6月23日、沖縄。慰霊の日の式典会場で、奥間政則さんはこの数年、総理大臣に対して声を上げ続けている。その背景には「ヤジ」と切り捨てることはできない切実な思いがあった。
なぜ慰霊の日のあの場で声をあげるのか
なぜ慰霊の日のあの場で声を上げるのかというと、日本の総理に対して、うちなーんちゅとして直接声を届けられる場であり、また、大人しいうちなーんちゅや、その他の参列者にも声を届けられる場は、あの式典会場しかないからです。
右寄りの人たち、議員を含め、普段は耳を傾けようとしない人たちにも、あの場では聞かざるを得ない状況が生まれます。
それに、慰霊の日は全国に中継されます。あとから配信されるニュースでは、抗議の声は編集されて消されてしまうことがあります。しかし実況中継であれば、編集することができず、会場の抗議の声がダイレクトに全国へ届きます。
私は2023年には会場の外から声を上げました。しかし、2024年から会場の中に入って声を上げたとき、テントの中では声が反響し、自分でも驚くほど響くことを知りました。同時に、会場の外で声を上げている人たちの声は、会場内にはほとんど聞こえないことも知りました。
基地問題に関わる人たちは、集会やシンポジウムなどをいろいろと行っています。しかし、結局そこに集まるのは見慣れた人たちばかりです。仲間内だけで声を出し合い、仲間内だけで満足してしまっている。だから、一般の人たちにはなかなか広がっていかないのだと思います。
私は「活動家」と扱われることは、本当は嫌です。ただ、世間一般からそう見られても仕方がない部分はあると思っています。
慰霊の日は静粛な場だから声を上げてはいけない、という批判があります。基地に反対する側の人たちの中にも、そう言う人がいます。
しかし、平和を唱えながら、実際には軍事化を進めている日本の総理の話を、沖縄の人たちが静かに聞いている。そのような場面だけが全国や世界に発信されてしまえば、「沖縄の人たちは軍事化を認めている」という間違ったイメージが浸透してしまいます。
だからこそ、「そうではないんだ」と声を上げることが大事だと思っています。
それと、自分の訴えはヤジではない、ということを強調したいです。
ヤジという言葉には、相手の発言を妨害するために誹謗中傷する、というようなイメージがあります。式典が始まる前にも、「静粛な場なのでヤジは禁止です」というアナウンスがありました。
だから、私の第一声は、
「これはヤジではない。うちなーちゅとしての怒りの声だ」
でした。そして、
「武器を輸出する人が平和を唱える資格はない」
とも叫びました。
他にもいろいろと声を上げましたが、私の訴えは単なる妨害ではありません。
沖縄の現実と怒りを伝えるための声です。
もうひとつの背景、ハンセン病被害者として
もうひとつ、ネットで自分のコメントを発信するのであれば、ハンセン病のことにも触れてほしいと思っています。
6月22日には毎年、ハンセン病に関連して「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」の式典が行われています。ハンセン病被害者の方々は、毎年、総理の出席を求めています。しかし、これまで一度も参加したことがありません。
「来てほしい」と求められているハンセン病の追悼式には来ない。一方で、「来るな」という声がある沖縄の慰霊の日には、あえて参加する。私はそのことが許せないのです。
基地問題だけに関わっている人たちは、このギャップを知らない人も少なくありません。
基地問題だけを訴えている人たちと自分が違うのは、私はハンセン病問題における差別についても訴えている、ということです。
私の闘いの原点には、基地問題とハンセン病問題という、二つの国策への怒りがあります。だからこそ、私は毅然と声を上げているのです。
元ハンセン病患者の両親をもつ奥間さんの背景は、こちらの映像作品になっています。
「二つの国策差別に翻弄された父母への想い 奥間政則 ~ハンセン病差別・琉球弧の軍事化拡大~」予告編
世界に拡散された声
今年、2026年は奥間さんだけではなく、10名近い参加者が式典で抗議の声を上げた。またその様子は全国メディアだけではなく、SNSを通して海外からも大きな注目を集めた。
「石破の時より目に見えてひどくなってるんだから、
人数が増えるのは当然だと思います。
世界中に拡散され、沖縄のことを世界に知ってもらう機会になりました。
日本は平和な国と思われているが、
別の側面があることを世界の人に気づいてほしいです。」
声をあげる人には、それぞれの切実な理由がある。
その声を切り捨てた時、私たちの社会はどこへ向かうのだろうか。
私は沖縄に住んで10年になるが、
こちらに住むまでこうした沖縄の人の切実な声を知らなかった。
奥間さんの抗議の声は、高市総理に向けられると同時に、
問題を沖縄に押し付け、見て見ぬ振りをしてきた私たち「本土」の人間に向けられている。
その言葉と、私たちは真摯に向き合わなければならない。
猪股東吾
ᴊᴏᴜʀɴᴀʟɪsᴛ/ʀᴀᴘᴘᴇʀ ᴛᴏɢᴏ ɪɴᴏᴍᴀᴛᴀ ᴏᴏɢᴇsᴀᴛᴀʀᴏ
1982東京生まれ
政治界隈の取材して10年目
沖縄と「本土」の関係性を問うドキュメンタリ映画を公開予定
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