「強迫症」当事者が打ち明けた苦しみ その原因と治療法は? 専門の精神科教授にインタビュー
汚れ・洗い残しに苦しむ30代の母親
三重県に住む30代の女性は、いま子育ての最中です。 汚れや洗い残しの不快感に苦しみ、入浴の時間が1時間を超えることもあったといいます。 第一子を授かった2022年ごろから、新型コロナやインフルエンザなどの感染症に特に敏感になりました。 そんな中、仕事に出ている夫がコロナやインフルに感染することが重なりました。 「家に帰ったらちゃんと手を洗ってほしい」 「洗い物はしっかりゆすいでほしい」 「外から帰ったら着替えてほしい」 夫に繰り返し伝えました。 夫は「わかったわかった」と言うものの、なかなか伝わらず、ストレスがたまったといいます。 「今振り返れば、生まれたばかりの子を感染症から守りたいという気持ちがありました。夫との考え方の温度差が大きくて、それらのストレスが強迫症の悪化につながったと思います」 外出先では、「忘れ物はないかな?」と何度も確認することがありました。 何度か確認した後も、心配になることがあったといいます。 現在、強迫症を専門とするカウンセラーとともに、治療に取り組んでいます。 「強迫の症状を、自分の力だけで治すことは難しいと感じました。あまり知られていない病気かも知れませんが、理解してもらえる人が増えることで、少し生活しやすくなるのかも知れません」
専門の医師に聞く 「強迫症」とは?
強迫症とは何なのか、そしてどう治療するのでしょうか。 九州大学精神科の中尾智博教授に聞きました。 ――強迫症とはどんな病気なのでしょうか。 私たちが生活している中では、いろいろな心配事が出てきます。 「病気になるんじゃないか」「玄関の鍵を閉め忘れて泥棒に入られるのでは」「モバイルバッテリーから出火して火事になるんじゃないか」など…。 誰でもそんな心配をすることがありますが、それがすごく膨らみ、繰り返し心配してしまう。そういうことを「強迫観念」と呼んでいます。 「大丈夫だろう」と思っても、「もしかしたら」という思いが拭えず、ずっとそのことを考えてしまうのです。 そこで、ひたすら手洗いや除菌をしたり、家を出る時に鍵を何度も閉め直したりします。 それで収まればいいのですが、逆にやればやるほど「もしかしたら」という心配を強めてしまうのです。これを「強迫行為」といいます。 強迫症というのは、この「強迫観念」と「強迫行為」が行き来してどんどん強まり、日常生活に影響が出る病気です。 例えば、外出しようとする時に鍵やガス栓、スイッチの点検に2時間ぐらいかかってしまいます。 そうなると職場や学校に行けなくなり、家事や勉強も手につかなくなります。 ―――「潔癖」「神経質」「完璧主義」などとは違うのでしょうか。 そう言われる人がいますが、それだけなら病気ではありません。日常生活に影響が出る場合に、強迫症と診断されます。