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2025年2月の記事

2025年2月28日 (金)

機関車工学:下巻(その166)汽缶取扱:燃炭の方法/運転中炭火の調整

燃炭の方法/運転中炭火の調整

【 運転中炭火の調整 】

 列車が停車場出発の後はその速度を増進してかなり速かに標準速度に達せしむるため、多量の蒸気を費やすをもって火夫は出発後間もなく「ファイア・ボックス」内に石炭を補充するを要すべし。熟練なる火夫は「ファイア・ボックス」内を一見すれば、直ちにいずれの部分に火層の薄きやを知り、いずれの部分がよく燃へ、いずれの個処がよく燃へざるやを見出だすが故に、猶予なくその補給すべき個処に石炭を加へ得べしと言えども、不熟練なる火夫はただ烈火の光に眩惑せられてこれを識別すること難く、みだりに石炭を諸方に堆積するが故に不完全なる燃焼作用を行はしむるを常とす。

 総て運転中炭火は、「ファイア・バー」上に均一に保つをもって主眼とすべく、殊に隅と側とには間隙を生ぜざるよう石炭を加ふるを要す。しかして火夫の常に心に銘して忘るべからざることは、機関車の業務に応じて相当に火を作り、しかも圧力計の指針を常に常用圧力点に置くにあり。火力を弱くし、蒸気の圧力を降下せしめ、缶水に欠乏を来たさしむるは、たまたまその不熟練なることを示すと言えども、同時に一時に火力を強くし、徒らに「セーフティー・バルブ」より蒸気を噴出せしめるは、これ石炭を浪費するものにして善良なる火夫のなさざる所なり。

 

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2025年2月26日 (水)

機関車工学:下巻(その165)汽缶取扱:燃炭の方法/出発前炭火の調整

燃炭の方法/出発前炭火の調整

【 出発前炭火の調整 】

 火夫は庫内勤務機関手よりその乗務すべき機関車を受領したるときは、よくその水量、圧力、及び火勢を検査し、列車出発時刻までに各々過不足なき様これを加減すべし。火夫出勤後直ちに無頓着に石炭を投入し、無頓着に「ブロワー」を開く者あり。その結果多くは蒸気の騰発をして過度ならしめ、無用に蒸気を安全弁(safety valve)より逸し、あるいは多量送水の結果「プライミング」を惹起するの原因を作る。

 一般に列車出発前に火を調整することは火夫の最も注意すべき事柄にして、運転中燃炭の失敗は始発停車場出発後まもなく起りて、遂にこれを回復する事あたわざるに至る者多く、しかしてその原因は全く出発以前における炭火の調整よろしきを得ざるにあり。殊に始発停車場出発後、直ちに勾配線に臨む場合ならびに重量列車を牽引せんとする場合には、「グレート」上に白熱せる骸炭(coke)の深層を保有するにあらざれば、直ちに必要なる蒸気を供給する事あたわざるのみならず、新たに投下する石炭をしてたちまち燃焼する事あたわざらしむべし。

 故にかかる場合には特に出発前に炭火の調整に意を用ひ、少量の石炭をしばしば投入し、「ブロワー」は最小の程度に開きて、ようやくもって煙を殺すに足るだけの空気を「ファイア・ボックス」内に導くべく、場合によりては「ファイア・ドア」を少しく開きてそれより空気を入るべし。しかるときは石炭をやや蒸し焼きして骸炭となし、もって出発前に火層を作り得べし。このごとくして列車に機関車を連結するときは、彼の乗降場に黒煙を溢らせて乗客を困しましむる事も自然に救済することを得べし。

 

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2025年2月24日 (月)

機関車工学:下巻(その164)汽缶取扱:汽缶点火/点火に関する注意事項

汽缶点火/点火に関する注意事項

【 点火に関する注意事項 】

 汽缶点火に関しては左の事項に注意することを要す。

 1.
 機関車を庫内適宜の位置に置き、その煙筒をして庫内にある煙受の下に会せしむべし。これ通風を良くすると黒烟を庫内に撒せざらしめんがためなり。

 2.
 缶内に適当の水量あることを確認すべし。単に「ゲージ・グラス」に顕はるる水量を一見するに止まらず、「ゲージ・グラス」の底部にある「ドレーン・コック」を開き残留せる汚物を除去し、上部及び下部の「コック」は一様に開放せられて管内に水の流通自在なることを認むべし。且つ「テスト・コック」を有するものはこれを開き水の流出を試むべし。

 洗缶後いまだ水を盛らざる缶に点火しこれを熱焦し、「ラッギング」を焼くに及び始めて缶内に水なきことを発見し、為に「ファイア・ボックス・プレート」を焦損し「チューブ」を溶解し、汽缶に大損害を来したるの例乏しからず。

