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2022年3月の記事

2022年3月31日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その300)動力車の将来に対する問題:ガソリン機関とディーゼル機関の比較

(4)ガソリン機関とディーゼル機関の比較

 ガソリン機関とディーゼル機関の得失に付いて述べると、次のごとくである。

 (イ)ディーゼル機関は燃料費が経済である。もちろん重油とガソリンの市価によっても相違するが、我が国の現状からみると大体ガソリン機関による燃料費の25~45%位で良い。これらの使用成績を例示すると次のごとくである。

 (1)鉄道省におけるキハ41000形には100馬力ガソリン機関が使用されているが、これと全く同じ車体に100馬力のディーゼル機関を取り付けたキハ41500形との比較試験の成績は、次表のごとくである。(昭和10年12月)

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 (2)新潟鉄工所において自動車機関に付いて、全く同一条件の下における試験成績は次の通りである。


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 (ロ)ディーゼル機関に使用する燃料は引火点が高いから、火災に対する危険性が少ない。従って衝突、転覆当に際して火を発して被害を大きくする様な事がない。

 (ハ)ディーゼル機関はガソリン機関に比し値段が高い。これはディーゼル機関はシリンダー内の爆発力が非常に高いから、設計、製作、材料等の難しいこと、ならびにシリンダー容量当たりの馬力が少ない。なおガソリン機関は大量生産の結果、いっそう安価な点もあるので将来ディーゼル機関が発達してくれば、この開きも次第に少なくなるものと期待される。

 (二)従来ディーゼル機関は、馬力当たりの重量がガソリン機関に比し重いものと考えられていたが、高速ディーゼル機関においては回転数、重量、容積等ほとんど差が無い。

 (ホ)ディーゼル機関は騒音が大である。この点、気動車や自動車として特に欠点とする所であるが、燃焼の機構や燃焼室の形状に関する研究により、漸次改良されつつあり、気動車の走行中においては他の振動や騒音のため、特にディーゼル機関の騒音が気付かぬ程度にまで進んできた。

 

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2022年3月30日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その299)動力車の将来に対する問題:ディーゼル機関の発達

(3)ディーゼル機関の発達

 内燃動車は将来ますます発達する事と思われるが、要は液体燃料の供給いかんによって決定される問題である。

 内燃動車は初めガソリン機関に採用するものが多かったが、最近ではいわゆる高速度ディーゼル機関が非常に進歩してきたため、次第にこれを採用するものが多くなり、最近ではガソリン機関はごく小馬力のもののみに限られ、大部分がディーゼル機関を使用する様になってきた。ことに最近の大馬力高速度車両は、例外なくディーゼル機関を採用している。

 我が国の内燃動車はガソリン動車が多く、ディーゼル動車は少ないが、将来は必ずディーゼル動車として発達する事と考えられる。ディーゼル機関は全ての熱機関の中で最も熱効率が高く、使用燃料も安価で最も経済的なることは早くから知られており、陸用および船舶の原動機として非常な発達を遂げていた。しかし鉄道車両や自動車方面に対する、小形軽量のものは全く発達していなかった。

 それは重量と大きさが制限される結果、いきおい機関車高速なることが必要となり、そうなると非常な短時間の間に、粗悪な燃えにくい重油を完全に燃焼させることを要し、燃焼室の形状や燃料ポンプの構造が難しくて、なかなか成功しなかった事と、一面かような用途に対しては既にガソリン機関がかなりの発達を遂げ、独占的な存在となっていたためであろう。

 ところが最近(大体1930年以降)この方面に対する研究が非常に盛んになり、燃焼室の形状や燃焼に対する研究が進んだ結果、今日ではガソリン機関に比し重量、回転数等が少しも変わらぬ立派なものができる様になったので、内燃動車はもちろん、自動車にも非常な勢いで採用されつつある状態である。

 

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2022年3月29日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その298)動力車の将来に対する問題:我が国における内燃動車

(2)我が国における内燃動車

 我が国における内燃動車としては、民間鉄道会社においても相当使用されており、昭和3年私設鉄道に採用されたガソリン動車を初めとし、その後、昭和8、9年頃より相当使用される様になった。

 鉄道省では昭和4年7月に、キハ5000形式と称する2軸三等車の国産ガソリン動車を使用し始めたが、これは4シリンダーで最高出力48馬力であった。

 次に昭和5年、車長20メートルのガソリン動車で付随車1両を牽引するキハ40000形式で、6シリンダー、200馬力、平坦線の最高速度68キロメートル/時を有するものが製作せられ、続いて100馬力機関を有する41000形式が現れ、さらにディーゼル100馬力機関の41500形式、150馬力ガソリン機関の42000形式、150馬力ディーゼル機関の42500形式が現れたが、昭和11年には240馬力2台を有する電気式ディーゼル動車、43000形式(MTM3両編成で480馬力)が出現した。

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  形 式・・・・・・動力車 キハ43000形式(全長20メートル) 付随車 キサハ43500形式(全長17メートル)
  定 員・・・・・・座席 84+68+84=236 立席 22+16+22=60 296人  
  運転整備重量・・・・・・39.22+30.48+39.22=108.92トン
  機関形式・・・・・・4サイクル直列横形頭上弁水冷式
  燃料噴射方式・・・・・・無気噴射
  シリンダー・・・・・・6シリンダー 直径180ミリ 行程200ミリ
  出 力・・・・・・240馬力(1300回転/分)2台
  主発電機・・・連続定格出力 150KW  電圧および電流 625V 250A

 


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2022年3月28日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その297)動力車の将来に対する問題:内燃動車の発達

12.内燃動車

(1)内燃動車の発達

 短距離の旅客輸送には自動車、電車、蒸気動車のごとく、例え1回当たりの輸送単位は小さくとも列車回数の多いことが望ましい。機関車を使用して1~2両の客車を牽引するよりも、客車の一部を仕切ってここに機関を取り付けた方が経済なので、蒸気動車と同じ意味で内燃動車が出現した。

 内燃動車は初め支線用として、閑散なる小単位輸送に使用されたものであるが、漸次性能が優秀となるに伴って、高速度を主とせる幹線の輸送に充当される様になった。

 欧米諸国で内燃動車が、支線用として使用され始めたのは1923年頃であるが、当時はまだ試験時代の域を脱していなかった。1930年頃より軽量大馬力という事が唱えられ、急に飛躍的な進展を示すに至り、ことに1932年にはドイツでマイバッハ410馬力ディーゼル機関2台を取り付けた、2両編成の電気式内燃動車が製作されベルリン、ハンブルグ間287キロメートルを2時間18分で走破し、最大速度160キロメートル、平均時速125キロを出したのを画期とし、続いて米国のユニオンパシフィック会社では、600馬力ディーゼル機関を取り付けた3両編成の軽合金列車を作り、時速160キロメートルを出して各国の高速度運転に対する研究熱を高揚し、1935年に至っては実にその黄金時代の観を呈した。

 かように内燃動車が急激に華々しい発展ぶりを示すと、従来進歩の飽和点に達し行き詰まり観を呈していた蒸気機関車に衝動を与え、その再検討を促した。その結果、蒸気機関車としても、内燃動車に劣らぬ高速度列車の運転を実現するに至った。

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 流線形ディーゼル電気式内燃動車

  全 長・・・・・・41906ミリ(2両編成で)
  定員2等・・・・・・98人(他に喫茶室4人)
  運転整備重量・・・・・・77.4トン
  最高時速・・・・・・160キロメートル
  機関形式・・・・・・4サイクル水冷式
  シリンダー数および配列・・・・・・12シリンダー V 形
  シリンダー径および行程・・・・・・150×200ミリ
  燃料噴射・・・・・・直接噴射式
  連続馬力・・・・・・410馬力
  標準回転数・・・・・・1400回転/分
  燃料消費量・・・・・・180グラム/馬力時
  機関全重量・・・・・・2030キログラム
  馬力当たり機関重量・・・・・・4.7キログラム

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 流線形ディーゼル電気式内燃動車(3両編成)

  空車重量・・・・・・109トン
  定員合計・・・・・・72人(座席40,喫茶室20,展望室12)他に郵便室と荷物室とあり
  機関サイクル・・・・・・2サイクル
  シリンダー数・・・・・・直列8シリンダー
  シリンダー直径および行程・・・・・・203×254ミリ
  出 力・・・・・・600馬力(750回転/分の場合)
  機関重量・・・・・・6000キログラム(1馬力当たり10キログラム)
  最高運転速度・・・・・・180キロメートル

 ブレーキは直通ブレーキであって、高速度における制動力を大にして減速度を一様にするため、運転速度に応じて制動筒圧力を変化させる装置を備えている。試運転に際し、デンバーからシカゴまで1624キロメートルを無停車で13時間5分で走り、平均速度125キロメートル/時、最高180キロメートル/時を出した。

 

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2022年3月27日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その296)動力車の将来に対する問題:電気機関車

11.電気機関車

 鉄道の電気運転は19世紀末に実用化され始めたもので、既に50年の歴史を有している。電気運転は従来の蒸気運転に比し、運輸動力車として幾多の優れている点のある事は一般の認めるところである。

