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2022年6月の記事

2022年6月30日 (木)

機関車工学:上巻(その66)最近における機関車発達の概要:汽缶の発達

【 汽缶の発達 】

 機関車の牽引力を増加する上において、「シリンダー」の大きさを増し車輪の配置を増加するは比較的容易なる事項に属すれども、汽缶の容積を増大するははなはだ困難なり。

 大形なる汽缶はその直径大なると同時に、「ファイア・ボックス」及び「チューブ」長きを例とす。しかれども「ファイア・ボックス」の長きものは石炭を投入するに不便なり。「チューブ」の長きものは伝熱面積を増加すれども、その短きものに比すれば蒸気発生上の効率を減ずべし。これを実験に徴するに「ファイア・ボックス」の長さは 10フィート以下たるべく、「チューブ」の長さ 18フィートを超ゆるものは徒らに汽缶の死重を増すに似たり。

 従来「ファイア・ボックス」は左右車輪の間に挟まり、「グレート」面積はなはだ狭小なるものなりしが、1881年米国の「ティー・エヌ・イーリー」氏は従輪を超えて、「ファイア・ボックス」を左右に拡大するの方法を案出し、初めて「ペンシルベニア」鉄道に採用せられたり。これを大幅「ファイア・ボックス」と称す。最初は多く粗悪なる石炭を使用するに適用せられたりしが、漸次発達して善良なる石炭を燃焼するものにも応用せられ、近来は米国における機関車の基本の汽缶と称せらるるに至りたり。第 60図に示すものはその一例なり。

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 欧州各国においても漸次この形式を採用するの傾向ありて、機関車の改良上に一紀元を描きたり。

 けだし「グレート」面の大きさは伝熱面に対する割合もありて、徒らにこれを増大するは汽缶の効率を減殺するの虞れありと言えども、相当の程度にこれを増大し、多量の石炭を燃焼し、多量の蒸気を発生せしむるは、強大なる汽缶の設計上やむを得ざるの方法なり。

 大幅「ファイア・ボックス」は車輪の上部に「グレート」を有し、「ファイア・ボックス」の深さはなはだ浅きをもって、伝熱上多少不利益たるを免れず。しかれどもその周囲の水室広きをもって、缶水の循環良好なるのみならず、比較的長き「ステー」を有するをもって、「ファイア・ボックス」の膨張及び収縮に伴なう「ステー」の折損を軽減し、「ファイア・ボックス」の保存上有利なる設計なり。

 また近来米国にては、大形なる長き汽缶において「チューブ」の長さを短縮し、且つ「ファイア・ボックス」の伝熱面を増加するの方法として、第 61図に示せるごとく「ファイア・ボックス」の前部を「バレル」の内部に延長したるものあり。

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 この形式は「チューブ」の伝熱面を減じて「ファイア・ボックス」の伝熱面を増加すれども、増減相伴はざるをもって全伝熱面の減少するを免れず。しかれども「ファイア・ボックス」の伝熱面は「チューブ」の伝熱面に比し、蒸発率においてはるかに優れるものなれば、蒸気発生力においては損失する所なし。

 その構造やや複雑なりと言えども、大形なる汽缶における「チューブ」の長さを減ずるに便利なる方法なるはもちろん、「ファイア・ボックス」内におけるガスの燃焼を増進するの利益あるものなり。

 

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2022年6月29日 (水)

機関車工学:上巻(その65)最近における機関車発達の概要:4個シリンダー平均機関車

【 4個「シリンダー」平均機関車 】

 普通の機関車は「シリンダー」2個を備ふれども、数年前よりは4個を備ふるもの漸次増加しつつあり。2個は「フレーム」の外部にありて2個は内部にあり。また4個の「クランク」は同一車軸に属するものあり。あるいは2個は前部の動輪に属し、2個は後部の動輪に属するものあり。多くは複式にして2個を高圧となし2個を低圧となす。時として4個の「シリンダー」を総て高圧とし全然単式となすものあり。

 この形式は「シリンダー」2個を備ふるものに比すれば、「クランク・ピン」に及ぼす「ピストン」の圧力を減少することを得べく、且つ2個の「クランク」は互ひに反対の位置にあるをもって、「ピストン」「クロスヘッド」等往復部の隋力は常に相平均せられ、もって機関車の動揺を減殺し円滑なる運転を遂ぐることを得べし故に、これを平均機関車と称す。

 この形式は急行列車用機関車に適し、また大形なる機関車の設計に便なるをもって、近来速度並びに牽引力の益々増加せんとするに当たりて、これを採用するもの益々多きを加え、将来旅客列車用機関車の標準とならんとするの傾向あり。複式機関車もまたこの形式の発達と共に益々その効能を発揮するに至れり。

 

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2022年6月28日 (火)

機関車工学:上巻(その64)最近における機関車発達の概要:貨物列車用機関車の発達

【 貨物列車用機関車の発達 】

 貨物列車用機関車においては、英国は従来6輪連結式 0-6-0 形 をもって唯一の形式として採用したりしが、近来はさらに大形なる機関車の必要を生じ、8輪連結式 0-8-0 形を採用するに至りたり。

 大陸においても従来は6輪連結式 0-6-0 形、または「モーガル」式と称する 2-6-0 形を用ふるもの多かりしが、近来は8輪連結式 0-8-0 形、または「コンソリデーション」式と称する 2-8-0 形を採用するに至りたり。

 米国にては従来「モーガル」式をもって唯一の貨物列車用機関車として採用したりしが、近来は「コンソリデーション」式を使用するもの多く、最近にはさらに進んで10輪連結式 2-10-0 形をもって、勾配線における貨物列車用機関車として採用せるものあり。

 「サンタ・フェ」鉄道にては 2-10-2 および 4-10-2 形をも採用せり。これら10輪連結式は未だ一般に採用せられたる形式には非ざれども、「モーガル」式と言ひ「コンソリデーション」言ひ、いずれも米国において最も早く採用せられたる形式にして他国より比較的速やかに発達せり。

 しかしてまた近来は、勾配線貨物列車用として「マレー」式連合複式機関車の応用を見るに至り、将来益々発達の傾向あり。

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 第 51図ないし第 58図は、以上述べたる貨物列車用機関車の一般の形状を示す。

