【記者日記】もうひとつの都構想パンフストーリー
かわすみかずみ
私は、2回目の都構想で全戸配布されたパンフレットに、ある疑問を感じていた。それは入札結果の違和感から始まった。このパンフ印刷業務の入札は2020年9月4日に行われている。参加企業は株式会社ウィズだけだった。参加予定だった佐川印刷(株)とワコー·シー·アンド·ピー(株)は入札前に辞退していた。両社に辞退した理由を聞くと、直前で大量の紙が用意できないことや、納期が短すぎてできないことを理由に挙げた。
株式会社ウィズは大阪市森ノ宮にあった。私は森ノ宮の事務所を3日間張った。しかし事務所には人がおらず、電気だけがついていた。事務所の中をのぞくと、6畳程度の小さな部屋だった。コピー機、パソコン、机、ロッカーがあるだけで誰もいない。この場所で全戸配布できる量の印刷をしていないことは明らかだった。3日目に事務所の入り口近くまで行ってみると、大柄で坊主頭の男性が背広を着て出てきた。上の階の学習塾の迎えに来た母親とともに、素知らぬフリで遠ざかった。
大阪市役所に、パンフレットの配達証を情報公開した。市役所の全部署に配布したことが分かっていたので、情報公開課から全部署に聞いてもらった。1カ所だけ保存していた部署があり、取り寄せたところ、電話番号が載っていた。電話してみると、赤帽だった。「都構想のパンフレットを配りましたよね?」と聞くと、「配りましたよ」と素直に答えた。「どこに取りに行きましたか?」と聞くと、声のトーンが変わった。「なんでそんなこと聞くんですか?」という。「市役所に配達証がありましたので」とさらに聞くと、「いつも取りに行ってる場所があるので」と言った。「これ以上は話さないように言われてるので」と赤帽は電話を切った。
パンフレットの紙について、飛び込みで印刷業者に聞いた。その業者は、「こんなペラペラの紙、パンフには使わないよ」と、透けて見えそうなページを指でこすった。
登記を取ると、株式会社ウィズの社長は平田勇となっていた。平田勇は神戸のマンションに住んでいた。どれだけ検索をかけても、株式会社ウィズ社長の平田勇は出てこなかった。違う会社の平田勇が何人か検索に引っかかった。株式会社ウィズは従業員が3人で、印刷業を行えるような企業ではなかった。
当時、都構想パンフレットの印刷会社に関する疑惑を新聞で書こうと思っていたが、これ以上の証拠は出てこなかった。影響が大きいと感じたことや、確証がないことを理由にあきらめた。
大阪維新の会は、3度目の都構想にまい進している。今度は副首都構想とセットだという。維新の政策遂行には、大抵「工期が短く」「怪しげな業者が入る」ことが多い。それは万博でも繰り返された。3度目の都構想でも、きっと同じことが起こるだろう。その前に、離党ドミノが収まっていればの話だが。


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