機関車工学:上巻(その36)広狭軌間の戦争時代:バルブギアの改良
【 「バルブ・ギア」の改良 】
当時「バルブ・ギア」は、「スティーブンソン」会社の採用し居たりし「フォーク・モーション」と称するもの最も広く用いられたり。
第 25図に示せるごとく2個の「エキセントリック」は動輪軸に取付けられ、「エキセントリック・ロッド」の末端にはハリ、すなわちツバ口ありて、「バルブ・スピンドル」とつながれる桿の一端にある「ピン」を噛み得るの装置なり。
「リーバーシング・シャフト」を動かせば、このツバ口の一個は「バルブ・スピンドル」に連続せられて、あるいは前進となり、あるいは後進となる。
この装置はようやくもって「リバーシング・ギア」の目的を達し得ると言えども、その「カット・オフ」は一定不変にして、且つ常に「フル・ギア」をもって動作するが故に機関の力を加減するに不便なりし。
1842年「スティーブンソン」会社の工場に「ウィリアム・ウィリアムズ」といえる一青年ありしが、この人初めて前進と後進とにおける「エキセントリック・ロッド」の両端を、弧状の「リンク」にて連結することを案出し、模型職工長「ウィリアム・ホー」氏にそのひな型を製作せんことを求めたり。
「ホー」氏これにいく分の改良を加え 1843年ついにこれを実地に応用したり。これぞ有名なる「スティーブンソン・リンク・モーション」と称するものにして、爾来広く機関車に採用せられたるのみならず、海陸における全ての蒸気機関に応用せらるるに至りたり。
「リンク・モーション」は「フォーク・モーション」を改良したるものにして、些細なる発明なるがごとしと言えども実は非常なる発明にして、「カット・オフ」を自在に加減し、機関の力を整調し得ること、高速度の機関に応用し得ること、取扱いの簡易なること、保存の長久なること等はその特点にして、これがため一般蒸気機関に一大革新を促したるのみならず、発明以来今日に至るまで盛んに世に重用せらるるもの、この「リンク・モーション」のごときはほとんど稀なり。
最近のコメント