日本で物議を醸した絵本が、韓国で出版からおよそ10年が経った今、インフルエンサーのYouTube動画がきっかけで再注目され、日本のSNSでは波紋が広がっている。
「問題視された絵本なのに…」SNSで吹き荒れる嘆きの声
絵本作家のぶみさんが1月にXで、自身の作品『ママがおばけになっちゃった!』(2015年発行、韓国版はイ・ギウン氏翻訳により2016年発行)が「大ブレイク中!!」と紹介。
それに対して「日本で問題視された絵本なのに」「韓国のお母さん、逃げて!」といった疑問の声が広がっている。子どもの不安を煽っていると批判されたのぶみさんの作品が、韓国でなぜ今、書店売上のランキング上位になっているのか。
絵本作家「のぶみ」とは?発言に賛否も
著者のぶみさんは「親子愛」を描く作家で、NHK Eテレでの仕事や内閣府「子ども・子育て支援新制度」(すくすくジャパン!)シンボルマークを手がけている。
ヒット作品も多いが、母親や親子の描写やテーマ設定など、内容には賛否がある。
2018年には、自身が作詞した『あたしおかあさんだから』の歌詞が物議を醸した。「あたしおかあさんだから あたしよりあなたのことばかり」といった表現に対して、母親に我慢を押し付け、子育てを最優先せざるを得ない自己犠牲を美化していると批判が寄せられ、謝罪した。
また、自身のSNSで「赤ちゃんが泣く理由で一番多いのは、ママと一緒にいたいから」と発言(現在は削除)。これに対して、医師から医学的根拠がないと指摘されるなど、育児に関する表現・発信の内容にたびたび疑問の声が上がっている。
『ママがおばけになっちゃった!』への批判、署名活動も
話題の『ママがおばけになっちゃった!』とは、「ママは、くるまに ぶつかって、おばけに なりました」というインパクトの強い一文から始まる、母親が交通事故で急死し、おばけになって子供を見守るというストーリーだ。
続編も刊行され、シリーズ累計55万部を突破と日本でも大ヒットしている絵本だが、子どもの不安を煽るような内容に対して批判の声があがっていた。
2019年には「絵本『ママがおばけになっちゃった!』の対象年齢引き上げを望む会」が発足し、1万筆を超える署名が集まっていた。
絵本は「母の死」という子どもにとって最も考えたくないことの一つを題材としていることから、不安を煽ることで親への過度な執着や死の恐怖を植え付けるのではないかという疑問の声も多い。
この点、のぶみさんは過去のインタビューで、絵本がトラウマになることが心配という意見に対してこう反論している。
「子どものトラウマになったほうがいいと思います。それに、トラウマになるかどうかは、子ども自身が決めることで、大人が決めることじゃないんです。
子どもは母親がいなくなるなんて、想像しないし、したくない。当たり前の存在だと思っているんです。そうすると、ワガママを言って暴れたり、ときには母親を蹴ったり叩いたりする子もいます。でも、それはいかんぞ、と。」(現代ビジネス「たった5分で泣く子続出の絵本『ママがおばけになっちゃった』」より)
韓国メディアも注目、YouTube読み聞かせ動画からベストセラー入り
そんな『ママがおばけになっちゃった!』は、韓国では2016年に出版。10年が経った今、韓国の主要ネット書店の児童書部門でベストセラー入りしている。
大手書店「教保文庫」では幼児(0~7歳)部門1位、国内図書36位にランクインし、通販サイト「アラジン」では幼児部門の週間1位、総合トップ100に13週間入っている(記事執筆3月6日時点)。
現地メディアは、韓国では読み聞かせ動画を通じて「泣けるコンテンツ」としてバズったことで、売上ランキングを逆走し今のヒットにつながっていると報じている。
インフルエンサーのYouTube動画をはじめとして、子どもに読み聞かせているうちに親が泣いてしまう様子がSNSに投稿され、話題を呼んだという。
他の韓国メディアも、作品がヒットした理由として、従来型のメディア露出や書評からではなく、SNSでのショート動画拡散から販売が伸びたことを挙げており、子育て層の消費傾向の変化が表れていると伝えている。