旧動燃の差別是正訴訟、最高裁は上告不受理決定 「原子力機構は差別認め真摯な謝罪を」
稲垣美穂子・フリーランスライター|2026年6月25日8:25PM
元職員への思想・信条を理由とした差別を巡る動燃差別是正訴訟の上告不受理決定が6月3日に最高裁から出た。
同訴訟は2015年7月、旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」、現在は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、以下「機構」)の元職員4人(17年3月に追加2人)が提訴。差別的人事処遇で昇級・昇格を抑制され、同期同学歴の職員に比べて退職時までに約3000万円の賃金格差が生じたほか、結婚式妨害などもされたとして機構に損害賠償を求めたものだ。(※)
同訴訟では2024年3月に水戸地裁が判決で差別を全面的に認めたものの、原告らは在職中の2005年頃までには差別による損害と加害を認識し、もっと早く訴えることができたと推認。結果、損害賠償の範囲を「提訴前の3年間」だけに限定し、機構に対して原告5人に計約4700万円の賠償を支払うよう命令(退職が早かった原告1人の請求については消滅時効を理由に棄却)した。昨年3月25日の東京高裁判決もこれにならい、機構は上告しなかったが、原告側は消滅時効による賠償額の制限を不服として上告した。
裁判の過程で動燃が待遇面や給与面の差別を1970年代から行なっていた実態が明らかになった。とても3年どころではない。しかし機構は当時、職員からの再三の要求に対して「差別はなかった」と回答していた。
原告らは「『差別されている』と感じただけの段階で、消滅時効の起算点になるとの判断は公平とはいえない」「証拠がないのに提訴しなかったのが悪いという理屈は、守られるべき権利を守らないことを幇助する」と訴えた。
原告らと同訴訟を支援する会は25年10月以降、最高裁に公正かつ迅速な判決を求め、毎月要請に出向いた。範囲を3年間に限定せず、被害を受けていた全期間の損害への救済を求め、提訴に至る経緯についても発言し続けた。
差別は廃止されたのか
当時動燃総務部次長だった西村成生氏が残した、差別の実態を記録した証拠となる大量の資料が偶然入手できたため、原告も支援者も提訴を決意できた。この資料入手がなければ差別は闇に葬られたままになっていたかもしれない。上告の際、弁護団は過去の判例に照らして本件も「消滅時効の援用は信義則に反し、権利乱用である」と、さらに踏み込んだ形で訴えた。
原告らにとって、同裁判は賠償以上に重要な目的があった。安全性を無視した原子力開発に批判的な意見を持つ真面目で見識のある職員らを組織的に洗い出して封じ込めるという、動燃のあり方自体を問い質すというものだ。そこには「批判の抑圧は事業の真の発展を害する」という、開発に携わる者としての思いがあった。
原告の一人で元職員の椎名定さんは「機構が差別をやめた証拠がなく、今の職場でも続いていると思わざるを得ない。差別がないことを明らかにしないと現役職員が明るく働ける職場にはならない」と現在の職場環境を憂慮する。
原告弁護団事務局長の平井哲史弁護士は、機構が差別政策を廃止したことを示す客観的証拠はないとし、提訴時まで差別が続いていたとの前提で賠償請求を認めた確定判決を基に、今後は機構や国に対して「差別政策はやめろ、再発防止と被害者の救済をきちんと図れという申し入れをしていく」との方針を語った。
※『週刊金曜日』2024年11月8日号で既報。
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