 電化の目的として挙げられる主なるものは

 (イ)隧道区間における煤煙問題の解決

 (ロ)都市近郊における煤煙問題の解決

 (ハ)急勾配区間における輸送力の拡充

 (ニ)都市付近における通勤客輸送(電車運転が大部分である)

 (ホ)高速度運転ならびに高加速度運転による運転時間の短縮

 (ヘ)運転実費の低廉

等であるが、電気機関車の高価なる事ならびに発変電所、架線設備等、幾多余分の費用を要し、総合的にみて蒸気運転に比し十分なる利益を期待し得ない場合が少なくない。もっとも実際問題としては、かかる損益は国情によって大いに趣きを異にし、鉄道線路自体の状態、電力資源の大小、石炭資源の多寡等によって決定される。

 各国電化状態を比較すると次表のごとくである。

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 電気文明の進歩と共に鉄道電化の問題も、漸次具体化の傾向を辿るであろう事は容易に想像されるところである。

 電気鉄道における高速度運転の実例をみるに、1903年ドイツでは電動車により時速210キロの高速度運転を成したもので、普通の車両構造において、時速200キロ程度は十分可能なる事の先鞭を付けたものである。

 近年、欧州各国における大規模の電化が行われ、時速150キロ程度は珍しくなく、ドイツイタリア等においては180~200キロメートル/時のものが現れている。ドイツ国鉄のE19形式電気機関車はその一例であって、1時間定格出力5420馬力を有し、15分定格出力7500馬力を有し、ブレーキは空気と電気の両ブレーキを併用し、時速180キロにおいて制動距離950メートルとの事である。

 150キロメートル/時以上の高速電気車両に対するブレーキとして、空気と電気と併用する事は普遍的傾向で、高速度の時には電気ブレーキのみを作用せしめ、速度が低下するに従って空気ブレーキを動作せしめ、両々相まって強いブレーキを掛け、制動距離を短縮させる。

 イタリア国鉄では、現に営業運転されている同国標準の200キロメートル/時用の3両編成電動車は、試運転で次の様な高速度を出している。

  ローマ⇔ナポリ間 210キロ  平均速度 140キロ

  フローレンス⇔ミラノ 315キロ  平均速度 165キロ

  ボロニア⇔ミラノ 218キロ 平均速度 171キロ(最高203キロ)

 なお都市近郊における通勤者輸送を主とした、短距離運転に対する電車の使命は近時ますます重きを加え、絶対に電車でなければならないかの観を呈している。

 蒸気鉄道の高速度運転必ずしも不可能ではなく、現在蒸気機関車も、電気機関車にも劣らさる高速度を出してはいるが、いずれが容易かといえば電機の勝ることは必定で、将来電気機関車が高速度運転の動力車として相当活躍するものと思われる。

 

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2022年3月26日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その295)動力車の将来に対する問題:ディーゼル機関車

10.ディーゼル機関車

 ディーゼル機関車も近頃発達したものであるが、その実用的発達の顕著なることはタービン機関車や、高圧機関車の比ではない。すなわちタービン機関車や高圧機関車では、構造が複雑で大形のものに付いて計画せねばならぬが、ディーゼル機関車は小形のものに便利で、小形の入換機関車から漸次発達したものである。

 ディーゼル機関は安い重油を燃料とし、且つその熱効率も非常に良く、熱機関としては最高効率の機関で、工業用原動機として、あるいは船舶機関として発達したものである。

 この機関を機関車の原動機とするに当たり、次のごとき不便な点があった。すなわち機関車に使用する様な軽量な機関の製作が困難であること、および機関が一定速度で回転している際に、機関車の速度が自由に変更し得る様な動力伝達装置に、適当なものの無かったためである。

 しかるにその後、高速機関が著しく発達したため、重量の割合に大きな馬力を発生し得る様になり、機関車用として使用し得る軽量のディーゼル機関が出現した。

 機関車用ディーゼル機関の1馬力当たり重量は、機関の大小、製作技術等のいかんによって相当相違するものであるが、欧米の例によると13キログラム/馬力位であり、600馬力位で7~8キログラム/馬力位が普通で、我が国のDD10形式ディーゼル機関車は、600馬力で約12.8キログラム/馬力に当たる。

 機関車全体の重量としては、機関重量の10倍内外となるから相当重いものになる。例えばC57形式機関車(115トン)を1200馬力とすれば、これに匹敵するディーゼル機関車では、機関重量を馬力当たり12キログラムとすれば、12キログラム×1200×10=144トンとなる。

 動力伝達装置としては、100馬力以下の小形のものでは歯車式が採用されているが、大形のものには種々のものが試みられたが、現在では電気式が最も良いとされている。しかし液体式や圧縮空気式も良好で、将来発展の可能性ありと称されている。

 歯車式とは自働車やガソリン動車のごとく、歯車の噛み合わせを変える事によって速度の調整を行うものであり、電気式とはディーゼル機関の回転力で発電機を回して発電し、これを電気機関車の要領で電動機を回し運転するものである。

 液体式動力伝達装置は比較的新しい試みで、効率も良く将来相当使用されるものとして期待されている。

 液体式を次の2種に大別することができる。

  (1)羽根車形(動水力形)

  (2)押出し形(静水力形)

 羽根車形というのは、第1軸(ディーゼル機関の主軸に続く)の羽根車で、液体にエネルギーを与え、これを第2軸の水車の羽根に動力を伝達するものである。

 押出し形というのは、押出し量を変え得るポンプによって圧力ある液体を送り出し、これを水力モーターに導いて動力を伝達するものである。これは西暦1923年~27年頃にかけて大変使用されたが、その成績は良好でなかった。1931年頃から羽根車形が現れ、今や試験時代も過ぎて実用の域に進み将来の発展が期待されている。

 液体式は歯車式等に比すれば、その伝達効率は5%位劣るが次のごとく良好な点がある。すなわちクラッチおよび変速装置の作用を兼有し、切替に対する階段が無くなり、連続的に車の回転に応じ回転力を出すことができ、構造も簡単に、製作費も安く且つ大馬力の伝達に適する等、幾多の優れた点を有している。

 圧縮空気式とはディーゼル機関で空気圧縮機を運転し、この圧縮空気を蒸気機関車で蒸気を使用するごとく作用せしむるもので、一般には使用されていないが、ドイツやイタリア等で研究されている。この式では圧縮空気をシリンダーに作用させる場合、排気ガスで加熱して使用するため、100%を超える様な伝達効率も可能だと称されている。

 我が国におけるDB10形式は、歯車と鎖とを用いて伝達するものであり、DD10形式は電気式である。ドイツに注文して製作したDC10形式は1両歯車式、他の1両は電気式である。

 ディーゼル機関車は内燃動車と共に発展途上にあるものであるが、世界各国とも戦時態勢に置かれ、極力石油資源を大切にするので、機関車等に使用する重油も消費規制の余儀なきに至り、機関車や気動車としては中休みの状態にある様である。

 

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2022年3月25日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その294)動力車の将来に対する問題:タービン機関車

9.タービン機関車

 タービン機関車は、主として欧州において試みられており、ドイツ Krupp 会社の復水式2000馬力のものは、長き試験の後ドイツで実用に供せられ、また Maffei 会社の復水式2000馬力のものは、南ドイツで実用に供せられたと言われている。

 英国の Reid Mc Leod の復水式1000馬力のものは、その成績不明であるが、スウェーデンの復水式2000馬力のものは1927年以来、スウェーデン国有鉄道において日常の列車に使用されている。また復水式のものは英国で作られ、アルゼンチン鉄道にも試用された。その後、スウェーデンでは吐出式のタービン機関車を製作使用中との事で、吐出式はタービン機関車に対する新しい研究問題となっている。

 元来、蒸気タービンが発電所や船舶等に盛んに使用されるに関わらず、機関車用としての発達ははなはだ遅れたのであるが、機関車は常に速度を変化せねばならぬが、この速度変化はタービンの不利益とするところである。また前後進する事も具合の悪い事であるが、最も具合の良くないのは復水装置に対する欠点である。

 復水式で蒸気を冷却するのに、空気でするものと循環水でするものとある。循環水でするものは、その水をさらに空気で冷やす。いずれも構造が複雑なるのみならず、缶の焚火に要する通風も特に送らねばならぬ。

 また前後進のためにする逆転は歯車によるものと、逆転タービンを別に持っているものとある。タービン機関車はこれらの欠点を持っているが、具合の良い時の熱効率は11~12%に達し、普通の蒸気機関車よりはるかに良好である。

 これは主として復水式による利益であるが、復水式として往復機関とするときは、低圧シリンダーが過大となり構造上困難である。

 復水式タービン機関車は熱効率は良いが、構造複雑で製作費も高いため、広く採用されるに至らないのである。

 スウェーデンのユング・ストローム(Ljungström)会社では、これがため吐出式(蒸気を復水せず吐出する)を製作したもので、タービンの改良により、かなり広い範囲において速度の調節可能で、しかも2000馬力以上となれば普通の機関車よりかえって広くなるとの事である。吐出式の成績いかんによっては、将来有望なものとなるであろう。

 吐出式ユング・ストローム機関車の構造に付いて述べると、缶使用圧力は13キロ/平方センチメートル、過熱蒸気温度は400度、タービン馬力は最高2000馬力(普通1370馬力)であり、タービンの回転力を歯車によりジャック軸を回転し、連結棒によって動輪を回転している。

