頼を失わせる」方向に働くわけではないという点だ。顔の第一印象研究で知られるトドロフらの流れを汲む研究では、顔の成熟度(幼さの逆)が高いほど、有能さや信頼性の評価が高まる傾向があることが示されている(※5)。

しわや白髪といった加齢のサインは、見方によっては「幼さの後退=成熟のシグナル」として、むしろ信頼性の評価を押し上げうるのだ。飯島の"隠さない老い"が、単に「勇気ある告白」として消費されるのではなく、静かな信頼の土台を作っている可能性がある。

これは、芸能人に限った話ではない。飯島のように男性ウケから女性ウケに転身するというのは極端な例かもしれないが、「衰えを見せることで、自分の魅力そのものを底上げする」という部分は、日常の中でも応用できる。

人の温かさ・親しみやすさの印象は、地位や実績ではなく、表情そのものから強く伝わることが知られている(※6)。とりわけ、目元にしわが寄るような、心からの笑顔は、年齢や知名度に関係なく「感じがいい人」という印象を与える。

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そして目尻のしわは、まさにこの笑顔が長年積み重ねられてきた証しでもある。老いのサインの一部は、隠すべき欠点ではなく、「よく笑ってきた人」であることの温かい証拠なのだ。

自身の「老い」について、田中みな実のように努力を見せる道もあれば、飯島直子のように弱さを笑いながら見せる道もある。深刻に告白するのではなく、ユーモアを交えて見せることが、地位や知名度に関係なく、愛嬌として受け止められやすい。

日々アップされている飯島さんの食事写真。手料理には惣菜なども加えられ、そのラインナップに親近感を抱く人も多い(画像:飯島直子公式インスタグラム @naoko_iijima_705_officialより)

老いに対してポジティブな意識を持つ人は「長生き」する

そして、老いへの向き合い方は、見た目の印象だけにとどまらない話でもある。老いに対してポジティブな意識を持つ人は、ネガティブな意識を持つ人よりも、平均で7.5年長生きすることが、26年間にわたる追跡調査で明らかになっている(※7)。

禁煙による寿命延長が2〜3年とされる中で、老いへの意識だけで7.5年という数字は際立って大きい。飯島の"隠さない老い"は、周囲からの好感度にとどまらず、彼女自身の心と体にも、静かによい影響をおよぼしているのかもしれない。

老いや衰えをあえて見せることは、多くの人にとって勇気がいることだ。だが、その振る舞いが、思いがけず周囲の警戒心を解き、より深い信頼や親近感を生むことがある。飯島直子の現在の姿は、その「脅威解除」のメカニズムと、老いと共に生きる知恵の両方を証明しているのかもしれない。

【参考・引用文献】
※1:Festinger, L. (1954) A theory of social comparison processes, Human Relations, 7(2), 117-140.
※2:Tesser, A. (1988) Toward a self-evaluation maintenance model of social behavior, Advances in Experimental Social Psychology, 21, 181-227.
※3:Franzoi, S. L. & J. R. Klaiber (2007) Body use and reference group impact: With whom do we compare our bodies?, Sex Roles, 56(3-4), 205-214.
※4:Robertson, J. (1998) Takarazuka: Sexual Politics and Popular Culture in Modern Japan, University of California Press.
※5:Zebrowitz, L. A. & J. M. Montepare (2008) Social psychological face perception: Why appearance matters, Social and Personality Psychology Compass, 2(3), 1497-1517.
※6:Otta, E., F. F. Abrosio & R. L. Hoshino (1996) Reading a smiling face: Messages conveyed by various forms of smiling, Perceptual and Motor Skills, 82(3), 1111-1121.
※7:Levy, B. R., M. D. Slade, S. R. Kunkel & S. V. Kasl (2002) Longevity increased by positive self-perceptions of aging, Journal of Personality and Social Psychology, 83(2), 261-270.

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