哲我倶楽部──哲学をLOVEする
ここは、暦類市の愛島高校の哲我倶楽部という部室である。哲学をフィロソフィー、すなわち、知を愛するものたちの集いである。潤人は、哲我倶楽部の副部長であって、飯沼は、哲我倶楽部の部長に三年生で地位に就いた。君島という毎日哲学書を読んでいる生徒もいたことは、潤人も飯沼もその労を讃えていた。潤人は、部室で哲学書を読み耽る君島に、何か、誉め言葉でもよい、言葉をかけてあげたかったが、何も言葉は出なかった。それでいい。何も話しかけなくていい。彼は、独りで読書をしていたいのだから。このように思考は廻(めぐ)ったが、飯沼にアドバイスしてもらおうとも考えなかった。飯沼も、時々は、『意志と表象としての世界』を齧っていた。潤人は、簡潔である。『純理と実践理と判断力批判』を読んだだけであった。飯沼は、「私の表象が世界の表象」という独断的な考え方に違和感を覚えた。同じく、君島もその点について違和感を覚えていた。
智慧という女性の生徒は、君島の読んでいる文を脇から覗き込んだ。「私の表象が世界の表象」という文に彼女も違和感があったらしく、「君島くん、この本は嘘つきだ」と呟いた。君島は、「そうかもしれない。わざと嘘を書いたんだろう」と言った。飯沼は、「君島、俺もその本持ってるよ」と君島を見た。君島は、「部長もですか。私はこの本が人気なのかと思ったけれど、そんなにいい本ではないです」と笑った。飯沼は、そうか、と笑った。


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