打撃を深く追求

大学入学後、1年生からリーグ戦に出場しますが、規定打席に到達できず、本塁打は1本も打てませんでした。金属バットと木製バットとのギャップに苦しんでいた当時を、正木選手はこう振り返ります。

「大学1年の終わりに、木製バットは芯に当たれば飛んでいくことに気づいて、そこで力みがなくなりました。金属から木に替わることで力んでしまう人が多いんですけど、芯に当たれば飛んでいくということを知って自信になりました」


慶応義塾大時代の正木智也

その言葉通り、2年春には打率.324、2本塁打、6打点の活躍でレギュラーを掴み取ります。その後は安定して実績を重ね、3年秋までに合計6本塁打を記録し、ドラフト上位候補として注目されるようになりました。筆者はそのシーズンを終えた2020年12月に取材を行いました。

その際に見た打撃練習では、ただ飛ばすだけではなく、脱力した状態から逆方向に飛ばすなど、工夫を凝らしていました。正木選手は「トップに入った動作で力が入りすぎないように、インパクトの部分で力を入れることを意識しています」と、打撃練習のテーマを語りました。さらにフリー打撃を終えると雨天練習場でも打撃練習をしていましたが、バットをこするようにしながら打っている姿が印象的でした。この打撃について聞くと、こう答えてくれました。

「インサイドアウトで打つためです。正面のものを右方向に意識して打ち返すことで、インサイドアウトで振ることを意識づけています」

一つの練習に対してそれぞれ目的を持ち、工夫しながら打つ日々を積み重ねてきたからこそ、正木選手は実績を重ねられているのだと実感しました。この取材の際に大卒でのプロ入りを宣言した正木選手は、4年目のシーズンには春秋で計8本塁打を打つことを目標として語ってくれました。

そして4年春にはリーグ戦で見事に4本塁打を放ち、優勝に貢献。さらに大学選手権でも2本塁打を記録してチームを優勝に導き、最優秀選手賞を受賞しました。広角に本塁打を打ち分ける活躍を見ると、あの冬の取り組みが実ったのだと思います。

最終学年での活躍が評価され、2021年のドラフトではソフトバンクから2位指名を受けます。

プロ1年目から35試合で3本塁打を放ちますが、なかなか一軍に定着できずに苦しみます。チームが日本一となった昨年(2025年)は17試合で2本塁打、8打点にとどまり、苦しいシーズンとなりました。

しかし、5年目の今シーズン(2026年)は5月から一軍に昇格すると、5月は56打数20安打、打率.357、3本塁打、10打点と高打率をマーク。6月は18試合に出場して打率こそ.257なものの、5本塁打、12打点としっかりと成績を積み上げ、24日のオリックス戦では打球速度188.5キロを計測する8号本塁打を披露しました。この数値はMLBの強打者を上回る速度であり、正木選手のポテンシャルの高さを示しています。

今シーズンの打席を見ると、隙のない打者に成長しています。今年で正木選手は27歳を迎えますが、彼ほどの実力派であっても一軍で継続的に活躍するまでにこれほどの時間がかかるという事実に、プロの舞台のレベルの高さが分かります。

ようやくブレイクの時が到来した正木選手。チームはまだ69試合を消化したところで、残り74試合あります。ここから打席に立ち続け、規定打席に到達することができるでしょうか。このまま3割の打率をキープしたまま、20本塁打以上を達成することを期待しています。

1 2