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 第 59図は「サンタ・フェ」鉄道において設計中の大形「マレー」式機関車にして、その形状あたかも「コンソリデーション」式2組を合併したるものなり。図に示せるごとく「ファイア・ボックス」を延長して且つ燃焼室を設けたるは、「チューブ」の長さを減縮するに便なればなり。

 動輪の直径 63インチなるをもって、勾配線における旅客列車用にも応用することを得べし。使用上の重量は米トンにて2組の動輪上に 220トン、前後の車輪上に 20トン、合計 240トンの予定とす。

 

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2022年6月27日 (月)

機関車工学:上巻(その63)最近における機関車発達の概要:旅客列車用機関車の発達

第2章 最近における機関車発達の概要

【 旅客列車用機関車の発達 】

 前に述べたるごとく旅客列車用機関車は、英国においては軌間(gauge)の競争時代において大いに発達したるものにして、その当時は主に単一動輪式 2-2-2 または 4-2-2 形式を採用したり。

 しかるにこの形式にては、一対の動輪に受くる重量のみが粘着力に利用せらるるものなれば、重き列車を牽引するに不適当なるのみならず、動輪に過大の重量を負担せしむるは軌条を損傷するの患あるをもって、その後は4輪連結式、すなわち 4-4-0 形を使用するに至りたり。

 この形式は最も広く且つ最も多数に使用せられ、今なお製造せられつつありと言えども設計上大形なる汽缶を用ふるに不便にして、運輸の状態に伴う牽引力を得るに困難なるをもって、主なる鉄道にては「アトランティック」式と称する 4-4-2 形、もしくは10輪式と称する 4-6-0 形を採用し、さらに進んで「パシフィック」式と称する 4-6-2 形を試用するものあり。

 大陸にては従来単一輪動輪式を採用したるもの稀にして、多くは4輪連結式 4-4-0 形を使用し、今なおこの形式を採用せるもの多しと言えども近来は 4-4-2 形を採用し、また 4-6-0 形を使用するものはなはだ多し。仏国にては近来 4-6-2 形をも採用せり。

 米国にては昔は単一動輪式を採用したるものなきにあらざれども、従来もっぱら 4-4-0 形をもって旅客列車用機関車の標本となしたり。この形式をアメリカ式と称するは、同国において最も早く且つ最も多く採用せられたる形式なればなり。

 元来米国は他国に比し運輸の進歩著しく、4-4-2 形もまた他国に先んじて採用し、さらに進んで 4-6-0 形をも採用し、近来は「パシフィック」式、すなわち 4-6-2 形を多く採用するに至りたり。

 けだしこの形式は数年前より、米国における旅客列車用機関車の基本の形式となりたれども、他国においては 1907年英国のグレート・ウェスタン鉄道、及び仏国の「パリ・オルレアン」鉄道がこれを試用したるを始めとす。

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 第 45図ないし 第49図は、以上述べたる旅客列車用機関車の一般の形状を示す。

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 第 50図は「マレー」式連合複式機関車と称するものにして、米国「サンタフェ」鉄道において 1908年に採用せる形式なり。その動輪の直径は 73インチにして、使用上の重量は米トン(米国にては 2000ポンドをもって1トンとす)にて、2組の連結車輪上に 110トンないし 120トン、すなわち動輪一対に負担する重量約 30トンなり。

 この巨大なる機関車をもって1時間 73マイルの速度をもって旅客列車を牽引せしめんことを期す。けだし「マレー」式は以前より重き貨物列車用、特に勾配線用に適用せられたる形式なれども、旅客列車に応用せられたるはこれをもって始めとす。

 

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2022年6月26日 (日)

機関車工学:上巻(その62)近世機関車形式の種別

第2編 近世機関車

 1800年代における機関車の発達は英国において見るべきもの多きをもって、前編は主として同国における機関車の沿革を記述したり。しかれども 1800年代の終わりより 1900年代に渡りて製造せられたる機関車は、米国または独仏にておいて著しく改良せられたるもの多し故に、本編は広く各国に例を引き、主として 1900年代において製造せられたるものを掲げ、もって最近における発達の概要を記述せんとす。


第1章 近世機関車形式の種別

 機関車はその形式によりて、「タンク」機関車と「テンダー」機関車との二種に大別することを得べし。「タンク」機関車とは、機関車自身に石炭と水とを搭載せるもの。「テンダー」機関車とは、機関車が別に石炭と水とを搭載せる「テンダー」と称する車両を伴えるものを言う。

 「タンク」機関車は、比較的少量の石炭と水とを搭載せるが故に短距離の運転に適し、「テンダー」機関車は、多量の石炭と水とを準備するが故に長距離の運転に適するものとす。

 また機関車は使用の目的に応じて、旅客列車用、貨物列車用、急行列車用、混合列車用等、種々に区別し得べし。

 その他機関車の形式は各国種々の称号をもって区別することあり。例えば米国においては「コロムビア」式、「アトランティック」式、「モーガル」式、「コンソリデーション」式と言い、あるいは8輪式、10輪式と称し、英国にては4輪連結、6輪連結、8輪連結と言うがごとし。

 しかれどもこれらの名称ははなはだ簡単にして明瞭を欠き、実際その形式を標示するに不便なきあたわず。故に近来米国にては車輪配置法を数字にて区別するの方法を採用せり。最も簡単にして明瞭なるをもって他国にてもこれを採用せるもの多し。

 この方法は機関車の車輪を3部に区別し、導輪幾個、連結車輪幾個、および従輪幾個として評示するものにして、例えば前部に4輪「ボギー」を有する4輪連結機関車、すなわち oo〇〇 形は 4-4-0 なる符号をもって示し、前部に「ビッセル・トラック」を有する6輪連結機関車、すなわち o〇〇〇 形は 2-6-0 なる符号をもって示すがごとし。

 また欧州大陸においては、連結車軸数と全車軸数とをもって区別するの方法を採用せり。例えば前記 4-4-0 形機関車は全車軸数4個にして、連結車軸数2個なるをもって 2/4 なる符号を用い、2-6-2 の代わりに 3/5 なる符号を用う。第 12表は欧米各国における機関車の各種形式符号及び名称を列記せるものとす。

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 機関車は使用の目的に応じてその形式を異にするものにして、何れの鉄道においても時勢の進歩に伴い機関車の種類を増加すと言えども、多数異形の機関車を使用するは予備品の共通を欠き、検査修理上に手数を増し、乗務員の熟練を殺ぐの弊あり。

