<主張>露への制裁解除 IOCは二枚舌を使うな

社説

五輪旗を振るIOCのコベントリー会長=イタリア・ベローナ(ゲッティ=共同)

ウクライナへの侵略戦争を続けるロシアに対し、国際オリンピック委員会(IOC)が国際大会の参加制限を解除した。これまで個人資格の中立選手としての出場に限るよう各国際競技連盟(IF)に勧告していたが、それも取り下げる。

IFの対応次第では、2年後のロサンゼルス五輪でロシア国旗がはためき、国歌が会場に流れるということだ。IOCの判断はでたらめというほかなく、受け入れられない。

ウクライナ・オリンピック委員会が声明で、「人間の尊厳や平和、国際法に基づくオリンピズムの基本的価値観に反する」と非難したのは当然である。ロシアの攻撃では、多くのウクライナ選手やコーチが命を奪われた。IOCは戦争犯罪に目をつぶると言ったに等しい。

侵略開始から4年余りがたち、その間にイスラエルがパレスチナ自治区のガザを、米国がイランを攻撃した。ロシアにのみ制裁を続けるIOCに、各国・地域のオリンピック委員会などから「二重基準」との批判が高まっていたのは事実だ。

IOCは6月に五輪憲章を改定し、政治的中立を強く打ち出した。コベントリー会長は「選手に自国政府の犯した罪を負わせたくない」と述べた。これは理由になっていない。

昨年9月にロシアへの制裁を解除した国際パラリンピック委員会(IPC)にもいえることだが、スポーツ界では、ロシアとの関わりが深いアフリカや中国の影響下にある南半球の小国などが発言力を強めている。IOCは政治的中立を貫くどころか、一部加盟国の政治的圧力に膝を折ったというのが実相だろう。ウクライナ選手らの未来を奪ったロシアへの寛容が、二枚舌でなくて何なのか。

柔道やレスリング、体操などのIFは早くから、ロシア勢の出場制限を解除している。団体競技では国際バレーボール連盟が、IOCの対応にならった。国旗、国歌などの使用は継続審議するとしながらも、ロシアを世界ランキングに復帰させている。憂慮すべき事態である。

一方で、世界陸上連盟は7月の理事会で、ロシア勢への制裁継続を決めた。良識を示したと言えよう。IOCの姿勢がスポーツ界の総意ではないということだ。繰り返し指摘する。IOCの対応は容認できない。

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