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2022年2月の記事

2022年2月28日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その269)列車衝動の実例及びその防止方法:引張摩擦装置の影響

2.引張摩擦装置の影響

 従来、車両の緩衝装置として盛んにバネが使用せられた。なるほどバネは緩衝装置としては申し分の無いほど良い性質を具備しているが、列車の衝動防止には必ずしも適当なものではない。

 この理由はバネには必ず反発作用がある事であって、この反発作用のため列車には、はなはだ大きい衝動を与える場合がしばしはある。貨客の輸送数量が増加するに伴い列車の重量は増加し、また列車は長大となり、且つ列車間隔は短縮されることは必然の結果であって、これらはいずれも列車衝動の原因を増加するものである。

 これが対策として、連結器のバネを強くすることが良く考えられがちであるが、これはバネの折損を防止するには有効であるが、その反発作用のために、はなはだしい列車衝動を伴う危険があるから、この場合要求されることは、緩衝装置として十分な作用を成すも、反発作用の件わないものである。

 引張摩擦装置は実にこの要求を満たすもので、列車衝動を起こすエネルギーは、大部分が摩擦面の摩擦により消費せられるもので、バネ装置の様に大きな反発力は全然伴わないものである。

 引張摩擦装置にもバネを使用しているも、その目的はその可動部分を定位置に戻して、次に緩衝作用の準備を成すと共に、小なる衝動に対してその緩衝作用を成す役目を持っている。

 次に引張摩擦装置は、使用車両の重量に相応して、適当なる容量を有する必要がある。もし大形車両に適当な装置を小形車両に装置した様な場合には、その摩擦面の摩擦力が大きいため、小形車両ではこの摩擦力に打ち勝って運動する事が困難で、全く本装置の目的を忘却する結果をもたらすものである。

 米国におけるプルマン列車は、9両ないし12両の客車より成り、各列車の重量は約45トン、機関車は約150トンで、総重量は約600トンである。この列車に対して適当なる引張摩擦装置の容量は、9000ポンドの物体を19インチないし21インチの高さより落下した場合に、装置が完全に閉鎖する程度が適当であるとされている。

 なお引張摩擦装置の容量は、その摩擦面に塵埃または水分等が付着する時は、減少するものであり、またこの装置は使用するに従い摩耗のため、その容量が減少するわけであるから、容量を設計する場合は新製の場合の容量でなく、使用後の容量を標準として考える必要がある。

 

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2022年2月27日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その268)列車の組成と列車衝動(3)

 次に制動筒付き貨車の分布いかんによる影響もまた大であるが、この点は全部の貨車に制動筒を取り付ければ解決できるはずである。

 今この影響を考えてみるに、制動筒の装置無き貨車が、制動筒付き貨車に隣接して連結せられている場合に、制動筒無き貨車の制動率はもちろんゼロであるのに、制動筒付きではこれが空車なれば80%、自重に等しい積荷の場合の積車では40%となり、制動筒の有無によりその制動率の相違は、それぞれ80%あるいは40%となる。故にこの場合、制動筒付き貨車が積車のときは40%であるが、もし空車の時は80%制動率に相違ができる事がわかる。

 この点を先に述べた積空による制動率の相違と比較してみるに、この場合の制動率の差はよくやく 80%-40%=40% であって、前者の半分にしか達しない程度である。故に列車衝動の点から考えると、全部の貨車に制動筒を取り付けることは、はなはだ望ましい事柄である。

 米国において積空の影響による試験を行った2、3の例を示せば、次の通りである。列車組成は

   機関車 ― 積車10両 ― 試験車 ― 空車31両

 もちろん全部の貨車に制動筒が取り付けられている。

 この組成をみると解る様に、列車の前部に積車があるので、制動の利き方は列車の前部では少なく、後部において多いはずである。故にこの場合は必ず試験車には後方へ引っ張る様な力が作用するわけである。

 はたして試験の結果も、速度25マイル/時で、12ポンド/インチ² の制動管減圧において、試験車に15万ポンドの引張力を受けたのである。

 次にこの列車を低速度の12マイル/時において、10ポンド/インチ² の減圧を成したときは、急激に大きな引張力を生じ、機関車から14両目の箇所で分離した。

 この理由は、低速度では車輪と制輪子間の摩擦係数は大きいため、制動管の減圧は前よりも少なくても、この様な結果を招いたのである。

 次に列車の前部に空車を置き、後部に積車を連結した場合の試験成績を示せば、列車組成は

   機関車 ― 空車32両 ― 試験車 ― 積車32両 

 速度15マイル/時より、15ポンド/インチ² の制動管減圧を行ったところ、23万5千ポンドの力で試験車に表われ、機関車から4両目と5両目の車は、ついに圧し潰されたのである。

 次に列車の組成が
 
   機関車 ― 空車15両 ― 積車17両 ― 試験車 ― 空車25両 

のものを速度22マイル/時から、12ポンド/インチ² の制動管減圧を成し制動した場合には、3万ポンド内外の力しか試験車に表われなかった。もしこの列車の組成を

   機関車 ― 空車40両 ― 積車17両
 
と成したならば、はなはだ大きな圧縮力を生じて、ある貨車は圧し潰されたのではないかと考えられる。かように制動筒付き車両の配置に少しの考えを持つと、列車の衝動を著しく防止する事ができるのである。

 

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2022年2月26日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その267)列車の組成と列車衝動(2)

 次に制動筒のピストン行程と列車衝動との関係である。

 元来機関車の制動筒圧力は、制動筒ピストン行程には全く無関係であるが、客貨車においては関係を持っている。

 いまピストン行程が130ミリから180ミリの範囲内に変化した場合、1キログラム/平方センチメートルの制動管減圧に対する、制動筒圧力を計算してみると次表の通りで、制動筒ピストン行程180ミリの場合に比し、130ミリの場合には、ほとんど52%増の制動筒圧力を得ることになる。

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 故にいま、空車重量30トンの客車2両が、いずれも制動筒付きで、そのうち甲のピストン行程は130ミリ、乙は180ミリとし、制動率を制動筒圧力3.0キログラム/平方センチメートルにて80%とすれば、

 甲客車に作用する制輪子圧力は

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 乙客車に対する制輪子圧力は

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である。両客車制輪子圧力の差は 24000㎏-15800㎏=8200㎏ である。いま車輪と制輪子間の摩擦係数を0.2とすれば、その制動力の差は 8200㎏×0.2=1640㎏ となり、この力は両者の間に不釣合力として存在し、衝動の原因となる。

 なお以上計算した様に、制動力に相違ができるのみならず、制動開始時期にも差ができて、これがため列車衝動に及ぼす影響も相当大きいものである。すなわちピストン行程の短いものでは、その圧力上昇の速度が早く、長いものは圧力上昇に長い時間を要する。またブレーキを弛める場合にも、多少の差を生ずる事となる。

 かような理由により客貨車の制動筒ピストン行程は、なるべく等しくしておく事が望ましい次第で、米国では列車検査の際、ピストン行程の適否を検査することになっている。

 我が国有鉄道の規程では、客貨車のピストン行程は130ミリないし180ミリとなっているが、なるべく均一にして列車衝動を防止したい考えから、客貨車仕立検査の際は、130ミリないし150ミリの間に調整する事になっている。

 次に列車の重量に対して、制動力が不平等に分布せられた場合も、もちろん列車衝動の原因を成すものである。

 この問題は貨物列車に限り起こる事柄であって、大体2つに分けて考えることができる。すなわち一つは貨車の積空分布の状態であり、他の一つは貨車は全部積または空であっても、制動筒付き貨車の分布が不同の場合である。

 元来貨車の制動装置を設計する際には、貨車の制輪子圧力は空車の自重を基とし、これの80%と成すものである。故にいま例として自重8トンの貨車に付いて考えるに、その圧力は常に 8×0.8=6.4トンである。

 しかるにこの貨車が積車となり、その自重および積荷の総重量が16トンになったとせば、制動率は 6.4÷16=0.4 すなわち40%となり、空車の場合の半分になる。

 故に列車全部の貨車が制動筒付きであるとしても、積車と空車とでは列車重量に対する制輪子圧力、従って制動力に非常な相違を来たし、列車衝動を起こすものである。

 

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2022年2月25日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その266)列車の組成と列車衝動(1)

