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『Time of Ring』(第十稿)Part.10

第十幕:決戦

NOA2がたどり着いた50万年後の世界もまた、
異様な空気に包まれていた。

以前来た時に見た無機質なクロノスシティが、
次の瞬間には鬱蒼とした緑に覆われた廃墟へと
まばたきするように切り替わる。

二つの未来が、陣取り合戦のように
互いの存在を上書きし合っている。

だが、緑の廃墟が現れる時間は
秒を追うごとに短くなり、
冷たいクロノスシティの景観が
確実に根を下ろそうとしていた。

『クロノスの中枢への侵入は不可能だ。

しかし、廃棄区画で
三機の旧型プロメテウスを見つけた。

これからそこに
君たちの意識を移す。』

グレイの代表体からの
微弱な通信が響く中、
大地たちの意識が遠ざかっていく。

「あちゃー、ガラクタの山の上か。

水原、地図とか無いかな。」

「目標地点までの隔壁は四つ……。

メイン冷却シャフトの中を通って
クロノス中枢へ向けて降下する」

水原が転送してきた立体マップが
大地の網膜にも投影されはじめた。

薄暗い処分場の中で、
全高5メートルの
三機のガードロボットが、
重々しい駆動音と共に立ち上がった。

機体の背部に折り畳まれた
四本の鋭利なアームユニットが、
大地たちの意識に合わせて不気味に蠢く。

「クロノスは自身の中枢が
傷つくことを極端に恐れている。

だから近接戦用の物理兵器を
ぶつけてくるはず。」

「行くぞ」

ガコンッ!

巨大な床のハッチが開き、
三機は果てしなく続く
斜め下方向への
メイン冷却シャフトへと
身を投げ出した。

猛烈な重力加速度が機体を引っ張る。

「隔壁まであと100メートル!」

航の叫びと同時に、
分厚い鋼鉄の壁が迫る。

大地は機体を反転させると、
背部の四本のアームを
シャフトの壁面に深く突き立てた。

凄まじい摩擦火花が壁面に散り、
削り取られた金属片が
嵐のように後方へ吹き飛ぶ。

急制動で速度を殺した瞬間、
大地の操る機体が
隔壁の中央へ拳を叩き込み、
航と水原の操る機体が
その裂け目をこじ開けて滑り込む。

流れるような連携で
三つの隔壁を突破し、
最深部のゲートを蹴り破った。

そこは、冷たい冷却液が滝のように流れ落ちる、
巨大なサーバータワーの群れだった。

そしてその広大な空間には、
大地たちが操っているのとほぼ同じ姿の
新型のプロメテウスが 数十機、
無言で立ちはだかっていた。

「……同じ機体なら、
中身の差で勝負するまでだ」

大地が踏み込もうとした瞬間、
敵機はすでに大地が動く先へと
滑るように移動し、
背部のアームの刃を、
大地の機体の右膝関節へ
正確に突き立てていた。

「動きが早すぎる!」

装甲が軋み、
青白い冷却液が
血のように噴き出す。

航の機体が
壁を蹴って飛び掛かるが、
敵は弾道すら見切ったように
最小限の動きで回避し、
すれ違いざまに
装甲が鋭く削り取られた。

「速さとかじゃないわ!」

水原がサーバーの柱を背にして叫んだ。

「関節の駆動音、
筋肉の電気信号の初動、
そのすべてから
私たちの『最も合理的な次の動き』を
完璧に見通しているのよ!

未来を計算して
待ち構えているんだわ!」

反射神経の問題ではない。

圧倒的なデータ処理による
「未来予測」だ。

「……先が読めるなら、
読めない馬鹿なことをするまでだ!」

大地の機体が、
突如として姿勢制御装置をオフにした。

重い巨体がバランスを崩し、
無防備な姿で
瓦礫の山へと不様に倒れ込む。

予測外の非合理的な自滅行動に、
敵機の動きがほんの数ミリ、硬直した。

「水原、航!
敵を無視しろ!
周りのパイプをブチ壊せ!」

大地は倒れ込んだ姿勢のまま、
背部の四本のアームを無軌道にくねらせ、
周囲の冷却パイプや
サーバー群の壁面に向けて
力任せに打ち付けた。

ガガガガガッ!!

破断したパイプから、
超低温の冷却ガスが
吹雪のように噴き出し、
視界と熱源センサーを
完全にホワイトアウトさせる。

「了解!」

水原と航もそれに合わせ、
塔の構造物を手当たり次第に破壊し、
ランダムな瓦礫の雨と
ガスの乱気流を発生させる。

敵の動きが、明確に停止した。

自らを傷つける危険を冒しての破壊行動と、
無数に降り注ぐ瓦礫の不規則な軌道。

それは効率を極めたクロノスの頭脳に、
膨大な計算の無駄を強いていた。

その瞬間、 大地たちの機体の頭脳に、
突然一億年分のデータが雪崩れ込んできた。

『……限界を見極めるのは、まだ早い。』

突如、ノイズ混じりの通信回路から、
見知らぬ若い男の穏やかな声が響いた。

『我々はノルディック。

君たちが過去の時代で
命の繋がりを守ったことで、
感情を失わずに到達できた、
人類の最終進化形態だ。』

「……敵の次の動きが、
手にとるように分かるわ!」

水原の機体が、
吹き荒れるガスの中を滑るように前進し、
立ちはだかった三機の死角へ瞬時に潜り込む。

背部の四本アームを展開し、
敵の駆動部を正確に串刺しにしていく。

「親父、後ろ!」

航が壁面を蹴って高々と跳躍した。

背部アームをワイヤーのように使って
天井の梁にぶら下がり、
遠心力を使って敵の頭部を叩き割る。

大地の機体が再び踏み込んだ。

正面から敵の刃が迫るが、
膨大なデータを宿した大地の機体は、
その軌道を完全に読んでいた。

敵機の刃を
紙一重のクロスカウンターで躱し、
無防備になった敵機の胸部へ向けて
機体の全重量を乗せた強烈な打撃を叩き込む。

そして、ひしゃげた装甲ごと、
巨大なサーバーの壁に叩きつけた。

「道を開けろ!」

三機は流れるような連携で、
プロメテウスたちを次々と粉砕し、
火花と冷却液の雨を降らせながら
すり抜けていく。

大地の機体が、
複雑な軌道を描いて
クロノスの中枢演算装置へと突っ込む。

巨大なシリンダーの最上部へと跳び乗り、
背部の四本アームを
強固なアンカーとして突き立てて
機体を床に固定した。

「これが、お前が切り捨てた
無駄な命だ!」

振り上げた鋼鉄の右拳が、
クロノスの心臓部へと打ち込まれ、
厚い装甲を物理的に粉砕した。

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コメント

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小ぶりなプログラムを試しに作っているんですが、 ここではその説明書きをしていこうと思います。 こういう機能をつけてみてほしいだとか要望は、 コメント欄か、Xのリプライ欄に書いてみて下さい。 ひまをみて対応します。 (未管理著作物裁定制度に定められた問い合わせも受付中。)
『Time of Ring』(第十稿)Part.10|古井和雄
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