 3.
 「ファイア・ボックス」内をよく検査し、「チューブ」、「ステー」、「リード・プラグ」等より漏水せる個処なきや、「ファイア・バー」、「ブリック・アーチ」に故障なきや否やを確むべし。「ロッキング・グレート」の場合には「シェーカー・レバー」を把りてこれを動かし、「ロッキング・グレート」及び「ドロップ・プレート」はその働き完全なるやを試むべし。なお「アッシュ・パン」に灰燼堆積し居らざるやを験すべし。

 4.
 「スモーク・ボックス・ドア」は間隙なく適宜に閉鎖せられ居るやを検査すべし。必要と認むるときは「ドア」を開き、「スパーク・アレスター」、「スチーム・パイプ」、「エキゾースト・パイプ」、「ブロワー・パイプ」、その他「ペチコート・パイプ」、「デフレクティング・プレート」等に異状なきやを検査すべし。これらはままその位置を変更せられ、もしくば毀損し居ることあり。また「チューブ」はよく掃除せられたるやを確むべし。

 5.
 「レギュレーター・バルブ」を充分に閉塞し、「リバーシング・レバー」を「セクター」の中央に置き、「シリンダー・コック」を開放し且つ「ハンド・ブレーキ」を緊締し置くべし。これらを怠れるがために蒸気の発生に伴ひ機関車自動したるの例乏しからず。

 6.
 諸方の「スチーム・ストップ・バルブ」は充分に締り居るやを確むるを要す。汽缶洗滌の時もしくば一部修理のため「スチーム・ストップ・バルブ」を開きたるまま忘れ居ることあり。また場合によりては常に開き置くべき「コック」を閉ぢたるまま忘れ居ることあり。かって「プレッシャー・ゲージ」に属する「パイプ」の継目より蒸気の漏泄せるを修繕せんがため、一時その「コック」を締め置き、そのまま開くことを忘れたるため点火に際し蒸気騰発せるを永く心付かざりしことあり。

 7.
 以上の検査行ひたる後「ファイア・グレート」一面に数インチの厚さに石炭を投入すべし。その分量は大抵それだけの石炭にて「ブロワー」を使用し得る程度まで蒸気を騰発し得る数量を見積るを常とす。粉末多き石炭はこの際「グレート」の間隔より「アッシュ・パン」に墜落すること多きをもって、始めはなるべく塊炭を撒布するを良しとす。然かするときは空気の流通もまた好良なり。

 しかる後火種として薪火または炭火を一個処にまとめて石炭の上に加ふべし。薪を使用するときは薪に油気ある屑糸を巻き付けこれに点火し、もって「ファイア・ボックス」内に投入すべし。通常これを「グレート」の中央部に積み重ねて燃焼し、それより石炭に燃へ移りて自然に諸方に延焼せしむ。ただし前方法と異なり「グレート」のやや後部にのみまず炭火を起して、さらにこれを崩して前方に押し広げ、さらに石炭を加ふることもまた一法なり。

 「グレート」一面に撒布し置ける石炭があまり多量なるか、もしくば粉炭多きときは空気の流通を害し、火の燃へ付を悪くし、石炭を蒸し、黄色の烟を出し、「ファイア・ボックス」及び「チューブ」に多量の水分を付着せしめ点火を失敗せしむ。この場合には「チューブ」を掃除し、炭層を調整し空気の流通を良くすべし。

 米国鉄道の一部においては特に長き取柄を有する点火用の油噴出器を作り、圧搾空気を利用して原油を噴出せしめ、それに火を点じて長き火焔を生ぜしめ、これを「ファイア・ボックス」内に挿入して石炭に直接吹き付けてもって石炭に点火せり。この方法によるときは実に一瞬間にして石炭全部に点火することを得べし。

 8.
 「ダンパー」は始めはこれを開き置くべし。「ブロワー」を用ひ火力増進するに及び漸次これを加減し、燃焼に要する適量の空気を供給すべし。

 9.
 蒸気騰発し「ブロワー」を使用することを得るに至れば直ちにこれを利用すべし。これ炭火の燃焼を助くるのみならず水の循環を好良にし、汽缶の温度をして早く均一ならしむるの利あり。他の機関車あるいは据付汽缶より蒸気管を「ブロワー」に連接し、他の蒸気を借りて「ブロワー」を使用する事もまた一便法なりとす。また圧搾空気を利用し得る機関庫にては、始めより圧搾空気により通風を作るを良しとす。