(8)列車の組成と列車衝動

 列車の組成方法のいかんによる列車衝動に及ぼす影響も、また見逃すことのできない原因である。ことに空気ブレーキ使用において特にしかりである。以下、列車の組成と空気ブレーキによる、列車衝動との関係を説明しよう。

 列車の組成において特に注意を要すべき点は、制動管の空気漏洩程度、制動筒ピストン行程、および列車の重量と制動力分布との関係等である。

 制動管の空気漏洩が多いときは空気の浪費となり、燃料の不経済を来たすのはもちろん、列車の衝動に関しても密接な関係を持っている次第である。

 この場合、その空気制動装置が AV 形のごとく、段階弛めのできるものではさほどの影響も無いのであるが、K 形または P 形のごとく、段階弛めの作用を持たない形式で列車が組成せられている場合は、十分の注意を要する。

 いま例として制動管の漏洩が、1分間に0.6キログラム/平方センチメートルの列車を、ある速度から停止する場合を考えてみるに、機関車は停車のため0.5キログラム/平方センチメートルの減圧を成し、制動弁ハンドルを重なり位置に置くと、45秒後には制動管漏洩のため

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の減圧がさらに付け加えられ、結局制動管は 0.5+0.45=0.95キログラム/平方センチメートル減圧された結果となり、この減圧に相当する制動筒圧力は2キログラム/平方センチメートル以上になり、かように大なる圧力においては、その圧力の大きい事と、また停車間際に車輪と制輪子間の摩擦係数が2倍以上にもなるという二つの理由で、はなはだしい列車衝動を伴うものである。

 この場合、制動管の漏洩の大きいことを見越して、あらかじめ小さな制動管減圧を行う事は、もちろん不可能である。

 何んとなれば普通0.5キログラム/平方センチメートル以下の減圧においては、状態の良好ならざる三動弁は、とうてい制動位置を採ることはできなく、これがため、ようやく込め溝を閉じた位置を保ったとき、制動筒漏洩のため制動管の圧力は降下し、従って補助空気溜との間に0.6キログラム/平方センチメートル以上の圧力差ができた場合は、状態悪しき三動弁でも必ず制動位置に移動する事となり、少し動いたため摩擦抵抗がにわかに減少する事となるのに対し、動き始める前の圧力差はかなり大きかったので、三動弁は急に移動し、制動位置を通り超し非常制動位置を採る事となり、いわゆる不意の非常制動を起こすことになるので、これまた衝動を大ならしめる次第である。

 かような理由により、列車制動管の空気漏洩程度を可及的に少なくすることは、列車衝動防止上、最も大切な事柄で、現行空気ブレーキ取扱い心得において、1分間に0.4キログラム/平方センチメートルを超えて、漏洩があってはならない事を規定しているのも、一つはこれがためである。

 

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2022年2月24日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その265)実際の制動取扱いにおける遊間作用の例

(7)実際の制動取扱いにおける遊間作用の例

【 例1 】

 貨物列車において、その組成が列車後部に制動力多く、その前部に少ない場合、列車の遊間は伸張して停車する。この場合には発車がはなはだ困難であるから、機関士はいく分後退して、その遊間を縮めて発車する。

 この場合、列車が出発して貨車半両位動いたときに、はなだしい列車衝動を起こすことがある。この理由は前に機関士が後退した時、その退行の程度が十分でなかったので、列車の前半部の遊間は縮まったのであるが、後半部の遊間は停車のままで伸張した状態であった。

 この場合列車は出発し、その前半部は漸次動き、その速度が3~5キロメートルに達した時、後半の車両を牽き出すことになったが、その後半部の遊間は伸びた状態にあるので、後半部には一度に牽き出され、しかもその速度は牽き出しより急に3~5キロになるので、急に大きな衝動を起こしたのである。


【 例2】

 貨物列車のごとき長大なる列車において、その後部に制動力が大きい場合は、制動後は列車の遊間は伸びた状態になっている。

 次に第2回目の制動を追加したので、機関車寄りのブレーキが後部に比し早く作動するので、列車前部の遊間は縮まり、この状態が漸次列車の後部に移って行く途中頃において、列車の後部にも既に第2回目の制動が作用し、再び列車中央部辺の遊間が急に伸び、これがため列車分離事故を起こす恐れがある。

 かくのごとき場合は、第2回目の制動はなるべく列車の停止位置の手前、約15メートルにおいて行う事が望ましい。この様にすれば列車前半部に第2回目の制動が作用した頃に列車は停止するので、先に述べた様な事故は起こらないし、また出発も容易である。


【 例3 】

 後部に重量品の多い列車が推進運転を成している場合は、列車の遊間はかなり縮まっている。この場合、加減弁を閉じて直ちに制動を行うときは、機関車寄り、すなわち列車後部のブレーキは先に作用し、列車前部はその作用がいく分遅れるので車両の遊間は伸びる。

 なお以上の作用の他、今まで圧縮せられていた連結器バネの反発力も、この作用を助けて分離事故を起こす危険がある。かくのごき場合に最も良き取扱い法は、まず加減弁を閉じて後しばらく時間を置き、連結器バネの伸張するを待って、軽い制動を行えば良いのである。

 

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2022年2月23日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その264)組成車両数及び列車重量との関係・連結器バネ圧縮の影響

(5)組成車両数および列車重量との関係

 一列車の組成両数が多いという事は、列車の全遊間が多いという事であって、またこの遊間が多ければ多いほど、列車中の車両間に起こる速度差が大きくなる道理である。また列車重量が大きい時は速度差の多い場合と同様、衝動のために起こる力が大きくなる事は、前述した種々の事例から直ちに理解できる事柄である。

 要するに列車を組成する車輛数、および列車重量が増加するほど衝動の力も大きくなり、事故を起こす機会も多くなる道理であるから、その取扱いには十分の注意を要する。

(6)連結器バネ圧縮の影響

 連結器バネは列車の遊間が伸びても、また縮まっても圧縮せられ、この圧縮せられたときには必ず反発力を現し、その力は先の遊間と逆の遊間を生ずる様に作用せしめる。故に他の原因による遊間作用と、連結器バネの反発力による遊間作用とが、ちょうど合致した場合には、その遊間作用は倍加して大きな衝動力を生ずる。

 例えば緩やかな上り勾配を運転中、機関車の単独制動弁を使用して停止した場合を考えると、ブレーキは機関車のみに使用したのであるから、これがため遊間は縮まり連結器のバネを圧縮する。

 次にバネの反発力と勾配のためとで、列車後部はかなりの勢いで後退し、これが程度の大きいときは列車分離を起こすがごときである。

 

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2022年2月22日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その263)列車速度による影響・勾配または曲線の影響

(3)列車速度による影響

 車輪と制輪子間の摩擦係数は、高速度においては小さく低速度になるに従い増加する。且つその増加割合は、低速度となるに従い増加する。従って停車の場合は、はなはだしく大きい。在来の試験結果によれば、平均値の1.5ないし2倍に達する。

 以上の理由により、同一程度の制動または緩解を行っても、低速度においてはかなり大なる遊間作用を生ずるのが常であるから、ブレーキ取扱い上格段の注意を要する。

(4)勾配または曲線の影響

 列車の後部が上り勾配にあり、その前部が平たんにあるか、または下り勾配にある場合は、列車の遊間は十分伸張し、逆に列車前部が上り勾配にあり、その後部が平坦または下り勾配にある場合は、遊間は縮まるわけである。

 曲線では車輪フランジの摩擦を増加するのみならず、曲線抵抗のために列車は減速する。従って列車前部が急な曲線上にある場合は、その後部が相当上り勾配にいない限り、列車の遊間は縮まるはずである。

 すなわち以上のごとく線路の状態によっても、列車の遊間に変化を生ずるものであるから、もしこの場合、その遊間作用を助ける様な制動、または緩解作用を同時に行った場合には、かなりの衝動を起こすものである。

 かって箱根下り勾配線において、列車の大部分は下り勾配にあって、その前部だけが上り勾配に差し掛かった時、機関車でブレーキを使用したため、上り勾配のためと制動作用のためとで、列車前部の減速度がはなはだしく、列車の後部が前部に押し掛け急激な遊間作用を起こし、分離事故を起こした例もあるから、機関士はあらかじめ線路の状態を熟知しておき、制動および緩解作用を誤らない様にすることが肝要である。

 

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2022年2月21日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その262)制動及び緩解の場合に列車前後部におけるブレーキの作用する時間の相違より生ずる影響

