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2021年8月の記事

2021年8月31日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その89)蒸気の顕熱

3.蒸気の顕熱

 摂氏ゼロ度の水を、飽和蒸気の温度までに熱するに要した熱量を顕熱という。それは水の温度上昇を寒暖計にて測ることができるため、この名があるのである。

 水を熱するに当たり、厳密に言えば水の比熱は温度により多少相違するものであるから、温度1度上昇するに要する熱量は、水の温度により相違するも、その差が極めて僅少なため、実用上は温度1度の上昇に対し1カロリーを要するものと考えて差し支えない。

 それ故、飽和蒸気の温度を摂氏 T 度すれば、蒸気1キログラムの顕熱は次の式で表わされる。

P113

 前掲飽和蒸気の性質表において、蒸気の温度と顕熱とを比較するに、顕熱の量は蒸気の温度を示す数よりいく分大であるが、これは水の比熱が温度により多少相違すること並びに、水の膨張に費やされた熱量が含まれる結果である。

 同表の顕熱は、水をゼロ度より熱する場合の熱量であるから、給水温度を t℃ とすれば、この場合の顕熱 h' は  h'=T-t カロリーである。それ故、表より全熱量を求める場合には、表に示された数字より t を引かねばならぬ。


【 例1 】

 缶使用圧力16キロ/平方センチメートルの飽和蒸気機関車あり、給水温度を摂氏20度とすれば蒸気1キログラムの顕熱を求めよ。

【 解 】

 前表の圧力は絶対圧力で示されてあるから、圧力 16+1=17 キロ/平方センチメートルの行を横に見て行けば、顕熱を示す欄の数字207.1であるから、顕熱は207.1カロリーである。

 よって20度の水を給水する場合には、水が既に20度まで温められているのであるから、この場合、水を温めるに要する顕熱の量は

  207.1-20=187.1 カロリー

 

【 例2 】

 機関車の給水温度は平均15℃なり、給水温め装置を使用する事により、給水温度を平均70℃に高め得るものとすれば、缶使用圧力16キロ/平方センチメートルなる飽和蒸気機関車では、何%の石炭節約を成し得るや。ただし給水温め装置を使用するも、機関車全体の効率は変わらざるものとする。

【 解 】

 給水温め装置を使用するも、機関車の効率が変わらないものとすれば、石炭消費量は蒸気1キログラムを作るに要する熱量の割合である。

 圧力 (16+1)=17 キロ/平方センチメートルの蒸気の全熱量は、圧力17キロ/平方センチメートルの行を横に見て行き、668.1カロリーなるを知る。

 よって、

 給水温度 15℃ なる場合の全熱量は

   668.1-15=653.5 カロリー

 給水温度 70℃ なる場合の全熱量は

   668.1-70=598.7 カロリー

 故に給水温め装置を使用する場合の石炭消費量の割合は

P114

 すなわち 100-91.4=8.6%の節約となる。

 

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2021年8月30日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その88)飽和蒸気の性質

2.飽和蒸気の性質

 密閉したる器に水を入れ、これを熱する時、水の表面圧力を大気圧に保つときは、100℃ にて蒸発を始め、器内の空間はついに大気圧と等しい圧力の蒸気にて、飽和せられるに至り、水が存在する間に発生しつつある蒸気を、飽和蒸気という。

 水の沸騰点は圧力に関係し、圧力の高まるに従い、漸次沸騰温度も高くなるものであるから、蒸気を発生させるには、水を熱してその温度を高めるか、あるは圧力を減少させるかの二方法がある。

 缶のごとく密閉した器中に水を入れ、これを熱する時は、蒸気の発生と共に缶内の圧力が増加するため、沸騰点は漸次上昇するものである。

 飽和蒸気は水と共に共存するものであるから、その温度は水の温度に等しく、常に一定の圧力に対し一定の温度を有す。それ故、温度が降下すれば、蒸気の一部は凝縮を起こし水となって圧力降下し、また温度が上昇するときは、水の一部は蒸発して蒸気となり、その圧力が上昇するものである。

 飽和蒸気の圧力、温度および容積の関係については、フランス人レニョー(Regnault )氏によって研究せられ、その後これに関する種々の公式も発表せられたが、いずれも実験を基礎とする実験式である。

 第20図は飽和蒸気の温度と圧力および容積の関係を示すもので、図中の圧力は温度に対し圧力の変化を示す曲線、容積は蒸気1キロの容積(立法メートル)を表すものである。

20_20210808124801

 これによれば圧力の増加割合は、温度の低い場合は比較的緩慢なるも、温度の上昇に伴い急激に増加し、蒸気の容積は圧力の上昇するに従って減少することがわかる。

 次表は飽和蒸気の性質を示すものである。

P111
P112

 本表によってわかる通り、顕熱は圧力の上昇と共に増加し、潜熱は反対に減少するものであるから、もし飽和蒸気の圧力を高めて行けば、ついには潜熱がゼロとなり、蒸気の全熱量は顕熱のみになる事を推定することができる。

 この点の温度に関し、グッドナフ(Goodenough )博士は 374.6℃ と推定しているが、これは一般からも信じられている値である。

 

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2021年8月29日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その87)熱の水に及ぼす影響

第4章 蒸 気

1.熱の水に及ぼす影響

 水は固体、液体および気体の三態に変化するものであって、この変化は水が有する熱の多寡により起こるものである。水に熱を与える場合、その熱量の増加するに従い、水がいかにその性質を変化するかを述べるに、まず器に1キロの氷を入れ、これを熱すると、氷の温度は漸次上昇し、摂氏零度に達したとき温度の上昇は止まり、なお熱すると氷は漸次融解し始めるも、器中に氷のある間は、その温度は常に零度である。

 かく器中に氷の存在する間、その温度が常に一定なるは、加えられた熱の全部が氷を融解するために費やされるがためで、1キロの氷を水にするためには79.5カロリーの熱量を要し、これを水の潜熱(または氷の融解熱)という。しかして氷が水となれば、その容積が減少し、零度の水を100とすれば氷の容積は109である。

 摂氏零度の水をさらに熱すると、水の温度は上昇するも、その容積は引き続き縮小し、摂氏4度(厳密にいえば3.98度)に達したるとき最小となる。すなわち水は摂氏4度において最大密度を有するものであって、この温度における水の容積は、零度を100とすれば99.989である。

 温度4度を超えるときは、温度の上昇に伴い水の容積は少しずつ増加し、100度に達すれば再び温度の上昇が止み一定となる。しかして零度より100度に達する間は、温度1度の上昇に対し1カロリーずつの熱を要し、100度における水の容積は、零度を100とすれば104.66である。

 摂氏100度の水を引き続き熱すると蒸発を始め、蒸発中における水の温度は一定温度100度であって、1キロの水が蒸気となるときは、その容積は1.645立方メートルにして、実に水(100度)の容積の1580倍となる。

 器底に水が存在するとき、発生しつつある蒸気を飽和蒸気といい、100度の水1キロを100度の蒸気と成すためには、539.9カロリーの熱量を要し、これを100度における蒸気の潜熱または気化熱という。

 器底に水が全部蒸発しつくした瞬間は、飽和蒸気の極限で、その温度はやはり100度である。この蒸気をなお熱すると、蒸気の温度が上昇し密度が希薄となるため容積が増加し、その容積は温度の上昇に伴い際限なく増加する。この状態の蒸気を過熱蒸気と言い、熱せられるに従い完全気体に近くなる。

 

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2021年8月28日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その86)断熱膨張および圧縮

7.断熱膨張および圧縮

 気体が膨張または圧縮する際、シリンダー壁より熱を取らず、また自己の有する熱を輻射または伝導等により失うこと無き場合は、これを断熱膨張、または断熱圧縮という。

 すなわち断熱膨張(または圧縮)とは、気体が膨張または圧縮される際、他の物体との間に、熱の受授が行われざる変化(膨張または圧縮)を言うのであって、実際の場合、気体とシリンダー壁との間に、少しも熱の受授が行われないというがごとき事はあり得ないが、膨張、圧縮が極めて迅速な高速度機関では、熱を受授する暇なきものとみなせるから、かかる場合は、ほとんど断熱膨張(または圧縮)と考えられるのである。

 かくのごとく断熱膨張は、熱の受授が行われないものであるから、気体が膨張して外部に仕事を成すに従い、気体の有する熱量が減じ温度も降下し、その減少した熱量は、すなわち気体が成した仕事である。