 故に機関車の種類を2種もしくは3種に限るべきは現在諸大家の一致するところにして、欧米2~3鉄道においてはこれを実行するものあり。

 

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2022年6月25日 (土)

機関車工学:上巻(その61)1888年における速度の競争:ロンドンエジンバラ間の急行列車競争

第7章 1888年における速度の競争

【 ロンドン「エジンバラ」間の急行列車競争 】

 英国首府ロンドンとスコットランド首府「エジンバラ」間における直通急行列車は、主として英国の東海岸及び西海岸を経由する二大幹線によりて運転せられたるものにして、東海岸の分はロンドンより「ヨーク」まで 188マイルはグレートノーザン鉄道の機関車により、「ヨーク」より「エジンバラ」まで 204マイル4分の1 はノース・イースタン鉄道の機関車にて運転せられ、また西海岸の分はロンドン「カーライル」間 299マイル4分の1 はロンドン・ノースウェスタン鉄道の機関車により、「カーライル」「エジンバラ」間 100マイル4分の3 は「カレドニアン」鉄道の機関車にて運転せられたり。

 しかして 1887年末におけるロンドン「エジンバラ」間の急行列車は、東海岸列車において9時間を費やし、西海岸列車において 10時間を要したり。しかるに同年 11月において東海岸列車は、3等車をその急行列車に加えたるをもって大いに好評を博し、西海岸列車はやや不振の状態に陥れり。

 当時スコットランドにおける有名なる「フォース」橋落成の期に近付き、スコットランド内地との交通頻繁を来すべき時期なるをもって、西海岸両会社はこれを傍観するの不利なるを認め一大競争を行わんと決心し、翌年すなわち 1888年の春より秘かにその準備に着手し、遂に同年 6月1日もって「ロンドン」「エジンバラ」間の急行列車を1時間短縮して9時間となし、もって東海岸列車に向かって戦いを挑みたり。これを競争を発端とす。

 東海岸列車はその距離 392マイル4分の1 にして線路概ね平坦なるに反し、西海岸列車は距離 400マイルにして線路も所々に勾配の個処多く運転困難なるも、良くその計画を実行し毎日列車は「エジンバラ」に早着するの有様なりし。ここにおいてグレートノーザン及びノース・イースタン両会社はその対抗策として、7月1日より従来の9時間を短縮して8時間半となし、もって西海岸列車に対しなお 30分間の勝を制したり。

 7月中にはこの状況を維持し両列車共に時間を過たずして運転したりしが、8月1日に至りロンドン・ノースウェスタン及び「カレドニアン」両会社は 30分を短縮し同じく8時間半の運転を開始し、もって東海岸列車に譲らざるを示せり。

 西海岸列車は途中「クルー」及び「カーライル」においてその機関車を取り換えるの外、「プレストン」において昼食のため 20分間停止し且つ数多の勾配線を運転するをもって、8時間半の運転は大いに世人を驚かし好評嘖々たるにより、東海岸も今は猶予すべきにあらずとし、すなわち8時間列車に改めてこれに酬いたり。

 当時世評は西海岸は到底東海岸に及ぶべくもあらずして、競争はこれに一段落を告ぐべしと期したるに、8月6日に至り西海岸は再び歩を進めて同じく8時間となしたるは皆大いに意外としたる所なりと言う。これに至り東海岸列車ももはや争わずして、双方共に8月末日まで無事これを維持し、9月に至り一般旅行者の減少するの時期をもって共に8時間半の運転に切り下げたり。

 当時列車の重量は機関車及び「テンダー」を除きて、東海岸列車は 100トンにして、西海岸列車は 80トンなりし。しかしてノース・イースタン鉄道の外は皆な単一動輪式機関車を使用したり。その主なる機関車の寸法は第9表に示すがごとし。

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 東西両列車とも午前 10時にロンドンを出発して、午後6時に「エジンバラ」に到着するをもって定時となせり。故にその平均速度は東海岸列車は1時間 49マイルに当り、西海岸列車は1時間 50マイルに当たれども、列車は常に競うて「エジンバラ」に早着するを得意とせるをもって毎日多少の早着あり。

 しかして東海岸列車が最も早く運転したるは 8月31日にして、この日午後 5時26分45秒に「エジンバラ」に到着せるをもって、運転中は 7時間26分45秒に当たり、途中3回の停車時間を除けば 6時間44分をもって 392マイル4分の1 を運転したる割合にして、この運転速度は平均1時間 58マイル2分に当たれり。

 また西海岸列車が最も早く運転したるは 8月13日にして 7時間38分にて 400マイルを運転せり。途中3回の停車時間を除けば 7時間8分となるをもって、この平均速度は1時間 56マイル強に相当せり。

 第 10表及び第 11表は、東西列車の停車駅及びその間の距離、並びに各運転区間において走行し得たる最高速度を示すものとす。

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 この競争は鉄道歴史において有名なるものして、1888年の速度競争と言えばこの顛末を指示するものなり。しかしてその速度は今日各国における有名なる急行列車の速度と比較しても少しも遜色なきのみならず、現今と言えどもこの区間の最急行列車は、東海岸の分は7時間45分、西海岸の分はなお8時間に止まり競争当時とほとんど相似たるを見る。

 

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2022年6月24日 (金)

機関車工学:上巻(その60)19世紀後半紀における機関車の発達:我が国において始めて製造したる機関車

【 我が国において始めて製造したる機関車 】

 1893年(明治26年)鉄道傭雇英国人「アール・エフ・トレビシック」氏は、神戸工場において始めて複式機関車を製造したり。これ本邦において機関車製造並びに複式試用の嚆矢とす。当時著者は直接その製造に関与せしをもって、いささかその成績を記して読者の参考に供せんとす。

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 その構造は第 44図に示せるごとく、本邦において多く使用せらるる「ラジアル・タンク」と称する単式機関車とほぼ同形にして、外側式2個「シリンダー」複式とす。

 「レシーバー」は銅管にて製し、その容積は高圧「シリンダー」の2倍に相当せり。「インターセプティング・バルブ」は当時、英国ノース・イースタン鉄道において採用せられたるものと同式にして、「スターティング・バルブ」は内径 1インチ4分の1 の銅管をもって汽缶より蒸気を「レシーバー」に送るの装置を有す。「スモーク・ボックス」はこれらの装置を容るるをもって、同種の単式機関車よりもやや大形なり。