 歯車箱およびタービンは機関車の前方、煙室に接近して据え付けられ、タービンの排気は吐出ノズルから外気中へ逃げる。後進運転は歯車箱内の2個の歯車が外れて、その間に他の中間歯車が噛み合う事により行われ、この操作は運転室内で5~10秒以内にできる。

 タービンは回転力が一様である関係上、同一動輪軸重に対し引張力が大である。例えば10パーミルの上り勾配を1831トンの列車を引っ張った場合、タービンでは軸重72トンに対し、22.2トンの引張力を発揮したのに対し、他の普通機関車では17トンの引張力を出したに過ぎないとの事である。

 また運転も円滑であり、高い回転数になっても機械効率が悪くならないから、普通の蒸気機関車に比し熱効率の高いことも想像に難くない。またタービンは吐出蒸気が一定であるから、石炭燃焼にも好都合である。

 なお発車の際、普通の機関車では加減弁および逆転機を最大ならしめるに反し、タービンではノズルを最小に開くのみで十分である。

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 主要寸法

  動輪上重量・・・・・・72.0トン
  動輪上重量による牽引力・・・・・・21.5トン
  動輪直径・・・・・・1350ミリ
  機関車空車重量・・・・・・90.5トン
  機関車運転整備重量・・・・・・118.5トン
  最高速度・・・・・・60キロメートル/時
  火格子面積・・・・・・3平方メートル
  伝熱面積・・・・・・150.2平方メートル
  過熱面積・・・・・・100平方メートル
  蒸気圧力・・・・・・13キロ/平方センチメートル
  タービンに入る蒸気圧力・・・・・・11.5キロ/平方センチメートル
  タービンを出た蒸気圧力・・・・・・0.25キロ/平方センチメートル
  過熱蒸気の温度・・・・・・400℃

 

 

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2022年3月24日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その293)動力車の将来に対する問題:高圧蒸気機関車

8.高圧蒸気機関車

 高圧とは何キロ/平方センチメートル以上の圧力を指すかは判然しないが、25~100キロ/平方センチメートルを高圧と称し、100キロ/平方センチメートル以上の圧力を最高圧と称する事にしてはとの説もあるが、ドイツでは60キロ/平方センチメートル以上を高圧と称している様である。

 米国デラウェア、ハドソン鉄道では、1924~30年間に缶圧力24.3~34.7キロ/平方センチメートルの水管式缶を有する機関車を作った。従来、水管式缶は缶胴を大にすることができず、缶水容量が少なく、運転中缶水の減少が著しく、過負荷の場合、缶水が低下し易く不成功に終わり、発達しなかったものである。

 現今の缶のごとく給水温め装置を使用すると、缶水を一様に供給できるであろうし、また缶に余裕を持たせて使用すれば、今後良好なる結果を示すかもしれぬ。

 1929年には英国のロンドン・ノース・イースタン鉄道が、ヤーロー(Yarrow boiler)式水管缶を用い、31.7キロ/平方センチメートルの圧力を使用した。水管式の缶は他の式のものも時々試作せられたが、発達の域には達していない。

 60キロ/平方センチメートル以上の缶圧力機関車としては、スイス機関車会社の60キロ/平方センチメートル、ドイツヘンシェル・シュミット(Henschel・Schmidt)式の60キロ/平方センチメートルおよび14キロ/平方センチメートル(同一機関車で二種の圧力を使用する)、およびドイツのシュワルツコップフ・レフラー(SCHWARTZKOPFF-LÖFFLER)式の120キロ/平方センチメートルおよび15キロ/平方センチメートルのものが有名である。

 その例としてドイツのシュワルツコップフ・レフラー式に付いて述べると、この機関車は第107図に示すごときもので、120キロ/平方センチメートルの蒸気を間接加熱で作り、且つ高圧蒸気ポンプを使用して、強制循環を行っている。

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 この機関車は構造複雑で、設計上においては普通形の良き機関車に比し、石炭消費量において、45%の節約可能なる旨であるが、実際の成績は不明である。

 高圧機関車は1930年を中心として、各国で試験的に作られ、試用されたが缶の保守上相当の困難を伴うらしく、炭水消費量との均衡に付いてみるも、あまり大きな利益は望めないらしい。今後の高圧機関車は、高圧を使用することよりも、いかにして高圧機関車の製作費を低下せしむべきかに向かって、発達するのではないかと思われる。

 

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2022年3月23日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その292)動力車の将来に対する問題:蒸気機関車の改良

7.蒸気機関車の改良

 最近における蒸気機関車の改良としては

 (1)缶圧力を高めること

 (2)蒸気の過熱温度を高めること

 (3)弁装置を改良して蒸気の配給を良くすること

 (4)材料を改良して重量の軽減を図ること

 (5)軸受を改良して摩擦ならびに走行抵抗を減ずること

等である。

(1)缶圧力の問題

 缶圧力の問題は、機関車設計の大意のところで若干の説明を試みたが、さらに補足的に述べる。缶圧力は従来12~13キロ/平方センチメートルが、缶の構造ならびに保守および蒸気の効率等、総体的にみて有利なりとして、欧米においても標準圧力のごとく考えられてきたが、最近においてはドイツ、米国等においては著しく缶圧力が高められた。

 缶圧力を高めると、缶の保守が困難となることは普通に考えられる事で、ことに箱形をなしている機関車缶が、はたして高圧に耐え得るか否かが問題となっていた。ドイツでは実際使用上の経験に鑑み、20キロ/平方センチメートル位は差し支えないとされ、25キロ/平方センチメートル位のものも試用されたが、ふつう缶に軟鋼板を使用したものでは材料の疲労の関係もあるので、20キロ/平方センチメートル位を最高とするのが良いと言われている。20キロ/平方センチメートル以上とするには缶に特殊な材料、すなわちニッケル鋼のごときものを使用することが望ましい。

 我が国においても、従来12~13キロ/平方センチメートル位であった缶圧力を、14キロ/平方センチメートルとし、最近の新製車は16キロ/平方センチメートルに高められたが、さらに上昇せしむべしとの説もあり、やがて17キロ/平方センチメートルは実現すべく、遠からず20キロ/平方センチメートル位までは高められる事と思われる。

(2)過熱蒸気の温度上昇問題

 ウィルヘルム・シュミット(Heißdampf-Schmidt)氏によって考案された過熱蒸気の利用は、蒸気機関車に画期的革命を与えたものである。

 過熱蒸気使用の当初においては300度を標準としていたが、その後350度位に上昇され、最近においてはさらに上昇し400度を目標とするに至った。

 過熱装置として従来、大煙管中を2往復した過熱管を改良し、大煙管の代わりに中煙管を使用し、過熱管はその管中を1往復し、さらに次の中煙管中を1往復する様なものもある。また高温加熱の一方法として、火室式が最も有効なるべきは容易に想像されるところで、この方面にも、新しき研究が進められている。

 我が国おいても、中煙管を使用する過熱装置は、車両研究会で研究されているが試験時代に属している。過熱温度を高めるため、過熱面積を増加させることは、現に実行されているところで、従来、全伝熱面積に対し25%位であったが、最近の新製車では30%近くまでに増加されている。

(3)弁装置の改良

 カプロッティ式弁装置(Caprotti valve gear)は既に述べたところであるが、現在のピストン弁に比すれば、はるかに優れていると言われている。

 列車の運転速度はますます昂上され、その割合に動輪直径は大きくできないから、いきおい動輪の毎分回転数を増加し、ピストン速度も増加の余儀なきに至る。

 しかる時はワイヤー・ドローイングの傾向も著しくなってくるから、特殊の弁装置を用いて蒸気口の開閉を瞬間的に行い、且つ蒸気の締切はもちろん、吐出位置をも任意に調整し蒸気の膨張を十分ならしめ、その効率を良好ならしむ弁装置が必要となってくる。

(4)材料の改良

 材料は主として機関車の重量軽減の目的によるもので、気動車には相当思い切った軽合金使用のものが欧米に現れている様であるが、機関車は元来が大馬力発生の動力車であるから、あまり重量を苦にしない状態におかれていた。

 最近、高速度運転や高圧缶のため、局部的に特殊材料が使用され始めたが、あまり発展せず一局部に過ぎない。缶板にニッケル鋼を使用する他、棒類あるいは車軸等に特殊鋼が使用されている。ことに棒類の重量を軽減することは、往復運動部分の釣合上からも望ましい事である。

(5)軸受の改良

 軸受金の改良として第一歩を印したのは、白メタルを使用することであったが、最近においては「コロ軸受」が漸次使用される様になってきた。欧米においては客車や気動車等にかなり広く採用され、機関車に対しても一部に使用されている。満鉄のパシハおよびダブサ形式は、コロ軸受が動輪軸に対しても使用されている。

 我が国においては気動車や電車に採用されており、電気機関車の動輪にも試用されたが、未だ蒸気機関車には採用される域に達していない。機関車や客車等にコロ軸受を使用し走行抵抗を減ずることは反面、機関車の性能を増強したと同一効果を持つものである。なおコロ軸受を使用すれば点検、給油等の手数を省くことができる。

(6)その他の改良

 以上各項に述べたものはいずれも、現在の機関車を土台として、局部的に改良を加えんとするものであるが、さらに蒸気機関車を別の方式に改良せんとするものもある。すなわちタービン機関車や超高圧機関車の出現は、蒸気機関車界に一大転換を画さんとするものである。

