※学パロです※
Side あなたの下の名前
吉田仁人は、私の同級生で幼馴染だ
昔は「じんと」「あなたの下の名前(ひらがな)」って呼び合うくらい仲良しだった
でも、変わったのは高校に入ってから
『生徒会長 吉田仁人』
その名前が校内に広まってから、彼は“みんなの吉田さん”になった
仁人と一緒に生徒会で、私は役員として彼を支える立場に
なった
距離は近くなってるはずなのに、なぜかすごく遠い
生徒会長と役員 立場が全く違う
昔みたいに名前で呼びたいけど、そんなこと今は許されない
私は彼の幼馴染なのに。彼のことが好きなのに。
私が彼にとっての“特別”である自信なんて全くなかった
また役員が一人帰って行き、生徒会室には私と仁人の2人
だけになった
カーテンの隙間からオレンジ色の夕日が差している
久々に名前を呼ばれて心臓がどきっと跳ねた
恐る恐る彼のところへ近寄ると、目の前のイスに促された
唐突な質問に思わず言葉が詰まる
そう言うと仁人は苦しそうに笑顔を作った
こんな顔をさせてしまったのは私のせいだ
そう思って私は目線を下げた
もう一度仁人の方を見ると、彼の耳が見たことないくらいに真っ赤に染まっていた
仁人の手がそっと私の手の上に重なる
その言葉が嬉しくて、思わず涙が溢れた
私は目の前で両手を広げている仁人の胸の中に飛び込んだ
「捕まえたっ」と優しく抱きしめられる
互いのおでこがこつんと当たって吐息が重なった
そっと目を閉じると、唇に柔らかい感触がした
触れたところがじんわりと甘さを帯びてゆく
これがキスの味なんだって知った
このキスは、幼馴染としてじゃない。
生徒会長と役員としてでもない。
好きな人としてのキスだ。
大好きな人と一緒に生徒会室を後にする
夕日に照らされて、廊下に2人分の影が浮かび上がった
もう私たちの距離は『近くて遠い』じゃない
夕焼けの中で、私たちはようやく隣に並べた気がした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。