 機関車製造の当時、取極めたる「スライド・バルブ」の運動は第4表に示すがごとし。

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 蒸気の常用圧力は単式とほぼ同じく 150ポンドを採用せり。当時英国における単式機関車の蒸気の常用圧力は 160ポンドなるに対し、複式には 175ポンドの圧力を使用するを例とせり。

 しかして複式機関車の効能はその複式なるに帰因するよりも、むしろ高圧蒸気を使用するの成果なりと思惟する者多かりし。故にこの機関車には特に高圧を使用せずして、かなり単式と同一の状態の下に比較試験をなし、もって複式の有効なるや否やを明らかにせんことを目的とせり。

 この機関車は 25年10月起工し 26年6月竣工せり。試運転の結果良好なりしをもって直ちに神戸京都間、普通列車運転の用に供せられたり。最初の 79日間は同種の単式機関車、第 179号と交番使用して石炭消費の比較を試みたり。次て 27年1月1日より同年 8月31日まで8カ月間、同種の単式機関車中、平素成績の最も優等なる第 88号と同様の比較試験を施行せり。

 これらの試験成績は第5表、および第6表に示すがごとし。

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 第1及び第2回比較試験を施行したる京都神戸間の線路は、一般に平坦にして処々に 100分の1 勾配線ありと言えども、概ね短距離にしてその最長なる個所も 4分の3 マイルに過ぎず。また曲線の最急なるものは半径 20チェーンにして長さ 4分の1 マイルばかりのもの4個所あり。

 両種機関車は同一の時間表により交番使用したるをもって、成績の比較は最も精確なるものと認め得べし。

 列車の種類は旅客混合貨物の3種にして、そのおよそ 5分の3 は旅客なりし。速度は旅客列車において平均1時間に付き 20マイル、貨物列車において 16マイル余なりし。

 第5表及び第6表に示せるごとく、複式が単式に比し点火に要する石炭の消費やや多量なるは、その汽缶やや大なるによるべく。また内部「ファイア・ボックス」に 16分の7 インチ鉄板を使用したるをもって、単式における同じ厚さの銅板なるに比して伝熱上、大いに不利益の地位にありたるものとす。

 複式機関車はその後何らの異状を呈せずして運転し来り。石炭の消費は常に1割5分ないし2割の節約を証しつつありしが、なお 29年より 31年にわたる2年間における成績を同種の単式機関車と対比すること、第7表及び第8表に示すがごとし。

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2022年6月23日 (木)

機関車工学:上巻(その59)19世紀後半紀における機関車の発達:グレーター・ブリテン

【 「グレーター・ブリテン」 】

 1891年ロンドン及びノースウェスタン鉄道の汽車課長「ウェッブ」氏が、同鉄道の「クルー」工場において製造したる「グレーター・ブリテン」と称する複式機関車は、前に述べたる3個「シリンダー」式にして、2個の高圧「シリンダー」は「フレーム」の外側にありて後部の動輪を運転し、1個の低圧「シリンダー」は内部にありて前部の動輪を運転す。

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 同種機関車中「グレーター・ブリテン」の特別なる構造は、汽缶を延長し「チューブ」を2部に分割して、その中間に燃焼室を設けたるにあり。後部の「チューブ」の長さは5フィート 10インチにして、前部の「チューブ」は 10フィート1インチとす。この機関車には同氏発明の「ラジアル・アクスル・ボックス」を導輪及び従輪に応用せり。

 3個「シリンダー」複式機関車は同氏監督の下に多数製造せられたれども、1920年「ウェール」氏替わって汽車課長となるに至りその使用を廃止し、またはこれを単式に改造したり。

 

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2022年6月22日 (水)

機関車工学:上巻(その58)19世紀後半紀における機関車の発達:アダムス氏の機関車

【 「アダムス」氏の機関車 】

 1890年ロンドン及びサウスウェスタン鉄道の汽車課長たりし「ウィリアム・アダムス」氏は、「ロンドン」の「ナイン・エルムス」における同鉄道の工場にて 20台の強大なる機関車を製造したり。

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 この機関車は第 42図に示せるごとく、4輪「ボギー」を有する4輪連結式にして「シリンダー」は外側式とす。「テンダー」は6輪車にして水 3300「ガロン」を容る。機関車及び「テンダー」は蒸気制動機を有し、また真空制動機を備う。

 

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2022年6月21日 (火)

機関車工学:上巻(その57)19世紀後半紀における機関車の発達:ワーズデル氏の複式機関車

【 「ワーズデル」氏の複式機関車 】

 1889年「ティー・ダブリュー・ワーズデル」氏がノース・イースタン鉄道の汽車課長となり、単一動輪式2個「シリンダー」の複式機関車を製造したり。試験の結果、2個「シリンダー」式は「ウェッブ」氏の3個「シリンダー」式に比し、その成績良好なるを証したるをもって氏はこの式によって多数の機関車を製造したり。

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 第 41図に示せるは最近の設計に係わるものにして、「バルブ・ギア」は「ジョイ」式にして、「スターティング・バルブ」は「ワーズデル」及び「フォン・ボリス」式と称するものを採用せり。

 蒸気の常用圧力は 200ポンドなりしが、その後これを 175ポンドに低減したり。当時この機関車は英国における最大なる機関車にして、動輪上の重量割合に軽きをもって粘着力やや乏しきの感ありしも、「サンド・ボックス」より蒸気をもって砂を噴出せしむるの装置を施し、比較的重大なる列車を牽引するに充分なることを証したり。

 試運転の際は 270トン(機関車及び「テンダー」を除く)の列車を牽引して、1時間78マイルの速度をもって走行したりと言う。

 

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2022年6月20日 (月)

機関車工学:上巻(その56)19世紀後半紀における機関車の発達:ホールデン氏の機関車

【 「ホールデン」氏の機関車」 】

 当時グレート・イースタン鉄道の汽車課長「ジェームズ・ホールデン」氏が、「ストラトフォード」工場において多数製造したる4輪連結機関車は、前部に一対の導輪を有する形式にして、導輪の車軸は「フレーム」の内外に「ジャーナル」を有し、もってその摩擦面積を増大しあり。その重要なる寸法及び重量等、左のごとし。

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 この機関車は主として重き急行列車用として採用せられたりしが、「ホールデン」氏はまた軽量なる列車用として単一動輪式をも採用せり。氏はまた機関車に重油を使用する方法を設計し、種々有益なる試験を遂げこれを実用に供したりし。けだし現今各国に採用せらるる重油使用の方法は、「ホールデン」氏の実験に負うところ少しとせず。