(2)制動および緩解の場合に、列車前後部におけるブレーキの作用する時間の相違より生ずる影響

 列車に制動を行う場合でも、また制動を弛める場合でも、その作用は機関車に近い列車前頭から、その作用が始まるものである。従って列車の遊間は制動の場合は縮まり、また緩解の場合は伸びるものである。

 この時間の差は、操縦上には避けることのできない事柄であるが、以上のごとき事実がある事を良く念頭におき、この遊間作用をさらに強める様な取扱い方を避けるべきである。

 例えば加減弁を閉じて後、直ちに制動を行うこと、あるいは一度に大きな制動管減圧を成すこと等は避けるべきである。ことに低速度の場合においては、制動が強く作用しがちであるから、特別の注意を必要とするものである。

 かくのごとく時間差のあるため、生ずる遊間作用を減ずる目的で、外国では機関車の分配弁の制動穴に適当な絞り栓を設け、制動作用をいく分遅くし、また制動弛めの場合には分配弁の弛め管中、単独制動弁の部分に絞り栓を取付け、その排気時間を延長し、客貨車の制動装置と歩調を合わす装置を使用するものがある。

 

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2022年2月20日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その261)列車衝動の実例及びその防止方法:空気ブレーキの取扱いによる列車衝動 総論

第2章 列車衝動の実例およびその防止方法

1.空気ブレーキの取扱いによる列車衝動

(1)総 論

 全列車が1個の剛体であるならば、列車の衝動は大部分除去することができるはずであるが、実際においては列車を組成する車輛は、その車両間に存在する遊間のために、ある程度別々な運動を成すことができる。従ってブレーキの取扱い方において注意を怠る時は、大なる衝動を起こし、乗客に迷惑を及ぼし、あるいは貨物を損傷するものである。

 ことに空気ブレーキはその力において他の原因に比較して、はなはだしく強大であるし、且つその衝動および緩解作用が敏活であるため、はなはだしき衝動を起こし易いものである。

 元来車両間に存在する遊間は、かって試験せし結果によれば、1両当たり最大約15センチメトールである。従って貨車60両を連結した場合には、9メートルもあるはずである。しかし実際の運転においては特に乱暴な取扱いをしない限り、これよりもはるかに少ないはずである。

 車両間の遊間は連結器を使用する以上は、決してこれを無くすることはできないものであるが、ただ我々のでき得ることは、この遊間を適当に制御することができるのみである。従って空気ブレーキにおいて列車衝動を防止する良策は、この車両間の遊間をいかに巧妙に取扱うかという事を、研究するにあるものである。

 車両の遊間作用とは、列車中のある部分の車両が他の部分より速いか、または遅い速度で運動し、最後に両部分が衝突するか、または引っ張られた場合に起こる、衝動作用を意味するものである。

 車両間の遊間を2つに分けて研究すると、その一つは連結器間にある空隙であって、この空隙だけ両車両を接近または離すためには、全然連結器のバネを圧縮する必要の無いものである。この遊間を連結器間の空隙と唱える。

 この遊間は列車中の車両に、多少速度の相違を作る作用があるのみであるが、他の一つの遊間、すなわち連結器のバネを圧縮せしめる場合に生ずる遊間は、先の遊間と同様、車両間の相互の速度に相違を来たすのみならず、圧縮されたバネの反発力のために、列車にはなはだしい衝動を起こす原因を成すものである。

 この反発力の強大な事は平坦線において、機関車が単独制動弁のみを使用して、長大な貨物列車を制動した場合、停車した後に列車の後部が後方へ反発される状態により、良く知ることができる。この反発力の影響を除去するために考案せられたものが、引張摩擦装置であって、その特長が有効であれば列車の長さが増加し、重量が増大するに従い、その装置はますます必要になる次第である。

 以下ブレーキ取扱いのために、列車衝動を起こす主原因を掲げれば、次の通りである。

 

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2022年2月19日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その260)列車衝動の一般的理論:衝動理論(2)

(3)列車の衝動の大きさは単位時間内における加速度、または減速度の変化割合に比例する。

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 第91図(甲)は、列車がブレーキを使用して停止する場合の、列車速度と時間との曲線であって、同図(乙)は、この場合における列車減速度と時間との関係曲線である。

 曲線 B は、強いブレーキを使用した場合のもので、曲線 A は、軽いブレーキを使用した場合のものである。なお(甲)で速度曲線が下向きになるのは、列車速度の低下に従い、車輪と制輪子間の摩擦係数が増加するためである。

 いま一定時間内( t 秒間)における、減速度の変化を比較してみると、

 A の場合においては

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 B の場合は

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となり、両者における減速度の変化割合は、それぞれ

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となり、かなりの相違のある事が知れ、この場合の列車衝動は a:b の割合となるものと考えられる。これを実際列車に乗車した体験から考えても、B の場合の方が、列車衝動の大きい事が首肯(納得)できるはずである。

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 試運転等の場合に列車衝動を測定するのに、第92図に示す様な横軸に時間を、縦軸に加速度または減速度を示す曲線を描き、列車衝動の程度を求めるのは、全く以上の理由に基くものであって、その衝動の大きさは加速度または減速度の大きさと言うよりも、その変化の割合の大小により決定せられるものであって、要するに加速度または減速度曲線が時間線に直角に近いほど、衝動が大きい事を示すものである。

 同図によりこれを説明すれば、Y は X よりも加速度および減速度の絶対値は大きいが、その変化割合をみると角 x は角 y よりもはるかに大きく、従ってその変化割合も大きい事を示し、結局列車衝動も X の方が大きいはずである。

 しかし一般の場合には、加速度または減速度の大きい時ほど、角 x および y も90度近くなるので測定の便宜上、加速度および減速度の大きさをもって衝動を示している場合がある。

 以上述べた事柄を式にて示せば

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 または

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 また

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の関係があるから

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 この関係を、列車衝動の式に代入すれば

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 以上は列車衝動の大きさを示す公式である。この公式から「列車衝動は加速力または減速力の変化に比例し、その変化の時間ならびに質量に逆比例する」ことがわかる。

 車両間の連結器にバネを使用するのは、この時間を長くして、衝動を小さくせんとする目的である。なお列車衝動は質量に逆比例するという事は、大いに考慮すべき問題で、特に機関士として、ぜひ心掛けておかなければならない事柄である。

 すなわち客車1両の重量は、ボギー車にしてもわずか35トン内外であるのに対し、機関車の重量は代表的機関車においては、いずれもその2倍以上である。従って列車の衝動は、機関車にはさほど感知しない程度のものでも、客車においては相当大きなものである事を意味するものである。

 物体が衝突する場合の衝動が、質量に反比例するという事の適例は、ある物体を地表に落下した場合である。地表はすなわち地球であって、この場合、物体と地球とが衝突する事となり、両物体は衝突した際の作用および反作用の原理により

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の値は全く同一であるに関わらず、その衝動の大きさには非常の差がある。すなわち地球は物体に比較すれば非常に大きな質量を持っているので、質量に反比例して地球はほとんど衝動を感じないが、落下物体には、はなはだしく衝動を感じるがごときである。

 両車両が衝突する場合における、力学的計算を行ってみると次の様になる。

 今

  M₁ =衝突した一方の車両の質量(キログラム)

  V₁ =衝突した一方の車両の衝突前の速度(メートル/秒)

  M₂ =衝突した他方の車両の質量(キログラム)

  V₂ =衝突した他方の車両の衝突前の速度(メートル/秒)

  Fm =衝突のために生じた最大の力(キログラム)

  Fa =衝突中に生じた平均の力(キログラム)

  t =衝突した時間、すなわち力がゼロより増加し最大値に達し、再び減少するまでの時間(秒)

とすれば、衝突中、車両連結器に生ずる力は衝突の初めはゼロで、その後漸次増加して最大値 Fm に達し、その後漸次減少して最後にゼロとなる。この場合における力と時間との関係は、半楕円形になるものと考えられる。従って Fa =0.76Fm として計算することを適当と認める。

 衝突した時間、すなわち力がゼロより増加して最大に達し、再び減少してゼロとなるまでの時間は、米国の実験の例によれば0.03秒位である。また衝突前の両車両の正味の速度差は、連結器に使用せるバネの影響等を考慮し、米国においては実際の速度より、1.6キロメートル/時を控除するのが例である。