 10.
 点火担当者は汽缶に点火したる後、絶へずその烟の色に注意すべし。黒烟のときは点火良好にして、青烟及び黄烟のときは点火不良なりと知るべし。けだし青烟は石炭の揮発分中の炭化水素が燃焼する事あたわずして逃出しつつあるを示し、黄烟は最も分解し易き程度の炭化水素、すなわち「コールタール」等の蒸留逃出しつつあるを示し、共に燃焼の熱度低き場合に起る現象なり。黒烟は遊離せる固形炭素のために着色せられたるものにて、燃焼不充分の結果なりとは言へ燃焼の温度は青烟及び黄烟の場合よりもはるかに高し。故に青烟及び黄烟噴出の場合は猶予なく火勢を調理すべく、場合によりては速かに「チューブ」を掃除するを要す。

 

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2025年2月22日 (土)

機関車工学:下巻(その163)汽缶取扱:汽缶点火/点 火

第5章 汽缶取扱

汽缶点火/点 火

【 点 火 】

 帰庫したる機関車は引続き再び使用する場合、及び特に埋め火をなす場合を除き、火室内の灰燼をことごとく皆掃除して機関庫に容るるものなれば、その機関車を使用せんとする時はさらにこれに点火せざるべからず。しかして点火の準備をなし点火を行ひ、列車出発時刻約1時間前に蒸気の圧力をして約 50ポンドまで昇騰せしめ置くは庫内勤務機関手の職掌とす。

 

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2025年2月21日 (金)

機関車工学:下巻(その162)給 油:摩擦部の発熱及び手当

【 摩擦部の発熱及び手当 】

 運転中、車軸頸その他諸摩擦部発熱の徴候を呈するときは、機関手は慎重にその経過に注目し熱度を増加せしめざるよう諸種の手段を構ずべし。諸種の手段とは多くは発熱個処を細密に検査して破損部分なきやに注意したる上にて、油の補給、油壺及び油管の清掃、「トリミング」ならびに填物(packing)の取換、負担圧力の減少方法等にして、発熱個処に給すべき油は種油を第一とし気筒油これに次ぎ、まま黒鉛(graphite)または石鹸を用ひて奇効を奏することあり。

 機関車においてもまた船舶用機関においても、発熱個処に冷水を注ぎつつ運転を継続することあり。米国にては機関車の車軸箱に特にこの目的をもって注水装置を施せるものあり。

 車軸頸の填物(packing)が発火するときは単に火を消すに足るべき。水を注入し焼損せる填物及び水分を取除き、油に浸したる新規の屑糸を填充すべきなり。停車ごとに冷水をもって車軸を冷却するときは冷熱激変し、ために車軸を折損するの恐れあるをもって出来得る限り油の力により運転を継続するを務むべし。 

 1個の車軸が発熱するときは、その上に加はれる重量をいく分か軽減してこれを救済することあり。英国式の機関車においては「スプリング・ハンガー」の加減により、米国式の機関車においては「スプリング・サドル」と「フレーム」との間に、相当の厚さを有する鉄片を挿入して負担重量を軽減するを得べし。

 車軸箱に填充すべき「パッド」または糸屑は、少なくとも三昼夜油中に浸し置きてよく油に飽和したるものを使用せざるべからず。しかして使用前には金網の上に置きて余分の油を流出せしむべく、その程度は軽き圧力を加ふれば油がやや搾り出さるる位となし、堅きに失せずまた緩かに失せざるよう最も注意して填充すべし。填物に余り多くの油を含ましむるときは油は車軸頸の周囲に滞り居り、その油流出の後は填物と車軸頸とは密着を欠くに至るべし。

 車軸頸発熱なるものは、油質不良、混水及び注油方法の不完全なること常に大なる原因なりと言えども、その他種々なる原因存在し修理当事者の苦心する事はなはだ多く、種々の修理手段を講ずる間に特別の原因を発見することあり。しかして多くは発熱せる「ブラス」を取外し、熱焦せる痕跡を見てその発熱を始めたる個処を検し、「ブラス」の遊間、磨り合せ面の多少及び形状等を調整し、なお進んで重量の分配、車軸及び「ブラス」の屈曲作用、ならびに各中心の正否等を探求し、「ブラス」及び「ホワイト・メタル」の性質を研究するの必要あることあり。しかしていかなる場合においても車軸頸は全長を通じて同一の直径を保つべく、磨り合せの結果隋円形をなすべからず。

 車軸頸、及び「ブラス」、ならびに填物等の関係状態ははなはだ微妙なり。検査上特に必要なる場合の外は漫りに手を触れざるを宜しとす。従って機関手が仕業の終りに車軸発熱を報告するに当り、最も精確にその故障ある車軸箱のみを報告すべし。もしその他の車軸箱をも検査すべきものとして報告し、それらに加工せらるるごときあらば却って次の仕業に発熱を招くことあるべし。要するに良好の状態にある車軸箱はそのままになすをもって安全なりとす。