 反対に圧縮する場合は、圧縮されるに従い気体に仕事が加えられるから、気体の熱量が増加し、また温度も上昇し、増加した熱量は圧縮に費やされたる仕事に等しい。

 断熱膨張(または圧縮)は、気体とシリンダー壁との間に熱の受授が行われないのであるから、圧力と容積との関係は次の式で表わされる。

P106
19_20210804155201

 第19図は断熱膨張によって成す仕事を示したもので、最初圧力 P₁、容積V₁、温度T₁ なる気体が膨張すれば、容積の増加に伴い圧力は PVɤ=C なる曲線 BC に沿って下がり、熱の一部が仕事に変わるから気体の温度も降下し、終端 C に達したとき容積 V₂、圧力P₂、温度 T₂ となる。

 この場合、気体が成したる仕事は面積 BCDE で表わされ、これを W とすれば、

P107

 W =仕事(キログラムメートル)

 P₁ =初圧力(キロ/平方メートル)絶対圧力

 P₂ =終圧力(キロ/平方メートル)絶対圧力

 V₁ =最初の容積(立法メートル)

 V₂ =終わりの容積(立法メートル)

 断熱膨張では(33)式により PVɤ=一定であるから

P107_20210804155301

 次に(34)式の右側項の分母子を P₁V₁ にて除せば

P107_20210804155401

これに(a)式を代入すれば

P107_20210804155402

となる。

 また式中の

P107_20210804155501

となる。

 よって

P107_20210804155502

 次に圧力を知って仕事量を求めるには(a)式より

P107_20210804155601

これを(b)式に代入すれば


P107_20210804155602
P108

 以上(34)ないし(36)式のいずれにても仕事を計算することができ、(35)式は容積を知って、また(36)式は圧力を知って仕事を計算する式である。圧縮に要する仕事もまた面積 BCDE であるから、上式はやはり圧縮仕事をも示す式である。


【 例 】

 直径560ミリ、行程660ミリなるシリンダーに、ゲージ圧力12キロ/平方センチメートルなる気体0.0325立方メートルを入れ、これを膨張させれば膨張によって何程の仕事を成すや。ただし γ=1.3 とする。

【 解 】

 気体の初圧力は、ゲージ圧力12キロ/平方センチメートルであるから

P108_20210804155701

であるから、膨張によって成す仕事の量は(35)式から

P108_20210804155801

 

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2021年8月27日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その85)等温膨張および圧縮

6.等温膨張および圧縮

 一般に気体が膨張または圧縮される場合、容積と圧力の関係は PVⁿ=C なる式で表わされ、指数 a の値は 1~1.4 であって、等温膨張と断熱膨張とに区別せられる。

 等温膨張(または圧縮)とは、気体の温度を一定に保ち、膨張または圧縮させる場合を言うのであるから、圧力と容積の関係は PV=C にて表され、気体を膨張させその温度を一定にする場合には、外部から熱を与え、圧縮する場合には、反対に外部より気体を冷やし、その温度を一定に保つのである。

18_20210804103901

 第18図は等温膨張を示すもので、最初圧力 P₁、容積 V₁ なる気体を膨張させ、その容積を増加すれば圧力は曲線 BC によって示され、この曲線は PV=C であるから、任意の点 H の圧力を P₃、このときの容積を V₃ とすれば P₃V₃=P₁V₁ であって、この(P₁V₁)なる気体が V₁ より V₂、すなわち B 点より D 点まで膨張する間に成す仕事は、面積 BCDE によって表され、これを W とすれば

P105_20210804104001

 W =仕事(キログラムメートル)

 P₁ =膨張前の気体の絶対圧力(キロ/平方メートル)

 P₂ =膨張後の気体の絶対圧力(キロ/平方メートル)

 V₁ =膨張前の気体の容積(立方メートル)

 V₂ =膨張後の気体の容積(立方メートル)

 2.3026 =自然対数を常用対数にしたる場合の係数

すなわち

P105_20210804104101

 圧縮の場合は、膨張の場合と反対に(P₂V₂)なる気体を、曲線 CB に沿って圧縮し(P₁V₁)までにするのであるから、圧縮に要した仕事はやはり面積 BCDE によって表され、その仕事量は(32)式で表わされる。


【 例 】

 直径50ミリ、行程65ミリなるシリンダーあり、ゲージ圧力12キロ/平方センチメートルの蒸気を供給し、25%の締切にて運転するとき、蒸気が膨張によって成す仕事を求めよ。ただしシリンダーにはピストン間隔を有せず、蒸気は等温膨張を成すものとする。

【 解 】

 締切までに供給する蒸気の容積 V₁ は

P105_20210804104102
P105_20210804104201

且つ

P105_20210804104202

 故に蒸気が膨張によって成した仕事は

P105_20210804104203

 

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2021年8月26日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その84)比熱とガス常数の関係

5.比熱とガス常数の関係

 圧力を一定に保ち気体を熱すれば、気体は温度の上昇と共に周囲の圧力に反抗して、容積を増加する事により仕事を成すもので、周囲の圧力に反抗し容積を増加する仕事を、外部仕事(外部エネルギー)と言い、これに対し気体の温度および圧力の上昇に費やされる熱を、内部仕事(内部エネルギー)という。

 次に気体の容積を一定に保って熱する場合は、容積の増加を許さないから、加えた熱は全部内部エネルギーの増加に費やされ、気体の温度と圧力が高まる。

 すなわち圧力を一定に保つ場合においては、熱は外部エネルギーと内部エネルギーの増加に費やされ、容積を一定に保つ場合には、全部の熱が内部エネルギーの増加のみに費やされるのである。

17_20210804091601

 いま、外部仕事を考えるに、第17図のごとき容器にピストン A を入れ、ピストンは何らの抵抗もなく自由に上下し得るものとし、これに1キログラムの気体を入れたる時、最初ピストンは底より L₁ なる高さにあって、気体の温度を T₁、ピストン上の圧力、すなわち外部圧力を P キロ/平方メートルとする。

 次にこの気体を熱し、その温度を T₂ にすると容積が増加し、ピストンは L₂ なる位置に上がったものとする。今ピストンの面積を A 平方メートルとすれば、気体は P×A キロなる力が反対して L₂-L₁ メートルだけピストンを動かしたのであるから、外部仕事の量は

P102

 AL₂ および AL₁ は、ピストンが L₂ および L₁ メートルなる高さにある時の気体の容積であるから AL₂=V₂、AL₁=V₁ とすれば

P102_20210804091801

 圧力が一定なる場合は、PV₁=RT₁ PV₂=RT₂ なる関係があるから、上式は次のごとくなる。

P102_20210804091802

 しかして圧力を一定に保ち、1キログラムの気体を温度 T₁ より T₂ に熱するに要する熱量は、Cp を定圧比熱とすれば Cp(T₂-T₁)カロリーであって、この熱量を仕事に換算すると

P102_20210804091901

  J=熱の仕事当量にして427キログラムメートル

であるから内部エネルギーの増加は、これより外部仕事に費やされた仕事を引き去ったものに等しいはずで、すなわち増加した内部エネルギーの量は

P102_20210804091902

 次に1キログラムの気体の容積を一定に保ち、その温度を T₁ より T₂ に高むれば、内部エネルギーの増加は Cv(T₂-T₁)カロリーで、これを仕事にて表せば

P103

 Cv =定積比熱

である。(a)および(b)式は、いずれも気体1キログラムの内部エネルギーの増加であるから、これらは相等しい。よって

P103_20210804092001

すなわち

P103_20210804092002

 これによってみるに、ガス常数 R の値は、常に定圧比熱の Cp と定積比熱 Cv の差に、熱の仕事当量を乗じたるものに等しく、R は必ず正の数であるから、定圧比熱 Cp は常に定積比熱 Cv より大である。

 換言すれば気体を同温度だけ熱する場合には、圧力を一定にした方が多量の熱を要するのである。(30)式の両項を JCv にて除し、さらに変形すれば

P103_20210804092101

 R は(30)式では仕事の単位で表わされているから、これを熱単位 R' にすると

P103_20210804092201

 Cp/Cvなる比を通常 γ で表わし

P103_20210804092202

 Cp および Cv は気体の種類および温度によって変わるから、γ および R' の値もまた、気体の種類と温度によって変わるものである。なお(30)式の R は仕事単位で表わされ、(31)式の R' は熱単位で表わされている。主なる気体の γ の値を示せば次の通りである。

