猟牙流の味付けは
──猟牙さんは「虚構ノ黙示録」にどんなふうに味付けを?
猟牙 ある種RAZORが今までやってきた方向性の曲だからこそ、斬新なエッセンスをどう入れられるかなという部分で悩みまして。ラップ的なアプローチを取り入れたり、ちょっとトリッキーな感じを足してみました。
剣 冒頭の「退廃~」の部分は、最初のデモでは猟牙の歌を入れていなかったんですよ。アレンジしていく中で、中盤にある歌をそのまま頭にも入れたら面白いんじゃないか?ということで採用しました。ピアノの音に対してラップ的な歌を乗せるのは、ヴィジュアル系ではあまりないから新しいかなと。
──各メンバーから戻ってきたものを、最終的に剣さんがとりまとめるんですか?
剣 はい。細かい部分の修正はあったりしますけど、基本的に送ってもらったデータをそのままきれいに編集する作業ですね。僕個人が一番こだわった部分は、曲の始まり方。いわば曲の顔になるので、イントロのクオリティをかなり突き詰めました。
──イントロをはじめ、サビの裏などでも鳴っているシンセのサウンドがすごく華やかで。
剣 サビの裏で鳴っているのは、イントロのフレーズの上3度のハモリに当たるんです。ほかにも細かいこだわりがいろいろあって、説明し出すとキリがなくなっちゃうくらい(笑)。ライブでは勢い一発で展開できるような曲にしたかったので、楽器の演奏をなるべくシンプルにしたかったんです。その分、シーケンスの作り込みが最重要課題でした。
画面越しじゃなく、ライブの現場や生で見る熱さを大切に
──歌詞は剣さんの仮歌詞から膨らませていったということでしたが、猟牙さんはどのようなテーマ性を受け取ったんですか。
猟牙 今ってSNSの時代じゃないですか。僕はかなり活用しているほうですけど、SNSの世界にはフェイクも多いし、フェイク情報に踊らされて喜怒哀楽をまき散らしている人も多い。そうやって踊らされている人間模様や、時に自分も踊らされてしまったりするのはすごく滑稽だよね、という話を以前剣としたことがあったんです。「虚構ノ黙示録」のデモに乗っていた仮歌詞を読んだときに、そういうことについて歌っているんだろうなということが伝わってきて。曲と同じで細かく相談することはないんですけど、俺なりに気持ちを受け取って肉付けしていきました。「虚構ノ黙示録」というタイトルにあるように、虚構に囚われすぎず、もっと本質を爆発させたいという欲が軸になっているかな。今の時代はXにYouTube、TikTokとか手元で楽しめるツールがたくさんあって、それはそれで便利だけど、俺らはバンドで曲を作ってライブをやっているから。画面越しじゃなく、ライブの現場や、生で見る熱さを大切にしていきたいという気持ちも入ってるかもしれない。
──「虚構の存在だけ 自ら選ぶように仕向けられ」「縛り付ける正しさより感じるままに」など、共感できる人は多いと思います。
猟牙 刺さってくれたらうれしいです。SNSは本当に便利ですけど、人間のいい部分も悪い部分も出まくってしまうから。
剣 SNS上でもどこでも、結局、本当の真実は語られないわけですよね。いわゆる利権を持っている人たちにとって都合のいい法律になっているのに、それが正しいと思い込まされて生きているんじゃないかと思うときもある。別に、そういうことに対して怒りがあるわけではないんですよ。僕が個人的に何かを発信したところで、世界が変わるわけでも、日本の政治が変わるわけでもないから。ただ、そういうことがあるかもしれないよねっていうことを1人ひとりに投げかけたいんです。今言っていただいた部分の歌詞は、まさしくリスナーさんに問いかけているところですね。そのうえで、生き方はみんなそれぞれの判断に任せます、と。
衍龍 僕は生まれが中国なので、SNSで勝手に母国のことを悪く言っている記事が流れてきたりすると、本当に腹立たしいし、いろんな感情が芽生えてきます。たまに、イラッとして思わず反応したくなるときもあるけど、それこそ踊らされてることになるなと気付いて。何が本当で何が嘘かわからない部分も多いからこそ、自分の信念だけは曲げないようにすることが大事なんだろうなと思う。この曲を聴いてくれた人たちにも、人の価値観じゃなくて自分の価値観で生きていってほしいです。
IZA 日本人は特に感情を外に出しにくい、溜め込みやすい性質というところもありそうだから。みんなライブに来て、ストレスを発散してほしいですね! ライブじゃなくても、自分の感情を出せるところを自分で見つけられたらいいんじゃないかなと思います。
貫き続ける攻めのスタンス
──RAZORは11月30日に結成10周年を迎えます。Zepp Shinjukuでの10周年ライブも発表されましたが、10周年を迎えることについてどう感じていますか?
