出張1400回想定で予算4300万円、京都・文化庁本格稼働もリモート活用に課題

文化庁が本格的に業務を開始し、出勤する職員=15日午前、京都市上京区(渡辺恭晃撮影)

中央省庁の本庁として唯一、本格的な地方移転を果たした文化庁が15日、京都での業務を本格稼働した。「文化首都」を掲げる京都から地方目線での政策立案が期待されている一方、国会対応などもあり、ほぼ半数の部署が東京に残ることになった。2025年大阪・関西万博を見据えた動きも進み、地元の文化財関係者は「メリットがある」と移転を歓迎。事実上の2拠点体制での船出の成否に注目が集まっている。

「移転を機に、伝統と創造で日本を元気にしようという決意のもと、京都からいろいろな発信をしていく」。15日午前、京都市上京区の庁舎で開かれた業務開始式。都倉俊一長官は幹部職員らを前にこう訓示し、新たな文化政策の発信に自信を見せた。

京都で勤務する職員は全体の約7割に当たる約390人で、若手からベテランまで年齢層は幅広い。ただ関係者によると、家族を持つ職員は子供の教育事情などがあり、単身赴任を選ぶ人も多いという。

中央省庁の本格的な地方移転は明治以来初めて。3月に都倉長官らとともに先行して京都での業務を始めた日向(ひなた)信和審議官も手探りで仕事を進める一人だ。「転勤なら前任者がいるが、一からの立ち上げなので物の移動だけでも大掛かり。現在は自宅と職場の往復だけで、京都の街を楽しむ余裕がない」。

新たな動きも始まった。移転に伴い、京都で新設された長官直轄の「食文化」と「文化観光」の推進本部は、2025年大阪・関西万博を見据え日本文化の海外発信などを担う。すでに各都道府県と政令市に向け、特色ある取り組みや体制整備などでの連携を呼びかけた。

文化庁の重要な業務の一つが文化財の保存や活用だ。関西の2府4県には全国の半数以上の国宝が集積する。さっそく京都の寺社関係者からは移転を歓迎する声が上がった。

浄土真宗本願寺派の本山、西本願寺の黒田正宣副執行長は「法要や行事に触れるご縁があれば、地域の様子も含めて普段の寺を見ていただきたい」。真言宗御室派総本山、仁和寺の担当者も「収蔵庫から新たな物が見つかった場合、文化庁が京都にあると、(京都)府市と連動して(早く)対応していただける」と期待する。

京都での業務を本格化させた文化庁だが、国会対応や他省庁との協議があることなどから、ほぼ半数の部署は東京に残ることになった。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応に当たる宗務課も移転対象だが、問題収束まで東京での業務を継続する。事実上の2拠点体制でスタートした形となり、リモートをいかに有効活用できるかが課題になっている。

厳しい検証結果もある。文化庁は昨年2月、京都移転後を想定し、移転対象部署が2週間、東京都内の貸しオフィスで業務を試行。その結果、国会議員への説明や政党会議への参加などが計26回あったが、このうちリモートで対応できたのはわずか3回にとどまった。重要案件を扱う機会が多く、対面を余儀なくされたという。文化庁はこうした結果から東京出張が年間1400回以上に上ると見積もり、令和5年度当初予算に4300万円を計上した。

文化政策に詳しい同志社大の太下義之教授は「(現状では)移転の趣旨は東京一極集中の是正であり、文化政策的な意義は乏しい」などと指摘。その上で新たな文化庁の進路に関し「食をテーマにしたミラノ万博(2015年)で日本館が大人気だったように、日本の食文化は魅力あるコンテンツ。京都に食文化のミュージアムを作れば文化観光の決め手になる」と話した。(田中幸美)

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