P104

 

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2021年8月25日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その83)気体の特性方程式

4.気体の特性方程式

 気体は、ボイルの定則とシャーレ(シャルル)の定則に従って変化するものであるから、この2つの定則を組合わせ、温度、圧力および容積の関係を示す式を、気体の特性方程式という。

 ボイルの定則によると、温度が一定なるときは、圧力と容積との積は一定であるから、最初、温度を一定(T₁)に保ち、気体を圧縮または膨張させれば、ボイルの定則により

P99

 P₁ =膨張または圧縮前の絶対圧力

 V₁ =膨張または圧縮前の容積

 P₂ =膨張または圧縮後の絶対圧力

 V' =膨張または圧縮後の容積

 次に P₂V' なる気体(P₂V' なる気体とは、圧力が P₂、容積が V' であるという意にして、以下これにならう)を、一定圧力 P₂ に保ち、その温度を T₁ より T₂ に変化し、変化後の容積を V₂ とすれば、シャルルの定則(27)式により

P99_20210801180201

よって

P99_20210801180202

 この V' を(a)式に代入し

P99_20210801180301

すなわち

P99_20210801180302

 P₁P₂ =気体の絶対圧力(キロ/平方メートル)

 V₁V₂ =気体の容積(立方メートル)

 T₁T₂ =気体の絶対温度(摂氏)

 気体の重量1キログラムに付き考える時は、上式の C を R で表わし、次の様に書く。

P99_20210801180401

 P =気体の絶対圧力(キロ/平方メートル)

 V =気体1キログラムの容積(立方メートル)

 T =摂氏にて示す絶対温度

 R =ガス常数

 この(28)および(29)式は、気体の温度、圧力および容積の関係を示すものであって、膨張または圧縮を成す場合は、この式に示す関係をもって温度と圧力が変化するもので、この式を気体の特性方程式という。

 R は気体の種類および密度により相違するはもちろん、温度によっても多少異なる常数であるが、工業上は密度および温度等に対しては一定のものとして取扱い、その値により如何なる気体であるかを知る事ができるから、これをガス(気体)常数という。

 空気および蒸気等は完全な気体でないから、厳密に言えばボイルおよびシャルルの定則にいく分添わないが、実用上はこれらの定則に従うものとみなして差し支えない。

 今、主なる気体のガス常数を示せば、次の通りである。

P100r

【 例1 】

 絶対圧力1キロ/平方センチメートル、温度摂氏20度の空気1立方メートルを、圧力3キロ/平方センチメートルに圧縮し、その温度を摂氏50度に熱すれば、容積何立方メートルとなるか。

【 解 】

 この問題では

 P₁ =1キロ/平方センチメートル=10000キロ/平方メートル

 T₁ =20+273=293度

 V₁ =1立方メートル

 P₂ =3キロ/平方センチメートル=30000キロ/平方メートル

 T₂ =50+273=323度

であるから(28)式により

P101

【 例2 】

 過熱蒸気機関車あり、20%の締切にて運転する場合、ピストンが行程の80%に達したる時の圧力を計算せよ。ただし蒸気の温度は一定にして、ピストン隙間容積はないものとする。

【 解 】

 シリンダーへ入れる蒸気の量、すなわち20%の時の容積を V₁ とすれば、80%の容積 V₂ は明らかに 4V₁ であるから

P101_20210801180501

よって

P101_20210801180601

 すなわち絶対圧力で示した初圧の4分の1になる。

 

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2021年8月24日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その82)絶対温度

3.絶対温度

 シャルルの定則により、完全気体の容積の増加は、絶対温度に比例するものであるから、気体の温度を段々降下せしむれば、温度の降下と共に気体の容積が減少し、その縮小する割合は温度の降下に比例するから、ついには気体の容積が仮想的にゼロとなる温度に達する。

 この点は摂氏の零度以下273度であって、この点を基として測った温度を絶対温度という。

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 第16図は気体の温度と容積の関係を示すもので、温度 T₁ の時の容積を V₁、温度 T₂ の時の容積を V₂ とし、温度 T₂ 、容積 V₂ なる気体の温度を T₁ に降下させると、その容積は V₂-V₁=FB だけ減少し、その縮小する割合は絶対温度に比例するから、温度をますます降下して行けば、ついに容積は C 点にてゼロとなる。

 図において、三角形 ABC と FBE とは相似形であるから

P98

 ここに、FE=T₂-T₁、FB=V₂-V₁、AC=T₂、AB=V₂ であるから

P98_20210801100601

よって

P98_20210801100602

 この式でわかる通り、ある気体の温度を T₁ より T₂ に変化せしめ、その時の容積の変化 V₂ -V₁ を実験的に求めれば、T₂ なる絶対温度を容易に求めることができる。

 しかして、摂氏零度における空気1立方メートルを100度に熱すれば、その容積は1,3662立方メートルとなるから、これを基に絶対温度を計算すれば、

P98_20210801100603

 すなわち、摂氏100度を絶対温度にて表せば373度となるから、絶対温度のゼロ度は寒暖計の零下273度である。よって摂氏寒暖計の示す温度を絶対温度にて表す場合は、寒暖計の示す温度に273度を加えれば良い。

 華氏寒暖計においては、絶対温度のゼロ度は寒暖計の零下461度であるから、寒暖計の示す温度で表わす場合は、これに461度を加える。

 

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2021年8月23日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その81)シャルルの定則

2.シャール(シャルル)の定則(Charle's law)

 圧力を一定に保つときは、完全気体の容積の増加は、絶対温度の増加に比例する。

 この定則は1787年、初めてフランスの物理学者シャルル氏(Charle)によって発表せられ、続いて1802年、やはりフランスの学者ゲールサック氏(Gay Lussac)によって発表せられたから、これをシャルルの定則、またはゲールサック(ゲイ=リュサック)の定則という。

 今、絶対温度T₁、容積 V₁ なる気体を、絶対温度 T₂ に温めたる時、その容積が増加して V₂ になったとすれば

P97

すなわち

P97_20210730224101

 この式をさらに書き直せば、

P97_20210730224102

すなわち

P97_20210730224201

 (27)式により、気体の容積は絶対温度に比例することがわかる。すなわちシャルルの定則は、気体の圧力が一定なれば、その容積は絶対温度に比例する、という事を示すものである。

 

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2021年8月22日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その80)ボイルの定則

第3章 気体の膨張と圧縮

1.ボイルの定則(Boyle's law)

 空気および蒸気等のごとき気体の膨張、および圧縮等を研究するには、まず気体の容積と圧力との関係、および気体に熱を加えた場合、圧力と容積がいかに変化するか等を知らねばならぬ。これによりシリンダー内における蒸気、空気および熱ガス等の変化の状態を容易に知ることができる。

 ボイル(Robert Boyle)氏は、気体に付きこれらの関係を研究し、次の定則を発表した。

 完全なる気体は、温度を一定に保つときは、その容積と圧力との積は一定である。

 これをボイルの定則という。

 今、

 P =気体の絶対圧力

 V =気体の容積

 C =常数

とすれば、ボイルの定則により

P96

である。例えば圧力を、10キロ/平方センチメートル、V =2立方メートルとすれば

  P×V=10×2=20・・・一定

である。この気体の温度を一定に保ち、容積を5立方メートルに膨張させると、圧力 P は

  P×5=20

 故に

P96_20210728190301

 これと反対に圧縮すれば、圧力は気体の容積に反比例して上昇するから、もし圧力を20キロ/平方センチメートルにすれば、容積は1立方メートルとなり、また圧力を5キロ/平方センチメートルにすれば、容積は4立方メートルとなることが容易にわかる。

 かように容積と圧力との積が一定なる場合は、容積は圧力に反比例する事となるから、圧力(または容積)を変化せしめ、それに対する容積(または圧力)を求め、これを図に表すと第15図の様な曲線となる。

15_20210728190301

 この曲線 abc は数学上は双曲線であるが、完全ガスが一定温度の下に膨張、または圧縮を成す場合を考える時は、特にこの曲線を等温線という。

 

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233p97

2021年8月21日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その79)蒸気機関車の効率(2)

(3)機械効率

 シリンダー内で蒸気が成した仕事の一部は、ピストンやクロスヘッドその他、機関各部の摩擦に費やされ、その残りの部分が動輪を回転するに利用される。動輪がレールの接触点において成す仕事と、ピストンに与えられた仕事との割合を、機械効率という。

