速報【妊婦死亡事故】"禁錮2年6カ月"の実刑判決確定 亡き沙也香さんの夫と父、コメント発表
昨年5月、妊娠9カ月だった研谷沙也香さん(31)が、後方から迫ってきた軽乗用車にはねられて死亡し、緊急の帝王切開で生まれた日七未ちゃんが重い障害を負うという事故が発生しました。
本件で過失運転致死罪に問われていた児野尚子被告(51)には、6月18日、名古屋地裁一宮支部で禁錮2年6カ月の判決が下されました。その後、2週間が経過しましたが、控訴はなく、7月3日、実刑判決が正式に確定しました。
今朝、裁判所から知らせを受けた沙也香さんの夫・研谷友太さんと、父親の水川淳史さんから早速コメントが届きましたので、まずは速報としてご紹介します。
【夫・研谷友太さんのコメント】
判決が確定し、まずはほっとしております。
事故の瞬間に胎児だった娘の被害についても考慮されたこと、異例の実刑判決だったこと、これらは社会的にも大きな意義を持つ判例になると確信しています。
これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
望んでいた最低限の結果ではありますが、夫として、そして親として、胸を張って妻と娘に報告することができます。
しかし、妻と健康な娘、そして事故前の日常が戻ってくることはありません。
私たちは一生癒えることのない傷を抱えて生きていきます。
児野被告は刑期を終えたとしても、罪が消えることはありません。
一生をかけて償ってほしいと強く願っています。
【父・水川淳史さんからのコメント】
裁判所に確認し、判決が確定したと知ったとき、胸の内に静かな安堵が広がりました。
法律上、胎児はまだ『人』として扱われていません。
それでも、日七未の名前が判決文に残り、確定したという事実は、日七未の存在が公的な記録として位置付けられたことを意味します。
今回の判決は、胎児の扱いについて社会が向き合うための大事な一歩だと思います。
これをきっかけに、今後の法改正や議論が進むことを願っています。
<現在展開中の署名活動>
■本件を取材して
昨年から取材を続け、裁判を傍聴してきました。
本件事故の瞬間は被告車のドライブレコーダーに記録されており、9秒間、車が斜行し、逆走状態になっていたにもかかわらず、まったく運転操作を行っていなかったことが明らかになっています。
判決文では、「前方不注視」とされました。しかし、事故の根本原因について、ご遺族自身が疑問を呈されていることについては、以下の記事で記した通りです。
”9秒間”もの前方不注視、なぜ起こった? 消えぬ遺族の疑念【妊婦死亡事故】判決要旨公開- エキスパート - Yahoo!ニュース
被告はこの裁判の中で、「マイクロスリープ」だったという主張をしてきたことがありました(ただし途中で自ら撤回)。
「マイクロスリープ」とは、昼間に本人が自覚しないまま数秒間眠ってしまう状態を指し、慢性的な寝不足や蓄積した疲労があるときに生じる現象だと言われています。つまり、「居眠り」のことです。
結果的に撤回したとはいえ、被告の側からこのような主張をしたということは、少なからずそうした状況があったと考えるのが自然ですし、事実、そのような供述も行っていたと言います。
「居眠り」は「過労運転」とみなされます。道路交通法66条には、「過労運転等の禁止」という条文があり、飲酒や薬物使用時の運転と同じく、大変危険な行為として重く位置付けられています(違反点数25点)。
ここからは一般論ですが、子育て中の主婦は大変忙しく、家族の予定を優先して動く中で、自身でも気づかぬうちに睡眠不足や過労に陥っていることがあるのではないでしょうか。しかし、こうした状況でハンドルを握るということが、いかに危険であるか、たとえ数秒であっても、目をつむるということにどれほどのリスクがあるか、車を運転する人、そしてその家族は改めてそのことを認識していただきたいと思います。
「居眠り」「過労運転」を決して甘く見ないでください。
なお、本件では、事故の瞬間に胎児であった日七未ちゃんについて、「被害者」として認められるか否か、という大きな論点がありました。これについては、途中で検察による訴因変更がおこなわれ、起訴状に日七未ちゃんの名前が記載され、裁判官も判決文の中に日七未ちゃんの氏名を複数回にわたって明記しました。
