#ガンダムカードゲーム で何が起こったのか。簡単にまとめ。
◯公式の発表。
◯どういう問題があったのか? 他のTCGに例えると?
◯ユーザーはベータ版から分かっていた。
◯どんな意見が出ているのか。
◯今回の発表が特別な理由
ガンダムカードゲームの公式発表で、20種類の低コストユニットをまとめて規制対象にする、大型の禁止・制限改定が発表されました。
これは、#デュエマ で言えば、「1・2マナのアタックできるクリーチャーのほとんどに制限がかかった」
#ワンピカード で言えば、「1・2コストのバニラキャラクターを、複数種類併用できなくなった」
というイメージです。
要するに、「速攻デッキ(アグロデッキ)が強すぎたので、速攻に入るパーツを制限する」という決定です。
◯《アンクシャ》が禁止
◯《コルシカ基地》は従来どおり制限2
◯複数の組み合わせが「禁止ペア」に指定
◯Lv.2・COST1・AP2・HP2・効果なしのユニット20種は、異なる種類を併用できず、「1種類のみ、4枚まで」
ガンダムカードは発売してまだ1年。4弾までの発売で、5弾の発売を控えているタイミングです。
カードプールはまだそれほど多くない状況で、軽コストユニットが軒並み制限されたということになります。
今回の公式の発表で注目すべきは、禁止や制限の多さよりも、むしろ公式が、
「ゲームのシステムに問題があった」と発言していると読み取れる部分があったことです。
以下、公式から。
「速度の速いデッキが強力な状況に関しては、ゲームルールそのものにも一因があると考えており、ルールの根本的な変更も視野に入れた検討を行っております。
しかしながら、根本的な変更にはどうしても時間を要してしまうため、それまでのゲーム環境を整えるための暫定的な処置として今回の禁止・制限改訂を行います。
ゲームルールの変更を行う場合は、これまでの禁止・制限改訂の内容についても改めて精査します。」
つまり公式は、特定のカードだけでなく、ゲームシステムそのものにも構造的な問題があると事実上認めたことになります。また、「根本的な変更も視野に入れている」というのは、無視できない強力なメッセージです。
■どういう問題があったのか? 他のTCGに例えると?
ガンダムカードゲームを知らない人に説明しますと、似ているTCGはデュエマです。
マナが増えていって、相手のシールドをブレイクするTCGです。
しかしデュエマと違い、
◯破壊されたシールドが手札に入らない。
◯軽コストのブロック能力を持つユニットが少なすぎる。
◯速攻の展開力がデュエマより速い。
(2ターン目に2マナのカードが2体並ぶ。)
というゲームです。シールドは6枚で、デュエマより多く見えますが、展開力が違うので耐えきれない。
厳密な比較ではありませんが、体感的には――
「デュエマのシールドが3枚だったら、ブロッカーデッキでない限り生き残れない。」
「ヴァンガードで言えば、ダメージ4で決着」
こんなイメージなので、速攻デッキに入るカードが強いというよりは、ゲームルールが構造的に「速攻が勝てるようになっている」というべきかもしれません。
■ユーザーはベータ版から分かっていた。
ガンダムカードゲームでは、発売前にベータ版が発売されました。(僕も買いました)
この時のカードプールはごく少数でしたが、ベータ版を深くプレイしたユーザーやショップ店員の間からは、この時点で、
「2ターン目に1コスト支払って出せるレベル2のバニラが2体出せるので、マジックやデュエマより展開が早い。ベータ版の時点ですでに速攻デッキが強いが、本製品で2マナ枠のバニラが増えるたびに、加速度的に速攻が強くなって抑えきれないのでは?」
との分析が出ていました。
それでも「まあこれはベータ版なので、実際の商品では是正されるだろう」と思っていたのですが、そうはなりませんでした。
少なくとも、低コストのブロック能力を持つユニットが各色に十分用意されていれば、現在ほど速攻一辺倒の状況にはなりにくかったと思われます。
■どんな意見が出ているのか?
