もう一人の女の子
新藤ゆず shinndou yuzu
高校二年生。兄は有名選手。
清水誠一 simizu seiichi
高校二年生。ゆずの幼馴染。
承和春己 soga haruki
高校三年生。先輩。
千草百合奈 chigusa yurina
高校二年生。留年しているので一個上。
君とは違う。
無彩病ですと告げられた時、私にはいまいち実感が沸かなかった。
それなりに生きてきたつもりだ。それなりに友人を作って、それなりの成績をとって、それなりに恋人も作って。私は多分平凡でどこにでもいる女子高生だった。
その日までは。
無彩病。それを彼氏に言った。けれど、信じてはもらえなかった。
『今度は何の冗談?』
『冗談じゃないよ、こんな事で嘘ついてどうするの』
『お前今まで俺に心配されたくて何回嘘ついた、百合奈』
目の前の彼、承和春己はそう言って冷たく突き放した。
自分でも自覚しているけれど、私はかなり面倒な人間で。淡白な彼の態度がいつも不安で仕方がなくて、嘘をついては彼を困らせていた。それが小さなものから大きなものまで。
酷い人間だったと思う。今思い返せば。本当は何よりも誰よりも大切にしてくれている事を知っていたはずなのに、いつだって私は彼を試していた。その付けがこれだ。ほら吹きの末路。
大好きだった。本当に。一見軽そうに見えて、けれど誰よりも真面目でしっかり者。男女問わず好かれて愛される、私の自慢の彼氏。だからこそ、不安だった。彼は皆の人気者だから。私なんかよりもずっといい人に、いつか取られてしまうのではないかと。怖かったから、嘘をついて繋ぎ止めた。
けれど、離された手はもう、掴む事も許されなかった。
無彩病になって、治療に専念するために入院して。目まぐるしい日々を経て、ようやく治ったはずなのに。それなのに私の目は半分以上が灰色だった。何のために生きているのだろう。何のためにここまで頑張ったのだろう。命があるだけ良かったと、後遺症は少しずつ緩和されると、皆は言う。でも、そんな事どうだってよかった。
命があるだけ良かったって何だろう。私は別に、生きたいと願っていたわけではない。そりゃあ生きていたいけれど、ここまでもがいてまでこの世に生を残そうとは思っていなかった。
結局、一年留年してしまった私に待ち構えていたのは、悲しい現実だった。
校門の前、立っている彼を、声をかけようとしてくる彼を無視し続けた。一度離された手を、もう一度掴むなんてしたくなかったから。私を信じなかった彼が、気に食わなかった。悪いのは自分だったのに。
再三無視し続けて、いつしか彼は私を諦めた。これで良かったのだと思っていた。けれど、どうだろう。彼が嬉しそうに声をかけるあの子が気に食わなくなった。
規定違反の栗毛、地毛だと言うけれどきっと嘘。明るくて可愛くて、自分とは正反対の女の子。彼の手を鬱陶しいと払う女の子。それでも彼は楽しそうに彼女に話しかける。
何それ何それ何それ。結局自分はただの当て馬だったのか。結局、何も報われないのか。これが末路か。そんなの嫌に決まっている。
だから、手を出した。
彼女に近づいて、彼女の幼馴染を奪ってやろうと思った。同じ痛みを。案の定、彼女は私を少しずつ避けるようになった。けれど、彼女の幼馴染は、私を一切見ようともしない。何で、どうして、どうしてあんな子が。
嫉妬と絶望に落ちた最低な私は、誰かの幸せを奪う振りをして、自分の首を絞めていたのだ。