(7)各国蒸気機関車の一例

 世界における蒸気機関車の代表的なものがどんな寸法にあるかを、参考までに示すと次表のごとくである。

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2022年3月22日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その291)動力車の将来に対する問題:機関車進展の動向

6.機関車進展の動向

 高速度運転を成す機関車は、従来の低速度運転ものに比し大馬力を出さねばならぬが、限られた車両限界や軌道負担力の範囲内で、大形機関車を設計することは最も困難とするところである。

 また一面、機械文明の進歩は、従来の蒸気機関車の分野に対して、新しき動力方式の提供をもたらし、蒸気機関車自体の質的内容改善と相まって、各性能の優秀化と経済化とを競うの現状であり、将来もこれに対して研究が進められる事であろう。

 すなわち

  (1)蒸気機関車自体への質的内容の改善

  (2)タービン機関車

  (3)ディーゼル機関車

  (4)電気機関車(電車)

  (5)内燃および蒸気動車

 これらのうち電車、気動車等は列車単位が一般に小さく、長距離運転にも不適当な現状においては、蒸気機関車に対抗し得るものは、タービン、ディーゼル、電気の各機関車であるが、タービン機関車は未だ試験時代を脱却せず、ディーゼル機関車は、ようやく実用の圏内に入りたる状態であるから差し当たり、良く蒸気機関車に抗するものは電気機関車なりと称する事ができるであろう。

 

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2022年3月21日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その290)動力車の将来に対する問題:高速度運転とブレーキ

5.高速度運転とブレーキ

 動力車の性能を増大して高速度運転を成すことは、前述せる通りであるが、高速度運転に伴って必然的に問題となるのは、その制動距離である。すなわち何時でも自由に短い距離で停止し得る、優秀なるブレーキを有してこそ、初めて高い速度で走ることができるのである。

 高速列車のブレーキとして空気ブレーキが採用されたが、列車運転上の要求はさらに高度のものを必要とし、空走時間の短縮とブレーキの作用の均衡上から、電磁弁を付加したものが出現し、省線電車等にも採用されている。

 しかしながらさらに運転速度が昂上されると、また特殊のブレーキとなし、強力なる制動力が得られる構造としなければならぬ。すなわち時速150キロメートルにも達すると、制輪子とタイヤとの接触速度が非常に高くなり、その摩擦係数が非常に減少する。故にふつう軸制動率は60~80%位であるが、これを200%位までに増加し、高い速度の場合においても車両の滑走しない範囲内で、最高の制動力が得られる構造にする必要がある。

 しかして制動後は速度の低下するに伴って、制動筒圧力も漸次自動的に低下し、滑走する事のないようにするものである。すなわちかかる構造にすれば制動の初めから停止するまで、均一なる最高の制動力を作用させる事ができ、制動距離の短縮上きわめて有利なるもので、欧米における高速列車にはかかるものが採用されている。

 また、現在における制動の方法は、タイヤに制輪子を押し付ける方法であるから、いかに制動機構の改良を成しても、タイヤとレールとの粘着力以上に制動力を増加させることは不可能である。

 故に高速度運転車両のブレーキとしては、電気的またはその他の手段により、粘着力以上の制動力を発揮し、短い制動距離で安全に停止し得るごとき構造に向かって、研究が進められる事であろう。

 現に欧州においては非常用として、電磁軌条ブレーキの使用されているものが多い。これはレールの上面に沿って長い制動靴を有し、平常は空気シリンダーの力によってレール面から引き上げられているが、非常制動の場合には、それに電流が通じ、電磁石となってレールに吸い付けられ、制動力を発揮する。

 なおブレーキの優秀なるものは、制動距離の短縮によって、安全性を増すばかりでなく、さらに積極的な使命として、平均速度の昂上に少なからず役立つものである。

 すなわち高速度運転となれば、途中における制限等も多くなり、かかる場合、制動力の大なるものは、短時間に良く所定の制限速度に低下させる事ができ、また停車の場合も短時間に停止し得るから、平均速度が昂上される結果となる。

 

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2022年3月20日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その289)動力車の将来に対する問題:流線形

4.流線形

 水や空気の中を物体が運動すると、物体はその形状に応じて抵抗を受ける。航空機や船舶の方面では、早くからその形状に対する研究が進められ、抵抗の最も少ない形状を採用している。すなわち流線形の採用であって、この形状はその運動に伴って、水や空気に渦流を生ずることの最も少ない形状である。

 鉄道車両は重量の重い割合に、運転速度が比較的低かったため、形状に対する研究は最近まであまり考えられなかった。しかるに気動車の発達により、軽い車両が高速度運転を成す結果、空気の抵抗が相当大きな影響を持つに至り、形状に対する研究が進められ、続いて独り気動車のみならず、高速度運転を成す一般車両に対しても、流線形の採用が促進されるに至った。

 この形状に対する研究は、実物をもってすれば良いのであるが、種々の試験条件を一定にすることが困難なので、一般に模型による風洞実験の方法が施行されている。

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 風洞実験が航空機方面では盛んに行われているが、鉄道車両の場合は航空機と違って地面の上を走るので、地面の影響が非常に大きな関連を持つわけである。

 故に風洞中に模型を吊るして風に当て、その抵抗を測っても、実際に適合するものは得られないのであって、何らかの方法で地面の影響が含まれる様な方法を採ることが必要となる。しかしながら実際にこの方法を講ずることは困難で、完全とは言い難いが、次の方法が一般に用いられている。

(1)地面板を用いる方法

 模型を板の上に置き、これを風洞内に入れて風を当てる方法である。実際の場合には空気は動かないで、車両が動き、地面と空気との間には相対運動が無いのであるが、風洞実験では板と車両とが静止し、空気のみが運動するのであるから、空気と地面との間に相対運動があるわけである。

 すなわち地面に影響される因子の相違により、方法としては簡単であるが、実際の場合とかなり違った結果しか得られない。

(2)ベルトを使用する方法

 この方法は模型の下で、地面に相当する位置にベルトを置き、これを風速と等しい速さで回転するもので、これは実際の場合と同じ条件で試験することができる。

 しかしながらベルトを高速度で運転することは、なかなか面倒なことであり、ベルトに波動を生じ、且つ装置も多大の経費を要するのであまり使用されない。

(3)鏡像による方法

 この方法は全く同じ形の模型を2つ作り、これを対称的に合わせ、ちょうど模型を鏡の上に載せ、これが写った様にし、これに風を当ててその抵抗を測定し、これを2分して1箇の値とする方法で、比較的簡単な装置で相当正確な値が得られるので、広く一般に採用されている。

 車両の走行に対して、空気がいかなる状態となって抵抗を生ずるかは、第104図によって知ることができる。第104図は長い試験水槽の表面にアルミニウム粉を浮かせて、その中に模型車両を入れ、これを動かしながらアルミニウム粉の流れを写真に撮ったもので、104図は静止せる水中に板を入れ、この板に沿って模型車両を移動させたものであり、105図は鏡像式のもので、静止せる水中を移動せしめた状態の写真である。

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 第106図は、フランス国のイシ・レ・モーリノー(Issy-les-Moulineaux)研究所で行われた風洞実験の結果を示すもので、自重20トンの軽い車両で A,B,C 3種の車両形状に対する走行抵抗を計算したものである。

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 これを見ると A,B,C の各模型に対して R₂ および R₃ の抵抗は皆な同じであるが、R₁ すなわち車体の空気抵抗は著しい相違があり、時速150キロメートルの場合に付いて見ると A は312キロメートル、B は139キロメートル、C は95キロメートルにして、A を100%とすれば B は45%、C は30%に過ぎない。

 また全走行抵抗に対する空気抵抗の割合を、時速150キロメートルの場合に付いて見ると A は87%、B は75%、C は68%に相当している。

 

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2022年3月19日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その288)動力車の将来に対する問題:高速度運転と車両の形態

3.高速度運転と車両の形態

 高速度運転において最も問題となるのは、列車に及ぼす空気の抵抗である。故に高速度運転を成す列車においては機関車はもちろん、連結車両に対してもその形状を流線形と成し、空気抵抗をできるだけ減少させるごとく設計されるものである。

 流線形車両はその前頭部、および側面の形状が重要なると同時に、最後部車両の形状もまた大切である。要は列車の進行に当たって、空気渦をできる限り生ぜしめない形状とするにある。

 機関車の外形を流線形とすれば、限られた車両限界内においては、機関車自体を大形にする事がいっそう困難になって来るわけであるが、標準軌間ならば8000馬力程度までは製作可能と称されている。

 我が国有鉄道においても C55形式および EF55形式に対し試験的に流線形が採用されたが、最高時速95キロメートル(平均時速75キロメートル位)の現状では、著しき効果を収めることは困難である。少なくとも平均時速90キロメートル以上(最高120キロメートル/時位)でないと、良い成績は得られない様である。

 空気抵抗は列車速度の2乗に比例するものであるから、動力車の出力としては速度の3乗に比例して増加させねばならぬ。故に速度の高い航空機等においては、早くからその形状が研究され、理想的の流線形になっている。