X上で散見された意見の要約です。
「速攻一強の環境は飽き飽きしていたので、良かった。」
「なんで今のタイミングで出すんだよ。5弾が出て、放っておいても環境が変わるはずじゃないのか?」
「強すぎるカードがあった、とかじゃなくて、ゲームシステムに欠陥があったと公式が認めるのか……」
「さすがにガンダムは社運をかけたビッグプロジェクトだと思ったのに、基本デザインの完成度が低いってどういうこと?」
「俺のアグロがぁぁああ!」
「アグロ……振り向かないで」
「これを機にガンダムウォーの復活を……」
「ぶっちゃけこの禁止・制限はやったほうがいい。ゲームシステムの欠陥を認めるのも好感が持てる。」
「運営がテストプレイした時にアグロを考えつく人はいなかったのか? その程度の人たちがカード開発してると思うと少しゾッとする。」
僕が見た限りでは、改定そのものについては好意的な意見が多いようです。やはりTCGは、面白い環境こそが一番大事だと改めて思います。
■どうすればよかったのか?
カードデザインの部分で、幾つかの解決策はありました。
それこそ、今までに発売されたTCGから学べることです。
◯#ガンダムウォー
同じくバンダイの、ガンダムのTCG。ジオン速攻が強すぎたので、
「1ターンに1枚という召喚制限を無視できる“クイック”という能力を一部ユニットから削除。」
などでバランスを取りました。
◯デュエル・マスターズ
初期から、1マナや2マナの速攻向きカードがあると同時に、1マナや2マナのブロッカーを用意していました。
ブロッカーで対策していなければ速攻に殴り倒され、速攻側はクリティカル・ブレードなどで突破を狙う。
硬直しても、進化獣で突破したり、ブロッカーが殴れるようになったりと、ゲームを「詰ませない」デザインが意図的に組み込まれていました。
その他、デュエマでは、「地獄スクラッパー」「バースト・ショット」などの速攻対策がトリガーで作られており、逆転要素が用意されています。
他にも、皆様が思いつく限りの方法があると思われます。にもかかわらず今回の施策が取られたのは、
「4弾までの開発が一つのパッケージになっていて、速攻が強すぎると分かって以降、カードを作り直すという選択がとれなかったのでは?」
と思われます。これは、TCGの開発の現場にいたので、想像できるところです。
そしてなぜ今、5弾が出る前のタイミングで? という答えに対しては、
「ぶっちゃけ5弾が出ても、速攻が強いままで環境が変わらないから」
だと考察できます。
実際に、第5弾にも同じ条件の低コストバニラが収録されることが、公式ホームページで確認できます。
つまり、第5弾の商品内容だけでは、現在の速攻環境を十分に変えられないと公式も判断したのでしょう。
そこで第5弾の発売前に禁止・制限を適用し、先に環境を動かす必要があったのだと考えられます。
新弾が活躍できる環境を整えるという意味では、商業的に正しい判断です。
ただ惜しむらくは、ユーザーと同程度には、「速攻が強すぎる」という認識を、もっと早く持っていてほしかったというところでしょう。
何かボルバルザークの話と似てきましたね……
■今回の発表が特別な理由
今回、ガンダムカードゲームに関して、「ゲームルールそのものにも一因がある」と発表したのは、公式の記事に文責が記載されていませんが、仕事の内容と立場からして、恐らくプロデューサーを中心としたプロジェクトチームの総意として書かれた記事であり、発表であると考えられます。
つまりチーム全体が、
「ゲームルールそのものにも一因がある」から続く文章を見て分かるように、「ルールの部分から修正したい」という意思表示をしています。
ゲームデザインの部分で、自分たちの能力不足を反省しているとも受け取れる、謙虚な記事と言えるでしょう。
厳しいようですが、ユーザーの意見にも、