 

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2022年6月19日 (日)

機関車工学:上巻(その55)19世紀後半紀における機関車の発達:ミッドランド鉄道の機関車

【 「ミッドランド」鉄道の機関車  】

 「ミッドランド」鉄道の汽車課長たりし「エス・ダブリュー・ジョンソン」氏は 1876年以来、第 40図に示せる形式を採用し同形の機関車 190台を製造したり。「シリンダー」の直径は 17インチないし 19インチなり。

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 当時蒸気の圧力は通常 140ポンドなりしが、1885年以来は 160ポンドをもって常用圧力と定めたり。動輪の直径は7フィートにして、動輪上の重量は 28トン以上なるをもって重大なる急行列車を牽引するに適せり。

 同形式の機関車にして「ビートライス」と称するものは 1887年「ソルテア」博覧会に出品せられ、且つ爾来御料車を牽引するに供せられたるをもって有名なり。

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2022年6月18日 (土)

機関車工学:上巻(その54)19世紀後半紀における機関車の発達:グラッドストン

【 グラッドストン 】

 1882年「ストラウドリー」氏は、「グラッドストン」と称する強力なる急行列車用4輪連結機関車を「ブライトン」工場において製造したり。「シリンダー」は直径 18インチ4分の1、「ストローク」26インチにして、動輪の直径は6フィート6インチなり。

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 第 39図に示せるごとく車輪の総数は三対にして、連結車輪は「ファイア・ボックス」の前部に置かる。この配置は第 37図に示せる形式に比すれば「カップリング・ロッド」を短縮するに便利なるのみならず、「ファイア・ボックス」を後部に延長し得るをもって大形なる汽缶を使用するに適当なり。

 しかれどもこの形式は、前部連結車輪の「タイヤ」の「フランジ」が速かに磨滅して不便少なからざりしをもって、急曲線において「フランジ」と軌条との摩擦を減殺せんがため、逃出蒸気の幾分を細き銅管に導き、もって前部連結車輪の「フランジ」に吹き付くるの装置を施したり。「テンダー」は車輪三対を有し、石炭2トンと水 2250「ガロン」を搭載せり。同種機関車中「エドワード・ブラウント」と称するものは、1889年「パリ」博覧会に出品せられ金牌を得たり。

 「グラッドストン」形式は、長大なる旅客列車を牽引するに適当なるは明かにして、ロンドン「ブラントン」間 50マイル半の急行用に供せられ大いに効果を奏したりと言えども、当時世人の希望は同区間を1時間内に旅行するにありしをもって、軽量なる列車には7フィートまたは7フィート6インチの動輪を有する、単一動輪式もまた大いに重用せられたり。しかして氏、自らもまた急行用としては前部に連結車輪を置くの不利益たるを感じたるもののごとし。

 同種機関車は米国「ウェスチングハウス」自動空気制動機を備え、「リバーシング・ギア」は圧搾空気を利用して動作するよう装置しあり。また「スライド・バルブ」は「シリンダー」の下部に取付けあり。

 

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2022年6月17日 (金)

機関車工学:上巻(その53)19世紀後半紀における機関車の発達:ウェッブ氏複式機関車

【 「ウェッブ」氏複式機関車 】

 1882年「ロンドン及びノースウェスタン」鉄道の汽車課長たりし「エフ・ダブリュー・ウェッブ」氏は、「クルー」工場において「エクスペリメント」と称する複式機関車を製造したり。

 この機関車は2個の高圧「シリンダー」と1個の低圧「シリンダー」とを有し、高圧「シリンダー」は「フレーム」の外側にありて後部の動輪を運転し、低圧「シリンダー」は内部にありて前部の動輪を運転するよう装置しあり。

 この設計は2対の動輪を連結するの必要なきをもって、「カップリング・ロッド」に基因する抵抗を減じ、運転の工合良好なるのみならず石炭もまた節約せられたるをもって、同形式の機関車は「クルー」工場において多数製造せられたり。

 この形式の特長と称せらるる点を列挙すれば左のごとし。

 1.機関車が良く平均せらるるをもって、高速度にて運転するも動揺比較的少なきこと。

 2.機関車の動力が全く2軸に分配せらるるをもって、器機部その他諸部に対する内力を減ずること。

 3.2軸における粘着力が、「カップリング・ロッド」を用ひずして利用せらるること。

 4.両動輪軸の距離は、「カップリング・ロッド」を用うる場合よりもはるかに延長し得るをもって、大なる「ファイア・ボックス」を容れるに便なること。

 5.各動輪独立せるをもって、曲線を通過するに容易なること。また設計上必要あるときは、各対における動輪の直径を異にするも妨げなきこと。

 複式機関車の成績は当時大いに世人の注目する所となりしが、一般に単式の利を主張する者多く、複式によって仮に石炭の節約を証したりと言えども、その複式なるに帰因するにあらずして高圧蒸気を使用するの結果なりとし、爾来複式対単式の石炭節約の問題は種々試験せられ、大いにその成績を競争するに至りたりしが、要するに同形にして同重量なる2式機関車の成績は常にほとんど同一にして、時として単式が複式を凌駕したる場合もありて、英国における複式機関車の発達はこれがために大いに圧せられたり。

 

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2022年6月16日 (木)

機関車工学:上巻(その52)19世紀後半紀における機関車の発達:グローブナー

【 グローブナー 】

 1874年「ウイリアム・ストラウドリー」氏は、「ブライトン」鉄道の工場において「グローブナー」と称する機関車を製造したり。

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 この機関車は第 38図に示せるごとく単一動輪式にして、ロンドン「ブライトン」間急行列車に使用せられ、22両の客車を牽引し常に正確なる運転をなしたり。

 またこの機関車は 1875年「ニューアーク」における「ブレーキ」試験に供せられ、また 1878年より 1879年に至る有名なる「ゴートン」氏の「ブレーキ」試験にも使用されたるをもって著名なり。

 

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2022年6月15日 (水)

機関車工学:上巻(その51)19世紀後半紀における機関車の発達:4輪連結4輪ボギー

【 4輪連結4輪「ボギー」 】

 1873年「グラスゴー」及びサウス・ウェスタン鉄道の汽車課長たり「ジェームズ・スターリング」氏は、始めて第 37図に示せるごとき、4輪連結式、4輪「ボギー」式、及び内側「シリンダー」式を混用したる機関車を設計したり。「シリンダー」は直径 18インチ、「ストローク」26インチなり。

