生きる工夫 文学で表現…発達障害の大学教員として、当事者研究に取り組む 横道誠さん 43
完了しました
40歳のときに適応障害と診断され、発達障害のASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)であることが初めてわかりました。勤めていた大学を1年半ほど休職しましたが、診断をきっかけに、発達障害など複数の自助グループを主宰するようになりました。仲間とともに当事者研究に取り組み、苦労に対する自己理解を深め、生きやすさを模索しています。
歴史や物語が好きで、ドイツ文学やヨーロッパ思想を研究してきました。29歳で大学教員になりましたが、大学の管理運営には向いておらず、同僚や教え子とのコミュニケーションの行き違いも多くなり、うつ状態で休職を余儀なくされました。診断を受けたのは、このときです。
幼い頃から、「自分は人と違う」と感じていました。通知表には「1」もあるのに、得意科目では学年1位になることもあって、能力が激しくでこぼこしていました。周囲を驚かせるほど、衝動的に動き回ることもありました。
ASDの主な特性はこだわり行動や感覚過敏、ADHDは多動、過度の集中、不注意です。「まさに自分だ」と、長年の謎だった自分のことが
仲間との交流や居場所を求めて2020年3月、初めて発達障害の当事者研究をする自助グループに参加しました。互いの困りごとや体験を共有し、生きづらさを克服するヒントをともに探る取り組みです。
障害や病気による苦労が多い人ほど、生きていくために独特な工夫をしています。いかによく生きるかを探求する姿は、哲学者のようでもありました。
私も当事者研究で自分を客観的に理解し、対策が取れるようになりました。
ADHDの特性の一つに「脳内多動」があります。授業の準備や論文の執筆、様々な雑務を常に同時並行で考えてしまい、脳のワーキングメモリーが満杯になると、掃除や料理に手が回らなくなることもありました。仲間の助言で、定期的に訪問介護サービスを利用するようになりました。
人間とは何かを探求する文学は、私を癒やしてくれる存在でした。それぞれの生きる物語を大切にする当事者研究も、今では私のライフワークになっています。そこでこの二つをつなごうと、仲間との交流で得られた知見を詩や論文、批評で表現するようになりました。
発達障害は「脳の多様性」の一つだと考えています。当事者の置かれた状況を広く知ってもらい、多くの人が生きやすい環境が整えられるようになってほしい。そんな思いで、これからも自助グループでの活動と研究・執筆を進め、当事者研究と文学を結ぶ試みを続けていくつもりです。(聞き手・田中文香)