「授業はコンサートのようなもの」 SAPIX講師、指導のコツ

サピックス 溝端宏光
サピックス 溝端宏光
相手の反応によって、進行が変わる授業はコンサートのようなものという(写真はイメージ)=ゲッティ
相手の反応によって、進行が変わる授業はコンサートのようなものという(写真はイメージ)=ゲッティ

 皆様こんにちは。SAPIX小学部の溝端です。

 前回から引き続き、私自身が算数の授業をする際に大事にしていることについて触れていきたいと思います。

 前回のコラムの最後で、

 「算数の講師にとって、論理的に正しい説明をすることは最低条件といえます。しかし、私は『論理的に正しい説明』と『わかりやすい説明』はイコールではないと考えています」

 と述べました。

 では、「わかりやすい説明」をするために大事なことは何でしょうか。

 私は二つのポイントがあると考えています。

相手がイメージしやすい言葉を用いる

子どもたちがイメージしやすい説明とは?(写真はイメージ)=ゲッティ
子どもたちがイメージしやすい説明とは?(写真はイメージ)=ゲッティ

 一つ目は、相手がイメージしやすい言葉を用いることです。

 例えば、「1から100までの整数のうち、3で割っても7で割っても割り切れない数は何個ありますか」という問題では、以下のように解いていきます。

 1から100までの整数のうち

 3で割り切れる数は、100÷3=33あまり1 より33個

 7で割り切れる数は、100÷7=14あまり2 より14個

 あります。

 また、3で割っても7で割っても割り切れる数、つまり21で割り切れる数は

 100÷21=4あまり16 より4個あります。

 <A>21で割り切れる数は、3で割り切れる数のかたまり(数学的には「集合」と言います)の中にも、7で割り切れる数のかたまりの中にも含まれるため、先ほど求めた33個と14個を単純に足して33+14=47(個)としてしまうと、21で割り切れる数である4個は2度数えてしまっており重複することになります。そのため、3または7で割り切れる数の個数は、正しくは47-4=43(個)とわかります。

 このことから、3で割っても7で割っても割り切れない数は100-43=57(個)あることがわかります。

 文章にすると上記のようになるのですが、授業で説明する際には、上の<A>の部分は「21で割り切れる数はダブるから、ダブりの4個を引く」と言っています。

 「ダブる」は正しい日本語ではないのですが、正しく表現しようとするとどうしても説明が長くなりますし、また「重複を考慮して計算する」という堅苦しい表現よりも「ダブりを引く」という表現の方が子どもたちにはイメージが伝わりやすいので、このようにしています。

聞き手の印象に残るように

授業をする溝端宏光さん=SAPIX提供
授業をする溝端宏光さん=SAPIX提供

 二つ目は聞き手の印象に残るようにすることです。

 変な言い方ですが、私は授業をコンサートだと思っています。その日扱う題材、つまり演目は決まっているわけですが、その場その場でのお客様の反応により、全く同じ進行にはならないわけです。そして、コンサートでは、正しく歌うことも大事ですが、聞き手の印象に残るものであることがより大事になります。それは授業でも同じです。

 丁寧に説明しようと思うと、ゆっくりと話すことが多くなりがちですが、ずっと一律のペースだと聞いている側は飽きてしまいます。

 全てのことを均等に話すのではなく、相手が理解しにくい部分は丁寧に話し、一方で多くの人が理解しやすい部分については簡単な確認で済ませるというように強弱をつけ、話すスピードや抑揚などの調節を適宜行うことが、わかりやすい話をすることにつながります。

 さらに、同じ内容を説明する際にはいつでも同じトーン、同じ口調で話すことも意識しています。これは、相手の頭の中に固定されたイメージとして残るようにという意図です。私自身、学生時代に特徴ある先生の説明を口調ごと記憶していましたが、それと同じことを子どもたちにやってもらえたらと考えています。

聞き手の印象に残るように説明するには、どうしたらいいのか=SAPIX提供
聞き手の印象に残るように説明するには、どうしたらいいのか=SAPIX提供

 また、一つの授業の中で盛り上がりの部分を作ることも意識しています。授業の中で伏線を張っていき、授業の前半でやったことが後半で役立つようにしてあげると、「なるほど!」となり、そのことに気づいた子には自信を持ってもらえますし、気づかなかった子にとっても知的好奇心を刺激される良い経験になります。

子どもをよく観察すること

 これらは、一朝一夕にできるようになるものではなく、講師としての指導経験がものを言います。しかし、長く指導をしていれば誰でも身につけられるものではありません。

 大事なことは、相手をよく観察することです。

 どのような言い方をすると相手に響きやすいのか、相手は何がわかっていてどの部分でつまずいているのか、そしてどんな伝え方をすると相手の印象に残りやすいのか。

 多くの子を観察し、その結果を蓄積していくことが、講師としての技術を磨くことにつながります。逆に言えば、この観察を怠ってしまうと指導経験が長くてもスキルは向上しません。

子どもの特性に合った導き方が大切という(写真はイメージ)=ゲッティ
子どもの特性に合った導き方が大切という(写真はイメージ)=ゲッティ

 今回のコラムの内容は、一見すると、保護者の方へのアドバイスというよりも同業者に向けたアドバイスのようになってしまっていますが、「相手をよく観察すること」は、実は保護者の方にも求められるスキルです。

 お子さまの性格や特性は十人十色です。わが子に合うやり方を模索していただくためには、お子さまをよく観察することが大切です。

 プロである塾の講師ですら、何年たってもこれを続けています。

 ご家庭において、わが子との時間を大事にしていただき、お子さまの特性に合った接し方、導き方をしていただけたらと思います。(SAPIX小学部・事業本部長、溝端宏光)

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