【絵本】もなかちゃんと山と太平洋
縁側の日差しがぽかぽかと差し込む庭先。
小学二年生のもなかちゃんは、麦わら帽子を斜めにかぶって額に泥をつけたまま得意げに座り込んでいました。
膝には絆創膏、手には小さなスコップ。地面には一生懸命作った小さな砂山がそびえています。
お母さんは洗濯物を抱えたまま、その得意満面な顔を見て思わず頬が緩んでしまいました。
「あら、頑張ってたのね」
もなか「うん!🐒チョモランマ、制覇したの!」
お母さんはしゃがみ込んで砂山と娘の顔を交互にみます。
「すごいね。大きいもんねぇ」
もなか「うん!だから明日は、エベレスト登るの!きっとらくしょー🐒」
お母さんは洗濯物を縁側に置いて隣に腰を下ろします。ちゃんと付き合ってあげようと、優しく微笑みながら尋ねました。
「エベレストって、世界一大きい山だよね?もなかちゃん、登れるの?」
もなか「うん!チョモランマ登ったから!」
お母さんは目を丸くします。
「え、チョモランマ登った……?」
もなか「うん!チョモランマ!」
「なら安心ね」お母さんはそう言いながらも、まだ話が噛み合っていない気がして小首をかしげます。
もなか「だからエベレストもいける!」
「うーん? でももなかちゃん。エベレスト登ったのよね……?」
もなか「え?エベレストはまだだよ?チョモランマだけ🐒」
お母さんはくすっと笑いをこらえながら、砂山を指差しました。
「もなかちゃん……チョモランマとエベレストは、同じ山のことなのよ」
もなか「?🐒」
まったくピンときていない様子の娘を見て、お母さんはそれ以上お話するのをやめました。せっかくの得意げな顔を曇らせたくなかったのです。
「ちなみに富士山は完食したよ!😤」
「完食……登ったんじゃなくて?面白い言い方するのね」
お母さんはお腹を抱えて笑いました。
もなか「うん!楽勝だった!」
「そう、富士山どうだった?」
もなか「ちょっと辛かった🥺」
「辛かった……もなかちゃん、辛いはねからいとつらいって読むんだよ」
お母さんは娘の頭を撫でようとした。
もなか「??からかった、だよ?🐒」
お母さんは思わず声を出して笑ってしまった。
「そうね。昨日のカレーは少し辛かったね」
もなか「明日はね!世界最大の山に行くの!」
「あら、それは楽しみね」
もなか「マリアナ山!!」
「聞いたことないわねぇ」
もなか「有名だよ?あれはね!珍しい降りていく山なの!」
「降りていく……?」
お母さんはで首をかしげます。
「そー!深いふかーい!海の底にあるんだ!」
「今度は太平洋も横断するの!」
「まあ、それはすごいわね。もなかちゃんいっぱい大冒険だ」
もなか「うん!新しく作ったんだ」
「船を?」
もなか「え、ふね?太平洋をだよ🐒」
「作ったの……?」
もなか「うん!チョモランマの横に!」
手元を見ると小さなバケツがひっくり返って水たまりが午後の日差しにきらきらと輝いていました。
ぽつり、ぽつりと雨が降り始めた。お母さんは慌てて洗濯物を抱えて立ち上がり娘の手を引いて家に入りました。
「もなかちゃん、雨だから中に入りましょう」
振り返ると、チョモランマも太平洋も、雨が染み込んで少し崩れていきました。
次の日、雨上がりの庭にもなかちゃんは立ち尽くしていました。
もなか「あ〜あ🐒」
お母さんはそっと娘の頭を撫でます。
「また明日、一緒に作ろうね」
諦めなければ小さなチョモランマでも太平洋でもまたいつでも作れるんですから。
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