 「ビッグ・エンド・ブラス」、「クロス・ヘッド・ピン」等の発熱するは、「コネクティング・ロッド」の両端における「ブラス」中の孔が平行せずして、「キー」にて締め付けらるるとき一部を強く圧するより来ることあり。または一般に「キー」の締め方強固に過ぐるより来ることあり。

 「エキセントリック」の発熱が「ストラップ」の締め方強きより来るを認むるときは、両「ストラップ」の継目に相当の「ライナー」を挿入してこれを緩むべし。「ストラップ」の取付け緩まるに拘らずなお発熱するときは、よく油孔を掃除し少量の気筒油を加ふるときは効験最も著し。

 しかして「エキセントリック」の発熱は「スライド・バルブ」の給油不充分なるがため、余分の力を「エキセントリック」に受くるより来ることあるをもって、「エキセントリック」発熱したるときは「スライド・バルブ」には特に多量の油を給すべきことを忘るべからず。鋳鉄製の「エキセントリック・ストラップ」発熱したるときは破損し易きをもって注意を要すべく、且つこれに水を注ぐことは最も禁物なり。

 「スライド・バー」の締付け堅きに失して為に発熱するときは、「スライド・バー」と「ブロック」との間に錫板の「ライナー」を挿入すべし。この際にも決して水をもって「スライド・バー」を冷却すべからず。急に冷却すればたちまちこれに歪を生ぜしむべし。

 

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2025年2月19日 (水)

機関車工学:下巻(その161)給 油:油使用量

【 油使用量 】

 気筒油及び器械油の使用量は、機関車の種類、仕業の難易、運転距離の長短等に応じ等差あるべく、また油の良否にも関係あるべし。米国においては「ガレナ」油会社が多くの鉄道会社に油を供給し、且つ注油方法を監督して機関車1マイル当りの油の費用を請負へるものなるが、気筒油に対し該会社が標準使用量となせるものは第 106表に示すがごとし。ただし米国においては「スライド・バルブ」は総て「バランス・バルブ」なりと知るべし。

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 米国大鉄道会社の一つなる「シカゴ・ミルウォーキー及びセントポール」鉄道会社の成績によるに、気筒油使用量は旅客列車用機関車 100マイルに付き2合6勺、貨物列車用機関車 100マイルに付き3号5勺、入換用機関車 100マイルに付き5合2勺にして、総平均 100マイルに付き3合5勺の気筒油を使用せり。また機械油は総平均 100マイルに付き約1升を使用せり。

 その他外国における一般の例を見るに皆大同小異にして、旅客列車用機関車においては機械油は気筒油の4倍、貨物列車用機関車においては同じく3倍を使用せり。

 近来我国における油使用量は、機関車 100マイルに付き気筒油2合ないし3合(過熱蒸気機関車にありては5合)、機械油約1升なり。しかしてこれら使用量が総ての点より観察して最も経済的なるやは未だ判断しあたわずと言えども、未来の傾向は給油方法の改良と取扱の熟練と相待ちてなお油使用量を減じ得ると同時に、益好良なる油を選択するに至るべしと信ぜらる。

 

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2025年2月17日 (月)

機関車工学:下巻(その160)給 油:サイトフィードルーブリケーター

【 「サイト・フィード・ルーブリケーター」 】

 機関車外部の摩擦する個所は、あるいは外観により、あるいは手を触れて給油の状況を観察し得るの便宜あれども、「シリンダー」内部及び「スライド・バルブ」における状態は平素簡単にこれを知悉する事あたわず。最もはなはだしき不良は「ピストン」及び「バルブ・スピンドル」の「パッキン」より蒸気漏泄を来たし、あるいは「シリンダー」内に音響を発し、あるいは「バルブ・シート」焦損のため蒸気漏泄すること等により知り得べきも、これ最も消極の場合にして発見次第修理を加ふべき状態に至りたるものなり。

 これらの結果は「シリンダー」削り直し、「バルブ」ならびに「シート」の摺り合せ、または「シリンダー」に「ブッシュ」挿入等の工事をなすを要すべし。また相当期日間、機関車を休車せしめざるべからず。加えこれこの故障を発見するまで、給油の不足は機関車の燃料の消費高を増加せしめたること疑なし。

 「サイト・フィード・ルーブリケーター」の効能に就ては従来余りこれを楽観したるがごとし。従ってその取扱も粗略に失するを見る。蒸気使用中いかなる場合と言えども、滴々上昇したる油は霧の状態となりて「スチーム・チェスト」内に進入し、たちまち蒸気と混合して「シリンダー」に赴くものと想像したれども、これ多くは「カット・オフ」を遅くして運転し、「スチーム・チェスト」内に常に蒸気の流動あるときに起る現象にして、30「パーセント」以下の「カット・オフ」の場合には「チェスト」内における蒸気の流動少なく、且つ「レギュレーター・バルブ」より来れる蒸気が「カット・オフ」のつど「チェスト」内に行きづまるをもって、油管より油を誘導すること少きのみならず、ややもすれば油を逆流せしめんとするの傾あり。

