2度逮捕された「はま寿司」迷惑行為男は“俺からお金取れないから”…賠償請求すら効かない「失うものがない人」への対処法とは
■「見ない」「広めない」「反応しない」 これまで問題になった迷惑動画の多くは仲間内のウケを狙った悪ふざけがSNS上で拡散され、社会問題化されたケースが多かった。一方、新西容疑者は以前から食品を粗末に扱う動画を投稿するなどしており、今回も広く拡散されることを狙っての意図的な投稿だと言える。 山口教授は今回の事例について、「こうした意図的な投稿が生まれる背景には、炎上や批判すら注目という報酬に変える構造がある」と話す。 「アテンション・エコノミー(関心経済)のもとでは、炎上でも批判でも、注目そのものが広告収入や知名度という報酬になります。処罰や批判を織り込み、炎上を利用して報酬を得る。『ひどい』と思って見た再生も、批判のコメントも、すべて数字として投稿の勢いに加算されます。注目を目的とする投稿者にとっては称賛も批判も等しく『反応』なのです」 こうした迷惑動画の投稿は、スマートフォンひとつあれば完結し、撮影も数十秒で終わる「手軽な」行為だ。一方、被害を受けた企業側では警察への通報や連携、苦情対応、店舗の消毒や備品の総交換、さらに信頼回復への取り組みなど膨大な業務が発生する。過去の同種の事件では運営企業の株価が一時的に暴落したこともあった。山口教授は続ける。 「画面の中で完結しているように見える行為が、現実には多くの損害を生む。この想像力の欠如は投稿の手軽さと表裏一体です。被害の実相が投稿者から見えにくいのも、こうした投稿が起こる背景だと思います。プラットフォームには違法性が疑われる迷惑動画の迅速な削除や投稿者の収益停止に加え、レコメンドに載せないことも重要です。利用者にできることは『見ない』『広めない』『反応しない』ということ、そして通報することです。また、メディアもこうした事案をおもしろおかしく報じて増幅するのではなく、構造の問題として冷静に報じる役割を期待したいです」 処罰の強化だけでは防ぎ切れない迷惑動画。投稿者、プラットフォーム、利用者、メディアまで含め、注目を生まない環境をどうつくるかが今後の課題となりそうだ。 (AERA編集部・川口穣)
川口穣