ありふれた風景に潜む白人至上主義者の団体、活動拠点の内側に迫る 米テネシー州<下>

覆面姿の「パトリオット・フロント」メンバーの前に立つリーダーのトーマス・ルソー氏/Jim Urquhart/Reuters

覆面姿の「パトリオット・フロント」メンバーの前に立つリーダーのトーマス・ルソー氏/Jim Urquhart/Reuters

テネシー州テリコ・プレーンズ(CNN) 米テネシー州東部の山間地域に拠点を設置し活動する、白人米国人の国家主義的団体「パトリオット・フロント」。団体が展開するブランド戦略の大半は共同体の建設を軸に展開され、不満を抱えた少年や若者に狙いを定めている。「我々が作り上げるこうした共同体の空間において極めて重要なのは、家族のいない若者たちに援助を提供することだ」。パトリオット・フロントを率いるトーマス・ルソー氏は極右のポッドキャスト番組司会者、ジェイク・シールズ氏との2024年のインタビューでそう語った。

今年7月の洪水でテキサス州中部が壊滅的な被害を受けた後、パトリオット・フロントのメンバーは現地入りし、人道支援を行ったがそこには落とし穴があった。支援を受けられるのは白人だけだったのだ。

「我々は他の全ての人々をほぼ排除する形で、自国民を優先する。実質的に他者は排除される」。ルソー氏は支援の取り組みについて、シールズ氏にそう説明した。

団体には敵が複数いる。ルソー氏は支配的な、こだわりの強いリーダーとして知られ、世論を異常に気にする。またメンバーの身体的な強さについても妥協を許さない。「組織に加入時は、不摂生な食事や体形の崩れは問題にならない。ろくに本を読まず、物を知っていなくても構わない。しかし、いつまでもそのままでいることはできない」。パトリック・ベットデービッド氏が司会を務める番組で、ルソー氏はそう述べていた。

そうした高圧的な姿勢は多くのメンバーの離脱を招く。彼らはより過激なネオナチの領域に移ることが多い。パトリオット・フロントは連邦機関職員の浸透工作を受けているという根強い噂(うわさ)もあり、団体のブランドを傷つけている。またSNSテレグラムを利用するある極右のグループは、ルソー氏と団体を揶揄(やゆ)する活動を行っており、170人の登録者を抱える。これはパトリオット・フロントに所属するメンバーの推定人数に迫る規模だ。

「一部の活動家は、パトリオット・フロントが全てを統括するのを望まない」と、白人の国家主義団体を専門に扱う「南部貧困法律センター(SPLC)」の研究アナリスト、ジェフ・ティシャウザー氏は指摘する。「大型量販店が町にやって来たら、買い物はそこでするしかなくなる」

しかし前述のテネシー州の拠点を構えることで、パトリオット・フロントは重要な白人国家主義者の集まりから直接リクルートが可能な状況になっている。総合格闘技(MMA)のトレーニングがそうした場を提供する。


炎の明かりの中で総合格闘技の技を掛け合う「パトリオット・フロント」のメンバーたち(PatriaGloria/Telegram)

健康増進系のクラブとして知られる複数のMMA団体は、白人国家主義の組織と密接な関係にある。実際複数のクラブがパトリオット・フロントの主要メンバー、イアン・エリオット氏の管理する施設を訪れ、格闘技大会を開催している。同氏は当該の施設でMMAのアカデミーを立ち上げた。トレーニングは、ジムとして使用する巨大な倉庫の中で行っている。倉庫の内部から投稿された画像と動画は、流血を伴うグローブ無しのスパーリングの様子を捉えている。そこに登場する人々のほとんどは、顔にぼかしが入っている。

「米国内の健康増進系クラブの多くは、実際の所パトリオット・フロントのフロント団体だ」と、ティシャウザー氏はCNNに明かす。「彼らのプライベートな空間と接続するまで、そうした団体が掲げる白人国家主義的な信条はなかなか把握できない」

自身のMMA団体に関する今年の投稿で、エリオット氏はこう書いている。「最初のアカデミーを立ち上げる間でさえも、我々はしばしば火と松明(たいまつ)を掲げて集い、乱闘を繰り広げた。アカデミーの骨組みに野蛮さを染みわたらせた」。同氏は4月に別のMMAイベントを宣伝。「トレーニングと大会の後には盛大な宴会が開かれる」と約束した。

施設のあるテネシー州テリコ・プレーンズについては「アパラチア山脈の奥地に位置し、現代文明から隔絶している」と説明。安全な土地であり、自分たちの仲間が所有する物件であることを確認した。

「これらの山々の歴史は古く、暴力と縁遠い場所などでは全くない。この機会を逃すな」(エリオット氏)

施設を管理するのはエリオット氏だが、所有者は別だ。不動産の権利書によると、土地は21年にリュドミラ・カルペッパー氏が購入した。同氏は悪名高いネオナチの夫婦の一人で、テネシー州の過激主義者界隈(かいわい)で特別な影響力を持つ。

夫のブライアン・カルペッパー氏は、「国家社会主義運動」のテネシー州支部を率いる。同団体はかつて、米国で最も支配的なネオナチグループだった。夫婦共に、ナチス式の敬礼を仲間に向かって行う様子を写真に撮られている。15年のインタビューで、ブライアン氏はサウスカロライナ州チャールストンの教会を訪れた黒人9人を射殺したネオナチのディラン・ルーフ死刑囚について、「正当な論点」を有していると発言。 またインタビュアーに「自分は人種差別主義者だ。間違いなくそうだ」と語っていた。

またジャーナリストのアンナ・マーラン氏は著書「Republic of Lies」の中で、カルペッパー氏の言葉を引用。同氏から「ユダヤ人は決して眠らない。24時間365日、1年中働いて我々を根絶やしにしようとする」と告げられたと書いている。


多くの旗が林立する「パトリオット・フロント」の行進風景(Getty Images)

リュドミラ氏のネオナチ運動への公的な関与はそこまで目立つものではないが、活動家のグループはネオナチの集会に参加しているとみられる同氏の写真を複数公表している。それらは夫と並んで写っていることが多い。

しかしこの数カ月、ブライアン氏がネオナチの会合に姿を見せる機会が減ったことから、過激主義者界隈では本人の体調不良を巡る臆測が広がった。そして先の10月、同氏はテリコ・プレーンズの自宅で息を引き取った。バージニア州の生家近くの葬儀場が公表した追悼記事で明らかになった。

カルペッパー氏の死去を受けて、施設の将来は不確かなものとなった。死の直前、エリオット氏のジムが入っていた倉庫の建物は売りに出されていた。不動産物件の一覧によると、パトリオット・フロントは当該の建物を残りの施設から切り離すつもりだ。それで面積50ヘクタール中、約47ヘクタールを維持する考えとみられる。

そうした倉庫の売却が、団体の計画するMMA大会等のイベントにどう影響するのかは不明だ。CNNはエリオット氏に、施設に関する考えを尋ねたが、返答はなかった。CNNはパトリオット・フロントに対しても、施設を使用し続けるつもりがあるのかどうか質問している。

テネシー州に暮らす近隣住民の多くは、パトリオット・フロントに出て行ってもらいたいと思っている。

CNNの取材に応じた近隣住民は、「家には小さな女の子がいる」「(団体は)女性が気に入らないと言うが、何か憎まれることをあの子がしたのか?」「私が一体何をしたのか? 黒人に一体何をされたというのか?」と疑問を呈した。

さらに「どうしてこの場所なのか?」と問いかけた。

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