山本由伸、7回10奪三振無失点で“パドレス対策”完成形
日本時間7月5日、ドジャースの山本由伸は本拠地ドジャースタジアムでのパドレス戦に先発し、7回100球、3安打無失点、2四球、10奪三振。ドジャースは3-0で勝利し、山本は今季9勝目を挙げた。強打のパドレス打線を相手に、今季最多タイの10奪三振でゼロ封。大谷翔平が右上腕二頭筋の違和感でベンチスタートとなった一戦で、山本が完全に試合の主役になった。
これは“好投”ではなく地区ライバルへの回答だった
この登板の価値は、単に7回無失点だったことだけではない。相手は同地区のパドレス。しかも山本は今季、パドレスとすでに複数回対戦していた。MLB公式は試合前、山本が今季パドレス相手に13回3失点と抑えており、今回が今季3度目の対戦になると伝えていた。つまり相手打線にはデータも映像も十分ある。それでも7回3安打無失点、10奪三振。これは「初見で通用した」ではなく、「研究されてもなお抑えた」登板だった。
特に大きかったのは、前回まで本人が課題にしていたスプリットの感覚だ。MLB公式によれば、山本は直近7先発で47回2/3を投げ、防御率1.70と好調だった一方、本人はスプリットの感覚について「まだ探っている」と話していた。そんな中で、パドレス相手に10奪三振。スプリットだけに頼らず、直球、カーブ、カット系を織り交ぜながら、最後は決め球で空振りを取る形が戻ってきた。
100球目で10個目の三振。終わり方がエースだった
この日の象徴は、7回最後の打者ジャクソン・メリルへの勝負だ。True Blue LAによれば、山本は100球目でこの日10個目の三振を奪い、7回無失点を締めた。しかも、その打席は2ストライク2ボールからピッチクロック違反でフルカウントになった後の三振だった。流れとしては嫌な場面だが、そこを押し切った。
ここが山本の強さだ。球数が100に近づいても、最後の一球で質を落とさない。7回を投げ切るだけなら、ゴロやフライでもよかった。しかし、相手の中軸級を三振で終わらせたことで、パドレス打線に「今日は最後まで崩せなかった」という印象を残した。
走者を出しても得点圏を作らせなかった
山本は完全無欠の無走者投球ではなかった。3安打、2四球で5人の走者を出している。ただ、True Blue LAは、山本が許した走者5人のうち、得点圏で打席に入ったケースは1度だけだったと整理している。つまり、走者を出しても連打にさせず、進塁を最小限に抑えた。
これは非常に重要だ。パドレスのような打線は、1本の長打で一気に試合を動かせる。山本は走者を背負っても、そこから盗塁、進塁打、長打という流れを作らせなかった。7回10奪三振という派手な数字の裏に、走者管理のうまさもあった。
3回の先制点で十分に見えたほど山本が支配していた
ドジャース打線は3回、ダルトン・ラッシングの四球とアレックス・フリーランドの安打からチャンスを作り、暴投で走者を進めた後、アンディ・パヘスの左前適時打で先制した。得点はわずか1点だったが、その時点で試合の空気はかなりドジャース側へ傾いた。山本がそれほど安定していたからだ。
6回にはフレディ・フリーマンが15号ソロで追加点。8回にもフリーマンが中前適時打を放ち、最終的に3-0。大量援護ではないが、山本の投球なら十分だった。True Blue LAも、ドジャースが3点で十分だったのは、パドレス打線が山本にまったく答えを出せなかったからだと評している。
オールスター選出直後にふさわしい内容
この日は、山本の2026年オールスター選出も伝えられたタイミングだった。MLB公式の選手ページでは、山本は2026年のナ・リーグ・オールスターに名を連ねている。そうした注目の中で、地区ライバル相手に7回無失点10奪三振。これは“選ばれた投手”として非常に説得力のある内容だった。
シーズン成績もかなり強い。MLB公式では、2026年の山本は16登板、104回2/3、防御率2.49、100奪三振、WHIP0.88。ナ・リーグでは防御率7位、WHIP2位、被打率.190が2位に表示されている。勝利数や防御率だけでなく、走者を出さない能力でもリーグ上位にいる。
直近7登板の安定感はサイ・ヤング賞級
6月以降の山本は、明らかに一段上がっている。MLB公式のスプリットでは、直近7試合で5勝1敗、防御率1.51、47回2/3、44奪三振、WHIP0.78。これは短期的にはサイ・ヤング賞級の内容だ。
一時期はカッターやフォーシームの被長打が課題になり、5月中旬には3被弾で崩れる試合もあった。しかし、そこから山本は明確に修正した。完全試合目前まで行ったホワイトソックス戦、8回1失点のエンゼルス戦、そして今回のパドレス戦。今の山本は、好調時だけ抑える投手ではなく、相手と状況に合わせて勝ち方を選べる投手になっている。
この日の投球で見えた三つの強み
第一に、奪三振能力だ。7回10奪三振は、相手にボールを前へ飛ばさせない支配力を示した。しかも100球目で10個目を取ったように、終盤でも決め球の質が落ちにくい。
第二に、走者管理だ。5人を出塁させながら、得点圏での打席をほぼ作らせなかった。これはWHIP0.88というシーズン指標にもつながる山本の大きな武器である。
第三に、同じ相手への再現性だ。パドレスは今季すでに山本を見ている。それでも崩せなかった。これはポストシーズンでも大きな意味を持つ。短期決戦では同じ相手と何度も当たる。山本は、その状況でも投球の形を変えながら抑えられる可能性を示した。
課題は“完投級”への最後の一段
この日の100球7回は素晴らしい。ただ、山本がサイ・ヤング賞争い、あるいはポストシーズンの絶対的エースとしてさらに評価を上げるには、8回まで投げる登板をもう少し増やしたい。7回無失点で十分だが、ドジャースのブルペン運用を考えると、100球前後で8回まで見える日が増えれば、チーム全体の価値はさらに上がる。
もっとも、これはかなり高いレベルの課題である。7回3安打無失点10奪三振の投手に「もう1回」と言うのは贅沢だ。ただ、山本はその領域にいる。だからこそ、次の評価軸は“好投”ではなく“どこまで長く支配できるか”になる。
現在時点の分析
日本時間7月5日の山本由伸は、今季ベスト級の投球だった。7回3安打無失点、2四球10奪三振。100球目で10個目の三振を奪い、地区ライバルのパドレスを封じた。ドジャースは3-0で勝利し、山本は9勝目。オールスター選出にふさわしいどころか、サイ・ヤング賞候補としても再び強い材料を積み上げた。
今後のポイントは三つある。第一に、スプリットの感覚をさらに安定させること。第二に、同地区の強打線相手にこの再現性を維持すること。第三に、100球前後で8回まで投げる試合を増やすことだ。
山本はもう「ドジャースの信頼できる先発」ではない。今の彼は、相手打線が何度見ても攻略し切れないエースである。7月5日のパドレス戦は、その評価をかなり強く裏づける一戦だった。