ネパールで、サイバー犯罪やヘイトクライムへの対策などを理由に、政府が主要なSNSを使用できなくする措置をとったことをきっかけに、9月8日、大規模な抗議デモが発生し、70人以上が死亡、数百人のけが人が出た。
規制の対象となったのは、FacebookやInstagram、YouTube、それにXなど20以上のSNSで、政府が事前に当局への登録を義務づけ、ネパール国内に苦情処理やコンプライアンスの担当者を置くことなどを求めた。これに応じなかった事業者のSNSに対し、同月4日からアクセスを遮断する措置がとられた。
ネパールでは、ぜいたくな暮らしをする政治家の子どもがSNS上で若者たちから批判され、国内外の報道機関などが「Z世代のデモ」と呼んだこの抗議活動は、政治家の汚職撲滅や格差の是正などを求めて大規模に広がった。イギリスの公共放送BBCは、SNS規制は政府への批判を封じ込める意図もあったと指摘した。
また、現地の英字紙Kathmandu Postは、ネパールでは国外で出稼ぎ労働者として働く人が多く、国を離れて働くネパール人とその家族の連絡手段としてSNSがライフラインの役割を果たしていることも、反発が広がった背景として指摘する専門家の話を伝えている。
SNSの規制措置は8日夜に撤回されたが、デモに参加した若者の一部が警察と衝突し、政府庁舎に火がつけられるなど混乱が広がった。
一連の抗議活動を受けて、オリ首相は辞任し、同月12日、暫定首相に女性の元最高裁長官、スシラ・カルキ氏が任命され、暫定政権が発足した。
田路良一郎