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 かかる大形なる「シリンダー」を内側式となし、両「シリンダー」間に「スチーム・チェスト」を置きたるは氏の設計をもって始めとす。この種の機関車は該鉄道において今なお基本の形式として採用せらるる。氏はまたその後直径 19インチの「シリンダー」を有する同式の機関車を、サウス・イースタン鉄道の急行列車用機関車として採用したり。

 この形式は旅客列車用機関車として最も適当にして、今なお各国において広く使用せらるるをもって、これを近世機関車の元祖と称す。

 

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2022年6月14日 (火)

機関車工学:上巻(その50)19世紀後半紀における機関車の発達:我が国における最初の鉄道及び機関車

【 我が国における最初の鉄道及び機関車 】

 1871年英国よりは初めて我が国機関車を輸入せり。第1号形式は「タンク」機関車にして第 35図に示すがごとく。

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 第2号形式は「テンダー」機関車にして第 36図に示すがごとし。

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 前者は工事用及び貨物列車用等に用いられ、後者は旅客貨物並びに混合列車用に供せられたり。

 そもそも我が国おける鉄道の計画は、明治2年(1869年)に起こり、その事業に着手したるは明治3年(1870年)、技師長として英人「エドモンド・モレル」氏を聘し、まず東京横浜間、次に大阪神戸間を測量したるに始まる。

 明治5年5月7日(1872年)に至り、品川横浜間の線路まず竣工し仮営業を行う。これを我が国鉄道の嚆矢とする。幾ばくもなくして品川新橋間また落成したるにより、明治天皇陛下ご臨幸ありて親しく開業の盛典を行わせ給えり。実に明治5年9月12日のことなりき。

 明治7年5月11日(1874年)、神戸大阪間の線路もまた竣工し同日よりまず仮営業を行い、同年12月に至り客貨全般の運輸開業をなせり。これを我が国東西における鉄道の発端とす。

 

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2022年6月13日 (月)

機関車工学:上巻(その49)19世紀後半紀における機関車の発達:4輪連結旅客列車用機関車

【 4輪連結旅客列車用機関車 】

 当時旅客列車用機関車は概ね単一動輪式なりしが、「ミッドランド」鉄道の汽車課長たりし「マシュー・カートリー」氏は重大なる旅客列車用機関車の必要を感じ、第 34図に示せるごとき前部に1対の導輪を有する4輪連結式を採用したり。


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 「シリンダー」は直径 17インチ、「ストローク」24インチにして、動輪の直径は6フィート8インチなり。「フレーム」は二重にして、導輪は内外に「アクスルボックス」を有す。「テンダー」は6輪を有し、水 2000「ガロン」、石炭4トンを搭載せり。

 この機関車は粘着力多く牽引力もまた大なるをもって、爾来多数製造せられたる形式にして、今なお運転に供せられ成績すこぶる良好なりと言う。

 

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2022年6月12日 (日)

機関車工学:上巻(その48)19世紀後半紀における機関車の発達:単一動輪4輪ボギー

【 単一動輪4輪「ボギー」 】

 1870年グレートノーザン鉄道の汽車課長たりし「パトリック・スターリング」氏は、第 33図に示せるごとき単一動輪式にして、前部に4輪「ボギー」を有する機関車を製造したり。氏は大形なる車輪を用いるには「クランク」を内側に置くをあたわざるをもって、外側「シリンダー」を採用したり。

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 この形式はその後同鉄道において多数製造せられ、1887年「ニューカッスル」の博覧会に出品せられたる。同種機関車の主なる寸法重量等は図に示すがごとし。

 同氏はその後「シリンダー」を内側式となしたりしが、運転の成績はこれを外側式に比して等差を認めざりしといえども、高速度をもって走行する場合において、内側式は運転の工合比較的円滑なることを証したり。けだし内側式は機関の平均比較的良好なれば、理論上当にしかるべきことなり(平均量の理論参照)。

 

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2022年6月11日 (土)

機関車工学:上巻(その47)19世紀後半紀における機関車の発達:汽缶中心の高上

【 汽缶中心の高上 】

 1861年ロンドン及びノースウェスタン鉄道の南部汽車課長たりし「ジェイ・イー・マコンネル」氏は、内側「フレーム」を有する3台の大形なる機関車を製造したり。その主なる寸法及び重量等は左に示すがごとし。

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 この機関車は軽量なる列車を牽引するときは1時間 80マイルの速度を有し、また 150ポンドの高圧蒸気を使用したると、汽缶の中心を著しく高上したるとをもって有名なり。

 「ゲージ」の競争中は主として動輪の直径を増大したりしも、同時に汽缶の中心を低下することを勉めたりしが、「マコンネル」氏はつとに汽缶を高上するの害なくして却って運転の工合円滑なることを主張したり。

 当時何人もこれを信ずる者なく、却ってこれを一笑に付したるもののごとし。しかれども氏は多年経験の結果、深くその合理的なることを了解したるは卓見なりと言うべし。

 氏はまた高圧蒸気を使用するは理論上利益あるはもちろん、実地において決して不便なきことを証したる等、斯道のため大いに改良の端緒を開きたり。

 

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2022年6月10日 (金)

機関車工学:上巻(その46)19世紀後半紀における機関車の発達:走行中の給水装置

【 走行中の給水装置 】

 「ラムズボトム」氏は、運転中「テンダー」に水を酌み取る方法を発明したり。

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 その方法は第 32図に示せるごとく、両軌条間に設備しある水槽中より、機関車の進行力を利用して水をすくい上げするものにして、給水のため中間駅に停車するの時間を省略することを得べく、急行列車には至極便利にして大いに好評を博したり。

 水槽は幅 17インチ、深さ6インチ、長さ約 1500フィートにして、水の深さ4インチなり。水槽には自動弁を備え水の深さ4インチ以下になりたるときは、自然に弁を開きて他の貯水器より水を槽中に補充するの装置を有す。

 水槽の両端における底部各 210フィートは、軌条と共に約 200分の1 の勾配をもって上に傾きて水を保てり。故に水槽の底と軌条面とは常に同一の間隔を有するをもって、「テンダー」の水管はいかなる場合においても水槽に触るることなし。

 同氏はまた初めて「ジファール」氏発明の「インジェクター」を機関車に応用せり。

 

