機関車の構造及理論:下巻(その89)蒸気の顕熱
3.蒸気の顕熱
摂氏ゼロ度の水を、飽和蒸気の温度までに熱するに要した熱量を顕熱という。それは水の温度上昇を寒暖計にて測ることができるため、この名があるのである。
水を熱するに当たり、厳密に言えば水の比熱は温度により多少相違するものであるから、温度1度上昇するに要する熱量は、水の温度により相違するも、その差が極めて僅少なため、実用上は温度1度の上昇に対し1カロリーを要するものと考えて差し支えない。
それ故、飽和蒸気の温度を摂氏 T 度すれば、蒸気1キログラムの顕熱は次の式で表わされる。
前掲飽和蒸気の性質表において、蒸気の温度と顕熱とを比較するに、顕熱の量は蒸気の温度を示す数よりいく分大であるが、これは水の比熱が温度により多少相違すること並びに、水の膨張に費やされた熱量が含まれる結果である。
同表の顕熱は、水をゼロ度より熱する場合の熱量であるから、給水温度を t℃ とすれば、この場合の顕熱 h' は h'=T-t カロリーである。それ故、表より全熱量を求める場合には、表に示された数字より t を引かねばならぬ。
【 例1 】
缶使用圧力16キロ/平方センチメートルの飽和蒸気機関車あり、給水温度を摂氏20度とすれば蒸気1キログラムの顕熱を求めよ。
【 解 】
前表の圧力は絶対圧力で示されてあるから、圧力 16+1=17 キロ/平方センチメートルの行を横に見て行けば、顕熱を示す欄の数字207.1であるから、顕熱は207.1カロリーである。
よって20度の水を給水する場合には、水が既に20度まで温められているのであるから、この場合、水を温めるに要する顕熱の量は
207.1-20=187.1 カロリー
【 例2 】
機関車の給水温度は平均15℃なり、給水温め装置を使用する事により、給水温度を平均70℃に高め得るものとすれば、缶使用圧力16キロ/平方センチメートルなる飽和蒸気機関車では、何%の石炭節約を成し得るや。ただし給水温め装置を使用するも、機関車全体の効率は変わらざるものとする。
【 解 】
給水温め装置を使用するも、機関車の効率が変わらないものとすれば、石炭消費量は蒸気1キログラムを作るに要する熱量の割合である。
圧力 (16+1)=17 キロ/平方センチメートルの蒸気の全熱量は、圧力17キロ/平方センチメートルの行を横に見て行き、668.1カロリーなるを知る。
よって、
給水温度 15℃ なる場合の全熱量は
668.1-15=653.5 カロリー
給水温度 70℃ なる場合の全熱量は
668.1-70=598.7 カロリー
故に給水温め装置を使用する場合の石炭消費量の割合は
すなわち 100-91.4=8.6%の節約となる。
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