 今、

 W₁ =ピストンに与えられた仕事

 W₂ =動輪とレールの接触点において成す仕事

とすれば、

P94

を機械効率といい、最近の機関車では65~90%位である。なお W₁-W₂ を機関抵抗ということもある。

 以上により、機関車全体の熱効率は、これら各効率を連乗したもので、わずかに使用石炭の3~9%が有効な仕事として働き、残りの97~91%は全く熱損失となるもので、いかに蒸気機関車の効率の悪いかがわかる。

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 蒸気機関車における熱の利用および損失の割合は、前述のごとくで、機関車の形式や燃料の種類によって一様でないが、さらに同一の機関車においてもその使用状態(燃焼率の大小、速度の高低、締切の大小その他)により変化するものであるが、普通の使用状態におけるこれらの割合を一例として示せば、大体次のごとくである。

   熱の利用または損失の区別            割合(%)

 (1)引張棒における有効牽引力              6%

 (2)空気圧縮機、給水ポンプ等の補助機に使用されるもの  6%

 (3)排出蒸気として失われるもの             52%

 (4)煙突よりの噴出熱ガスとして失われるもの       14%

 (5)シンダーに含まれる損失               8%

 (6)燃焼せざるガスおよび煤煙に含まれる損失       4%

 (7)輻射による損失                   5%

 (8)灰箱内灰塵の損失                  4%

 (9)機械抵抗による損失                 1%

                           計  100%

 第14図はこれらの事柄をいっそうわかりやすくするため、具体的に図示したものである。

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2021年8月20日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その78)蒸気機関車の効率(1)

7.蒸気機関車の効率

 蒸気機関車は、まず火室において石炭を燃焼し、缶に蒸気を発生せしめ、蒸気によりピストンを動かし、位置のエネルギーを機械的仕事に変えるものであるから、熱損失の起こる過程を考えるに、まず第一に石炭は全部火室内で完全燃焼を成すものではなく、一部の熱はシンダーおよび不完全燃焼等により失われる。

 仮に完全燃焼を成すものとしても、その全部の熱は缶水に吸収せられるものではなく、一部の熱は燃焼ガスとして、大気中に放出せられ熱損失を生ず。

 第二に、シリンダー内で蒸気がピストンを動かす場合においても、蒸気の有する熱は全部仕事に変えられるものではなく、大部分の熱は排気と共に大気中に捨てられる。

 次にシリンダー内で蒸気が成したる仕事の一部は、機関部の摩擦その他のために失われ、その残部が有効なる仕事として、車両を牽引するために利用せられるもので、この有効仕事に変じた熱量と、投入せられた石炭の熱量との比を、機関車の効率または熱効率という。

 かように蒸気機関車においては、熱は三段の損失を来たすものであるから、機関車の効率を考える場合には、次のごとく缶効率、蒸気効率および機械効率の3つに分けて考えねばならない。

(1)缶効率

 火室に投入された石炭は、これを全部完全燃焼させる事はできなく、且つせっかく発生したる熱量も、全部缶水や蒸気に伝達させる事は不可能で、黒煙として、あるいは熱ガスその他の形態で熱損失を生ずるものである。

 缶水や蒸気に伝達された熱量と、火室内に投入された石炭の発熱量(計算上の)との比を、缶効率と称し、普通の運転状態においては、大体55~70%の範囲である。

(2)蒸気効率

 シリンダーに供給せられた蒸気の有する熱量の大部分は、排気と共に大気中に放出せられ、また輻射、伝導等によって一部の熱が失われ、なお、加減弁を出た蒸気は過熱管、蒸気管および蒸気口等を通るため、摩擦により圧力の損失を生ずる。

 かくのごとく蒸気の有する熱量は、種々の原因により損失し、有効なる機械的仕事に変えられる熱量は、わずかにその一部分にして、この有効なる仕事に化した熱量と、最初蒸気の有した熱量との割合を蒸気効率という。すなわち

 H₁ =最初蒸気の有した熱量(カロリー)

 H₂ =有効なる仕事に変えられた熱量(カロリー)

とすれば、蒸気の効率 ηs %は


P93

である。

 蒸気の効率は、飽和蒸気と過熱蒸気により相違するはもちろん、締切の大小によっても異なる。飽和蒸気機関車にありては大体 9~12%、過熱蒸気機関車は 10~14%位の範囲である。

 

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2021年8月19日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その77)熱機関の効率

6.熱機関の効率

 蒸気機関または内燃機関等のごとく、熱を機械的仕事に変える機関では、最初高温度の蒸気またはガスをシリンダーに入れ、その蒸気またはガスの有する熱の一部を、機械的の仕事に変えるものであるから、熱が仕事に変わるに従い、蒸気およびガスの温度は漸次降下して行くものである。

 しかしてその降下せしめ得る最低の温度には、ある一定の限度があって、その温度以下には降下せしめる事ができないから、蒸気またはガスの有する熱の一部は、必ず排気として捨てられる。

 この有効な仕事に化せられたる熱量の、最初与えたる熱量に対する割合を、熱機関の効率という。

 今、

 H1 =最初与えた蒸気またはガスの有する熱量
 
 H2 =排出蒸気またはガスの有する熱量

とすれば、機関の効率 η は

P92

 

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227p92

 

2021年8月18日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その76)熱と仕事との関係

5.熱と仕事との関係

 物体を摩擦すると熱を生じ、沸騰したる鉄瓶の蒸気は、よく蓋を押し上げること等は何人も知るところである。前者は仕事が熱に、後者は反対に熱が仕事に変わった例である。

 ブレーキは列車の有する運動のエネルギーを、制輪子とタイヤ間の摩擦によって熱に変え、運動のエネルギーを吸収して列車を停止させる装置であって、仕事が熱に変化する事を応用したに過ぎないのである。

 また蒸気によりピストンを動かし、機関を運転し仕事させるのは、熱が仕事に変化するのを応用した実例である。

 かように熱と仕事とは互いに変換するもので、熱は運動のエネルギーであるから、熱と仕事との間には離すべからざる関係を有し、英人ジュール(Joule)氏は実験の結果、1B.T.U.(British thermal unit)の熱量は、772フィートポンドの仕事に相当する事を発見し、その後、幾多の人により研究せられ、1B.T.U.は778フィートポンド(正確に言えば778.2フィートポンド)に相当することが確かめられた。

 これをメートル法に換算すれば、1カロリーの熱量は426.6キログラムメートルの仕事に相当する事となる。普通これを427キログラムメートルとし、この778フィートポンドまたは427キログラムメートルを、熱の仕事当量という。

 熱および仕事は全くこの割合をもって、互いに変換し合うもので、426.6キログラムメートルの仕事を熱に変え水に与えるときは、1キログラムの水を温度1度だけ上昇させることができ、反対に1カロリーの熱を全部仕事に変えるときは、426.6キログラムメートルの仕事となるのであって、摩擦によって生ずる熱も全くこの割合である。


【 例1 】

 1馬力1秒間の仕事量を、熱に換算すれば何カロリーとなるか。

【 解 】

 1馬力は75キログラムメートル/秒であるから、これを熱に換算すれば1秒間に要する熱量 Q は

P91


【 例2 】

 蒸気機関車全体の熱効率は、約7%なりという。1000馬力の機関車1時間の石炭消費量を求めよ。ただし石炭の発熱量は6500カロリーとする。

【 解 】

 1000馬力を熱量に換算すれば、1秒間に付き

P91_20210726175201

なる熱量が仕事になるのであるから、1時間の間に仕事になる熱量 Q は

P91_20210726175301

 この熱量 Q は、1時間に燃焼される石炭の全熱量の7%であるから、燃焼させる石炭量 C は

P91_20210726175302

 

225p90
226p91

2021年8月17日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その75)工程および馬力

4.工程および馬力

 仕事は力と距離の積にて示されるのみで、時間との間に関係がないから、例え仕事量は同一であってもこれを1分間に成したのか、あるいは1時間に成したのかは全く不明である。