 しかるときは

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【 例 】

 重量18トンの貨車と、重量10トンの貨車とが、2.6キロメートル/時の速度差において衝突したるとき、生ずる力を求めよ。

【 解 】

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 従って

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 すなわち衝突のため、両車両に起こる力の平均値は6トン強で、その最大は

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すなわち8トンである。従ってこの場合における衝動の大きさは、10トン貨車の方がもちろん大きく、その値の比は前述の通り大体

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で、18トン貨車の衝動の約半分である。

 

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2022年2月18日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その259)列車衝動の一般的理論:衝動理論(1)

2.衝動理論

 列車の衝動とは、いかなるものを指して言うかは、衝動を研究する上に真っ先に心得ておかねばならない事柄である。我々が列車に乗った場合に、身体に感じるショックが、すなわちこれである。しからばこのショック、すなわち衝動とは、いかなるものに関係があるかと言うことを吟味する必要がある。

(1)列車衝動は列車速度に変化がある場合に、必ず起こるというものではない。

 例えば物体を高所から落下する場合に付いて考えてみるに、その物体の速度は漸次加速せられ、地表に落下する刹那に最も大きな速度を持っている。すなわち落下初めの速度はゼロで、地表落下の速度ははなはだ高い。

 かくのごとく速度に変化を生じながら、落下しつつある途中においては、その物体内に少しの衝動も感じないことが想像できる。

 また列車が長い急な下り勾配線を運転する場合に、全然ブレーキを使用しないか、または使用しても軽い制動の場合には、列車は漸次加速せられその速度を増加するが、この増加しつつある間は別に列車に衝動を起こさない事は、吾人の日常体験しつつある事実である。

 かような事実から考え、列車の速度に変化があっても、必ずしも列車衝動を起こすものではない。

(2)列車の加速度または減速度に変化があれば、必ず列車衝動を起こす。

 物体を落下した場合の加速度は、地球の引力に基く加速度であって、常に毎秒9.8メートル/秒である。すなわち加速度は落下中、常に同一値である。また列車が下り勾配で加速する場合においても、勾配が同一なる以上は、その加速度も常に同一である。すなわち(1)に述べた場合に、列車に衝動を起こさせないのは、その加速度に変化が無いからである。

 しかるに加速度に変化がある場合を考えるに、前例により列車が、いま25パーミルの下り勾配を加速しつつ運転するとき、次に他の勾配、例えば10パーミル下り勾配に掛かった場合は、必ず列車に多少の衝動を起こすものである。この理由は、列車の加速度に変化があったからである。

 もし列車が25パーミル下り勾配から、10パーミルの上り勾配に掛かった場合は、先の場合よりも大きな衝動を起こすはずである。25パーミル下り勾配においては、列車重量1トンに付き25キログラムの加速力がある。

 いま列車の走行抵抗を列車重量1トン当たり5キログラムとすれば、結局正味の加速力は、列車重量1トンに付き 25-5=20キログラムである。しかるに10パーミルの下り勾配における正味の加速力は、以上と同一の計算により 10-5=5キログラムである。

 すなわち列車が25パーミルから10パーミルの下り勾配に掛かったため、列車重量1トン当たりの加速力が、20キログラムから5キログラムに変わったのである。換言すれば、その加速度は4分の1に減じたのである。

 また25パーミルの下り勾配から10パーミルの上り勾配に掛かった場合は、加速力は20キログラムから 10+5=15 の減速力に変化したので、その変化は列車重量1トン当たり 20+15=35キログラムの変化である。

 従って前例の変化 20-5=15キログラムの場合に比し、その衝動も他の条件が同一とすれば2倍以上となるはずである。

 以上、要するに列車の加速度または減速度に変化があれば、必ず列車衝動が伴うものである。
 

 

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2022年2月17日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その258)列車衝動の一般的理論:総論

第8編 列車の衝動

第1章 列車衝動の一般的理論

1.総 論

 列車の単位が漸次大きくなり、しかも高速度で頻繁に運転するに従い、列車操縦上、細心の注意を払わないと衝動を起こし易いものである。

 過去数年間における列車運転の変化を考えるに、列車の単位においては自動連結器の採用、ならびに大形機関車の増備とにより著しく増大し、列車速度ならびに列車回数においても、一般公衆の要求に応ずるよう着々とその向上を促しつつある状態で、これらはいずれも列車衝動の増加の傾向をもたらすものであるから、運転従業員は最善の努力を払い、これが防止に努めなければならない。

 元来列車の衝動を起こす原因は、種々の条件の総合的結果であるから、これが防止に当たっても、各方面に対する総合的知識が必要がある。今その原因中、最も主要なるものを掲げると次の通りである。

 (1)空気ブレーキによるもの

 (2)加減弁ならびに逆転機の取扱いによるもの

 (3)自動連結器および引張摩擦装置等の構造上の理由によるもの

 (4)線路の状態によるもの

 

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2022年2月16日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その257)全制動距離(3)

【 例3 】

 次の条件を有する貨物列車の制動距離を求めよ。

  機関車全重量(含む炭水車) 127.6トン

  動輪上重量 58.79トン

  炭水車重量(空車) 21.04トン

  牽引車数 現車50両、換算90両(重量900トン)

  制動管減圧 非常制動

  制動筒付き車両数 現車25両

  機関車軸制動率 77.2%

  炭水車軸制動率 116.0%

  客貨車軸制動率 96.0%

  ブレーキ使用開始の速度 45キロメートル/時

  平均摩擦係数 0.176

  列車平均走行抵抗 3.5キログラム/トン

  線路状態 25パーミル下り勾配線

  空走時間 7秒

  その他 貨車1車当たりの自重は8トンとする

【 解 】

 まず全車制動率を次式により求める。

P422

 しかるに

  Wd =58.79、K₁ =77.2、Wt =21.04、K₂ =116、WT =8×25、K₃ =96、Wℓ =127.6、W =900

なるをもって、これを上式に代入して

P422_20220130174701

 次に全制動距離は次式により求める。

P422_20220130174801

 しかるに

  V =45、K =25.3、fm =0.176、Ro =3.5、Rg = -25、t =7 なるをもって、これを上式に代入して

P422_20220130174802


【 例4 】

 C51形式機関車(重量113.8トン)が、ボギー客車350トン(現車10両)を牽引して、平坦直線において50キロメートル/時の速度のとき、1.0キログラム/平方センチメートルの制動管減圧を成したる場合における、制動距離を求めよ。

 ただし本計算には、次の条件を与えるものとする。

1.制動管減圧量と制動筒圧力との関係

    P₁ =2.5r  機関車

    P₁ =3.25r-1  客車

2.制動筒弛めバネの圧力

   0.35キログラム/平方センチメートル

3.制動筒の大きさ及び数

   機関車  254ミリ径 2個

   炭水車  254ミリ径 1個

   客 車  356ミリ径 10個(客車10両で)

4.制動倍率

   機関車  7.14

   炭水車  9.00

   客 車  7.4

5.基礎制動装置の効率  

   90%

6.平均摩擦係数

   0.162

7.列車平均走行抵抗

   3.06キログラム/トン

8.空走時間

   6秒

【 解 】

 まず制動筒圧力を求める

P423

 これより制動筒弛めバネの圧力を差し引くと

P423_20220130174901

 故に総制動筒圧力は

P423_20220130174902

 次に列車の全車制動率を次の式により求める。

P423_20220130175001

 しかるに

  P =148.75、W₁ =113.8、W₂ =350

なるをもって

P423_20220130175002

 全制動距離は次の式より求める。

P424

 しかるに

  V =50、K =32.1、fm =0.162、Ro =3.06、t =6

なるをもって、これを上式に代入すれば

P424_20220130175201

 

753p421
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2022年2月15日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その256)全制動距離(2)

【 例1 】

 重量100トンの機関車が、現車50両(うち制動筒付き車両30両)、重量900トンの貨物列車を牽引して、下り10パーミル勾配直線路を、時速40キロメートルで運転しつつある時、非常制動を採れば、いくばくの距離にて停車するか。

 ただし

  列車重量1トン当たり平均走行抵抗 2.5キログラム

  平均摩擦係数 0.18

  機関車制動率 60%

  貨車制動率 50%

  空走時間 10秒

【 解 】

 まず全車制動率を次の式により求める。

P419_20220130162501

 しかるに

P419_20220130162601

 これを上式に代入すれば

P419_20220130162602

 従って全制動距離は(225)式より

P420

 しかるに

  V =40、K =33、fm =0.18、Ro =2.5、Rg = -10、t =10

なるをもって、これを上式に代入して

P420_20220130162701


【 例2 】

 次の条件における、旅客列車の制動距離を求めよ。

  機関車動輪上重量 39.75トン

  炭水車重量(空車) 14.51トン

  機関車総重量(含む炭水車) 81.25トン

  牽引車数 現車12両(重量360トン)

