【7月4日 AFP】タイ東北部ムクダハン県で僧侶10人が死亡した事故で、現場に居合わせたベテラン女性看護師ウィワット・ラオノイさん(61)が、女性は僧侶に触れてはならないというタイ仏教の戒律を破って救命処置に当たった。

ムクダハン県で2日、11歳の男児が運転するピックアップトラックが、巡礼中の僧侶35人と信者5人の列に突っ込んだ。男児は親の車を無断で持ち出していた。

事故の数分後、通り掛かったウィワットさんが救急処置に当たった。タイ仏教において、女性が僧侶に触れることがタブー(禁忌)とされている中での決断だった。

ウィワットさんはAFPの取材に対し、「周囲の人々から『待って、相手は僧侶だ!』と言われたが、『そんなの関係ない、今は患者だ』と言い返した」と振り返った。

看護師として40年近く働いてきたウィワットさんは、この「大事故」の現場には他に対応できる人がいなかったと説明し、「他のファーストレスポンダーはまだ誰も到着しておらず、私しかいなかった。とにかく冷静沈着でいなければならなかった」と語った。

ウィワットさんは直ちに負傷者の脈拍を確認し、心肺蘇生法(CPR)を施し、地元の病院と連絡を取り合いながら、次から次へと負傷者の間を移動して救命処置を続けた。

2日に現場で僧侶5人が死亡し、その後搬送先の病院でさらに5人が死亡した。3日時点で、10人が入院中で、うち2人が重体となっている。

事故が起きたムクダハン県出身のウィワットさんは今年9月に定年退職する予定だが、現役を退いた後も、医療体制が限られている地域社会でボランティア活動を続けていきたいと考えている。

ウィワットさんは「タイ人として、そして看護師として、自分を非常に誇らしく思う。これまで培ってきた知識を、同じ人間を助けるために役立てることができたのだから」と語った。(c)AFP