なぜ維持できる?一杯「290円」の博多ラーメン 値上げの波に逆らう“はかたや”のこだわり
【福岡市博多区の博多ラーメン はかたや 堅粕店】
豚骨ラーメンはワンコイン。そんな時代はすでに遠いものとなった。高騰する原材料費、光熱費などが重くのしかかり、各店は軒並み値上げする。そんな流れにあえて逆らうのが「博多ラーメン はかたや」である。創業から半世紀にわたって親しまれてきたチェーン店は、一杯290円にこだわる。近年は売り上げを急速に伸ばし、今年に入って既に2店を新規出店するなど福岡都市圏に計11店舗を展開するまでになった。(小川祥平) ■290円という価格にこだわるラーメン【写真】 1976年に誕生した第1号店の堅粕店に向かうと、昼時を過ぎているにもかかわらずほぼ満席だった。券売機で食券を買う。ラーメンと替え玉(100円)を選んでも390円という驚きの安さである。店内はカウンター席のみで、すぐに席へ案内された。麺の硬さを聞かれたので「普通」で注文。すると、わずか2分という早さでラーメンが提供された。
スープはほんのり白濁している。すすってみると豚骨だしの香りが鼻を抜け、奥には熟成臭もあって心地よい。細麺はほどよいコシがあり、つるっとした食感で一気にすすってしまう。替え玉は「カタ」で頼むと、1分もかからずに到着。紅しょうが、ニンニクなどで味変して平らげる。注文から完食までおよそ7分だった。
まさに早い、うまい、安いの三拍子。この値段でこの満足感はなかなかない。「値段上げてもいいよと言ってくれる方、ありがとうと感謝してくださる方もいます」と、店長の山中博文さん(36)は話す。 □ □ はかたやを運営する「昭和食品工業」は、現社長の澄川誠さん(65)の父、正夫さんが69年に創業した。当初はうどんなどのチェーン事業を手がけ、その流れでラーメンも始めたという。先代から引き継いだ澄川社長は「博多ラーメン 膳」「釜揚げうどん 小麦冶」「生粉蕎麦 玄」など新ブランドを立ち上げた。どれも低価格、チェーン展開にこだわっている。
その根底にあるのは「低価格=社会貢献」という考えである。ランチが千円を超えることも珍しくなくなった今、はかたやの客単価は450円ほどに抑えられている。「その差額でほかのものを買えるし、好きな行動ができる。消費者の豊かさにつながる社会貢献であり、チェーンゆえにその規模を大きくできるんです」 では、なぜ290円を維持できるのか? 理由の一つが替え玉にある。約6割の客が注文し、自社製麺のため利益率が高い。ただ、それだけでは十分ではない。メニューは絞り込み、作業をシンプルにする。回転率が高まれば、客が増え、生産性も上がる。「他店が値上げすればうちが売れる。290円であることも宣伝となるので宣伝費も要りません」と言う。