7.蒸気機関車の改良
最近における蒸気機関車の改良としては
(1)缶圧力を高めること
(2)蒸気の過熱温度を高めること
(3)弁装置を改良して蒸気の配給を良くすること
(4)材料を改良して重量の軽減を図ること
(5)軸受を改良して摩擦ならびに走行抵抗を減ずること
等である。
(1)缶圧力の問題
缶圧力の問題は、機関車設計の大意のところで若干の説明を試みたが、さらに補足的に述べる。缶圧力は従来12~13キロ/平方センチメートルが、缶の構造ならびに保守および蒸気の効率等、総体的にみて有利なりとして、欧米においても標準圧力のごとく考えられてきたが、最近においてはドイツ、米国等においては著しく缶圧力が高められた。
缶圧力を高めると、缶の保守が困難となることは普通に考えられる事で、ことに箱形をなしている機関車缶が、はたして高圧に耐え得るか否かが問題となっていた。ドイツでは実際使用上の経験に鑑み、20キロ/平方センチメートル位は差し支えないとされ、25キロ/平方センチメートル位のものも試用されたが、ふつう缶に軟鋼板を使用したものでは材料の疲労の関係もあるので、20キロ/平方センチメートル位を最高とするのが良いと言われている。20キロ/平方センチメートル以上とするには缶に特殊な材料、すなわちニッケル鋼のごときものを使用することが望ましい。
我が国においても、従来12~13キロ/平方センチメートル位であった缶圧力を、14キロ/平方センチメートルとし、最近の新製車は16キロ/平方センチメートルに高められたが、さらに上昇せしむべしとの説もあり、やがて17キロ/平方センチメートルは実現すべく、遠からず20キロ/平方センチメートル位までは高められる事と思われる。
(2)過熱蒸気の温度上昇問題
ウィルヘルム・シュミット(Heißdampf-Schmidt)氏によって考案された過熱蒸気の利用は、蒸気機関車に画期的革命を与えたものである。
過熱蒸気使用の当初においては300度を標準としていたが、その後350度位に上昇され、最近においてはさらに上昇し400度を目標とするに至った。
過熱装置として従来、大煙管中を2往復した過熱管を改良し、大煙管の代わりに中煙管を使用し、過熱管はその管中を1往復し、さらに次の中煙管中を1往復する様なものもある。また高温加熱の一方法として、火室式が最も有効なるべきは容易に想像されるところで、この方面にも、新しき研究が進められている。
我が国おいても、中煙管を使用する過熱装置は、車両研究会で研究されているが試験時代に属している。過熱温度を高めるため、過熱面積を増加させることは、現に実行されているところで、従来、全伝熱面積に対し25%位であったが、最近の新製車では30%近くまでに増加されている。
(3)弁装置の改良
カプロッティ式弁装置(Caprotti valve gear)は既に述べたところであるが、現在のピストン弁に比すれば、はるかに優れていると言われている。
列車の運転速度はますます昂上され、その割合に動輪直径は大きくできないから、いきおい動輪の毎分回転数を増加し、ピストン速度も増加の余儀なきに至る。
しかる時はワイヤー・ドローイングの傾向も著しくなってくるから、特殊の弁装置を用いて蒸気口の開閉を瞬間的に行い、且つ蒸気の締切はもちろん、吐出位置をも任意に調整し蒸気の膨張を十分ならしめ、その効率を良好ならしむ弁装置が必要となってくる。
(4)材料の改良
材料は主として機関車の重量軽減の目的によるもので、気動車には相当思い切った軽合金使用のものが欧米に現れている様であるが、機関車は元来が大馬力発生の動力車であるから、あまり重量を苦にしない状態におかれていた。
最近、高速度運転や高圧缶のため、局部的に特殊材料が使用され始めたが、あまり発展せず一局部に過ぎない。缶板にニッケル鋼を使用する他、棒類あるいは車軸等に特殊鋼が使用されている。ことに棒類の重量を軽減することは、往復運動部分の釣合上からも望ましい事である。
(5)軸受の改良
軸受金の改良として第一歩を印したのは、白メタルを使用することであったが、最近においては「コロ軸受」が漸次使用される様になってきた。欧米においては客車や気動車等にかなり広く採用され、機関車に対しても一部に使用されている。満鉄のパシハおよびダブサ形式は、コロ軸受が動輪軸に対しても使用されている。
我が国においては気動車や電車に採用されており、電気機関車の動輪にも試用されたが、未だ蒸気機関車には採用される域に達していない。機関車や客車等にコロ軸受を使用し走行抵抗を減ずることは反面、機関車の性能を増強したと同一効果を持つものである。なおコロ軸受を使用すれば点検、給油等の手数を省くことができる。
(6)その他の改良
以上各項に述べたものはいずれも、現在の機関車を土台として、局部的に改良を加えんとするものであるが、さらに蒸気機関車を別の方式に改良せんとするものもある。すなわちタービン機関車や超高圧機関車の出現は、蒸気機関車界に一大転換を画さんとするものである。
(7)各国蒸気機関車の一例
世界における蒸気機関車の代表的なものがどんな寸法にあるかを、参考までに示すと次表のごとくである。
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