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 鉄道車両として、最初その形状が問題となったのは気動車であるが、これは軽い車体が高速度運転を成したからである。蒸気列車のごとく重量の比較的大なるものは、その空気抵抗による割合が少ないため、流線形化されるのも遅れたわけである。

 

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2022年3月18日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その287)動力車の将来に対する問題:高速度運転に付いて

2.高速度運転に付いて

 運輸機関として第一に要求されるものは、短時間に目的地へ到着する事であるから、スピードアップの問題は最も重要視されるものである。

 鉄道における高速度運転は、かなり古い時代から問題になったもので、鉄道創設以来2、30年の後、英国において軌間統一問題の起こった際、高速度運転の実験が行われ、機関車単行運転ではあるが時速152キロメートルを出している。

 また西暦1902~1903年に、伯林(ベルリン)近郊で行われた電気機関車(三相交流)は、時速210キロメートルの高速度を出し、次いで1906年南ドイツにおいては 2B2 形蒸気機関車で、150トンを牽引して150キロメートル/時の速度を出したが、これは蒸気列車として速い例である。しかしこれらは試験数値として存在するに過ぎず、実際の列車はこれよりも低い速度で運転していた。

 ところが1930年頃より再び高速度運転の計画が進められ、欧米においては気動車による高速度運転を実現するに至ったため、蒸気列車もこれに刺激され、各国とも速度の昂上に努力し始めた。

 ドイツにおいてはベルリン―ハンブルク間、ベルリン―ケルン間、ベルリン―フランクフルト・アムマイン間のごときは、気動車で最高速度160キロメートル/時で計画され、蒸気列車は150キロメートル/時で計画されている。

 この蒸気列車に使用されている機関車は流線形で、最高速度175キロメートル/時に設計され、試運転では205トンを牽引して195.6キロメートル/時の速度を出し、世界最高速度の機関車と言われており、この実験の際は3000指示馬力以上を出している。

 高速度列車運転を成している営業列車に付いて、各国主要なるものを表示すると次のごとくである。

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 なお各国における高速度運転列車の普及状態を知るため、各速度別に一表を作ると次のごとくなり、ドイツ国有鉄道がいかに躍進を続け、科学ドイツ国有鉄道の事実を具体的に表示している事がよくわかる。

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 そもそも最近における、高速度運転の先鞭を成したものは気動車であるが、まもなく蒸気列車で同様の高速度運転を実現するに至り、蒸気でも何ら不都合なく、動力車保守の点では内燃動車よりも、むしろ容易のごとく一般に考えられている。

 現在各国で行われている高速度列車は、一般に短距離運転のものが多く、長距離運転は少ないが、長距離運転になれば寝台車や食堂車が必要となり、いきおい牽引重量が増加するので、気動車では困難になってくる。故にかかる長距離列車では蒸気機関車か電気機関車、または内燃機関車による方が便利となる。

 満鉄が誇るアジア号(特急)は最高時速110キロメートルで、平均速度は90キロメートル/時に満たないが、その運転区間は大連、ハルピン間943.4キロメートルに及ぶ長距離区間である。

 高速度運転を可能ならしめる因子としては、独り動力車の性能ばかりでなく、運転線路の優秀なる事がより大切である。すなわち平坦直線の線路にして、初めて高速度運転の実現が容易なる事にも深く思いを致すべきである。

 我が国のごとく急曲線の多い狭軌線路では、いかに機関車が優秀でも高速度運転を実現することは不可能で、高速度運転を実現せんとすれば、まず線路から改良せねばならぬ。

 

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2022年3月17日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その286)動力車の将来に対する問題:交通機関としての鉄道

第11編 参考資料

第1章 動力車の将来に対する問題

1.交通機関としての鉄道

 鉄道は創設以来100余年の間、陸上運輸を独占してきた。従来鉄道以外の交通機関としては馬車くらいのもので、その性能は到底鉄道に対抗すべくもないから、自然鉄道が唯一の陸上交通機関として覇を唱え、その繁栄をもたらしたものである。

 しかしながら最近においては自動車や飛行機が出現し、その優秀なる性能と特異な能力とは鉄道の王座に迫るものがある。自動車は一般道路上を運転するが故、鉄道のごとく多額の建設費を要する事なく、容易に運転路は延長する事ができるのみならず、旅客、貨物ともに戸口から戸口まで運輸を成し、近距離輸送に多大の便益を与えつつあるが、今やさらに近距離輸送から中距離輸送にまで進展せんとしている。

 また飛行機の発達は最近のことに属するものであるが、軍事的重要さから長足な進歩を成し、今日では一般民間の運輸機関としても発達してきた。運輸数量の少ないことや運賃の高いことなどの欠点は免れないが、高速輸送の点では鉄道や自動車よりもはるかに優れているため、長距離旅客輸送に多大の便益を与えている。

 自動車や飛行機の発達に刺激されて、鉄道もさらに一段の飛躍を必要とするに至っている。すなわち速度の昂上、輸送の安全快適、運賃の低廉等を図り、独占的輸送機関としての王座を確保し、世運の進展に順応するよう努めねばならぬ状態に到達している。

 鉄道の改善、進歩を促す具体的事項は、何と言っても一般社会の経済状態である。一般経済界の不振な時代にあっては、鉄道輸送も減少の傾向を辿る状態であるから、新製車両を必要とせず、従って最新の要求によって生まれ出づる良質車両が表れてこないが、一度経済状態が活況を呈してくると、輸送数量が増し車両の増備も必要となって来るので、勢い新構想に基づき、あるいは輸送に適応する新製車両が出現し、改善された運輸の計画が可能となるわけである。

 日本における鉄道が、自動車や飛行機に影響される度合は、欧米諸国のそれに比すれば極めて軽微であるが、鉄道としても独自の進展を図り、国運の発展に資すると共に、世界の鉄道に遅れざる事を必要とする。

 最近東海道、山陽両幹線の輸送拡充に当たり、東京、下関間に標準軌新幹線を敷設し、良質車両による高速運転の計画が進められていることは、この一端を物語るものである。

 明治5年、狭軌鉄道開設以来、改善に改善を加え、狭軌鉄道としての最高水準にまで到達せしめた我が国鉄の技術が、標準軌新幹線には遺憾なく発揮され、世界に誇るべき優秀列車が運転されるものと期待される。

 

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2022年3月16日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その285)前途の状態その他による制限速度

第6章 前途の状態その他による制限速度

 常置信号機と連動装置、または鎖錠なき対向転轍器を通過するときは、尖端軌条の密着を確保することができないから、安全のためその速度を30キロメートル/時以下に低下する必要がある。

 停止信号現示中の自動閉塞信号機を超えて運転するときは、前区間に列車がいるか、または線路に故障があるか、あるいは装置に故障があるか等、いずれにしても警戒を要する事情があるから、その速度を15キロメートル/時以下に低下しなければならない。

 入換の場合には、転轍器および曲線の多いことと、見透しの悪いこと等の理由により、その速度を25キロメートル/時以下に低下する必要がある。しかし動力車のみ運転する場合は、操縦が容易で且つ急停車をすることもできるから、その速度を制限する必要がない。

 

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2022年3月15日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その284)列車の操縦方法による制限速度

第5章 列車の操縦方法による制限速度

 列車を推進するとき、テンダー機関車を逆向して運転するとき、または退行運転の場合は、ふつうの状態と事情が異なるから、運転の安全を期するためには、速度を制限しなければならない。

 現行運転取扱心得においては、これらに対する制限速度を次のごとく規定している。

 1.列車推進の場合

   25 キロメートル/時

 2.線路または列車に故障ありて列車退行の場合

   15 キロメートル/時

 3.テンダー機関車を逆向して列車の前部に連結したるとき

   45 キロメートル/時

 列車の推進とは、動力車を列車前頭に連結せずして運転する場合で、列車の操縦が意のごとくならないのと、脱線しやすい傾向にあるため、速度の制限を要するものである。

 線路または列車に故障があって不時の退行をする場合は、他の退行の場合と状態が相違し、踏切、橋梁または停車場の従業員は、全然予期しないものであるから、危険を防止する意味において速度を低下する必要がある。

 テンダー機関車を逆向運転するときに速度制限を成すのは、前途の見透し困難なるばかりでなく、構造上から逆向は危険で脱線の傾向が多いという事にある。

 

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2022年3月14日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その283)車両の構造による制限速度

第4章 車両の構造による制限速度

 車両はあまり高速度で運転すると、その動揺がはなはだしくなって脱線の危険を生ずる。その危険の程度は、車両の構造によって自ずから決まるもので、ボギー客車と一般貨車とを比較すると、客車は貨車に比してバネが二重に使用してある事と、1車当たりの重量が相当重い点から、動揺が少ない等のごとくである。

 従って構造上より各車両の種類に応じて、制限速度を付することの必要が起こってくる。

 現行運転取扱心得においては組成車両に応じて、次のごとき制限速度を規定している。

 1.ボギー客車または特に指定する貨車をもって組成する列車、およびボギー客車と特に指定する貨車とをもって組成する列車

   95 キロメートル/時

 2.四輪客車または四輪客車とボギー客車とをもって組成する列車

   75 キロメートル/時

 3.前号の列車に特に指定する貨車を連結するとき

   75 キロメートル/時

 4.貨車または貨車と客車とをもって組成せる列車、ただしこの貨車中には特に指定する貨車のみの場合を含まざるものとする

   65 キロメートル/時

 

