太平洋に浮かぶ東京・八丈島で進むDX 支えるのはメガバンク
東京都心から南に約300キロ離れた八丈島(東京都八丈町)が、デジタル技術を活用した地域おこしを進めている。支援するのはみずほ銀行。メガバンクと離島という異色の組み合わせに興味をひかれ、現地を訪ねた。
観光の目玉を常時監視
「ザトウクジラを探してみませんか。運が良ければすぐ見られるかもしれませんよ」。2月22日、八丈町地域おこし協力隊の新井誠人さんに案内され、島の南東にある石積ケ鼻(いしづみがはな)に足を運んだ。断崖絶壁から見渡す限りの海原が広がっていた。
町によると、八丈島周辺で冬場にザトウクジラの群れが回遊するようになったのは2015年ごろから。東京海洋大学などとの合同調査では16年から22年にかけて年間205~549頭が確認されている。この日も海面にクジラが現れ、真っ青な空に向かって勢いよく潮を吹き上げた。
クジラが頻繁に現れる1~2月は島にとって観光のオフシーズンだった。山越整・副町長は「新たな観光資源になる」と期待をかける。22年からは船上ホエールウオッチングも始まり、クジラを長年の課題だった冬場の観光客誘致につなげたい考えだ。
ただ、あくまで野生動物なだけに、いつ、どこに現れるのかは気まぐれだ。せっかく島まで来たのに肝心のクジラが見られない事態が続けば、観光客の心証も悪くなる。出現情報をリアルタイムで集めるには、どうすればいいか。注目したのが防災用の定点カメラだ。
島内には南海トラフ地震などに備え、東西南北の6カ所に海面状況を監視する定点カメラが設置されている。その映像を人工知能(AI)が常時、解析し、クジラが現れたら観光協会のホームページで発信する仕組みを検討しているという。
このアイデアを提案したのが、みずほ銀。AIの開発会社なども紹介し、実証実験にも加わっている。離島にとって津波対策は喫緊の課題ではあるが、定点カメラは運用コストがかさむ。それを観光にも活用できれば、費用対効果は向上する。山越副町長は「(みずほ銀には)町職員にないアイデアがあり、いろいろな会社も紹介してくれる。課題解決が最短距離で実現できた」と話す。
島内唯一の都市銀
八丈島とみずほ銀。一見、接点があまりないようにも感じるが、実は深いつながりがある…
東京都心から南に約300キロ離れた八丈島。海岸からシンボルの八丈富士を望む=東京都八丈町で2023年2月22日午前11時27分、辻本知大撮影