  制動筒付き車両数 10両(空車重量260トン)

  制動管減圧量 1.0キログラム/平方センチメートル

  機関車軸制動率 42.8%

  炭水車軸制動率 64.3%

  客貨車軸制動率 51.4%

  ブレーキ使用開始速度 60キロメートル/時

  平均摩擦係数 0.152

  全列車の平均走行抵抗 3.2キログラム/トン

  線路状態 10パーミル下り相当勾配

  空走時間 6秒

【 解 】

 全列車の全車制動率を、次の式より求める。

P420_20220130162801

 しかるに

  Wd =39.75、K₁ =42.8、Wt =14.51、K₂ =64.3、WT =260、K₃ =51.4、Wℓ =81.25、W =360 なるをもって、これを上式に代入して

P421

 全制動距離は(225)式により求める。

P421_20220130163001

 しかるに

  V =60、K =36、fm =0.152、Ro =3.2、Rg = -10、t =6

であるから

P421_20220130163002

 

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753p421

2022年2月14日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その255)全制動距離(1)

3.全制動距離

 第(224)式の制動距離は、ブレーキが十分作用してから停車するまでの、いわゆる実制動距離であるから、これに空走距離を加えたものが全制動距離である。従って、これは次のごとく表わされる。

P418_20220128221601

  S =全制動距離(メートル)

  V =制動開始の時の速度(キロメートル/時)

  K =列車の全車制動率(%)

  fm =平均摩擦係数

  Ro =全列車1トン当たり平均走行抵抗(キログラム/トン)

  Rg =勾配抵抗(キログラム/トン)上り勾配 +,下り勾配 - を採る

  Rc =曲線抵抗(キログラム/トン)

  t =空走時間(秒)

 なお制動距離を算出する式として次に示すごときものもあるが、(225)式と比較してその制動距離においてほとんど差が無いから、無理に本式を用いなくても良いと思われる。

P418_20220128221602

  S =全制動距離(メートル)

  V =制動開始の時の速度(キロメートル/時)

  K =列車の全車制動率(%)

  fm =平均摩擦係数

  Rg =勾配抵抗(キログラム/トン)

  Rc =曲線抵抗(キログラム/トン)

  t =空走時間(秒)

 ℓ および n =列車の平均走行抵抗を R = ℓ+mV+nV² の形で表わしたときの常数で、次のごときものである。

P419

  Wd =動輪上重量(トン)

  Wt =動輪上重量を除いた他の車輪上重量(トン)

  WT =牽引車両の重量(トン)

  W =列車の全重量(トン)

  a =1.24………鋼製ボギー客車

   =1.72………ボギー客車

   =2.07………貨 車

  b =0.000313………鋼製ボギー客車

   =0.00061………ボギー客車

   =0.00066………貨 車

 

753p418_20220128221201
753p419

2022年2月13日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その254)実制動距離

2.実制動距離

 進行しつつある列車は、その速度に相当する運動のエネルギーを有しているから、運転中の列車を停止せしめんとするには、この運動のエネルギーを制動力によって吸収してしまう事である。

 運動のエネルギーは、ふつう次の式によって表される。

P415

  Ek =運動のエネルギー(キログラム/メートル)

  m = w÷g =物体質量(キログラム)

  w =物体の重量(キログラム)

  g =重量による加速度=9.8(メートル/秒/秒)

  v =速度(メートル/秒)

 以上は力学上の運動のエネルギーで、列車進行方向に直進するために有するものであるが、車両には車輪、車軸の様な回転部分があるため、これらに費やされるエネルギーも考えねばならない。普通この影響は直進部分の6%位とみなされている。従って全運動エネルギーは

P415_20220127231201

となる。

 次にこの運動のエネルギーを取り去るために費やした制動力を F(キログラム)とし、制動距離を S₁(メートル)とすれば、ブレーキの成した仕事量は F×S₁(キログラム・メートル)で、エネルギーと仕事とは相互変換し得るものであるから、運動のエネルギーと、これを取り去るために費やした仕事量とは、全く相等しいはずである。

 従って次の式が成立する。

P415_20220127231202

 上式の単位はキログラムおよびメートルであるが、実用上は速度を V(キロメートル/時)、列車重量を W(トン)で表わすことが便利であるから、v および m を次のごとく書き換えると、

P415_20220127231301

 従ってこれを前式に代入すれば次のごとくなる。

P416

 この式でも知られる様に、制動距離は列車重量に正比例し、制動開始の時の速度の自乗に正比例し、制動力(F)に反比例する事がわかる。従ってこの関係から、もし列車重量のみ2倍になれば、制動距離は2倍になり、また制動開始時の速度のみ2倍になれば、制動距離は4倍になり、制動力のみが2倍になれば、制動距離は2分の1となることが知られる。

 (218)式で示す制動力(F)の中には、ブレーキによる制動力はもちろん、その他走行抵抗、勾配抵抗および曲線抵抗をも含んだものでなければならないので、これらに付いて述べる必要がある。

 ブレーキによる制動力は前に述べたごとく、総制輪子圧力 P(キログラム)と、制動中の平均摩擦係数(fm)を乗じた 1000P×fm(キログラム)で表わされる。

 走行抵抗は、全列車の1キログラム当たりの値を R キログラムとすれば、全列車の重量 W トンに対しては R×W(キログラム)である。ここに注意しなければならない事は走行抵抗は制動中、速度低下のために刻々にその速度が変化して行く事である。

 しかし走行抵抗の影響ははなはだ軽微であるから、第4編において述べた走行抵抗の公式を用い、制動中の平均速度として初速度の2分の1を採用するものとする。すなわち次のごとくである。

 機関車走行抵抗

P416_20220127231401

 鋼製ボギー客車

P416_20220127231402

 ボギー客車走行抵抗

P417

 貨車

P417_20220127231501

  Rℓ =機関車全走行抵抗(キログラム)

  WD =動輪上重量(トン)

  n =動軸数

  WT =先従輪および炭水車重量(トン)

  Vo =制動初速度÷2(キロメートル/時)

  R =客車または貨車1トン当たり走行抵抗(キログラム/トン)

 勾配抵抗1トン当たりは、勾配の千分率で示した数字 i に等しいから、これを Rg とすれば、列車全重量に対しては Rg×W(キログラム)である。また下り勾配のときは -Rg×W(キログラム)となる。

 曲線抵抗の1トン当たりを Rc とすれば、全列車重量 W トンに対しては Rc×W(トン)となる。

 従って第(218)式中の制動力 F は、次のごとく表わされる。

P417_20220127231502

  P =制輪子圧力(トン)

  fm =平均摩擦係数

  Ro =全列車1トン当たり平均走行抵抗(キログラム/トン)

  Rg =勾配抵抗(キログラム/トン)上り勾配 +, 下り勾配 - を採る

  Rc =曲線抵抗(キログラム/トン)

 上記の関係を第(218)式に代入すれば

P417_20220127231601

 また

P417_20220127231602

とすれば

P418

 

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2022年2月12日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その253)空走時間及び空走距離

第5章 制動距離

 列車がある速度をもって走行しているとき、その速度を減殺し、またはこれを停止するためには、必ず列車の進む方向に反対して作用する抵抗力が必要である。すなわち列車の運動のエネルギーを、制動力と列車抵抗とによって吸収してしまわなければならない。

 従って制動距離を計算するには、列車の運動のエネルギー阻止せんとして働く総抵抗、すなわち制動力と列車抵抗とを知らねばならない。

 しかし実際の場合においては制動手配を行っても、直ちに制動の効果が現れるものではなく、その間に多少の時間を要するものであるから、制動距離を算出するに当たっては制動手配後、制動効果が十分に行きわたってから停車するまでのものと、2つに分けて考えなければならない。すなわち

 (a)制動手配後、全列車のブレーキが十分に作用するまでの空走距離

 (b)制動が十分に作用した後、停車するまでの距離

1.空走時間および空走距離

90_20220123230201

 空気ブレーキにおいて、制動弁のハンドルを制動位置に移しても、制動の効果を発揮するまでに多少の時間を要する理由は、全列車のブレーキが完全に作用するまでには相当の時間が掛かるからで、試験の結果によれば第90図に示す様に、列車の制動筒圧力が、その最大値の60~70%の圧力に高まらなければ、制動効果を発揮しないからである。