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2022年3月13日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その282)下り勾配の制限速度を決定するに必要な事項

2.下り勾配の制限速度を決定するに必要な事項

 下り勾配における制限速度を決定するには、次の諸事項につき考慮しなければならない。

  (1)制動軸数割合および制動力

  (2)列車重量

  (3)列車に組み込まれる積空車割合

  (4)列車の防護距離

 制動軸数割合は、現在各列車とも空気ブレーキを使用し、旅客列車は所定の80%以上の制動軸数を有している。また貨物列車は、現在貨車総数の94%程度に制動筒を備えているので、大部分の貨物列車は、貨車組成の最も悪い場合においても70%以上をみなされるから、50%以下の場合はほとんどまれであると考えて良い。

 制動力に付いては既に述べたるごとく、制動装置の種類に応じて非常制動の場合の制輪子圧力を求め、この圧力に車輪と制輪子間の摩擦係数を乗じて求められるブレーキの制動力に、車両の走行抵抗および勾配の抵抗を加算して求め得られる。

 次に列車重量であるが、重量別に制限速度を定めることは非常に煩雑であるし、またそれほどの必要もないから制動距離の影響と、輸送の実情とから定めることが必要である。

 制動率の点から考えると、機関車は客車よりも小さく、貨車よりも大であるから、列車重量の程度によって制動距離に及ぼす影響は、旅客列車と貨物列車とでは反対の傾向を生ずる。

 すなわち旅客列車では牽引客車両数の増加に伴い、制動距離は短縮するが、貨物列車では牽引貨車両数の増加に伴い、制動距離を延長する事となる。それゆえ安全上の見地から、旅客列車は牽引両数の最も少ない場合、また貨物列車では牽引両数の最も多い場合を考慮する必要がある。

 従って旅客列車においては、なるべく少なる牽引定数の場合、例えば速度種別の通客甲程度、貨物列車においては輸送の実情、線路状況より考え、最も大なる牽引定数の場合、例えば通貨丙程度に付いて考える必要がある。

 列車に組み込まれる積空車割合に付いて考えると、この積空車割合の大小によって制動距離に非常な相違を生じ、積車のみの場合は制動距離最も長く、空車のみの場合は制動距離が最も短くなるわけである。

 従って運転の安全から見ると、積車のみの場合に付いて考えることが良いが、大体、省平均の積車割合は78%程度であるから、これに余裕を見込み90%位にすることが妥当と思われる。

 最後に列車の防護距離であるが、現在の制限速度は旅客列車および貨物列車とも、大体800メートルを基準として定められたもののごとくである。

 しかしてこの防護距離としての制動距離を求めるに当たっては、ブレーキの制動方法は非常制動によらしむるか、全制動によらしめるかであるが、貨物列車のごとく列車の長さの大なるものは、前部の車両と後部の車両とでは制動の掛かる時間に相当差があるので、非常制動を行うとかえって危険を生ずる場合があるから、これに対しては全制動によることが妥当のごとく考えられる。

 ただしこの防護距離としての制動距離とは、実制動手配を採ってからブレーキの掛かるまでの時間、すなわち空走時間内に走る空走距離の和であることはもちろんである。

 以上述べた各条件は、現在の列車運転状態と大体一致しており、この程度においては運転上の現行運転取扱心得に定められた制限速度を、10キロメートル/時程度高めるも、運転上の何ら危険は伴わない様である。従って運転取扱心得改正のあかつきには、この程度に昂上せられるものと考えられる。

 

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2022年3月12日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その281)下り勾配線における制限速度

第3章 下り勾配線における制限速度

1.下り勾配線における制限速度

 下り勾配線において勾配の加速力にまかせ、あまりに高い速度で運転するときは、非常停車の場合にその制動距離を延長し、ひいては支障箇所を冒す場合を生じ運転上はなはだ危険である。それゆえ下り勾配線においては、その列車の有する制動力に応じて運転速度を制限する必要がある。

 現行運転取扱心得では上述の理由から、制動軸数割合および制限速度の両方面を規定しており、旅客列車にありては列車連結軸数の100に対し、80以上の割合の制動軸を有しているので、その制限速度も貨物列車に比し高く成し得るわけである。次表はこれを比較せるものである。

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 現行運転取扱心得第5条に規定せる貨物列車の制動軸数割合は、手ブレーキを使用することを本則として定めたもので、その当時、列車の制動力を増加するためには、列車中に多数の緩急車を組み込む必要を生じ、貨物輸送上はなはだ不経済であったので、十分の制動力を持つことが困難であったが、現在のごとくほとんど全部の貨物列車に、空気ブレーキを使用する状態においては、同条に規定しある制動軸数割合を有することは非常に容易で、最近における制動筒付き貨車両数割合を見ると、省有貨車のみに付いては総両数の94%、私有貨車を含みたる場合に付いては93%の割合を示してる状態であるから、実際においては組成貨車の70%以上に、制動筒を有するものとみなして十分である。

 従って現在の制限速度がいかなる安全度を有するか、ならびに将来この制限速度を、いくばくまで高め得べき余地あるかを研究する必要がある。

 

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2022年3月11日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その280)曲線における制限速度:制限速度算定の基礎(2)

【 制限速度の実験式 】

 曲線における制限速度に付いて、現在各国において用いている実験式を挙げると、次の通りである。

 我が国有鉄道において採用せる実験式は次の通りで、この実験式はちょうど我が国とおなじ狭軌鉄道である、南アフリカの制限速度とほとんど同一である。

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  V =制限速度(キロメートル/時)

  R =曲線半径(メートル)

   注:本式は甲、乙および丙線の制限速度算出に対するものである。

 なお、この式より求めた制限速度を図示すれば98図の通りである。

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【 例 】

 曲線半径300、400および500メートルの場合における、制限速度を求めよ。

 ただし分岐に付帯せざる曲線の場合とする。

【 解 】

 (236)式を用い

  r =300メートルの場合

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  r =400メートルの場合

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  r =500メートルの場合

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 第99図は447ページ第(232)式から求めたもので、カントの設けてない曲線路を運転する場合、内側車輪上重量の減少割合を示したものである。同図からみて線路の分岐に付帯しない曲線の現行制限速度は、カントのない曲線を運転しても内側車輪上重量の減少割合は30%以内である。

 実際の場合は必ずカントを付することになっているので、内側車輪上重量の減少割合は30%以下になる事もちろんであるが、軌道の整備不十分でカントの全然ない場合を考えても、なお内側車輪には70%の重量が残っているので、これがため脱線の危険は無いのである。

 線路の分岐に付帯する曲線の制限速度をもって運転するときは、第99図からみて内側車輪上重量の減少割合は20%内外である。

 従ってこれら制限速度の安全率に付いて考えると、先に述べた通り線路の分岐に付帯しない曲線においては約30%、線路の分岐に付帯する場合には約20%だけ、内側車輪上重量の減少があるが、これをもって直ちにその安全率が、前者は 100÷30=3.33、後者は 100÷20=5 と言うことはできない。

 その理由は、これらの安全率はそれぞれ重量の変化を示したものであるが、運転上の見地としては、まさに転覆せんとする限界速度(内側車輪上重量100%減)と、制限速度の比をもって安全率としなければならない。

 例を半径200メートルの場合に採れば、この場合の限界速度は92.5キロメートル/時であるから、安全率は分岐に付帯しない場合は 92.5÷50=1.85、分岐に付帯する場合は 92.5÷45=20.5 である。

 以上はバネのたわみの変化による、車輪上重量の減少は全然考慮しないが、これらを考えるときは安全率は以上の値よりも、いく分小さくなるはずである。

 

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2022年3月10日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その279)曲線における制限速度:制限速度算定の基礎(1)

3.制限速度算定の基礎

 曲線路における制限速度は、前述のごとく遠心力に釣合わすべき十分なるカントを付し得ないこと、または軌道の構造ならびに保守上の点から、全然カントを付し得ないこと等から前表のごとく定めてあるが、これが算出の基礎を明らかにする必要がある。

97_20220220165501

 いま軌道の整備がはなはだ不良で、カントが無いものと考えると、第97図において遠心力 F と車両の重量 w との合力 R が、レール中心線から x だけ外側レール寄りに来るものとすれば、2つの三角形 GaO' と GAO とは相似形であるから

P461_20220220165101

 故に


P462_20220220165301

 遠心力は

P462_20220220165102

であるから、上式にこれを代入して

P462_20220220165401

 これより

P462_20220220165402

 従って

P462_20220220165403

 v は速度をメートル/秒で示したものであるから、これを v キロメートル/時に直すため V = v ×3.6 の関係を代入して

P462_20220220165501

  V =運転速度(キロメートル/時)

  x =遠心力と車両重量との全力がレール中心線から外側レールの方へ寄る寸法(メートル)。これはふつう軌間の約7分の1を最大とする

  g =重力の加速度=9.8メートル/秒/秒

  h =車両重心の高さ(メートル)

  r =曲線半径(メートル)

 すなわち上述の式に、実際の保守程度を加味して制限速度は決定せられるもので、次に述べる通りである。

 

 

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2022年3月 9日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その278)曲線における制限速度:線路の分岐に付帯する曲線半径