「同じバンダイでも、ワンピカードのデザインは評価するけど、ぶっちゃけガンダムカードのデザイナーは危なっかしいと思う」
という意見があったのは事実です。
ゲームバランスだけでなく、ガンダム作品の設定や名場面が、カード効果やデッキの動きとして十分に再現されておらず、「ガンダム愛がゲームから伝わってこない」という意見も耳に入りました。
今回の発表に関して色々な意見があると思いますが、僕個人としては、これまでのゲームデザインを無条件に擁護せず、チーム全体で問題を共有し、必要ならルールから作り直す姿勢を示した点に希望を感じます。
なぜなら僕は、デザイナーが別人に切り替わったTCGが、うまくいった例をいくつか知っているからです。
少なくとも、今回の禁止・制限で、今までよりは面白くなると思いますから、期待しましょう。
(深くプレイしているユーザーからは、「この改定はやってよかったが、これはこれで別の問題が発生するかも」と不吉な分析も出ていることは、一応書いておきます。)
■最後に
ここまで読んで、「それでもデザイナー個人の能力不足とは限らない。開発スケジュールや組織の問題かもしれない」と考える方もいるでしょう。
もちろん、その可能性はあります。
しかし、ベータ版を遊んだ一般ユーザーやショップ店員が、限られたカードプールを見ただけで、
「このまま低コストユニットが増えれば、速攻が抑えきれなくなる」
と予測できていたのです。
そして実際にそのとおりになり、発売から約1年後、公式自身が「ゲームルールそのものにも一因がある」と認めました。
これは、予測困難だった事故ではありません。
過去のTCGを知っていれば対策方法はいくつも存在し、実際にユーザーからも発売前に危険性を指摘されていた。それでも商品版で修正されず、第4弾、さらに第5弾まで同じ問題を引きずった。
僕はこれを、単なる調整ミスとは考えません。
TCGのゲームデザイナーに必要な、カードプールが拡大した未来を予測する能力、過去作品から学ぶ能力、テスト結果を設計へ反映する能力。そのいずれか、あるいは複数が足りていなかった、職業上の明確な失敗だと考えます。
厳しい言い方ですが、ユーザーが発売前に分かっていた問題を、プロの開発側が止められなかった。
そこを曖昧にしてはいけないと思います。
■オマケ
そもそもガンダムを題材にしたTCGのシステムを、マナシステムにするのは良いことなのでしょうか?
皆が4枚ぶち込んで使いたいのは、サザビーやウイングガンダムやストライクフリーダムで、要するに主役級です。
そもそもレアリティの高いカードも、主役機になる傾向が高い。
そりゃ当然、ザクもジムも使いたいですよ? ですがちゃんと主役機が活躍するゲームにしないと、作りたい盤面、見たい盤面とは違いますよね。
本当なら1ターン目から、自分の使いたい主役機に使いたいエースを乗せて場に出したいわけです。マナコスト的に時間をかけて、耐えて主役機登場! はかっこいいですが、そもそもなぜ耐えなければならないのか。
遊戯王は1ターン目から出したいモンスターが出せる。遊戯王は遊戯王で問題があったとしても、
「最初っからクライマックス!」
ができるのは素晴らしい。
バディファイトでも、遊戯王でも、他のいくつかのTCGでも「最初から切り札」は実現しています。ガンダムというキャラクターを活かしたいのであれば、マナコスト式じゃないほうが良かったんじゃないか? と僕は考えます。
例えばガンダムのゲームで、「ガンダムカードビルダー」ってゲーセンにありましたよね。
あれは合計コスト式で、
「ガンダムフル装備にアムロin! もできるし、ザク3体に軽コストパイロットでフォーメーション!」
もできた、「自分が率いたい部隊を再現できる神ゲー」です。
そんなわけで、「サザビー4枚が欲しい! デッキに入る!」と思ってもらえるゲームデザインにするのは、商業的にも正しいのではないか、と思います。