 それ故、仕事の為される速さを知るために、馬力なる単位を用い、1秒間に75キログラムメートルの仕事を成す割合を1馬力という。

 いま F×S キログラムメートルなる仕事を成すに t 秒を要したとすれば、1秒間当たりの仕事量は

P88_20210726103401

であるから、馬力 HP は

P88_20210726103801

式中 S/t は1秒間の速度 v であるから

P88_20210726103901

 回転力によって成す仕事の場合も、これと全く同じであって(22)および(23)式より、

P89

 θ/t は物体が1秒間に回転する角(ラジアン)にして、これを角速度といい通常 ω で表わし、1秒間の回転数を n とすれば、角速度は ω=2πn ラジアンである。よって

P89_20210726104001

 

【 例1 】

 シリンダーの直径570ミリ、行程660ミリ、動輪の直径1750ミリなる2シリンダー機関車あり、70キロ/時の速度で運転する時、シリンダー内蒸気の平均有効圧力は3.5キロ/平方センチメートルなりという。指示馬力の大きさを求む。

【 解 】

 速度が70キロ/時であるから、動輪1秒間の回転数 n は

P89_20210726104201

 動輪1回転中、左右ピストンは各1往復を成すから、ピストンが1秒間に動く全体の距離は

P89_20210726104202

 次に蒸気が1個のピストンを押す総圧力 P は

P89_20210726104203

 蒸気が2個のシリンダーで成す仕事は、1秒間に付き

P89_20210726104301

 よって

P89_20210726104302

 

【 例2 】

 前例において、ピストンよりクランクピンに至る間において、3%の損失あるものとすれば、左右クランクピンを回転する平均の力の大きさを求めよ。

【 解 】

 指示馬力はクランクピンに行くまでに3%減少するから、クランクピンが回転して成す馬力は

P90

 動輪1秒間の回転数は3.54回転であるから、クランクピンの角速度は

P90_20210726104501

(24)式から

P90_20210726104502

であるから

P90_20210726104503

 回転力 M は、左右のクランクピンを回転する平均の力に、クランク半径0.33メートルを乗じたものであるから、平均力 F の大きさは

P90_20210726104601

 

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224p89
225p90

2021年8月16日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その74)回転力

3.回転力

 機関車の動輪の様に、中心外の一点に力が作用するときは、必ずこれに回転運動を与えるものである。

13_20210725135101

 第13図において物体は O を軸として回転するものとし、O から γ メートルなる点 A に力 F キロが作用すれば、力 F と垂直距離 γ との積を回転力といい、式で表わすと

P88

  M =回転力(キログラムメートル)

 今、力 F の大きさを一定とし、物体が A より B まで回転すれば、弧 AB の長さは OA×θ=γθ であるから、この間に成した仕事 W は

P88_20210725135301

 角 θ はラジアン(radian)にて示す値にして、1ラジアンの角とは、半径の長さに等しい弧が中心において挟む角を言うのであるから、1回転すなわち360度は 2π ラジアンに等しく、φ を度にして示す角とし、これをラジアンで示せば次の通りである。

P88_20210725135302

 

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224p88

2021年8月15日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その73)エネルギー

2.エナージー(エネルギー)

 エネルギー(energy)とは、仕事を成し得る能力を言い、このエネルギーが結果として現れたものが仕事であって、エネルギーと仕事とは全く同じものであるから、その単位も仕事の単位と同じものを用いる。

 高い所にある物体が落下すれば下にある物を破壊し、あるいは穴を穿つ等の仕事をするから、高い所にある物体はエネルギーを持っていることがわかる。これを応用した実例は蒸気槌(スチームハンマー)で、ハンマーの落下により鉄棒を打延しているのは、一度工場を見学した者の誰もが知るところである。

 また飛行している弾丸、石等が他の物体に当たればこれを打ち貫き、あるいは破壊するから、やはりエネルギーを持っている。

 この外熱の形で存在し、あるいは圧力等の形で存在している等、エネルギーは種々の状態で存在しているが、これを区別すると結局、位置エネルギーと運動エネルギーの2種となる。

 位置エネルギーというのは位置に関して有するもので、高い所にある物体の有するエネルギーおよび圧力等は、位置のエネルギーである。

 今、

 Ep =位置のエネルギー(キログラムメートル)
 h  =物体のある高さ(メートル)
 W =物体の重量(キログラム)

とすれば、位置のエネルギーの大きさは次の式で表わされる。

P85

 運動のエネルギーとは、物体が運動しているために有するエネルギーで、飛行している弾丸や、流水等の有するエネルギー等はこれに属するものである。

 今、

 Ek =運動エネルギー(キログラムメートル)
 v  =物体の速度(メートル/秒)
 W =物体の重量(キログラム)
 g  =地球の重量に基く加速度=9.8メートル/秒/秒
 m = w/g =物体の質量(キログラム)

とすれば、運動エネルギーは

P86

である。

 これら2種のエネルギーは存在の形こそ違え、全く同じものであるから互いに形を変え合い、位置のエネルギーは運動エネルギーになり、また運動エネルギーは位置エネルギーに変化するものであるが、その和は常に一定で、最初有するエネルギーの量に等しい。

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 例を取ってこれを説明するに、第12図のごとく W キロなる重さの物体が、最初地上 H メートルなる点にあるものとすれば、この時の位置エネルギーは WH である。

 今この物体が落ちる場合を考えるに、この物体は落ちるに従って地上からの高さが低くなるから位置のエネルギーは減じ、一方、落下速度は下へ来るほど速くなるから、運動のエネルギーが増して来る。

 これは位置のエネルギーが、運動のエネルギーに変わって行く場合の例であるが、石を上方に投げ上げる時は、これと反対に石が上方に行くに従って位置のエネルギーが増し、運動のエネルギーが減じて行くことがわかる。

 しかして任意の高さにおいて2つのエネルギーの和は、最初のエネルギー WH キログラムメートルに等しいから、次の式が得られる。

P86_20210725103001

 よって

P87

 あるいは

P87_20210725103101

 (19)式は物体の落下速度を示すもので、式の中に W なる項が含まれていないから、上から h メートル下がれば、如何なる物質でも一様な速度 V になる事を示す。

 しかしてエネルギーを有する物体甲が、他の物体乙に仕事を成すとき、仕事を受けた方の物体はエネルギーを増し、与えた方の物体はそれだけエネルギーを失うものであるが、受授の際、一部のエネルギーは摩擦に費やされて熱となり、あるいは音響、振動等に費やされるから、物体乙が受けたエネルギーの量は、甲物体が失ったエネルギーの量より幾分小であるから、一見エネルギーの量が減少したごとく思われるが、熱、音響および振動等は、いずれも一種のエネルギーであるから、宇宙全般からみればエネルギーは形こそ変われ、その量は決して増減するものではない。これをエネルギーの不滅の法則という。

 以上述べたごとく、エネルギーの量は決して増減するものではないが、宇宙間において一つの現象が起こるごとに、一部のエネルギーは熱となって空中に放散せられ、あるいは音響に費やされ、これらのエネルギーはもはや利用することができないものであるから、宇宙間に存在するエネルギーは全量としては増減なきも、利用し得ざるエネルギーに変わって行くから、宇宙は遂に同一温度を有する死物となり、そこには雨もなく光もなく、また風もなく一つとして活動するものが無い様になる。

 これをエネルギーの変衰則という。不滅則および変衰則はエネルギーの二大原則で、全ての科学は畢竟(ひっきょう:要するに)この二大原則の研究に他ならないのである。

 

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2021年8月14日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その72)仕 事

第2章 仕事および工程

1.仕 事

 物体に力が作用し、その抵抗に打ち勝って物体を動かしたる時は、仕事を成したという。仕事を成すということは必ず力が働いて、物体を動かさねばならぬから、如何ほど大きな力が作用しても、もし物体が少しも動かない時は、仕事をした事にはならないのである。

 仕事の量を測るには作用した力の大きさと、その方向へ物体の動いた距離の相乗積で表わされ、その単位は力と距離の単位を組合わせ、キログラムメートルとか、あるいはメートルトン等を用いる。キログラムメートルの仕事とは、1キロの力が作用して物体を1メートル動かした時の仕事である。

11_20210721161901

 第11図(イ)のごとく重さ W なる物体に、床面に平行な力 F キロが作用し、これを S メートル動かしたとすれば、この場合、成したる仕事量は F×S キログラムメートルである。

11_20210721162001

 一般的に言えば、力は必ずしも第11図(イ)のごとく床面に並行ではなく、(ロ)図のごとく傾いて働らき、且つ物体の動くうちにその大きさが時々刻々に変化する場合が多い。