2.線路の分岐に付帯する曲線半径

 線路の分岐に付帯する曲線においては、いかなる部分が最も急であるかを知る必要がある。線路の分岐においては必ず尖端レール、リードレールおよび轍叉(てっさ)とがあり、第95図の様に A 線に対しては ①が尖端レール ②がリードレール ③が轍叉で、また B 線に対しては ④が尖端レール ⑤がリードレール ⑥が轍叉である。

95_20220220111901

 一般に尖端レールと轍叉は直線であるから、その間に挟まれたリードレールは、その曲度が強くなるのは当然なことで、運転取扱心得において規定せる速度は、この部分の半径に相当するものである。

 なおリードレールの半径、長さおよび尖端レール長さは、轍叉番号およびレールの重さより相違するもので、次表に示す通りである。

P460_20220220112001

 第96図は曲線内方分岐の一例であるが、転轍器の前後における曲線半径が600メートルであるから、線路の分岐に付帯する部分の半径も、同一半径600メートルである様に考えられるが、事実は非常に相違して、リードの前後にある尖端レールおよび轍叉はいずれも大体直線であるから、この部分の曲度をリードレールにおいて受け持つ事となり、その半径は225メートル位である。

96_20220220112001

 次表は本線の曲線半径とリードレールの半径との関係を、30および37キログラムレールに付いて示す一例で、実際の線路においては多少これと相違するものであるが、大体の見当を付ける意味で、リードレールの半径を推定するに便利である。

P461_20220220112001

 すなわち上表を見るに轍叉番号は同一でも、本線の半径によってリードレールの半径に、はなはだ相違があることがわかる。

 

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2022年3月 8日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その277)曲線における制限速度:線路の分岐に付帯せざる曲線

第2章 曲線における制限速度

1.線路の分岐に付帯せざる曲線

 曲線路を運転する場合に速度を制限する理由は、車両が曲線を通過する際、遠心力の作用によって曲線の外方へ転覆せんとする傾向と、内側車輪上重量の減少のために起こりやすい脱線を、防止するがためである。

 線路の分岐に付帯せざる曲線には、この遠心力と釣合わす手段として前に述べたるごとく、外側レールを内側レールよりもある程度高め(最大115ミリまで)、いわゆるカントを付しているが、元来車両に作用する遠心力は、外側車輪上の重量を増加し、内側車輪上の重量を減少せしむる働きをするが、カントはこれと反対に内側車輪上重量を増加し、外側車輪上重量を減少せしめんとする作用を採っているから、車両の運転速度に適当するカントを付けておけば、遠心力とカントとの作用がちょうど釣合って、内外車輪上重量を等しく成し、安全なる運転を成すことができるわけであるが、実際問題としては、同一軌道を各種の速度を持った列車が運転するので、そのカントも各種列車の平均速度に相当するものを付しているから、その運転速度を制限しなければ、運転の安全を計ることは不可能である。

 線路の分岐に付帯する曲線においては、遠心力と釣合わすべきカントを付することは、軌道の構造ならびに保守上に困難があるので、特殊の場合を除いてはその設けがない。従って、この種の曲線路においては、その速度にいっそうの制限を付する必要がある。

P458

 現行運転取扱心得における曲線路の制限速度は前表の通りで、これによれば線路の分岐に付帯する場合は、他の曲線に比して 5~20 キロメートル位制限速度が低くなっている。

 以上は甲、乙および丙線に適用される制限速度であるが、簡易線においては線路の保守その他が甲、乙および丙線に比較して劣る点から、次表のごとく既定している。

P459

 

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2022年3月 7日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その276)制限速度:総論

第10編 制限速度

第1章 総 論

 列車の運転上には種々なる制限速度がある。運転に従事する者にとって最も大切なことは、これらの制限がいかなる理由によって定められているかという事と、この速度に関連した他の必要な事柄を十分に心得ておく事である。

 制限速度を設ける主なる理由は、列車の運転を安全に遂行せんとするに他ならないので、列車運転の危険は高速度となるに従い増加するのであるから、安全なる運転を保証するには、制限速度は必ず最大速度を規定しておく必要がある。

 現行、運転取扱心得において規定している制限速度は、大別して次の5種類である。

 (1)曲線における制限速度

 (2)下り勾配における制限速度

 (3)車両の構造による制限速度

 (4)列車の操縦方法による制限速度

 (5)前途の状況その他による制限速度

 

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2022年3月 6日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その275)曲線通過に伴う回転運動

第3章 曲線通過に伴う回転運動

 車両が曲線路を運転する場合には、必ず回転運動をしなければならない。例えば第94図において機関車が A から B 点まで運転するためには、角 θ だけは必ず回転することを要するもので、機関車は自身のある一点を中心として回転する。

94_20220216113401

 この点を回転の中心と称し、この位置が前後いずれかにあるという事が、機関車の曲線運転の難易を決定するものである。

 この回転中心は客貨車のごとく、前後全く対称の形を持つものでは、車両の中央にあるが、機関車にありてはその形式、線路の状態、速度等によって相違し、且つ同一形式の機関車でも台車復元力の強さ、車輪の横動遊間等によって変化するものであるから、機関車の回転運動が前部車輪のフランジと外側レール、ならびに後部車輪のフランジと内側レールとの、横圧力よって行われる事を考えるときは、その回転中心はこの中間のある位置に存在することは、推定し得るのである。

 回転の中心が固定軸の中央にある場合が、最も曲線を通過しやすく、これが前方または後方に片寄るに従い曲線半径に応じ、そのスラックを多くしなければならない。

 建設規程第64条においては、固定軸距の最大を4.6メートルに制限し、またスラックは(235)式により計算することになっているので、これから逆算によってこの場合の回転中心を求めれば、固定軸距の4等分点に存在することがわかる。

P455

  S =スラック(ミリ)

  r =曲線半径(メートル)

 5630÷r の値より5ミリを控除せるは、レールとフランジ間にふつう左右5ミリずつ程度の隙間があるため、スラックも少なくて済むからである。なおスラックがあまり大きいと、フランジが薄くなった場合には脱線の危険があるから、その最大は30ミリとしている。

 曲線上において機関車が脱線する原因として、機関車前部の偏倚(へんい:片寄り)が過大となるため先台車車輪と台枠、または台枠の動揺部分と台枠とが接触して、その運動を支障するため、または過大なる偏倚のため内側車輪上重量が減少し、内側車輪が浮き上がり脱線をなす場合が相当多い。

 かくのごとく台枠前部の偏倚が過大なる原因としては

 (1)先台車の復元力が弱く、反対に後台車の復元力が強いため、機関車回転の中心が後部に片寄り過ぎた場合。

 (2)動輪の横動遊間大きく、ちょうどこの場合先台車の復元力弱く、台枠の前部に大きな振れを与えた場合。

 (3)スラックの大なる場合は、台枠前頭の振れを増大する。

 (4)フランジおよびレール頭の摩耗はなはだしき場合も、横動遊間またはスラックの大なる場合と同一結果を与えるものである。

 なお脱線原因の今一つとして転轍機の状態によって、先輪が護輪軌条に乗り上がる場合がある。

 

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2022年3月 5日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その274)カントが過不足の場合における内外車輪上重量の変化

4.カントが過不足の場合における内外車輪上重量の変化

 速度に適当したカントを(233)式より求めて付けておけば、内外車輪上重量は等しくなるが、速度に不相応なカントが付いている場合は、内外車輪上重量に変化を来たすのでは当然である。

 日常運転の実例から考えても、同一軌道を種々なる速度の列車が運転するので、各列車の平均速度に相当するカントを付しておく現在では、高速度列車に対してはカントの不足を生じ、また低速度列車に対してはカントの過大を来たす事になる。

 いま種々なる平均速度に相当するカントを付してある曲線路を、現行運転取扱心得第66条に規定せる制限速度で運転した場合、カントの不足のために生ずる内外車輪上重量の減少割合を求めると、(229)式の v を vm、すなわち制限速度とすれば

P451_20220216095401

 上式にカント S の値を(233)式より求め

P452

を代入する。

 ただし v は平均速度(カントを付した速度)とする。

P452_20220216095501

 また v なる平均速度で運転する場合は、内外車輪上重量を相等しく、この値は(223)式より

P452_20220216095601

の関係を代入して

P452_20220216095602

 従って内側車輪上重量割合 q は

P452_20220216095701

 q =運転取扱心得第66条の制限速度で運転した場合、内側車輪上重量割合

 P₁' =運転取扱心得第66条の制限速度で運転した場合、内側車輪上重量(キログラムまたはトン)

 P₁ =カントに相当する速度にて運転する場合の車輪上重量で、内外とも等しい(キログラムまたはトン)

  w =車輪の重量(キログラムまたはトン)

  Vm =運転取扱心得第66条による制限速度(メートル/秒)

  v =カントを付した速度(メートル/秒)

  r =曲線半径(メートル)

  g =重力の加速度=9.8(メートル/秒/秒)

  h =重心の高さ(メートル)
 
  b =軌間=1.067(メートル)

 次表は(234)式を用い、種々なる速度に相当するカントを付した線路を、現行運転取扱心得第66条の線路の分岐に付帯せざる曲線の、制限速度にて運転する場合の、内側車輪上重量の割合を示したもので、この計算は重心の高さ h は最高の機関車を採り1.59メートルとした。