 従ってこの程度に圧力が高まるまでの時間が空走時間、この間に走行した距離が空走距離に相当するものである。

 空送時間は制動装置の種類、制動方法、列車の種類および列車の連結両数の多寡によって相違するが、我が国においては試験の結果から見て、大体次の数値が妥当とされている。

 (1)旅客列車の場合

   非常制動 2~3秒  常用制動 6~7秒

 (2)貨物列車の場合

   非常制動 7秒  常用制動 13秒

 手ブレーキの空走時間は、その取扱方によっ非常に相違するから、一律に決めることは困難であるが、非常制動の場合においても10秒程度を要するものである。

 次に空走距離であるが、制動開始の速度を V(キロメートル/時)とすれば、1秒間に走行する距離は V÷3.6(メートル)であるから、これに空走時間を乗ずれば空走距離を得られる。すなわち

P414

 V =制動開始の時における速度(キロメートル/時)

 t =空走時間(秒)

 以上の計算は、空走時間中に速度の変化が無いものと仮定したものであるが、急な下り勾配線等では空走時間中に相当加速するから、速度の変化を考えなければならない場合がある。
 

 

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2022年2月11日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その252)下り勾配線において等速度運転を成すために必要な制動力

2.下り勾配線において等速度運転を成すために必要な制動力

 下り勾配線においては勾配の加速力のために、列車の速度は漸次高まるものであるから、等速度運転を成すためには、この加速力に対抗するだけの制動力が必要である。

 今この制動力を B、勾配の加速力を i、列車の走行抵抗を R、曲線抵抗を Rc とし、いずれもキログラム/トンにて表せば

  i = B+R+Rc

 従って

  B = i-(R+Rc)

 制動力は制輪子圧力 P と、摩擦係数 f との相乗積であるから

  B = Pf

の関係を代入して

P411

 P =列車1トン当たり制輪子圧力で全車制動率の千分率に等しい

 i =下り勾配(‰:パーミル)

 R =列車重量1トン当たり走行抵抗(キログラム/トン)

 Rc =曲線抵抗(キログラム/トン)

 f =車輪と制輪子間の摩擦係数


【 例 】

 10パーミル下り勾配線において、列車をある均衡速度で運転せしめんには、列車重量1トン当たりいくばくの制動力を要するか。

 ただし、均衡速度における列車走行抵抗は
 
  列車重量1トン当たり3.5キログラム

  車輪と制輪子間の平均摩擦係数は0.145

とする。

【 解 】

 (216)式を用い

  i = 10  R = 3.5  f = 0.145

の値を代入すれば

P412

 すなわち必要な制動力は、列車重量1トン当たり44.8キログラムである。

 

742p411
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2022年2月10日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その251)制動力と粘着力との関係

第4章 制 動 力

1.制動力と粘着力との関係

 制動力とは制動の場合、列車を停止せしむるか、あるいは速度を調整する場合に必要な力で、制輪子圧力に摩擦係数を乗じたものである。すなわち

  制動力=制輪子圧力×摩擦係数

 この場合、摩擦係数として、ある速度における値を代入すると、制動力はその速度のときの値となり、また制動開始より停車までの平均摩擦係数を代入すれば、制動中の平均制動力となるものである。

 しかし制動力は無制限に大きくすることはできないのである。もし制動力が車輪とレールの粘着力より少しでも大きくなると、車輪は回転することなく、レール上を滑走する事となるから、制動力は粘着力よりも小さいか、または大きくともこれと等しい事が必要条件である。従ってこれ等の関係に付いて述べると次の様になる。

 今

  P =制輪子圧力(トン)

  f =制輪子と車輪との間の摩擦係数

  B =制動力(トン)

  W =制動軸上の重量(トン)

  μ =車輪とレールとの間の摩擦係数=粘着係数

  K =制動率

とすれば B ≦ Wμ

 また  Pf ≦ Wμ

 従って

P409

 しかるに P÷W=K であるから

P410

でなければならない。

 粘着係数は、ふつう最大 4分の1~4.5分の1 に採るのが通例であるが、レールが湿潤している様な場合はそれ以下になる。また摩擦係数は速度、制輪子圧力、制動継続時間、晴雨等により相当広い範囲に変化するものであるが、これを0.2とし(215)式により制動率を求めてみると

P410_20220123092801

 すなわち制動率を125~111%以上にすることは、できないことがわかる。

 現在、機関車の制動率は第2章(398ページ)に示した通り、C53およびC10形式機関車および炭水車は、いずれもその限度に近くなっている事がわかる。ことに停車間際には摩擦係数が 1.5~2 倍に上昇するので、非常制動の場合は撒砂しないと滑走を免れない事がうなずかれる。

 制動力は粘着力よりも大きくなってはならないという条件から、最大制動力は粘着力までであると言うことができる。

 換言すれば、いかに有力な制動装置を採用しても、最大制動力は Wμ である。

 もし粘着係数 μ を最大 4分の1 と仮定すれば、

P410_20220123092802

 すなわち最大制動は1トン当たり250キログラムとなり、この値を用いて最大減速度を求めることができる。第4編で述べた加速抵抗の式を用い F を制動力、a を減速度とすれば

P410_20220123092901

 すなわち全軸に制動力を作用せしめても、粘着係数が 4分の1 なれば、制動減速度は8.35キロメートル/時/秒よりも大きくすることはできない。この値は現在の旅客列車の非常制動減速度の約2倍であるから、制動力の利用として将来なお進歩改善の余地が存在する事が伺われる。

 制動を行った場合、列車を停止せしめんとする作用は、以上述べた制動力の他に列車走行抵抗、勾配抵抗および曲線抵抗等がある。これらの値に付いては後で述べる事としよう。

 

741p409
741p410
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2022年2月 9日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その250)摩擦係数算式

2.摩擦係数算式

 第213式は、運輸局で発表した摩擦係数の算式で、常磐線における試験の結果から導き、天候および速度の影響による変化を示したもので、この場合の制輪子圧力は全制動を行ったものとして、その平均を採っている。

P406_20220119180201

  f =タイヤと制輪子間の摩擦係数

  V =列車の速度(キロメートル/時)

  C =天候による常数

   =0.42(晴天の場合)

   =0.30(雨天の場合)

   =0.32(通常計算に採用するもの)

 第88図は第213式の関係を示せるものである。

88_20220119180301

 しかしタイヤと制輪子との間の摩擦係数は、摩擦面の関係速度、すなわち車輪の走行速度によって刻々変化するばかりでなく、制輪子圧力の大小およびブレーキの使用時間等によっても、大いに変化するから、制動距離もしくは制動時間は、刻々に変化する摩擦係数に支配せられるものであるが、これらの計算を成す場合に、刻々に変化する係数を考慮する事は非常にわずらわしいので、あらかじめ制動開始当時の速度から、停車までの間の平均摩擦係数を求めておくのが便利である。

 第(214)式は第(213)式から導いた平均摩擦係数の算式で、全制動の場合のものである。

P407

  fm =平均摩擦係数

  V =制動開始速度(キロメートル/時)

  C =天候による常数(前掲)

  ㏒e =自然対数の略号で対数表によって求める 

P407_20220119180401

 前表は任意速度における、種々な天候の場合の平均摩擦係数を求めたもので、これを図示すれば第89図のごとくなる。ふつう制動距離計算の場合には、第(214)式を使用することはほとんどなく、前表のものを採用するのが常である。

89_20220119180501

 

732p406
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732p408

2022年2月 8日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その249)制輪子と車輪との間の摩擦係数の変化(2)

(5)制輪子圧力の強さによって変化する

 制輪子圧力が変化すれば、摩擦係数もまた変化する。その理由は制輪子が熱を吸収または放散する量の大小によるので、圧力が大きいほど摩擦係数は小さくなる。第86図はこれらの関係を示せる研究所発表の成績である。