 例えば動輪のクランクピンに作用する力の方向は、主連棒が傾斜するため1回転中、時々刻々に変化し、またピストンを圧するシリンダー内の蒸気圧力は、ピストンの進むに従って変化することは周知のとおりである。

 (ロ)図は力 F が斜上方に作用した場合を示したもので、この様に力が傾いて作用するときは、力 F を床面に並行と垂直との2力に分解すれば、垂直分力 CB は物体を上方に引き上げんとする力で、もし物体が上方に動かないものとすれば仕事を成さず、物体は水平分力 AC によって S だけ動かされるのであるから、この場合の仕事量 W は

P83

 しかして AC の大きさは

P83_20210721162101

 であるから

P83_20210721162102

である。もし力の大きさが変化する場合には、動いた距離 S を適当の数に分割し、各分割せられた小距離間の平均の力を求め、小距離間はその平均力によって動かされるものと考え、各小距離に対する仕事を計算し、これを加え合わせて全体の仕事量を求める事ができる。

11_20210721162101

 仕事を図に表すには、縦線に力を取り、横線に距離を取れば、その面積は仕事の量である。(ハ)図は一定の力が作用した場合を示したもので、力の大きさが一定であるから、OX 線上の高さはどこも同じである。従って力を示す線 AB は、横線 OX に平行な直線である。それ故、矩形 OABC の面積は仕事量にして F×S に等しい。

 力が変化する場合は、横線 OX 上の高さが変化するから、力を示す線 AB は(ニ)図のごとく曲線となり、面積 OABC はやはり仕事量で、その求め方は前に述べた通りである。

P84

 力が変化する場合の適例は指圧線図である。指圧線図は(ホ)図のごとくピストンの位置に対し、ピストンを押す蒸気圧力の変化を表したもので、最初ピストンの左端 O から右の方へ動くに従って、圧力は曲線 abcd にて示すがごとく降下して行き、右端に達した時 ad なる圧力があるから、ピストンが右へ動いたとき成した仕事は、面積 OabcdA である。

 次にピストンが右端から左端に向かって動くときには、ピストンの背面には曲線 dea にて示すような背圧があるから、この場合に成したる仕事は、面積 OaedA である。

 しかして背圧は、ピストンが左へ動くときの抵抗であるから、これがために成した仕事は損失仕事であるから、蒸気がシリンダー内で成した有効な仕事は、面積 OabcdA-OaedA=abcdea である。なお、シリンダー内における蒸気の仕事に付いては、後に精しく述べよう。

 

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2021年8月13日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その71)熱の伝播(3)

(3)対 流

 気体または液体を熱するときは、熱せられた部分は膨張して軽くなるため上方へ上り、その後へ冷たい部分が入り、この冷たい部分は、また熱せられて上方へ上り、その後へまた他の冷たき部分が入る。

 かように間断なく熱せられた部分と冷たい部分とが、交替して循環作用を起こす。気体または液体は、かような循環作用により温められるもので、これを対流という。

 水は摂氏4度のとき、最大密度を有するため、4度以上の水を温めるときは、前記のごとく熱せられたる部分は軽くなり上方に上るも、4度以下の水を熱する時は温度の上昇に伴い、かえって熱せられたる水の方が重くなるため、熱せられたる水は下方に下り、下方の冷たき水が上方へ上ることになる。それ故、水の対流方向は摂氏4度を境として反対となる。

 缶水が熱せられるのは対流によるものであるから、もし水の循環不良なるときは、火に接する一部分のみ熱せられ、全部の水が一様に熱せられない事になる。それ故、煙管、控等のごとく水の循環を妨げる障害物は、できる限り水の循環を妨げない様に配列すべきである。

 

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2021年8月12日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その70)熱の伝播(2)

(2)輻 射

 輻射とは、熱が一つの物体から他の物体へ、空間を隔てて伝わることを言う。例えば太陽熱により地球が温められ、あるいは炭火にかざしたる手の温かくなるがごときは、輻射により熱が地上または手に伝えられるがためである。

 かく空間を隔てて熱が他の物体に伝えられるのには、エーテル(aether)の媒介によるもので、物体分子の熱エネルギーはその運動をエーテルに伝え、エーテルはこの運動を受け波動を起こし、その運動を他の物体の分子に与え、分子に運動のエネルギーを与えるがためであって、物体を温める力は2物体間の距離の自乗に反比例する。例えば距離が2倍となれば4分の1となり、また3倍となれば9分の1となる。

 物体が熱を輻射し、あるいは寒冷なる物体が熱を吸収する割合は、物体の種類によって異なるのはもちろん、物体の温度、表面の精粗および色の濃淡により異なるもので、表面が粗雑で色の濃いものは熱の放散および吸収が大である。

 一般に輻射と吸収とは相伴うもので、よく輻射するものは、またよく熱を吸収するものである。表面滑らかなるものは輻射熱がこれに当たりたるとき、熱の一部は光線と共に反射せられるがため、熱の吸収量は少ない。

 しかして輻射熱の吸収不良なる物体はまた、輻射することの不良なるものであるから、熱の輻射を防ぎ、長く保温せんとせば器物の表面を磨き上げ、且つ色の淡いものを用うべきである。

 真黒色の物体は最良の輻射物であると同時に、また最良なる輻射熱の吸収物である。ステファン氏の研究によると、完全なる輻射物から輻射される熱は、その物体の絶対温度の4乗に比例する。

 これをステファン氏の法則(Stefan–Boltzmann law)と言い、真黒の物体に対してはほとんど真にして、黒色に近い物もややこれに従う。この方式を次式で表わすと、

 Q = KT⁴

  Q =1時間1平方メートル当たりの放射熱(カロリー)
  T =摂氏にて示す相対温度(温度差)
  K =物体の種類および表面の状態で相違する常数

 いま熱を放散する物体の温度を摂氏 T₁ 度とし、これを取り巻く物体の絶対温度を摂氏 T₂ とすれば、熱源が輻射熱によって失う熱量、すなわち周囲の物体が受ける熱量は、前の法則から次式のごとくその4乗に比例する。

P81_20210718191201

 なお輻射の常数 K の値は次の通りである。

P81k
214p80
214p81

2021年8月11日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その69)熱の伝播(1)

4.熱の伝播

 熱が一つの物体から他の物体に伝わるには伝導、輻射および対流の3種がある。

(1)伝 導

 金属棒の一端を持ち他端を熱すると、熱は漸次棒を伝わり、ついには握っていることができない様になる。この様に熱が物体の一部より他の部分に伝わるのは、熱せられた部分の激烈な分子運動が、相隣(あいとなら)れる低温の部分の分子に付与せられるためであって、熱が物体の一部より順次他の部分に伝えられる現象を、熱の伝導という。

 熱が伝導により伝えられる量は物体により異なり、熱がよく伝わる物体を良導体と言い、しからざるものを不良導体という。一般に金属類は良導体で、その他の物体は不良導体である。

10_20210718105901

 第10図において角柱 ABCD の AD および BC 側の面積を a、厚さ AB を δ とし、熱が AD の側から BC の側へ伝わる場合を考えるに、AD 側の温度を t₁、BC 側を t₂ とすれば、AD 側から BC 側へ通過する熱量 Q は、両面の温度差および面積に比例し、板の厚さに反比例するから

P79_20210718110001

 K は温度差1度に対し、ある時間内に単位の面積と厚さを有する板を通過する熱量であって、これを熱の伝導率(Conductivity)という。伝導率は温度により相違し温度が高くなるに従って小となる。

 下表は常温における、種々の物体に対する K の値を示すもので、温度差摂氏1度につき面積1平方メートル、厚さ1ミリの板を通り、1時間に通過する熱量をカロリーで示したものである。

P79_20210718110002

 気体の伝導率はマックスウェル(Maxwell)氏の説に従えば、気体の粘着係数と比熱の相乗積に比例するもので、さらにダルビー(Drude)氏は、気体の容積が一定なる場合は実用上比熱は一定で、粘着係数は絶対温度の4分の3乗に比例するものである、と考えることができるという。

 それ故、気体の伝導率は、大体絶対温度の4分の3乗に比例するものと考えるときは、気体に対する K の値は次の式で表わすことができる。

P79_20210718110101

 K =距離1メートルごとに温度が摂氏の1度降下するとき、1平方センチメートルの面積を通して1秒間に流れる熱量(カロリー)
 T =摂氏にて示す気体の絶対温度
 k =摂氏ゼロ度におけるときの伝導率 K の値

