北海道大にアイヌ民族への「敬意」刻む銘板 なぜ今ここに?
学生や観光客が往来する北海道大(札幌市北区)の正門付近に1枚の銘板がある。かつてこの地で暮らしたアイヌ民族への「敬意」が刻まれ、3月に設置された。なぜこのような銘板が大学にあるのだろうか。
「北海道大学所在地の先住民族に対する敬意の表明」
JR札幌駅北側に位置する約1・8平方キロの広大な札幌キャンパス。キャンパスマップの土台部分に設置された銘板には、タイトルが刻まれていた。
黒いパネルに日本語とアイヌ語、英語が並ぶ。
キャンパスを流れる川から17世紀以前のアイヌ民族の生活の痕跡が確認されている▽明治初期にはアイヌ民族が暮らす集落があった▽「開拓」と呼ばれた事業によってアイヌ民族はこの地を離れざるを得なくなった――などの歴史が記されている。
続いて、「アイヌ民族がこの地で長い歴史と文化的なつながりを持ってきたことに深く敬意を表します」と書かれ、大学の使命として「アイヌにルーツを持つ構成員が安心して学び、働ける環境を整えるとともに、学内外のアイヌ民族と大学構成員の共生に向けた取り組みを進めます」とある。
なぜ銘板が大学に
なぜ「敬意」と刻まれたのか。
なぜ大学にこのような銘板があるのか。
北大の担当者によると、設置の構想は2022年からあった。
26年に開学150周年を迎えるにあたり、学内から「これまでのアイヌと大学の関係性や歴史をもう一度見直し、よりよい関係を構築するための取り組みをしたらどうか」という提案があり、具体案の一つとして銘板の設置に向けて動き出した。
北米などでは、先住民族が住んでいた土地を利用する場合、先住民族に対する敬意を正式に表明する「ランド・アクノレッジメント(土地への承認)」という考えが広まりつつある。
北大はこれにもならった形だ。
アイヌ民族側の話も聞くと、アイヌ側も設置を要望していた。
研究目的などで収集・保管されたアイヌ民族の遺骨の返還を求めて活動してきた「平取アイヌ遺骨を考える会」共同代表の木村二三夫さん(77)は、銘板の設置を書簡などで大学に求めてきたという。
「北大のキャンパスがあるのは、サケがたくさん捕れる楽園のような場所だった。そこからアイヌ民族が排除されたという歴史は知られておらず、多くの人に学んでもらいたい」
北大とアイヌ側の考えが一致し、銘板は完成した。
札幌アイヌ協会共同代表の結城幸司さん(62)は「北大開学から150年のほとんどの時間はアイヌについて重きが置かれてこなかったが、北大がある場所にアイヌの生活があったと示されたということは、一つ進んだと思う」と前向きに捉えている。
結城さんは「アイヌ民族は生活のなかで文化を伝承してきたが、あの場所にあったコタン(集落)の喪失とともにアイデンティティーやよりどころを失ってしまった」と話し、こうした歴史を学ぶ重要性も強調した。
ところが、銘板は設置されたものの、これに注目する人が多いとは言えない。
木村さんは「これでは歴史が伝わりきらない」と懸念している。
<記事後半の内容>
・内容のあいまいさに疑問を持つ専門家
・海外の事例との差
・北大の説明
銘板の内容を疑問視
銘板に記載された内容について、謝罪の欠如や責任の所在のあいまいさを指摘する専門家もいる。
北大大学院のジェフリー…
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