86_20220119171901

 これはかつて鉄道省において行った、各種の制動試験の成績から求めたもので、同一速度においても制輪子各1個当たりの圧力によって、はなはだしく相違する事がわかる。

 例えば、制動初速度が90キロメートル/時の場合に付いて考えてみるに、旅客列車が普通停止の場合の、制輪子1個当たりの圧力を700キログラムとすれば、この図から停車までの平均摩擦係数は0.24弱であるが、非常制動の場合は1500キログラム位であるから、この場合の平均摩擦係数は0.17強で、いずれも同一初速度90キロメートル/時であるが、その値は常用制動の場合に比較して 0.17÷0.24=0.71 すなわち29%減になる事がわかり、この影響はかなり大きいものである。

 従って制輪子数を増加すると、1個当たりの圧力が低下するので制動効果が大になる。

(6)制輪子の摩擦面速度によって変化する

 摩擦係数は速度の増加するに従って小さくなる。この理由は制輪子と車輪の接触面が、相互に噛合う状態に相違あるためで、低速度の場合は、この噛合いが比較的完全に行われるが、高速度においては接触面の速度が早いため、その噛合せが不完全になり、同一の制輪子圧力を与えても制動力に相違を生ずるためで、これがため摩擦係数が小さくなるものである。

87_20220119171901

 第87図はこの関係を説明したもので、同一制輪子圧力、例えば1400キログラムの場合においても、制動初速度が20キロメートル/時の場合は、平均摩擦係数が0.225であるが、初速度が90キロメートル/時の場合は0.18となり、0.18÷0.225=0.8 すなわち前者の20%減になることがわかる。

 次表は先に示した第86図および第87図を描くために使用した値で、数多の空気ブレーキ試験成績から求めたものである。

P405

 

731p403
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731p405

2022年2月 7日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その248)制輪子と車輪との間の摩擦係数の変化(1)

第3章 摩擦係数

1.制輪子と車輪との間の摩擦係数の変化

 制動力を求めるには制輪子圧力に、制輪子と車輪との間の摩擦係数を乗ずれば良いわけであるが、この摩擦係数の値は、制輪子の材質および硬度、制輪子の温度、摩擦面の粗滑、乾湿等の状態、制輪子圧力の強さ、制輪子面の広さと形状、制輪子の摩擦面の速度等によって、かなりの相違を来たすものである。

 いまこれらに付き説明すれば、次の通りである。

(1)制輪子の材質および硬度によって変化する。

 実験の結果によれば、車輪ならびに制輪子が共に鉄の場合は、摩擦係数が最も大きく、鋼と鋼の場合これに次ぎ、鋼と鉄の場合はさらに小である。現在の制輪子は経済的の見地から鋳鉄を用いているが、最近は鋳鉄の代用品として鉱滓制輪子が研究されている。

(2)制輪子の温度によって変化する

 制輪子が制動の働きを成すのは、車輪が持っているエネルギーを熱として奪い取ってしまうからである。故になるべく熱を吸収しやすい状態にある事が必要なのである。

 かような意味において、温度の低い方が摩擦係数が大きく、温度の増加につれて次第に減少する事となり、従って夏季よりも冬季の方が、制動が良く効くと言い得られるのである。

 また制動中においてブレーキの使用開始当時は、制輪子が冷却しているから摩擦係数は大きいが、制動が長くなるほど、制輪子が帯熱してくるため摩擦係数が減少してくる。

 従って長い下り勾配線等で連続制動を成す場合、過熱によるタイヤの弛緩を防ぐためと、制輪子の帯熱を防ぎ摩擦係数を増すために、タイヤ水まき装置を使用することは、制動効果を大ならしめるものである。

(3)摩擦面の状態によって変化する

 制輪子の摩擦面が細かい凹凸を成しているものは、摩擦係数が小さいし、これに局部的の突起があると、その一部分だけで制動作用を成すから、たちまち高熱せられて制動の効果を減ずる事になる。取り替えたばかりの新しい制輪子が、制動の効きの悪いのはこれがためである。

 また摩擦面が油等の流動体で汚されているときは、タイヤとの摺動はこの流動体の皮膜を介して行われるから、摩擦係数は非常に減少する事となるが、これと反対に制輪子面に砂粒が介在するときは、摩擦係数を増す事となる。非常制動で撒砂することは非常に有効である。

(4)制輪子の面の広さと形状によって変化する

 制輪子は前に述べたごとく、熱を吸収し易き状態にある事を必要とするのであるから、制輪子が大きければ温度の上昇も遅く冷却面も大きいから、摩擦係数が大きい事となる。従って小さい制輪子は温度の上昇が早いから、ブレーキの効果が、大きい制輪子と比べると劣る事となる。

 また制輪子の形状も、摩擦係数の値に影響があるから、制輪子の有する熱をなるべく大気中に放散し易き形状を成す事が良い。かかる意味から、フランジを覆うツバ形の制輪子が採用せられている。

 

731p402
731p403

2022年2月 6日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その247)制輪子圧力:列車の全車制動率を求める方法

9.列車の全車制動率を求める方法

 列車の場合は、機関車と客貨車とを考えなければならない。またこれらの車両はそれぞれ制動率が異なるから、この場合は次の方法によって求めなければならない。

 今

  Kc =列車全体の制輪子圧力と列車総重量との割合=列車の全車制動率(%)

  Pd =動輪上の重量に対する制輪子圧力(トン)

  Pt =炭水車の重量に対する制輪子圧力(トン)

  PT =客貨車の全制輪子圧力(トン)

  Wd =運転整備の場合における動輪上の重量(トン)。ただしタンク機関車にありては炭水半減の場合

  Wt =空車の場合における炭水車の重量(トン)

  WT =客貨車のうち制動筒付き車両が空車自重の場合における重量(トン)

  K₁ =機関車の軸制動率(%)

  K₂ =炭水車の軸制動率(%)

  K₃ =客貨車の軸制動率(%)

  Wℓ =運転整備の場合における機関車(炭水車を含む)全体の重量(トン)

  W =牽引車両の全重量(トン)

とすれば、その全車制動率は

P401

 また

P401_20220119091301


【 例 】

 C58形式機関車が現車12両、重量360トンの客車を牽引して運転するときの、非常制動の場合における列車の全車制動率を求めよ。

 ただし制動筒付き車両数は11両、ボギー客車1両当たりの自重は26トン、機関車の重量および制動率は次によるものとする。

  機関車の動輪上重量(運転整備)  40.5トン

  炭水車重量(空車)  17.0トン

  機関車全重量(含む炭水車)(運転整備)  97.0トン

  機関車の軸制動率  76.6トン

  炭水車の軸制動率  85.0トン

  客車の軸制動率(空車)  80.0トン

【 解 】

 (212)式により

P401_20220119091401

 従って

P401_20220119091402

 

729p400_20220119090901
729p401

2022年2月 5日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その246)制輪子圧力:制動率から制輪子圧力を求める方法

8.制動率から制輪子圧力を求める方法

 制動率はある制動筒圧力の下において、制動筒戻しバネの抵抗ならびに基礎制動装置の摩擦損失が無いものとして求めた、制輪子圧力と車輪上重量との比である。

 今(206)式

P397_20220116103701

を変形し、制輪子圧力を求めれば

P397_20220116103801

 (209)式で求めた制輪子圧力は、制動筒弛めバネの抵抗を無視したもので、且つある制動筒圧力に対する値であるから、これから任意の制動筒圧力の場合における制輪子圧力を求めるには、制輪子圧力は制動筒圧力ならびに基礎制動装置の効率に比例するという点から、次の様に計算することができる。すなわち

P399

  P =制輪子圧力を求めんとする場合の制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)

  Po =制動率を求めた制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)

  η =基礎制動装置の効率(小数にて)


【 例1 】

 制動筒圧力3.5キログラム/平方センチメートル、制動軸の車輪上重量40トンの場合に、制動率が60%の機関車が、1.2キログラム/平方センチメートルの制動管減圧を行ったときの、制輪子圧力を求めよ。

 ただし基礎制動装置の効率を90%と仮定する。

【 解 】

 (210)式を用いて計算することができる。すなわち


P399_20220116105101

 この場合

  制動率=60

  車輪上重量=40トン


P399_20220116105102

 故に

P399_20220116105103

 η = 0.9 を代入して

P399_20220116105201

【 例2 】

 AV装置を有する自重30トンの客車に、非常制動を行った場合の制輪子圧力を求めよ。

【 解 】

 客車は空車の場合、制動筒圧力3.5キログラム/平方センチメートルにおいて、制動率が80%になる様に設計するのが普通であるから、(210)式を用い

  制動率=80

  車輪上重量=30トン

  P =4.5キログラム/平方センチメートル(AV形の非常制動)