 従って T₁-T₂ なる温度差を与えたるとき、1秒間に面積1平方センチメートル、厚さ1メートルの気体を通って流れる熱量 Q は

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 摂氏ゼロ度における k の値は次表の通りである。

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2021年8月10日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その68)比 熱

3.比 熱

 物体の温度を高めるに要する熱量の割合は、各物質によって異なり、一般に金属類は温まりやすいが水は温まり難いものである。例えば1キロの水を摂氏1度温めるに要する熱量で、約10.6キロの銅を1度だけ温めることができ、あるいは1キロの銅を8.5度温める事ができる。かように同じ温度だけ高めるに要する熱量は、物質によって著しく異なるものであるから、これを比較するため比熱を用いる。

 比熱とは、物体の単位重量を温度1度だけ上昇させるに要する熱量と、これと同重量の水を温度1度上昇させるに要する熱量との比である。

 単位重量の水を温度1度上昇させるに要する熱量は、前にも述べた通り熱量の単位であるから、物体の比熱を示す数字は、直ちに各物体の温度を1度上昇させるに要する熱量を示す。それ故、比熱の小なるものほど、温まりやすいものである事を表し、種々の物体に対する比熱は次表の通りである。

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 気体の比熱には2種の区別がある。1つはこれを温めるとき圧力を一定に保つ場合で、他は容積を一定に保つ場合の比熱である。前者は圧力を一定に保つためこれを定圧比熱と言い通常 Cp なる記号で表し、後者は容積を一定に保つため定積比熱言い Cv で表わす。

 一般に定圧比熱 Cp は定積比熱 Cv より大である。それは前者は気体の温度を上昇させる以外に、膨張のため外部の仕事をしなければならないからで、主なる気体の比熱は左の通りである。

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 厳密に言えば、比熱は温度により相違するものであるが、温度に対する変化があまり大きくないので、実用上はふつう使用する温度の範囲内における平均比熱を用い、上表に掲げた比熱はいずれも平均比熱である。

【 例 】

 絶対圧力14キロ/平方センチメートルの、飽和蒸気1キロの有する全熱量は667カロリーにして、この蒸気を150℃過熱するときの平均比熱は0.552なりという。過熱度150℃なる過熱蒸気の全熱量を求めよ。

【 解 】

 絶対圧力14キロ/平方センチメートルの蒸気を、150℃過熱するに要する熱量は

    150×0.552=82.8カロリー

 これに飽和蒸気の全熱量667カロリーを加算し

    667+82.8=749.8カロリー

 

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2021年8月 9日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その67)熱量の単位

2.熱量の単位

 熱量を測るには、単位量の水を基本温度より1度だけ上昇させるに要する熱量をもって単位とし、メートル法では重量1グラムまたは1キロの水を、摂氏15度より1度だけ上昇させるに要する熱量を単位とし、これをそれぞれグラムカロリーおよびキロカロリーと言う。

 前者は細密な測定を要する物理学等に用いられるが、工学上では一般に後者を用いるのが普通で、単にカロリー(calorie)と言えば、キロカロリーを意味するものである。

 英国では重量1ポンドの水を、華氏1度だけ上昇させるに要する熱量を単位とし、これを1英熱単位と言い、B.T.U.(British Thermal Unite)で表わす。この1英熱単位も厳密にいえば、従来は華氏39度より1度上昇せしむるに要する熱量と定められてあったが、最近は華氏62度より1度上昇せしむるに要する熱量に改められ、これを多く用いる様になった。

 カロリーとB.T.Uとの間の関係を求めるに、1キロすなわち2.2046ポンドの水を摂氏1度、すなわち華氏の1.8度上昇させるに要する熱量であるから

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 またポンドを基として測定したB.T.U.と、キロを基として測定したカロリーとを、相互に換算する場合には次による。

    B.T.U./ポンド:カロリー/キロ = 9 : 5

 例えば1ポンドの発熱量が1260 B.T.U.の石炭を、1キロ当たりのカロリーに換算すれば

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となる。

 

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2021年8月 8日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その66)熱と温度の測定

第2編 熱および蒸気

第1章 熱

1.熱と温度の測定

 全ての物体を組成する分子は、常に多少の運動を成すもので、熱とはこの分子が有する運動のエネルギーを言い、運動が緩慢なる時は、分子が有する運動のエネルギーが少ないから物体は寒冷で、これに反し分子運動が激しい時は、熱エネルギーの量が多いから物体は温かい。

 物体の有する熱の多寡、すなわち物体の温度の高低を測るには寒暖計を用いる。工学上用いる寒暖計には摂氏と華氏の2種がある。前者はメートル法を採用するフランス、ドイツおよび我が国等に用いられ、後者はヤードポンド法を採用せるイギリス、アメリカに用いられている。

 華氏寒暖計は氷点を32度、沸騰点を212度とし、その間を180等分したもので、摂氏寒暖計は氷点を0度、沸騰点を100度とし、その間を100等分したものであるから、両者の間には次の関係がある。

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 C =摂氏寒暖計の温度
 F =華氏寒暖計の温度

 

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2021年8月 7日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その65)ゼオライト法(パームチット法)・清缶塗料

12.ゼオライト法(パームチット法)

 石灰塩類を含んだ水をゼオライト(zeolite:多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩)の厚い層で濾(こ)すと、石灰はゼオライト中のソーダと置き換えられて、濾過水中には石灰を含まず、ソーダ塩類のみ含むことになる。

 そして長い間使用して、ゼオライト中のソーダが全部石灰で置き換えられた時は、しばらく食塩水に漬けておけば、今度は反対にソーダがゼオライト中に入って、石灰が水に溶けやすい塩化石灰となるので、これを取り去ってしまう事ができる。この操作は幾度も繰り返して行うことができる。

 ゼオライトの分子式は Na₂Al₂SiO₁₀×H₂O である。Al₂Sio₁₀×H₂O を Z で表わせば Na₂Z となる。これによると水の除硬作用は、その中に含まれる石灰、マグネシウム、重炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩等より、石灰およびマグネシウムを除去するものである。その化学式を示せば

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 かくして石灰(Ca)、マグネシウム(Mg)は、全部ゼオライトのナトリウム(Na)と置き換えられて除硬せられる。ゼオライトが CaZ,MgZ となったものを元の状態 Na₂Z に回復するには、食塩水(NaCl)を使用する。その作用は次のごとくである。

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 これから塩化石灰(CaCl₂)、および塩化マグネシウム(MgCl₂)を水洗して除去すればよい。

 ゼオライトは、元は天然産の鉱物であったが、今では人工的に作る事もできる。日本ではパームチット(permutite)と称する商品名で呼ばれている。

 このパームチット法は、現在明石機関区において使用され、相当の成績を収めている様であるが、本装置は使用開始後すでに10年余りにもなるに関わらず、他の機関区へ普及しないところを見ると、総合的に見てその施設が及第点に達しないためではないかと思われる。

(付記)石灰ソーダ灰法で大部分の石灰を除去し、次に残りの石灰をパームチット法で完全に除くと、理想的処理法だと言われている。 

13.清缶塗料

 機関車が工場へ一般修繕等のため入場したる際、缶の内部に特殊の塗料(ボイラーペイント)を塗布しておくと、缶石の付着や腐蝕が少ないと言われるので、鉄道省でも若干試用してみたが、あまり良好な成績は得られなかった様である。

 

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2021年8月 6日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その64)石灰、ソーダ灰処理法

11.石灰、ソーダ灰処理法

 この方法は、石灰およびソーダ灰を使用して水中に含まれる石灰、マグネシウムの重炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩等を除去するものである。その化学式は

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 かくして石灰、マグネシウムは水に不溶解の炭酸石灰、および水酸化マグネシウムとなって析出(せきしゅつ:固体以外の状態にある物質が固体として現れる現象)されるから、これらをろ過して除去すれば低硬度の水が得られる。

 この方法は硬度の高い水の処理法としては一番良いので、外国では古くから使われ、その装置としても数多の特許がある。満鉄でも本装置の研究を成し優秀なる装置を完成し、各所に実施して良い成績を挙げつつある由である。

 

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2021年8月 5日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その63)缶用水の缶外処理法