 故に 30「パーセント」以下の「カット・オフ」の場合には、「サイト・フィード・ルーブリケーター」は信頼するに足らず。この場合における油は「カット・オフ」の遅き場合に進入したる油、または「レギュレーター・バルブ」を閉塞したるときに一時に流れ込みたる油により補充せらるるものなり。故に永く 30「パーセント」以下の「カット・オフ」をもって運転する場合には、発車の際「レバー」を引き上げざる内に充分に給油するか、または運転途中極めて短期「レギュレーター・バルブ」を閉塞することは必要の措置なりとす。

 油管は「スチーム・チェスト」あるいは「スチーム・パイプ」に立込みありと言えども、種々実験の結果によれば「スチーム・チェスト」に立込みたるものが、そこの急激なる蒸気の流動により良く油を導くに適することを認められたり。しかして油管の先端はやや「チェスト」内に突出せしめ、突端の口径を直径 8分の1 インチないし 16分の1 インチとし、あたかも「ノズル」の形状をなさしむるときは油の誘導ならびに噴出上最も好結果を呈す。

 「ルーブリケーター」用の「スチーム・バルブ」は常に全開の位置に保ちて油の送出をして便ならしめ、油滴の分量は「レギュレーティング・バルブ」にて加減すべし。油滴は小なるものほど蒸気のためによく分解せられて霧の状態をなすものなれば、油滴大にしてガラス管の内面に充実するがごとき状態のものは、上部「キャップ」を取外し石鹸湯を入るるか、あるいは石鹸の小片をガラス管内に入るる時はよく油滴を小にすることを得べし。

 「ルーブリケーター」は常によく清掃し、「レギュレーティング・バルブ」を少しく急に開けば点滴継続して上り過ぐるの状態に存すべし。しかして時々蒸気を「スチーム・チェスト」より吹返して油管内を掃除し、蒸気管より分岐せる各小孔、ならびに「ルーブリケーター」体内の沈殿物、及び「ノズル」を清浄に保つべし。従来の習慣として「ルーブリケーター」を「キャブ」内の薄暗き一隅に取付くるは大いに誤れるものして、これを最も見易き位置に移すを要す。

 出場機関車あるいは庫内において永く休車したる機関車を使用するときは、その初めの日に「バルブ・シート」を焦損すること多し。故にこれらの機関車は初めの数日間はかなり「レバー」を多く引上げず、遅き「カット・オフ」をなさしめ給油を充分ならしむべし。

 鋳鉄製「スライド・バルブ」は、真鍮製「スライド・バルブ」に比すれば給油上いっそうの注意を要し、多量に且つ絶へず給油せざるべからず。給油管が「サイト・フィード・ルーブリケーター」を出づるとき一本にして先に至り、二本に別かるるものは送油不同なるをもって、鋳鉄製「スライド・バルブ」に対しては絶対にこれを避け、始より二本の給油管にて独立に各「スチーム・チェスト」に連絡せしむるを要す。しかして主義として鋳鉄製「スライド・バルブ」は「バランス・バルブ」となすを良しとす。

 蒸気を使用せずして長き下り勾配線を運転するときは、油が「スチーム・チェスト」の一個所に停滞するの恐れあるをもって、相当の時機を見計ひて少量の蒸気を「シリンダー」に送ることは、油を全般に分布する上において必要なりと認めらる。

 運転中給油不工合に陥りたるときは、補助注油口より給油すべきことを忘るべからず。

 温き水はよく油を洗ひ去るものなり。故に「シリンダー」の凝結水は努めて早く「ドレーン・コック」よりこれを抜き取るべし。「プライミング」を起したる場合もまたしかり。

 

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2025年2月14日 (金)

機関車工学:下巻(その159)給 油:メタリックパッキン

【 「メタリック・パッキン」 】

 「ピストン・ロッド」及び「バルブ・スピンドル」の「スタッフィング・ボックス」に、「メタリック・パッキン」を容るるの前には必ず「ロッド」の磨滅を検査すべし。「ロッド」の状態不良なるときは「パッキン」より蒸気の漏洩するを免る事あたわざるべし。また常によく給油するを必要とし、油は気筒油を使用するを良しとす。「パッキン」磨損したるときは「リング」の両端を少しく削り取りて、再び「ロッド」の周りに密着せしむるよう修理を加ふべきなり。

 

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2025年2月13日 (木)

