台湾有事の勝利の鍵:アメリカ空軍のB-2ステルス爆撃機がLRASM対艦ミサイルで撃沈演習を初実施
2026年6月29日(日本時間では30日)、アメリカ空軍の太平洋空軍はヴァリアントシールド2026演習において、マリアナ諸島の北でB-2爆撃機がLRASM対艦ミサイルを用いて実艦標的撃沈演習を成功裏に実施したと発表しました。出典:U.S. Airmen and Sailors Conduct B-2 LRASM Live-Fire Sinking Exercise | PACAF
B-2爆撃機からLRASM対艦ミサイルを運用できると公表されたのはこれが初めてになります。B-2爆撃機はレーダーに映り難いステルス爆撃機であり隠密性が高く、兵器倉にLRASM対艦ミサイルを16発も収納できるので、世界最強の対艦攻撃力と言えるでしょう。僅か4機で攻撃しても合計64発ものLRASM対艦ミサイルが同時飽和攻撃で襲い掛かってくるのです。
※LRASM : Long Range Anti-Ship Missile(長距離対艦ミサイル)の略で、空対艦型の正式名称はAGM-158C LRASM。亜音速で飛翔し、射程はLRASM最新型のAGM-158C-3では射程500カイリ(約930km)に改良されたと推定されている。
ヴァリアントシールド2026演習の撃沈演習で用意された標的艦は退役したドック揚陸艦「ジュノー」です。なおLRASM対艦ミサイルが命中した様子は公開されていませんが、演習に参加した日本海上自衛隊の潜水艦(艦名記載無し)が発射した魚雷が命中する様子の写真は公開されています。出典:Multilateral, Joint Forces execute sinking exercise during Valiant Shield 2026 | DVIDS
※標的艦の退役ドック揚陸艦「ジュノー」は魚雷攻撃の前の時点で舷側に大きな破孔が3箇所あり、おそらくこれが対艦ミサイルの命中痕だと思われる。マリアナ諸島の沖での撃沈演習の実施日は2026年6月27日(米東部時間では26日)
※追記:ニュージーランド空軍のP-8A哨戒機がハープーン対艦ミサイル2発を標的艦ジュノーに命中させている。出典:NZDF
なお2023年1月9日に、アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)が台湾有事の机上演習の結果を公表した際の結論が以下の通りでした。台湾有事での勝利の鍵は長距離爆撃機から発射する長距離対艦ミサイル「LRASM」であるという内容です。
台湾有事で勝利の鍵を握る亜音速長距離対艦ミサイルLRASM
- 台湾は戦線を維持せよ(ただし台湾単独では負ける)
- アメリカは早期介入せよ(ウクライナ型の支援否定)
- 日本の基地を使用せよ(日本が中立化したら負ける)
- 勝利の鍵は長距離爆撃機からの長距離対艦ミサイル
※CSISの報告書では長距離爆撃機にLRASMを搭載して攻撃に向かうことが効果的だとしている。中国の中距離ミサイルの射程外(グアムよりもさらに遠く)から発進し、LRASMを大量発射して飽和攻撃を行い敵艦隊を殲滅すれば、戦争は早期に決着する。つまり敵の航空戦力を叩くよりも、敵艦隊(特に重要なのは揚陸艦隊)を叩くことが優先だとしている。
2023年の時点ではLRASMを運用できる長距離爆撃機はB-1B爆撃機でしたが、2026年にB-2爆撃機がこれに加わりました。B-52爆撃機もLRASMを適用する計画が進んでいますが、こちらは射撃訓練はまだのようです。なおLRASMの搭載可能数はB-1B(24発)の方がB-2(16発)より上ですが、B-2のステルス能力を考慮すると、発射母機としての優秀性はB-2の方が遥かに上となるでしょう。
またアメリカ空軍は更に新型のステルス長距離爆撃機「B-21レイダー」を開発中で、2027年には実戦配備が始まる予定です。ステルス長距離爆撃機+長距離対艦ミサイルLRASMが対中国戦を想定したアメリカ軍の切り札となる兵器の組み合わせになります。