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[社説]皇室典範の改正案は再考を

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政府が皇室典範の改正案を閣議決定した。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるなど、先の与野党協議では議論されていなかった項目が唐突に盛り込まれる異例の展開である。あまりに拙速で、政府・与党には強く再考を求める。

改正案では養子に男子が生まれた場合、皇位継承権を持つことが明確になった。近現代だけ見ても明治から令和まで連綿と続く今の天皇家に代わり、一般人の養子の子孫が天皇になり得る仕組みだ。皇室と国民の間の長年の信頼と敬慕の念が、ないがしろにされたと感じる人は多いのでないか。

一般人である旧皇族の家系が特別な「養子の出し手」として扱われれば、門地による差別を禁じた憲法に抵触する恐れがある。違憲訴訟が起きる可能性が高い。国民統合の象徴である天皇や皇室を巡り、法的地位に疑義が生じるような制度を持ち込むべきではない。

明治期の旧皇室典範も「皇統が乱れる」などの理由で養子を禁じていた。2005年に自民党政権下の有識者会議がまとめた報告書も、第三者の介入が起きかねない、国民の理解を得るのが難しいといった事情から、養子案の採用は極めて困難としている。

にもかかわらず一方的に制度改正を急ぐのは理解できない。新たな仕組みを盛り込むなら、立法府の協議をやり直すのが筋だ。

自民党の中曽根弘文憲法改正実現本部長が、天皇陛下の長女愛子さまによる皇位継承を「あり得ない」と発言するなど、与党で男系への固執を示す言動が相次ぐ。皇室問題は世論に耳を傾けた柔軟な検討が不可欠なのに、それに背を向けていると言わざるを得ない。

天皇陛下は記者会見で「国民の理解が得られるものとなることを望む」と述べられた。現在の改正案は、広く理解を得られる内容とは到底言えまい。政府は強引な姿勢を改め、静謐(せいひつ)な議論の環境を早急に整えるべきだ。国民に支持されない皇室制度を作っては元も子もない。

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