東大は7月10日、大学院工学系研究科と関係がある一般財団法人総合研究奨励会で元業務執行理事・事務局長が同会の資金計約9000万円を不正に取得していたと発表した。元事務局長は解任され、同会は刑事・民事双方から責任を追及する方針。同会は工学系研究科と連携する東大の関連公益法人(東大と連結して決算が行われる)で、ガバナンス不全の問題に直面する東大にとって痛手になりそうだ。
今回発覚した不正は、元事務局長が①2016年から2026年にかけて120回以上にわたり、同会の資金(総額約9000万円)を自身が代表を務める法人に再委託費として流出させた、②2016年から複数回、同会の規定に反し代表理事の承認を得ないまま国内外への出張費を受け取っていた―というもの。①の再委託費は実態の不確かな法人から元事務局長に役員報酬や海外出張費として支払われていた。この取引は利益相反取引に当たるが、必要な理事会の承認なども得ていなかった。②の出張の中には合理性のない出張もあったという。また、不正当時の代表理事は出張を承認するよう要請は受けてはいないとする。東大は、これらの不正は業務上横領罪または特別背任罪に当たる疑いがあるとしている。
今年2月、同会は透明性確保のため外部の専門家による任意監査を開始。専門家が関係者聴取や会計書類・登記等の精査を進める中、元事務局長の不正を把握し、4月に東大へ中間報告を行った。これを受け東大は自ら実態を検証すべく、同月中に桑原昌宏理事(最高リスク責任者)をトップに外部の弁護士や公認会計士からなる独立したプロジェクトチームを設置。調査を行ったと東大は説明する。
同会は1941年に創設され、公共事業として工学系の研究・国際交流を助成する他、研究会やシンポジウム・法人設立の事務受託、人材派遣などの事業も行う。今回流出した資金は同会の業務委託事業などで受け取った資金から払われたものだという。元事務局長は専任の職員だったとみられ、それ以外の同法人の役員は工学系研究科などの教職員が務めてきた。同会の代表理事には工学系研究科・工学部長が代々就任している。現在は加藤泰浩教授(前工学系研究科長)が代表理事を務めていて、 今年実施されている総長選考で候補者になっている染谷隆夫教授(東大大学院工学系研究科)も、不正が行われた期間の一部で同会の代表理事を務めていた。
昨年12月、東京科学大学と京都大学が国際卓越研究大学に認定される一方、東大は医学部で不祥事が相次いだ影響を受け、認定が見送られた。東大の審査は今年12月を期限とする継続審査の扱いとなっている。ガバナンスに関わる新たな不祥事が発生した場合には「審査を打ち切る」ともされている。