「今日だけの偽物恋人」の後半です!
Side あなたの下の名前
学園祭もいよいよフィナーレ
広場では最後にあがる花火の準備が進んでる
私たちは、人通りのない校舎裏のベンチにいた
佐野くんのその一言で、胸がきゅっと傷んだ
もう終わっちゃうんだな
この距離も、温もりも、全部
これ以上言葉が出てこなくてしばらく黙り込む
すると、佐野くんの手が私の手の上に重なった
空に最初の花火があがった
光が弾けて、彼の横顔を照らし出してる
彼の手が私の頬にそっと触れた
その手は私より大きくて、優しくて、温かかった
目の前が涙で滲む
佐野くん―いや、勇斗は、その涙をそっと拭ってくれた
彼の視線は、もうまぶしくなんてない
私はちゃんと目を合わせて言葉を返した
勇斗にぎゅっと優しく抱きしめられる
…こうしてもらうのいつぶりだろう
元カレと別れてから一度もなかった気がする
久しぶりの感覚にまた顔が熱くなっていくのを感じた
しばらく勇斗の胸元に顔を埋めていると、彼が小さく
つぶやいた
顔を上げると、勇斗の顔が今まで見たことないくらい真っ赤になってた
彼は耳元を軽く掻くと、ふっと目を細めた
少し震える声で答えると、彼は嬉しそうに笑ってまた
ぎゅーっと抱きしめられた
夜空に最後の大きな花火が咲く
私たちは互いにふふっと笑いあった
偽物の恋人は、今日で終了。
でももう私はひとりじゃない
だって、私の隣には本物の恋人がいるから
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。