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2022年6月 9日 (木)

機関車工学:上巻(その45)19世紀後半紀における機関車の発達:石炭の使用・プロブレム

第6章 19世紀後半紀における機関車の発達

【 石炭の使用 】

 1853年頃までは各鉄道にて機関車の燃料として概ねコークスを使用し居たりしが、爾来コークスの代わりに石炭を使用することを勉め、あるいは燃焼室を設け、あるいは「グレート」の構造を変更したる等種々の設計を凝したり。

 しかるに 1859年頃「ミッドランド」鉄道は試験の結果、従来の汽缶にして「チューブ・プレート」の下方に「ブリック・アーチ」を取付け、「ファイア・ホール」に「バッフル・プレート」を備え、また「ブロワー」にて空気の供給を加減せば、もって石炭を充分に燃焼し大いに黒煙の噴出を減殺することを証したり。


【 プロブレム 】

 1859年ロンドン及びノースウェスタン鉄道の汽車課長たりし「ジョン・ラムズボトム」氏は、第 31図に示せるごとく内側「フレーム」、外側「シリンダー」をもって、「プロブレム」と称する機関車を製造したり。「シリンダー」は直径 16インチ、「ストローク」24インチ、動輪の直径は7フィート7インチ半なりし。

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 この機関車は成績はなはだ良好なりしをもって多数製造せられ、近頃まで健在してその速度、他式の機関車を凌駕し居たり。

 

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2022年6月 8日 (水)

機関車工学:上巻(その44)広狭軌間の戦争時代:3フィート6インチの狭軌鉄道

【 3フィート6インチの狭軌鉄道 】

 3フィート6インチ軌間の鉄道を有する国は、日本、オーストラリア及びアフリカにして、欧州にはほとんどその跡を絶ち、中央及び南アメリカの一部にも存在すれども挙ぐるに足らず。

 オーストラリアには5フィート3インチ、4フィート8インチ半、及び3フィート6インチの三種併用せられども、3フィート6インチの軌間最も広く行われ、「クイーンズランド」及び西オーストラリアの2州は全部これにより、その隣島「ニュージーランド」及び「タスマニア」の2島の分を合算すれば1万マイルに及べり。

 またアフリカにおいても4フィート8インチ半、3フィート6インチ及び1メートル等の軌間混用せらるれども、喜望峰「ナタール」「オレンジ・リバー」「トランスバール」の諸州、及びエジプトの一部、並びにエジプト「スーダン」等は、ほとんど全部3フィート6インチ軌間を採用しその全長8千マイルに達し、遂には「カイロ」市と「ケープ・タウン」市とを連絡すべきアフリカ縦貫鉄道は全て3フィート6インチ軌間によらんとす。

 3フィート6インチ軌間の世に出でて実用に供せられたるは 1860年代に在り。当時英国植民地、ことにオーストラリア及びインドにおいては既に広軌鉄道を採用し居たりしに、これを延長するに従い多額の建設費を要し、且つ地方の状況によりては運輸上何ら広軌によるの必要なく、財政また意のごとくならざりし。

 結果植民地には狭軌鉄道を専用または併用すべきの議起こりて、南オーストラリアには 1867年より3フィート6インチを、従来の5フィート3インチと併用するに決し。

 南アフリカにおける喜望峰州には 1870年、鉄道創立の始めより3フィート6インチを採用せり。

 インドにおいても 1870年広軌と狭軌とを併用するの議を決したれども、狭軌に付いて3フィート6インチと3フィート9インチの両説を生し、有力なる技師等は3フィート6インチに賛成したりしも、時のインド総督は十進法を好みてメートル軌間を実行せり。故に3フィート6インチ軌間はインドに行われざりしと言えども、植民地鉄道用としてはむしろ3フィート6インチを採用すべきこと、当時英国の世論なりし。

 読者よ、我が国において京浜間に鉄道敷設の議を決したるは明治2年、すなわち西暦 1869年なりしを記憶せよ。しかしてまた鉄道に関する斡旋は時の英国公使「サー・ハリー・パークス」氏にして、技師長として英人「エドモンド・モレル」氏がオーストラリアより来航せるはその翌年、すなわち 1870年4月なりしを記憶せよ。

 当時我が国の財政ははなはだ困難にして、時の大蔵大臣大隈重信及び大蔵次官伊藤博文の両氏が、その資金を得るに苦心せし事情を顧みれば、軌間の問題はほとんど何らの議論なくして3フィート6インチに決したること推測するに難からず。

 

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2022年6月 7日 (火)

機関車工学:上巻(その43)広狭軌間の戦争時代:各国における鉄道の軌間

【 各国における鉄道の軌間(gauge) 】

 我が国における鉄道の軌間は3フィート6インチにして、軌条の重量は1ヤードに付き 60ポンドなるを普通とし、主要なる区間は漸次 75ポンドに変更せられつつあり。

 欧米における一般の鉄道は4フィート8インチ半の軌間を採用せるをもって、通常これを基本軌間(standard gauge)と称し、これより大なるものを広軌とし小なるものを狭軌と称せり。

 広軌鉄道にして現存するものは英国のアイルランドにおける5フィート3インチ、インドの5フィート6インチ、スペインの5フィート5インチ4分の3、オーストラリアの5フィート3インチ、ロシアの5フィートを主とし、その他南米諸州に5フィート3インチ及び5フィート6インチのもの散在せり。

 基本及び広軌鉄道における軌条の重量は1ヤードに付き 50ポンドないし 100ポンドにして、はなはだまちまちに渡れども主要なる区間には 75ポンド以上のものを採用するもの多し。

 狭軌鉄道は3フィート6インチ、3フィート9インチ、1メートル( 3フィート3インチ8分の3 に当たる)、3フィート、2フィート6インチ、2フィート等種々ありと言えども、メートル軌間は最も広く行われその範囲基本軌間に次ぎ、欧州大陸、インド、南アメリカ及びアフリカ等に散在せり。

 


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2022年6月 6日 (月)

機関車工学:上巻(その42)広狭軌間の戦争時代:戦争の結果

【 戦争の結果 】

 軌間の戦争時代に製造せられたる機関車中には、その成績良好なるものありしと言えども、動輪の直径概ね過大に失し、実用上不利益の点少なからざるは一般の認識する所となり、この戦争は 1853年頃より漸次衰退して、爾来経済上無益の設計をなす者なく各自適当なる形式を採用するに至りたり。