しかし、刑法では「胎児は人ではない」とされているのです。
現在、交通事故等による被害を受けた胎児についての法整備ついて、国会をはじめ、全国各地の県議会で熱心な議論が行われています。
この動きについては改めてレポートしたいと思います。
<過失運致死被告事件・判決要旨>
主文 被告人を禁錮2年6ヶ月に処する
【罪となるべき事実の要旨】
被告人は、令和7年5月21日午後3時49分頃、普通乗用自動車を運転し、愛知県一宮市内の道路を進行するに当たり、前方左右を注視し、ハンドル・ブレーキを的確に操作して進路を適正に保持しながら進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、前方左右を十分注視せず、ハンドル・ブレーキを的確に操作しないまま漫然時速約30キロメートルで進行した過失により、自車を道路右側の路側帯に進行させ、折から同路側帯内を自車と同一方向へ向かい歩行していた研谷沙也香(当時31歳)に気づかず、同人の後方から同人に自車右前部を衝突させるなどして同人を路上に転倒させ、よって、同人に、急性硬膜下血腫及び同人が懐胎中の胎児(出生後の氏名・研谷日七未)に胎児機能不全を生じさせる循環不全等の障害を負わせ、同月23日、同市内の病院において、前記研谷沙也香を前記急性硬膜下血腫に基づく脳ヘルニアにより死亡させたものである。
【量刑の理由】
本件事故現場は、直線道路であり、周囲は明るく見通しも良く、被告人の視界を遮るものは何もなかった。
他方、被害者は、被告人車両から見て前方の道路右端の路側帯を被告人車両と同一の方向に歩いていた。したがって、被告人が被害者との衝突を避けるためにとるべき運転操作は、被告人車両をそのまま直進させるという極めて容易なものであった。
しかるに、被告人は、約80メートルもの距離を約9秒間にもわたり被告人車両を右方向に斜行させ、被害者の背後から衝突したものである。しかも、ドライブレコーダー映像によれば、被告人は、斜行を始めた後、ブレーキ操作やハンドルを戻そうとした様子は全くみられない。
そうすると、被告人は、被告人車両の斜行にも被害者の存在にも全く気がついていなかったというほかはなく、前方左右の注視や、ハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った過失の程度は非常に重大である。被害者は、後方から斜行して接近してきた被告人車両を避けられるはずもなく、被害者に過失は一切ない。
被害者は、本件により、急性硬膜下血腫や同人が懐胎中の胎児に胎児機能不全を生じさせる循環不全等の重傷を負って死亡しており、取り返しのつかない重大な結果が生じている。
何ら落ち度のない被害者は、若くして突然命を奪われた。被害者が夫婦で誕生を心待ちにしていた我が子を抱くこともできずにこの世を去る無念は計り知れない。
また、被害者が懐胎し本件事故前まで順調に生育していた胎児(出生後の氏名は、研谷日七未)は、本件事故により被害者が負った傷害により、胎児機能不全となり、低酸素脳症の過死状態で生まれ、出生後から意識がない上、自発呼吸も不可能な状態であり、現在も回復困難な病態が続き、24時間介護が必要な状況にある。
弁護人は、被告人が被害者が妊婦とまでは認識することが困難であり、個別的事情は評価するべきではないと主張するが、被告人が予見することは可能であったと言えるから、採用できない。当然ながら、被害者遺族の処罰感情は峻烈である。
以上検討したとおり、本件の過失はもとよりそれにより生じた結果の重大性を踏まえると、被告人の刑事責任は重いものであり、本件は実刑に処するべき事案である。
その上で、被告人が控訴事実を認め、反省の態度を示していること、今後、任意保険により遺族らに一定の被害弁償がなされることが見込まれること、被告人に前科がないことなどの酌むべき事情も考慮し、被告人を主文に揚げたとおりの刑に処することとした。
(検察官の求刑 禁錮3年、被害者参加弁護士の求刑 禁錮7年)
名古屋地裁一宮支部
裁判長裁判官・鳥居俊一/裁判官・坂東恵里/裁判官・山本奈央
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