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142 イメージは考える ~ 文化の自己目的性について

アートを自己表現として考えている方々は、「制作」というものをインプットしたもののアウトプットとか、アーカイブされたものへの検索行為として理解している。「どこからこんなイメージが出てくるの」とか「作品づくりには教養が必要」などと言うわけである。すなわち、再現/表象としての作品イメージである。しかし実際には、自己表現を超えた作り手たちは自作品に驚きながら、自分都合ではどうにもならない制作体験をしている。作者はインタラクティブにつくりながらつくられ、モノと協働し、身体図式をメディウムにして、イメージがなりたいようになる手伝いに徹している。そしてこれを「作品自身が考えたこと」だと述懐する。

実のところ、この「アートは自己表現」といったフレームは、ひとつのイデオロギーにすぎないものなのだ。それは文部科学省が義務教育課程にむけて発布している学習指導要領にもプロトタイプとして表れている。そこで強く推奨されている制作プロセスとは、自分の考えや感覚を「工作に表す」ことである。すなわち、ある意味内容を、造形物をツールとして再現/表象していくことなのである。文科省はその「解説」のなかで、この自己表現型創作を「造形遊び」と混同しないよう注意書きを加えている。しかし少し考えればわかることだが、そもそも「遊び」と「学び」とは相反関係にあるものではない。「遊び」が「学び」に進化していくわけでもない。遊びは、すなわち学びであって、集団的な「学び」とは「遊び」がその社会システムのなかで生まれたイデオロギーによって縮約された遊びにほかならないのである。

縮約された遊びとは、遊びを(ルールのある)ゲームへと囲い込んでいくことである。これはヒトという生き物が持っている資質を、社会的なレベルで活用していくプロセスのひとつにすぎない。確かにそれは重要なことである。しかし、ここでしばしば倒錯が起きやすい。たとえば、ある資質がコミュニケーション・ツールとして活用された場合に、これを「その資質はコミュニケーションのために生まれた」と考えたり、ある資質をもっと社会的に活用すべきだとマネージメントしている方々が「社会活用されなければ無意味」と考えたりするような倒錯である。ここで言う「ある資質」のひとつが、いわゆるアートなのだ。

ここにきて、アートを自己表現とすることのイデオロギーは、アートを目的化したり、その有用性を求めたりすることと連接する。さらに言うなら、文化現象を「〜に資する」といった手段化によって称揚しようとしたり価値によって証明しようとすることもまた、イデオロギーの所産として、相似的な視角で眺めることができる。これらもまた「遊び」の「ゲーム」化と同じことなのである。

では、手段化や目的化されることにおいてしか、ヒトの資質(アート)は意味を持たないのだろうか。ここでブリコラージュという概念を示しておきたい。ブリコラージュとは文化人類学で「見立て」とか「転用」の働きとして用いられている術語である。これはアートの基底にある働きとも見做されている。さきの「遊び/ゲーム」という腑分けで言えば、ちょうどその中間にある「/」部分に相当する働きである。そしてこのブリコラージュは、生物進化論においても「進化プロセスとはブリコラージュである」という風にしばしば援用されている。実際、さまざまな変異体を制作していくブリコラージュは、さまざまな変異を起こしながら遺伝されていく生命活動ととても馴染みがよいものなのである。それは、ひとことで言うなら「自律性」ということになるだろう。生命体が絶えず変異を起こしながら生命を繋いでいくプロセスにも、アートがアートを制作していくプロセスにも、相似した自律性が見られる。

では、冒頭に述べた「制作」について考えてみよう。「作品自身が考える」ということを「メディウムが考える」と言い換えれば、マーシャル・マクルーハン的なメディア論になる。意味内容がメッセージなのではなく、メディアこそがメッセージなのだというメディア論である。そのメディア環境のなかにいる間は(アーティスト以外には)自覚されないものだが、それが古くなってやっとメディア環境として認知されるというジャンル発生論でもある。あるいは、「作品が考える」ということを「イメージが考える」と言い換えれば、イメージ論になる。紙幅がないので、ここではイメージについて考えてみたい。

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