猟牙 残念ながらいなくなってしまうバンドもたくさんいる中で、10周年を迎えられることは本当に感謝ですね。自分のバンド人生でも一番長く続いているバンドになるので、そう思うと感慨深いものがあります。ただ、現時点ではライブがとにかくたくさん控えているので。10周年のことを考えたくても、今は目の前のライブのことで頭がいっぱいですね(笑)。それだけ1つひとつのライブが大事だという気持ちの表れですけど、とにかくがむしゃらにライブをやって、ライブが終わったらまた次のライブというふうに向き合っていったら、あっという間に10周年ライブのZeppに立っていそうだなと思います。
衍龍 正直、まだ10周年に対しての実感は湧いていないです。僕のバンド人生でも一番の長さなので、「え、10年って何?」みたいな状態(笑)。今年の11月30日に、いざZeppで何を感じるのか、その瞬間に自分がどんな感情になるのかが楽しみです。猟牙が言ったように、とにかく今は目の前のライブをがむしゃらにやり続けることですね。その先に何があるかわからないし、病気やトラブルがないとは限らないので、しっかり体調管理や身の回りのことに気を付けながら、無事11月30日を迎えたいと思います。
IZA 僕も、1つのことを10年続けられたのはたぶん初めてだと思います。長くバンドを続けている先輩から、「続ければ続けるほど見える景色が変わってくる」というお話を伺ったことがあって。実際、バンドに対しての価値観や重みが8年目くらいから変わってきたんですよね。ファンの子がついてきてくれていなかったら10年も続けられていないので、感謝を感じることもすごく多くなった。そして何よりうれしいのが、10年やっていても、まだバンドとして攻めのスタンスでやれていること。なかなか珍しいと思うし、僕らの一番の強みだと思うので、11年目も変わらず攻めのスタンスを貫いていきたいです。
NIKKY 僕は途中加入なので6年目ですけど、そこは関係なく、いい意味で10周年ということをあまり気にしていなくて。ただ積み重ねてきた数字が10になっただけであって、11月30日は毎年大事な周年ライブという認識なんです。もちろん10年という区切りが大きいのはわかるので、特別な実感が出てくるかどうかは実際にその日を迎えてからかなと思います。目標としてはいつもと変わらず、人生で一番いいライブになるようにがんばります。
剣 10周年はもう1つのバンド──Sadieで経験していますけど、当時いろんな事情を踏まえたうえで活動休止になってしまったんですよね(※Sadieは2024年に活動再開)。だから、10年はやっぱり1つの節目ではあるのかもしれない。でも、今みんなが言っているように、関係ないと言えば関係ないし、どの周年も大事だからこそ、しっかり向き合うだけかなと思います。ただ……今年のブッキングに関しては猟牙が中心になって考えてくれていて、きっと10周年に向けての意図があるんだろうなと思っていたんですけど。今、猟牙が先のことは考えられないと言っていてびっくりしました。果たして、考えているのかいないのか(笑)。
猟牙 あ、そうだった! 10周年だし、対バンライブをいっぱいやって派手にいこうと考えていたのを今思い出しました(笑)。RAZORという名前を聞いたことはあっても触れたことはない人がまだまだたくさんいる中で、やっぱりライブに勝るプロモーションはないよなと思ったんですよ。10年ってベテランなのか中堅なのか難しいところですけど、僕らはメンバーそれぞれの歴史もあって。そういうバンドが今も攻めの姿勢でやっているところを見せて、RAZORを応援してくれるファンのみんなに、改めて「熱いライブバンドを応援してるんだ」と思わせられるような活動をしていきたいです。そして、10周年ライブで思いきり爆発したい!
剣 (笑)せっかくなら周年ライブは派手なステージにしたいよね。あくまでいつも通りのライブというのも、骨太でカッコいいけど。
衍龍 CO2の1本や2本飛ばしてもらって!
剣 LEDビジョンを使ったりとかね。自分たちの演奏だけじゃなく、そういうプラスアルファの仕掛けでも、来てくれる皆さんへの感謝の気持ちを表明できると思うから。やりすぎて赤字になったら、来年またいっぱいライブします(笑)。
──ちなみに、10周年の先のビジョンというと?
猟牙 いやあ、どうしましょう? Zeppで大爆発して、その先のことはいよいよ考えられない(笑)。もしかしたら「10年終わっちゃった、どうしよう!」って燃え尽き症候群になるかもしれないし、初めてなので全然想像がつかないです。その先もRAZORを長く続けたいのはもちろんなんですけど、ただ長く続けるためにやるというより、やっぱり目の前の1本1本のライブを楽しみたいですね。その積み重ねが10年になったので、同じように積み重ねていって15年、20年を迎えられたらいいなと思っています。
公演情報
RAZOR 10th ANNIVERSARY ONEMAN TOUR X - tenth -
2026年11月30日(月)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
プロフィール
RAZOR(レザー)
2016年にそれぞれ異なるバンドで活動してきたメンバーによって結成されたヴィジュアル系バンド。現在のメンバー構成は猟牙(Vo)、剣(G / Sadie)、衍龍(G)、IZA(B)、NIKKY(Dr)の5人で、バンドのコンセプトに「剃刀・鋭利な音像・叫びで全てを切り刻む」を掲げる。2016年11月に初音源となるミニアルバム「RED INVISIBLE」を発表し、以降はリリースを重ねながら、ライブ活動を精力的に展開している。最新作は2026年6月リリースのシングル「虚構ノ黙示録」。同年11月30日に結成10周年記念ライブ「RAZOR 10th ANNIVERSARY ONEMAN TOUR X - tenth -」を、東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で開催する。


