言うのはやめようと思っていた。でも、やっぱりこれだけは言いたい。医師として、最近よく目にするY染色体継承論には違和感がある。人は父母それぞれから約半分ずつ膨大な遺伝情報を受け継ぎ、Y染色体はそのごく一部にすぎない。その膨大な部分を無視してY染色体だけに血統の本質を還元することに科学的根拠は見いだしにくい。
一方で、皇位継承は生物学ではなく、歴史的・制度的な枠組みであり、現行制度として男系男子による継承が採られていることは事実として理解している。その意味で、「女性天皇を認めると継承が途絶える」という議論は、血統そのものの断絶というよりも、制度上の定義や運用の変更に関わる問題として整理されるべき側面があるように思われる。
私は天皇御一家に深い敬意を抱いている。将来的に敬宮愛子内親王殿下が天皇となられ、同世代のヨーロッパの女王たちと皇室外交を担われる日が来るならば、それは日本にとって大きな意義を持ち、国民にとっても誇りと感じられる出来事になると考えている。
それでもなお、「Y染色体が受け継がれない」という一点のみをもって、その可能性全体を閉ざしてしまうのであれば、それは議論の焦点を過度に遺伝学的な単一要素に寄せているようにも思える。
『The Tudors』を観ていても思う。16世紀のイギリスにおいて、娘による王位継承の位置づけをめぐる議論が長い時間をかけて再構成されていったことを思うと、それから約500年後の日本がなお同様の問いを抱えていることには、歴史的な対比として考えさせられる。
<スクープ>「養子の男系男子子孫に皇位継承資格」 皇室典範改正案全容判明
mainichi.jp/articles/20260…
養子となった皇族男子(養子本人)の子孫の男系男子が皇位継承資格を有することが明示されました。