機関車工学:下巻(その158)給 油:タクスパッキン

【 「タクス・パッキン」 】

 新たに「タクス・パッキン」を挿入せんとするときは、まず「スタッフィング・ボックス」を清潔に掃除して薄く獣脂(tallow)を塗り置くべし。「タスク・パッキン」は乾燥に過ぎず、また湿気を含まずしてその太さ均一にして、「ロッド」と「スタッフィング・ボックス」との間隙よりもむしろやや大なるものを撰み、数個の輪を作るべし(輪形を作るには両端を斜に切りて接合するを良とす)。しかして獣脂を塗り、輪の接合部が互ひ違ひに列ぶよう順次丁寧に挿入すべし。

 これを「グランド」及び「ナット」にて締付くるには、始めは蒸気の漏洩せざるを程度とし堅く圧迫すべからず。少しく運転するときは「パッキン」は漸次落付くをもって少しづつ「ナット」を緩め、容積減ずるに従ひさらに新規の「パッキン」を追加すべし。しかして「グランド」は「チェック・ナット」をもって確かにこれを抑へ、一方を締め過ぎて傾斜せしめざるよう双方の「ナット」は相平行するを要す。常に堅きに過ぎざるよう、また油の潤沢を得るよう注意し蒸気漏洩することなくして、「ピストン・ロッド」及び「バルブ・スピンドル」に常に銀色の光沢を帯ばしむる様にすべし。

 丁寧に挿入したる「タスク・パッキン」は時々これを締付くるのみにて、さらに一片の追加を要するまで約 8000マイルの運転を支ふることを得べし。「スタッフィング・ボックス」の「ブッシュ」磨耗せるものにありては、蒸気は直接に「パッキン」を犯しこれを損害すること速かなるをもって、この場合には「アスベスト・パッキン」の一片を「ブッシュ」に近く挿入し置くときは一時これを防ぐことを得べし。「タスク・パッキン」の保存は大に注油の良否に関係す。

 

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2025年2月12日 (水)

機関車工学:下巻(その157)給 油:コルク

【 「コルク」 】

 「オイル・ポット」に「コルク」の填充堅きに過ぎて、空気の流通を妨げ油を滴下せしめざるため摩擦部に熱焦を来すことあり。そもそも「オイル・ポット」の蓋は大気の圧力作用にて、弾機を圧して自然に空気を容るる装置あるものの、外は金属製の蓋たると「コルク」たるを問はず、油溜内にいく分か空気の漏入し得るよう針小の小孔を設くることを必要とするものにして、これらの小孔より油の飛散する恐れあるときは、数筋の毛糸をその孔に挿入すれば油の飛散を防ぎ得ると共に、空気の流通を害せざるべし。

 「コルク」の場合には小刀にてその周辺に沿ふて螺旋状に切り込みを付け挿入するも可なり。しかしていずれにしても「コルク」挿入の加減を適宜にするには最も熟練を要す。

 

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2025年2月11日 (火)

機関車工学:下巻(その156)給 油:トリミングの加減

【 「トリミング」の加減 】

 新規なる毛糸は漸次擦れ合ひてその容積を減ずるものなれば、よくこれを見計ひてさらに数本の毛糸を増加せざるべからず。しかして毛糸一筋の増減はたちまち油量に影響するものなれば、その増減には絶えず留意せざる可らず。総て新機関車または新に摩擦部に修理を加へたる機関車にありては発熱の恐れあるが故に、当分の内「トリミング」は油溜の油量の許す限り緩く挿入するを要す。

 「プラグ・トリミング」においてなお多量の油を給せんと欲し、その毛糸の数筋を油溜内に垂下せしめ、もって同時に「テイル・トリミング」の働をなさしめんと企つる者あれども、回転部においては油管の外部に垂下せる毛糸は運転中に相乱れて一円となり別に効用をなさざるべし。

 使用する油の性質は機関手の最も注意すべきことにして、ある種の油に適当せる「トリミング」は他種の油に適当せざるべし。加えこれ寒暖の差により同種の油と言えども「トリミング」の加減を修正する必要あるが故に、注意深き機関手は一日の内と言えどもその昼夜朝夕はもちろん、日光に面する部分と面せざる部分とによりその加減を異にせり。

 また油中にはまま塵埃等混合物ありて「トリミング」の作用を止め、または土砂等固形物存在して軸頸その他摩擦部を損傷することあるにより、「トリミング」は時々取り出してこれを洗滌し油溜は清潔に掃除すべし。摩擦部に熱を帯びたる場合は殊にしかりとす。

 

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2025年2月10日 (月)

機関車工学:下巻(その155)給 油:テイルトリミング

【 「テイル・トリミング」 】

 「テイル・トリミング」を作るには、まず銅線の中央に毛糸の一束を横たへ、銅線を二重に曲げ縄形にねじり、他端を左右に広ぐること前のごとくし、後ち毛糸の束を二重にしてこれを束ねて油管内に挿入し、なお毛糸をして油管外に長く垂れしむべし。この場合には毛糸の下端は「プラグ・トリミング」のごとく「ジャーナル」に近く下れども、上端は長く油管外の油溜中に垂るるものなり。