10.缶用水の缶外処理法

 清缶剤を使用して、缶の内部で行われる反応を給水前あらかじめ行って、不純物を除去することが缶外処理法で、水質不良の所では最も理想的な方法である。

 缶外処理の方法として最善なるものは、蒸留によって純粋なものを得ることであるが、缶用水のごとく多量の水をかかる方法によって得ることは、不経済で問題とならない。

 次に考えられることは、水を熱して一時硬度を除去する方法であるが、これも水を15~20分間熱しなければ一時硬度が分解しないから、多量の水をかかる方法によって得ることは不経済である。

 故に缶外処理の方法として一般に採用されているのは、薬品を使用して化学的に水質を改良することであるが、相当の経費を要することは免れない。現在工業的に可能性ありと見られる方法は、石灰、ソーダ灰処理法と、ゼオライト法(パームチット法)とである。

 

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2021年8月 4日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その62)清缶剤使用上の注意

9.清缶剤使用上の注意

 最近、缶水清浄装置が一般に普及してきたが、これは水質不良の箇所に概して歓迎される装置である。しかるに清缶剤もまた水質不良の箇所に使用されるものであるが、この両者は両立し難い存在である。すなわち、洗缶回帰間に必要なる量として投入された清缶剤が、清浄装置によって無意味に排棄される事である。

 清浄装置の排水量や清缶剤の使用量、その他給水量等により相違するから一概には言えないが、大体ふつうの使用状態の場合で清浄装置を使用する時は、所定見込み日数の3分の1位で、缶内の清缶剤はほとんど絶無となるもので、1回の投入量が多いほど排棄される清缶剤の量は大である。

 故にこれが対策として、清浄装置付きの機関車に対しては、洗缶回帰間分の清缶剤を一度に多量投入することなく、少量ずつ数回に分割投入することが望ましい。また清浄装置も洗缶翌日より使用開始せず、数日使用して缶水が濃縮された時機を見計って使用を開始すべきである。

 

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2021年8月 3日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その61)ソーダ灰の単独使用(3)

(3)ソーダ灰の使用量

 以上述べたところにより、給水中より生ずるソーダ灰の量、および給水中の永久硬度を軟化するに要するソーダ灰量、ならびに缶内腐蝕を防止するために要するソーダ灰量が判ったのであるから、給水の水質を分析してその成分が判れば、ソーダ灰の使用量も計算されるわけである。

(計 算 例)

 ある水を分析して、その含有成分が判り、これから次の事項が計算されたものとする。

 N =給水1立方メートルより生成するソーダ灰(グラム)

 M =給水1立方メートルに含まれる永久硬度を軟化するに要するソーダ灰量(グラム)

 W =洗缶時の缶水張込量をも含みたる洗缶回帰間における給水量(立方メートル)

とすれば、1洗缶回帰間に投入すべきソーダ灰量 xグラムは、次のごとくなる。

  x グラム=(M-N)W

 なお水質により Mよりも Nの方が大なる場合、すなわち給水中より生成するソーダ灰の方が、永久硬度を軟化させるに要するソーダ灰量よりも大なる場合は、ソーダ灰を使用する必要が無いわけである。

 以上により計算されたソーダ灰が極めて多量となりたる場合、これを洗缶の際、一時に投入することは種々の支障(例えばプライミング、缶板の脆弱化)を起こす場合があるから、ソーダ灰の使用量は、大形機関車で最大3キロ位(缶水容量1立方メートル当たり0.5キロ以内)に止むべきである。

 

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2021年8月 2日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その60)ソーダ灰の単独使用(2)

(2)ソーダ灰の反応

 いま最も安価でしかも清缶剤として、相当効果を発揮するソーダ灰を使用した場合の、主なる反応および使用量を概算してみる。

 天然水中には一時硬度を形成する重炭酸石灰(Ca(HCO₃)₂)、重炭酸マグネシア(Mg(HCO₃)₂)等が溶存しているが、これらは缶内に給水され加熱されるときは、次のごとき反応を起こして炭酸石灰(CaCO₃)、水酸化マグネシア(Mg(OH)₂)を生じ缶石、缶泥となって分離する。

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 また天然水中にはこの他、重炭酸ソーダ(NaHCO₃)が溶存しているが、これも缶内にて加熱されるときは直ちに次のごとく分解して、ソーダ灰(Na₂CO₃)を生成する。

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 清缶剤としてソーダ灰を使用すると、上記のごとく天然水中より分離生成されたるソーダ灰と共に、これらが水中の永久硬度を形成している成分、すなわち

 硫酸石灰 (CaSO₄)

 塩化石灰 (CaCl₂)

 硝酸石灰 (Ca(NO₃)₂)

 硫酸マグネシア (MgSO₄)

 塩化マグネシウム (MgCl₂)

 硝酸マグネシア (Mg(NO₃)₂)

等に対して次のごとき化学反応を起こし、水の軟化を行ない、缶石の硬着ならびに付着を少からしめる他、すでに付着している缶石を軟質と成し、その脱離を容易ならしめ、缶石による熱伝導率の低下を緩和する。

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 以上の永久硬度を形成する各々を軟化するに要するソーダ灰の量は、次のごとくなる。

 硫酸石灰  1グラムを軟化するに要するソーダ灰  0.7794グラム

 塩化石灰  1グラムを軟化するに要するソーダ灰  0.9549グラム

 硝酸石灰  1グラムを軟化するに要するソーダ灰  0.6463グラム

 硫酸マグネシア  1グラムを軟化するに要するソーダ灰  0.8833グラム

 塩化マグネシウム  1グラムを軟化するに要するソーダ灰  1.1158グラム

 硝酸マグネシア  1グラムを軟化するに要するソーダ灰  0.7162グラム

 以上はソーダ灰が永久硬度に対してこれを軟化し、缶内処理を行うに必要なる量であるが、清缶剤としてはこの他に缶板、煙管等を防蝕する使命をも果たさなければならぬ。

 そのためにはソーダ灰によって、缶水を常にある程度以上のアルカリ性を保たしめ、鉄の腐蝕を防止する必要があるわけで、これに必要なるアルカリ性の程度は水素イオン濃度、すなわちPH価で 9~11の間が適当と思われるので、約10に保つこととする。

(注)PH価とは液体の反応、すなわち酸性か中性か、またはアルカリ性かを表示するもので、PH価が7より増すに従いアルカリ性が強くなり、その数値が7より減ずるに従い酸性が強くなること意味するもので、PH価10は蒸留水1立方メートル、すなわち1,000キロ中にソーダ灰5.3グラムを溶解したときに呈する、アルカリ性の濃度である。

 なお、給水中に重炭酸ソーダを含有するものは、給水自体からソーダ灰を生成するが、その生成量は重炭酸ソーダ含有量1グラムに対し、ソーダ灰0.6018グラムに相当する。

 

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2021年8月 1日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その59)ソーダ灰の単独使用(1)

8.ソーダ灰の単独使用

 清缶剤として効果も顕著であり、最も廉価なる清缶剤はソーダ灰である。しかしながらソーダ灰の最も欠点として懸念される事は、内火室板に亀裂を生ずるであろうということである。

 すなわち鋼板はアルカリ性の高温、高圧なる水中に浸漬されると、アルカリ性のため変質して脆弱化すると称せられることである。

 しかしながら、いくばくのアルカリ濃度と高温、高圧がいずれの程度の脆弱現象を起こすかは、あまり判然としていない様である。それ故、鉄道省でも各所で試験的に使用し、ソーダ灰が清缶剤として単独使用し得るやに付いて研究を続けているが、官房研究所の提唱するこれが使用法に付いて、その概略を述べると次のごとくである。

(1)清缶剤一般

 市販の清缶剤はその種類極めて多く、我が国においても10数種を数える事ができる。しかしてその成分は小範囲の特異性を有するも、その主成分によりこれを大別すると、ソーダ灰、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ・・・性の清缶剤とすることができる。

 清缶剤の成分として上記の他にタンニン剤、発粉、その他の有機物、ホウ砂、重クロム酸カリ、黒鉛、その他無機物、あるいは時にその効力を疑うよりも、むしろ有害でないかと思われるものさえも添加されている事がある。

 これら市販清缶剤は、その販売者の唱える効果は一部認められるが、しかもその効果の大部分は、一般清缶剤の主成分たるソーダ灰、リン酸ソーダ、またはその一部のものが発揮する防蝕作用、缶石の付着軽減、缶石の軟質化等により釜石による熱伝導率の低下の軽減、気水共発、缶板腐蝕防止等の効果以上に出る事は少ない。

 

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