「ポイントは失効した方が得」ではない ドコモが4000億ポイント消費を喜ぶ理由
ポイントは使われずに失効したほうが、発行元の懐は痛まない――。そう考えるのが自然だろう。だがNTTドコモは、dポイントの2025年度の年間消費数4052億ポイントを「初の4000億突破」として打ち出した。使われたほうが得だという計算が、ドコモにはある。 【画像】「最も活用している共通ポイント」ランキングを見る
4000億ポイントの約8割は「ドコモの外」で使われた
ドコモは2026年5月21日、dポイントの2025年度(2025年4月~2026年3月)の年間ポイント消費数が4052億ポイントに達したと発表した。前年度比で約25%増。内訳は全国のdポイント・d払い加盟店での利用が3389億ポイントと約8割を占め、ドコモのサービス・商品での利用は、663億ポイントにとどまる。 「実際に使われてこそポイントの価値がある。加盟店での利用が8割を占めるのも特徴だと思っている」。NTTドコモ コンシューマ戦略部 会員戦略担当課長の山崎佳美氏の説明だ。 年間消費数は2020年度に2000億、2022年度に3000億を超え、そこから3年で次の大台に乗った。2023~24年度には一時減っているが、「2022年1月から2023年9月までマイナポイントの施策があった。その影響を除くと、年々順調に伸びている」(山崎氏)という。 マイナポイント第2弾の申込期限は、2023年9月末だった。官製の追い風がなくなった反動が、数字の落ち込みとして表れた格好だ。 そもそも、この指標の立て方自体が他社と違う。楽天グループは2025年11月、楽天ポイントの累計発行数が5兆ポイントを突破したと発表した。年間発行は6500億ポイントを超える。PayPayが前面に出すのは決済回数74.6億回(2024年)と登録ユーザー7000万人で、年間のポイント付与数は定例開示していない。発行数や会員数ではなく、「消費された量」を前面に打ち出す発表は、大手共通ポイントでは珍しい。
失効しても、dポイント事業の「益」にはならない
ポイントは使われずに失効したほうが、発行元の負担は軽いのではないか。取材でそうぶつけると、返ってきたのは会計の話だった。 ドコモはポイントを付与した時点で、将来使われることを前提に会計処理を済ませている。通信契約に伴って付与するポイントは、付与した時点で、その分を通信売上から差し引いて計上している。 販促で配るポイントや加盟店から発行されるポイントは、どれくらい使われそうかを見積もり、先に引当金などの費用として計上しておく。いずれも配った時点で会計上の処理は織り込み済みだから、ポイントが利用されたからといって新たに損失が生まれるわけではない。 では、想定より多く失効したらどうなるか。山崎氏の説明はこうだ。「引当金を取り崩し、差益という形で営業外収益として計上される。dポイントのビジネスユニットとしては、営業外に利益が入っても全く意味がなくて、進呈したポイントがよく使われて、お客さまに『良かったな』と思っていただく印象が一番重要だ」。 その上で「使い切っていただきたい」と言い切る。 ポイントが使われるメリットは2つある。1つは外販事業だ。加盟店が買い物100円または200円につき1ポイントを進呈する際、そのポイントをドコモから買い取り、システム利用料も支払う。 「ポイントを使うために加盟店を訪れるということは、来店して買い物をされている。買い物が増えると外販事業の収入が増えて、その収益がわれわれにも返ってくる」と、会員戦略担当主査の仲本朱里氏はポイントが循環する構造を挙げる。 もう1つは接点だ。「ドコモのサービスは月に1回の支払いくらいで、お客さまがドコモを意識することはほとんどない。日々、能動的にdポイントに触れてもらいたい」(仲本氏)。接触回数が増えるほどdポイントへの心象が良くなり、それはほぼそのままドコモへの印象に重なるという。 同社はこうした層を「心象ロイヤルユーザー」と呼び、銀行など新しいサービスを案内したときに、耳を傾けてもらえる状態をつくることを狙う。 自店舗への再来店を促す家電量販店型のポイントとは、狙いが違う。利用先の約8割がドコモ以外でも、使われるたびに外販収益とユーザーの心象が積み上がる。失効を待つより、使ってもらったほうが割に合うというのがドコモの考えだ。