 「プラグ・トリミング」は油溜より油管内に落下せる油を、適当に摩擦部に滴下せしむるために設けられたる毛糸の栓にして、その油は運転中においては油溜の動揺するがために油管内に流入するも、停止の際は単に油管内「トリミング」の上部に残留せる油のみ滴下するに止まる。

 これに反して「テイル・トリミング」は運転中なると停車中なるとを問はず、油溜に油の存在する間は毛細管引力により絶えず給油するをもって、永く機関車を停止するときはその「トリミング」は抜き出し置くを要す。従って「テイル・トリミング」の個所に充分に注油するの時機は発車時間に切迫したるときにおいてすべし。しかして永く「トリミング」を抜き出し置きたる後は、これを挿入するの前において少量の油を油管内に注入するを良しとす。

 

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2025年2月 8日 (土)

機関車工学:下巻(その154)給 油: プラグトリミング

【 「プラグ・トリミング」 】

 「プラグ・トリミング」を作るには、まず相当の長さ(例へば「ビッグ・エンド」にては4インチないし6インチ)を有する銅線を取り、中央より二重に曲げこれを縄状にねじり、しかる後曲げたる一端を切るべし。しかして他端を油管の上縁に掛け得るよう左右に広げ、一筋の長き毛糸を縦に巻き付け相当の大きさを有せしむべし。しかしてこれを油管内に挿入するには、毛糸の下端は「ジャーナル」のまさに達せんとするの位置に垂下し、上端は油管の上部より 8分の3 インチないし 2分の1 インチ以下の位置に在らしめ、毛糸の上部に一つの油溜をなさしむ。

 

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2025年2月 7日 (金)

機関車工学:下巻(その153)給 油:毛糸トリミング

【 毛糸「トリミング」 】

 毛糸の「トリミング」に二種の別あり。「ビッグ・エンド」、「カップリング・ロッド」、及び「エキセントリック」等回転する部分にはいわゆる「プラグ・トリミング」なるものを用ひ、「スライド・バー」、「グランド」、「アクスル・ボックス」等固定の部分にはいわゆる「テイル・トリミング」なるものを用ふ。

 

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2025年2月 6日 (木)

機関車工学:下巻(その152)給 油:注油方法

【 注油方法 】

 前にも陳べたるがごとく摩擦部に注油するの方法は油浴によるか、もしくは油に飽和せる「パッド」をもってするを最良となせども、各部の状況により、あるいは毛糸を利用しその毛細管引力により、油を絶へず少量づつ注入することあり。または単に油孔のみを設け時々これに油を加ふることあり。

 また「シリンダー」及び「スライド・バルブ」に関しては全然別途の注油方法を取り、主として「サイト・フィード」給油器によることは、第2巻第7編第4章「シリンダー」の給油器の章に説明したるがごとし。ともかく各種の設計に従ひ注油量を調整し、遺漏なく必要の個処に注油することは機関手の任務にして周到なる注意を要するものなり。

 注油に際し、油孔、油溝のよく疎通して、塵埃または油垢等にて油道の閉塞せらるる事なきを確認すべきはもちろんなりと言えども、「トリミング」、殊に毛糸の作用を完全にすべきことは相当の努力と判断を要するものなり。油の性質に応じて毛糸の分量を定め、これを堅きに失せず緩きに過ぎず適当に油管内に挿入し、油を常に均一に摩擦部に補給する事は最も熟練を要するものにして、この加減は当該摩擦部の状態、ならびに一般に機関車仕業の難易にも関係すべし。

 また金属製「バルブ」の自動により、機械の運動に伴ひて自然に給油の分量を加減するものにあっては、よく「バルブ」の開き方を調整すべきこと、毛糸の分量を加減すると同じかるべし。

 

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2025年2月 5日 (水)

機関車工学:下巻(その151)給 油:諸実験の結果

【 諸実験の結果 】

 油の皮膜及びその摩擦に関する種々実験の結果を総合するに左の事実あるを認む。ただし摩擦面の圧力は平面の場合には1平方インチに付き 40ポンド、軸頸の場合には 100ポンド以上の場合を仮定す。けだしそれ以下の圧力の場合の摩擦は理論上の研究には面白しと言えども、高速度の場合の外は実際にその用なきをもってこれを省略したるものと知るべし。