 またこの戦争は一般に広軌の利益を非認したるものにして、グレート・ウェスタン鉄道の広軌線は 1892年に至りて、全く基本軌道(4フィート8インチ半)に改築せられたり。

 軌間の戦争は徒らに機関車の速度を戦わしたるの観ありて、得る所はなはだ鮮少なりしもののごとしと言えども、この戦争は機関車の構造に関して大いに当時の技術者を煩わしたるものにして、為めにその改良せられたるもの少なからず。けだし機関車発達上、実に偶然の好機会たりしものとす。

 

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2022年6月 5日 (日)

機関車工学:上巻(その41)広狭軌間の戦争時代:9フィートの動輪

【 9フィートの動輪 】

 1853年「ブリストル及びエクジター」鉄道(広軌)の汽車課長「ピアソン」氏は、広軌鉄道の主張者にして「コーンウォール」の成績を聞き、なお大形なる機関車を製造し、これを凌駕するの念禁ずるあたわず。すなわち「ロスウェル」会社に命じて大なる「タンク」機関車を製造せしめたり。

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 この機関車は第 30図に示せるごとく単一動輪式にして、前後に4輪「ボギー」を有す。「シリンダー」は直径 16インチ半、「ストローク」24インチ、動輪は直径9フィートにして、1時間 81マイルの速度をもって運転しその成績良好なりしが、動輪過大にして危険の恐れあるをもって、後ちこれを減じて8フィートとなし、またこれに「テンダー」を付け加えたり。かく改造せられたる機関車中 1892年まで使用に供せられたるもの数台あり。

 

 

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2022年6月 4日 (土)

機関車工学:上巻(その40)広狭軌間の戦争時代:リバプール

【 リバプール 】

 その他狭軌用機関車にして「グレート・ウェスタン」を凌駕したるものは、「ティー・アール・クランプトン」氏の設計に係わる「リバプール」なりとす。

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 この機関車には同氏がかって発明したる形式を応用し、第 29図に示せるがごとく汽缶の中心を低下するの目的をもって、動輪を「ファイア・ボックス」の後部に置きたり。

 この機関車もまた軽量なる列車を牽引するときは1時間 79マイルの速度を出したり。しかれども当時軌条の構造薄弱にして、かかる大形なる機関車を運転するに適せざるのみならず、輪軸距長きに過ぐるをもって、後ちこれを急行列車用として使用することを中止したり。

 もし軌条の構造堅牢にして前部2対の車輪をして「ボギー」たらしめば、この機関車もまた優勝なるものの一つに算せられたりしならんか。

 

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2022年6月 3日 (金)

機関車工学:上巻(その39)広狭軌間の戦争時代:コーンウォール

【 コーンウォール 】

 「グレート・ウェスタン」の成績良好なるを聞き、狭軌鉄道はいずれもこれに匹敵すべき機関車を得んことを欲したりしが、1847年ロンドン及び北西鉄道の「エフ・トレビシック」氏の設計にして、同鉄道の「クルー」工場において製造せられたる「コーンウォール」と称する機関車には、直径8フィート6インチの動輪を使用したり。「シリンダー」は直径 17インチ半、「ストローク」24インチなりし。

 この機関車は成績良好にして1時間 79マイル余の速度を有し、優に「グレート・ウェスタン」を凌駕したるをもって有名なり。また4フィート8インチ半の軌間において前後未曾有の大形動輪を有するをもって有名なり。

 この機関車は汽缶の中心を低下するの目的をもって、その胴部を車軸の下に置きたりしが、1862年「ジョン・ラムズボトム」氏は新たに汽缶を製造しこれを車軸の上部に置きたり。

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 第 28図はかく改造したるものにして、近頃まで「マンチェスター及びリバプール」間急行列車用に供せられ、最高速度を有するをもって有名なり。

 

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2022年6月 2日 (木)

機関車工学:上巻(その38)広狭軌間の戦争時代:グレートウェスタン

【 グレート・ウェスタン 】

 1838年より 1845年に至る間は軌間の競争最も盛んなる時代なりしが、当時広軌(7フィート)において為し得る事は、全て狭軌(4フィート8インチ半)においても為し得られざる事なきを証したり。

 故にグレート・ウェスタン鉄道の汽車課長たりし「サー・ダニエル・グーチ」氏は、競争上一の強大なる機関車を設計し、1846年これを同会社の「スウィンドン」工場において製造したり。これを「グレート・ウェスタン」と命名せり。この機関車は6輪式にして、動輪は直径8フィート、「タイヤ」に「フランジ」を有せずこれを最大動輪の極限と仮定したり。

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 第27図に示せるは、後ちこれを改造して8輪式となしたるものにして、今なお「スウィンドン」工場に保存しあり。

 この巨大なる機関車は運転の成績良好にして 1870年まで使用に供せられ、1時間78マイルの速度を出し、効率もまた大にして石炭の消費高1時間1馬力に付き2ポンド半なりしと言う。

 

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2022年6月 1日 (水)

機関車工学:上巻(その37)広狭軌間の戦争時代:外側式シリンダー

【 外側式「シリンダー」 】

 これより先「アレキサンダー・アラン」氏が、「グランド・ジャンクション」鉄道の汽車課長となりし時、氏は外側式「シリンダー」の利益を主張し、氏が同会社の「クルー」工場において多数製造したりしものは全てこの方式に従い、湾曲車軸を排して真直車軸となし、動輪の「アクスル・ボックス」は全て「フレーム」の内側に置かれ、「コネクティング・ロッド」は直接車輪上の「クランク・ピン」に連結せられたり。

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 第 26図は 1843年、この方式によって製造せられたる貨物列車用機関車の一例を示したるものにして、前部に導輪を有する4輪連結式なり。

 旅客列車用機関車は単一動輪式にして前後に小輪を有す。動輪の直径は旅客列車用機関車において5フィート6インチ、または6フィート。貨物列車用機関車において5フィートとす。

 「シリンダー」はいずれも直径 15インチ、「ストローク」20インチなりし。これを「クルー」形式と称し同氏監督の下に多数製造せられたり。また同氏は真直「リンク・モーション」を発明したり。

 1843年、ロンドン及び南西鉄道の汽車課長「ジョン・ブィ・グーチ」氏は「クルー」形式を採用し、旅客列車用機関車に直径7フィートの動輪を使用したり。

 

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