消費税減税の効果なしと副作用を心配 「1ドル200円」も意識 渡邉美樹

経営者目線

パシフィコ横浜で開かれた株主総会後のトークショーで5年後の夢を語った=先月27日、横浜市

食料品消費税の「実質ゼロ」が確実な情勢となった。大前提として、私も国民の負担が減り、暮らしが豊かになることを願っている。その上で、本当に今回の減税に効果があるのかは疑問で、副作用が生じないか、議論を尽くすべきだと考える。

ニッポン放送の番組で元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史さんと意見交換した。政府は骨太の方針で、これ以上の利上げは景気を冷やすと、日銀の利上げを牽制(けんせい)した格好だが、それでは利上げをやめれば景気はよくなるのか。藤巻さんは「よくなるわけがない。利上げしないと、とんでもないインフレになる。国民生活が最悪になる」と指摘する。

「インフレが進みそうなとき、減税をすればそれ以上に物価が上昇する」ともいい、多くの経済学者も同様の指摘をしている。私も、円安が進み、国民が減税効果を実感することはないと考える。2年で戻すといっても、2年後は参院選で、減税継続を主張する政党や政治家が出てくるだろう。

結局、今回の減税を契機に、恒常的にお金をばらまくことになりかねない。最大の副作用は、財政不安から長期金利の上昇が止まらず、日本国債の格付けが落ちることだ。国債の利払い費が増え、政府は予算を組めなくなり、財政破綻しかねない。

先日、参院議員時代の同期だった国会議員の集まりがあった。減税の効果や副作用の懸念を伝えたが、「分かっていてもやるしかない」という感じだった。選挙で公約したし、それだけ減税の期待は大きいということだ。財政危機に一定の問題意識はあるが、次の自分の選挙までは「まだ大丈夫だろう」という声もよく聞く。

電気・ガス料金の支援も再び始まったが、藤巻さんは「いずれハイパーインフレで、究極の財政再建を行う方向だ」という。ハイパーインフレが起きれば、大半の資産が日本円で持つ国民が一番つらい思いをする。この不都合な真実を訴える政治家は皆無だ。

先月27日、ダブル台風にも関わらず、パシフィコ横浜(横浜市)で開いたワタミ株主総会に1000人以上の方が来場された。株主優待の拡充など毎年ご要望をいただくが、今回は「株主優待よりも会社の価値を上げてくれ」という株主もいた。この構図は、国とまったく一緒だ。

優待という目先の喜ぶ施策をしても、それは「利益の棄損」であり、その効果と副作用を丁寧に説明することが経営トップの責任だ。その際に大事なことは、この会社をどう成長させていくのか、5年後の夢を語り、目指すべき未来を共有することだ。今の日本の政治には、そうしたことが欠けており、財源(資金繰り)が具体的でないまま、減税(割引券発行)を行おうとしている。

足元、円安も長期金利上昇も進んでいる。私は「1ドル200円」はそう遠くないと感じる。藤巻さんは「4年後のサッカーワールドカップまで、日本は持たないだろう」と断言していた。(ワタミ代表取締役会長兼社長CEO)

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