 1.
 油の皮膜厚ければ厚きほど摩擦少なし。油の粘度多ければ多きほど摩擦大なり。

 2.
 摩擦面の速度大なれば油の皮膜を作ること容易なり。

 3.
 摩擦面の速度緩なれば油の皮膜を作ること困難なるのみならず、いったん形成したる皮膜も破損し易し。

 4.
 油の皮膜なるものは、十分に給油したる場合においても実際は非常に薄きもののごとし。完全なる測量は望むべからざるも、教授「グッドマン」氏はこれを1インチの 5000分の1、すなわち 0.0002インチなりと測定し、教授「レイノルズ」氏は 0.00077ないし 0.000375インチなりと測定せり。

 5.
 完全なる給油法は油浴(oil bath)なりとす。すなわち車軸頸の場合には車軸頸の下側を油に浸すことなり。この場合には1平方インチに付き約 600ポンドの重量を支ふることを得べし。

 6.
 油浴の場合においては重量の支持面積を適当にせば、1分時間 100フィートないし 200フィートの速度をもってして摩擦率を 0.001まで降下せしむるを得べし。

 7.
 油浴の場合には摩擦面の速度1分間約 10フィートに至るときは、よく油の皮膜を作り得て摩擦もその速度の場合をもって最低となすも、不完全なる「パッド」または他の給油法によるときは摩擦面の速度1分間約 100フィートなるに至り、始めて油の皮膜を作り得て摩擦もその点をもって最低となすべし。

 8.
 摩擦面の速度が前記の通り1分間 10フィートないし 100フィートに達し油の皮膜を作りてより、以上1分間 400フィートに至るまでは摩擦は速度の平方根に比例して増加するがごとし。例へば1分間 16フィートの速度の場合に摩擦率が 0.002なるときは、64フィートの場合には

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となるがごとし。

 9.
 油は総て熱の不導体にしてその受けたる熱を容易く他に放散せず。しかして油の皮膜は極めて薄きをもって、摩擦のために生じたる熱はたちまち油の皮膜を熱すること大なり。教授「レイノルズ」氏の実験によれば、車軸頸の発熱僅少にして且つ摩擦率低き場合においても、油の皮膜の温度はその付辺の金属より華氏 15度だけ高かりしと言ふ。

 10.
 油の皮膜はこのごとく容易にその温度を上昇するをもって砿油はたちまち稀薄となる故に、実用上砿油は種油等に比して始めより粘度の高きものを使用するを必要とす。油が熱せられて稀薄となれば、その摩擦は従って減少せらるるものなり。

 11.
 油の粘度多きものは油の皮膜の摩擦多し。しかれども給油不足がちにして荷重大なる場合には粘度少なき油は相当の皮膜を作る事あたわず。殊に摩擦面の速度遅き場合はしかりとす。これに反して荷重少なく給油充分なるときは、粘度少なき油を使用するも充分の皮膜を作り得るをもって摩擦を減じ得るの利益あり。殊に高速度の場合においてしかりとす。

 12.
 摩擦面の速度緩にして荷重大なる場合には、油を外方へ圧出して油の皮膜を作ることを妨ぐるのみならず、摩擦面の凹凸部(いかなる表面にも多少の凹凸あるを免れず)互に食違ひて、さらに皮膜を破らんとするの傾あり。故にかかる個処には異種類の金属を用ひ、且つ滑性に富める種油、もしくは種油(あるいは獣脂)と鉱油との混合油を使用すべきものなり。もし鉱油のみによるときは「ホワイト・メタル」を使用すべし。「ホワイト・メタル」はその質柔軟なるをもって仮令摩擦面に凹凸あるも、または偏重を負ふも、あるいは少時給油不十分なるも、その面容易く剥離しまたは変形して無理を来たすことなく、為にはなはだしく発熱することなし。

 13.
 摩擦面平面なるときは、その摩擦は荷重の平方根に比例するがごとし。しかれども車軸頸のごとくその面円きときは、その速度が油の皮膜を作り得る限り摩擦は荷重のいかんに関係なきがごとし。

 14.
 摩擦面積大なれば大なるほど摩擦多く、摩擦は摩擦面積に正比例して増減す。故に摩擦面積はかなり小なるを貴ぶと言えども、1平方インチにおける荷重過大なるに至れば油の皮膜を作り得ず。機関車及び客貨車の場合において、この1平方インチ上の平均荷重の制限は大よそ左のごとし。けだし荷重変化する事と注油の難易は自然種々の結果を呈するものと知るべし。

  動輪軸頸  250ポンド
   (ただしなるべくは旅客機関車 190ポンド、貨物機関車 200ポンド、入換機関車 220ポンドとす。)

  従輪及び「テンダー」車軸頸  300 同

  客貨車車軸頸  300 同

  「クランク・ピン」  1500 ないし 1700 同

  「クロスヘッド・ピン」  4000 同

  「クロスヘッド・シュー」  70 同

 ただし油の供給不充分の恐れある個処、及び油が埃塵と混じ易き個処には摩擦面に相当の余裕を存ずるを要す。       

 

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