P453


【 例 】

 線路の分岐に付帯せざる半径400メートルの曲線を、現行制限速度にて運転する場合、内側車輪上重量はいかほどとなるか。

 ただしこの曲線路には、速度50キロメートル/時に相当するカントを付してある。

 なお機関車の重心の高さは1.59メートルである。

【 解 】

 上表から求め、重量割合が0.863となり、13.7%減となることがわかるが、(234)式を用い

P453_20220216095801

の式中

  Vm = 70÷3.6(メートル/秒)

  V = 50÷3.6(メートル/秒)

  g = 9.8メートル/秒/秒

  r = 400メートル

  h = 1.59メートル

  b = 1.067メートルを代入して

P454

 すなわち内側車輪上重量割合は0.863となり13.7%減である。

 

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2022年3月 4日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その273)曲線路を運転するに最も適当なるカント

3.曲線路を運転するに最も適当なるカント

 元来カントは、遠心力の影響を打ち消すために設けたものであるから、これが最も適当なる量としては、内外車輪上の重量を等しくする様な値でなければならない。

 この条件は(228)式示す Po と、(229)式で表わす P₁ とが等しいという関係から

P450_20220213162001

 上式の関係から

P450_20220213162101

 故に

P450_20220213162102

 この式は半径 r メートルの曲線を v メートル/秒の速度で運転するとき、内外車輪上の重量を等しくする様なカントを求める式で、ここに注意を要することは適当なるカントは、重心の高さ h には全く無関係であるという事である。

 (233)式に b =1.067メートル、g =9.8メートル/秒/秒として、種々なる曲線半径 r と運転速度 v とに応じ、適当なるカント S を求めたものは次表の通りである。なお国有鉄道建設規程第25条によって、カントの最大限は115ミリと規定せられている。

P450_20220213162201


【 例 】

 半径300メートルの曲線を、50キロメートル/時の速度で運転するときの、内外車輪上の重量を等しくすべきカントを求めよ。

【 解 】

 (233)式を用い

P451

 これに

P451_20220213162301

を代入して

P451_20220213162302

 

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2022年3月 3日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その272)カントなき曲線路における運転速度と内側車両上重量の減少

2.カントなき曲線路における運転速度と内側車両上重量の減少

 カントの設けてない曲線路では、(229)式中に S=0 条件を入れて、内側車輪上重量を求める式を得ることができる。いま内側車輪上重量を P₁' とすれば

P447_20220213114601

 カントのない場合は、遠心力の分力がレールに作用しないので、内外車輪上の重量の和は常にその車両の重量に等しい。

 内外車輪上の重量は、相等しいのが理想であるから、この場合の重量に対して、その変化割合( q )を求めてみると

P447_20220213114701

 従って

P447_20220213114702

 q =内側車輪上重量の割合で、例えば q =0.9 であるという事は、内側車輪上重量が直線における重量の9割になったという意味で、ちょうど1割減ということである。

 従って( 1-q )は、内側車輪上重量の減少割合を示すものである。

 その他の記号 v,b,g,r,h 等は(228)および(229)式に示せるものと、全く同様である。

 次表は国有鉄道の代表的機関車の、運転整備の場合における重心の高さを示したもので、いずれもレール面からの寸法である。

P448

 重心の高さは炭水の積載量によって相違する事はもちろんで、上表は運転整備の場合である。

 次表はカントの設けなき種々なる曲線半径を運転する場合に、内側車輪上重量の減少割合と、速度との関係を(232)式から求めたもので、この式中、重心の高さ h は国有鉄道の機関車中、最高のものを採り、h =1.59メートルとし、b =1.067メートル、g =9.8メートル/秒/秒を代入して求めたものである。

P449_20220213114901

 内側車輪上重量の減少割合が100%であるという事は、内側車輪には全然重量が掛かっていない事を意味するもので、これが車両の転覆せんとする限界速度である。

 上表に示した速度は、線路の不整およびバネの影響等を考慮してないものであるが、実際には運転中、既述のごとき相当の左右動を伴うものであるから、それ以下の速度にて転覆するはずである。なお車輪上重量が軽くなるという事は、脱線の傾向を増すものである。


【 例 】

 C53形式機関車が、半径400メートルのカントなき曲線を運転するとき、内側車輪上重量が2割となるごとき速度を求めよ。

【 解 】

 この値は機関車の形式に関わらず、上表から直ちに58.5キロメートル/時であることが求められるが、(232)式を用いこれを求めると

P449_20220213114902

  q =0.8 

  b =1.067メートル 

  g =9.8メートル/秒/秒 

  r =400メートル 

  h =1.59メートル

を代入すれば

P449_20220213115001

 故に

P449_20220213115002

 

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2022年3月 2日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その271)曲線路において内側並び外側車輪上重量を示す一般式

第9編 曲線力学

第1章 概 論

 車両が曲線路を運転する場合には、曲線半径、速度および重量に関係して遠心力を生じ、車両を曲線外方に転覆せんとする作用、ならびに軌間を押し広げ様とする作用を及ぼすもので、前者に対しては外側レールを内側レールよりも少し高め、いわゆるカントを設け遠心力の作用を打ち消すごとく成し、また後者に対してはその曲線半径に応じて、適当なる寸法だけ軌間を広げ、いわゆるスラックを付してある。


第2章 遠心力の作用

1.曲線路において内側ならび外側車輪上重量を示す一般式

 曲線路を車両が運転する場合に作用する力は、遠心力と車両の重量とで、これら2力の反力として内外レールに、それぞれ P₁ および P₀ なる力が作用し、この値はちょうど車輪上重量に等しいわけである。

 遠心力は車両各部分の質量にそれぞれ作用するものであるが、これら各部の影響を総括すれば、車両の重心に全質量が集合し、これに遠心力が作用したものと同一結果を得るものである。遠心力は次式で表わすことができる。

P443_20220210193301

  F =遠心力(キログラム)

  w =列車の重量(キログラム)

  v =列車の速度(メートル/秒)

  g =重力の加速度=9.8メートル/秒/秒

  r =曲線半径(メートル)

93_20220210193401

 車両が曲線を安全に運転するためには、遠心力および重量の影響、すなわちモーメントが、レール反力のモーメントに必ず等しいはずである。

 いま内側レールの中心を原点として、モーメントを求めてみると

P444_20220210193401

 釣合の状態にあるためには、左回りと右回りのモーメントは相等しい。

 故に

P444_20220210193501

 また a は非常に小さい角であるから

P445_20220210193901

と考えることができる。この関係を代入して

P445_20220210194001

 これより

P445_20220210194002

 同一方法により

P445_20220210194101

  Po =外側車輪上重量(レールの反力に等しい)(キログラム)または(トン)

  P₁ =内側車輪上重量(レールの反力に等しい)(キログラム)または(トン)

  w =車両の重量(レールの反力に等しい)(キログラム)または(トン)

  v =運転速度(メートル/秒)

  S =カント(メートル)

  b =軌 間(メートル)

  g =重力の加速度=9.8(メートル/秒/秒)

  r =曲線半径(メートル)

  h =重心の高さ(メートル)


【 例 】

 C51形式機関車が半径300メートルの曲線を、60キロメートル/時の速度にて運転する場合の、内外車輪上重量を求めよ。

 ただし、この場合のカントは90ミリである。

【 解 】

 機関車と炭水車とは別の車両で、重心の高さも相違するから、機関車のみに付いて計算する。

P445_20220210194102

とし、これらの数値を(228)式および(229)式に代入すれば

P446_20220210194201

 すなわち外側車輪上全重量は、平常

P446_20220210194202

のものがこの場合 36.1 トンになり、その増加割合

P446_20220210194301

約4%である。また

P446_20220210194302

 その減少割合は

P446_20220210194401

約2%である。

 内外両車輪上重量 36.1+34.0=70.1 トンとなり、運転整備の重量 69.6 トンに比較して、0.5 トンの増加を示す。この理由はカントを設けあるため、遠心力の分力が加わるからである。

 

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2022年3月 1日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その270)列車衝動の実例及びその防止方法:加減弁または逆転機の取扱方による列車衝動

3.加減弁または逆転機の取扱方による列車衝動

 加減弁または逆転テコを急激に使用すれば、列車衝動を起こす事はもちろんである。要は徐々にこれらの位置を変更すれば良いのであるが、実際上の問題としては運転時分の制限等を受け、万全なる方法により難き場合もあるは、やむを得ない次第である。

 ことに注意を要するは、列車牽き出しの場合であって、この場合は細心の注意を払い、徐々に加減弁を開き、まず列車全車両の連結器を順次伸張せしむるに足る蒸気を供給し、全ての連結器が一様に緊張するのを待って給気を増し、車体に激動を与えない様に牽き出し、速度を増すにも決して一度に加減弁を満開する様な事をせず、逆転テコの引き上げと相応じて、2度ないし3度に給気を増加することが必要である。

 列車牽き出しの際の衝動を防止するためには、停止の場合に連結器を伸張した状態にすることが必要である。かつて試験した結果によれば、機関車の制動力を客車よりも、はなはだしく小さくして停止したため、発車の際の衝動を減少し得た実例あるは、全く以上の理由に基くものである。

 

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