  Po =3.5キログラム/平方センチメートル

  η =0.9 を代入して

P400

【 例3 】

 炭水半減、制動筒圧力3.5キログラム/平方センチメートルの場合に、その制動率が60%に設計された下記機関車が、空車の場合に非常制動を行ったとき、その制動率はいかほどとなるか。

  機関車制動軸の車輪上重量(運転整備のとき) 45トン

  機関車制動軸の車輪上重量(空車のときトン) 30トン

【 解 】

 (210)式を用い、まず制輪子圧力を求める。

 この場合

  軸制動率=60

  炭水半減のときの車輪上重量 (45+30)÷2=37.5トン

  P =4.5キログラム/平方センチメートル(非常制動)

  Po =3.5キログラム/平方センチメートル

  η =0.9

 従って

P400_20220116105301

 次に

P400_20220116105302

の関係から

P400_20220116105401

 

728p397_20220116103201
728p398_20220116103201
728p399
729p400

2022年2月 4日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その245)制輪子圧力:軸制動率と全車制動率との関係

7.軸制動率と全車制動率との関係

 制輪子圧力が制動軸上の重量に対する割合、すなわち軸制動率と制輪子圧力の全車両重量に対する割合、すなわち全車制動率との間にいかなる関係があるかを述べるに、

 今

  Ka =軸制動率(%)

  Kc =全車制動率(%)

  P =総制輪子圧力(トン)

  W₁ =制動軸上重量(トン)

  W₂ =制動軸以外の軸上重量(トン)

  W = W₁+W₂ =車両全体の重量(トン)

とすれば、これらの間には次の様な関係がある。すなわち軸制動率は、制輪子圧力と制動軸上の重量との割合であるから

P397

となる。

 また全車制動率は、制輪子圧力と車両全体の重量との割合であるから

P397_20220115223201

となる。

 しかして軸制動率の(206)式を、全車制動率の(207)式に代入すれば

P397_20220115223202

 しかるに W₁ + W₂ = W なるをもって

P397_20220115223301

 従って全車制動率は、軸制動率に制動軸上の重量と、車両全体の重量の比を乗じて得られる事になる。いま主要形式機関車および炭水車の制動率その他を示せば、次表の通りである。

P398_20220115223301

 

727p396_20220115222801
728p397
728p398

2022年2月 3日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その244)制輪子圧力:制動筒圧力から制輪子圧力を求める方法

6.制動筒圧力から制輪子圧力を求める方法

 制動筒圧力から正味の制輪子圧力を求めるには、次の順序によらなければならない。

(1)制動筒圧力から戻しバネの抵抗を差し引いて、正味の制動筒圧力を求めること。

(2)正味制動筒圧力にピストン面積を乗じて、ピストン総圧力を求めること。

(3)ピストン総圧力に制動倍率を乗じて、制輪子に加わる圧力を求める事ができるが、これは基礎制動装置中で力の損失がなく、その効率100%と考えた場合であるが、実際には相当の損失があるから、ピストン総圧力に制動倍率および制動装置の効率を乗じて、正味の制輪子圧力を求める。もし2個以上の制動筒を使用する場合は、各制動筒別に求めたものを合計する。

 制動筒戻しバネの抵抗は、ふつう1平方センチメートルに付き0.35キログラムであるから、正味の制動筒圧力は、制動筒圧力から0.35キログラム/平方センチメートルを差し引けば良いわけである。

 機関車で単独制動を行った場合は、その制動筒圧力を用い、これより戻しバネの抵抗を差し引けば良い。この場合の最高制動筒圧力は3キログラム/平方センチメートルであるから、正味制動筒圧力は 3.0-0.35=2.65 すなわち 2.65キログラム/平方センチメートルとなる。

 機関車および客貨車の正味制動筒圧力を示せば、次表の通りである。

P393

 制動筒直径は機関車動輪用では254、305および406ミリの3種、炭水車では254ミリ、ボギー客車では305および406ミリ、貨車では180ミリおよび203ミリがその代表的のものである。従って π を円周率、d を制動筒直径とすれば、

P393_20220114225201

となる。

 制動倍率は機関車および炭水車では 6~9、客貨車では 5~9 の範囲に設計してあることは前に述べた通りである。

 基礎制動装置には多くのピンならびに摩擦部分があるので、この部分における摩擦抵抗が存在し、これがため力の一部は消費されるものである。この損失を試験する方法中、簡単なものは、制輪子と車輪間に直径および高さが、それぞれ20ミリ位の金属(錫製が適当)を入れ置き、制動を作用してその際の制動筒圧力を圧力計にて読む。

 また一方、制輪子圧力は金属球の押しつぶされた形によって、そこに加わった力がわかる様に、あらかじめ変形した形と、圧力との関係を試験機において調査し置き、これより制輪子圧力を推定する。
 
 この方法によって求めた制輪子圧力は、制動筒の戻しバネの抵抗(各ピンまたは軸における摩擦抵抗、ならびに制輪子の位置および同釣の傾斜等による損失)を、全部差し引いたものであるから、ここに述べる基礎制動装置内の力の損失とは、多少相違したものである事を注意しなければならない。

 この方法によって求めた代表的機関車、基礎制動装置効率の一例を示せば、次表の通りである。

P394

 表中、最右側の修正効率は戻しバネの抵抗を除外したもので、制動筒ピストン棒ピンから制輪子に至るまでの効率で、ふつうに効率に言っているのはこの数字のことで、これを求めるには戻しバネの抵抗を、先に述べた通り0.35キログラム/平方センチメートルとすれば、8620形式に付いて求めてみると

P395

のごとき計算によったものである。

 基礎制動装置内における力の損失は、これを効率の形で示す方法が合理的な理由は、摩擦損失は力に比例するものであるから、制動筒圧力の高い時はその損失力も大きいので、各圧力に対してこれを求めねばならないが、効率の形で表わせば常に一定値となるからである。

 また戻しバネの抵抗は、制動筒圧力の高低に関せず、常に一定であるから、この抵抗は前記の効率と引き離して考える方が合理的である。

 効率は停止中と進行中とでは、その値が相違するはずである。その理由は進行中は振動のため、静止摩擦が運動摩擦に変化する傾向があるからである。先に示した実績は停止中求めたもので、大体 60~85% の間にある様であるが、進行中の場合を推定して 90% とするのが通例である。

 なおこの効率は、制輪子と車輪間の摩擦係数にも関係したもので、摩擦係数を求めた方法を究めてその効率を定めねばならない。この意味において米国で一般に使用される方法は、摩擦係数中にこの効率も含めている。

 以上述べた制動筒圧力から制輪子圧力を求める方法を総括すれば

  制輪子圧力=(制動筒正味圧力)×(ピストン面積)×(制動筒数)×(制動倍率)×(基礎制動装置の効率)

 制動筒正味圧力は、制動筒の圧力計圧力より0.35キログラム/平方センチメートルを減じたもので、制動筒ごとに制動倍率の相違するものは、各別に制輪子圧力を求めてこれを合計する。


【 例 】

 D50形式機関車において、制動管減圧1キログラム/平方センチメートルの制動を行った場合の、総制輪子圧力を求めよ。

    (398ページ参照)


【 解 】

 制動筒の圧力計圧力= 2.5r = 2.5×1 =2.5キログラム/平方センチメートル

 制動筒正味圧力= 2.5 - 0.35 = 2.15キログラム/平方センチメートル

P396
P396_20220114225401

 基礎制動装置の効率を90%とすれば

  機関車

   制輪子圧力= 2.15×730×2×7.12×0.9 = 20100キログラム

  炭水車

   制輪子圧力= 2.15×507×2×5.32×0.9 = 10400キログラム

  総 計 = 20100+10400 = 30500キログラム

 

726p392_20220114224201
726p393
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727p396

2022年2月 2日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その243)制輪子圧力:制動管所定圧力と最高制動筒圧力との関係

5.制動管所定圧力と最高制動筒圧力との関係

 制動管の所定圧力を高めると最高制動筒圧力が高くなる。この点が高い圧力を使用した場合、有利な点である。しかし全制動未満の制動管減圧に対しては、制動筒圧力は減圧量に関係し、制動管の所定圧力には無関係である事は、先に示した公式(203)(204)によっても明らかである。

 制動管の所定圧力と最高制動筒圧力との関係を、機関車と客貨車との場合に付いて求めてみると次の様になる。

 機関車の場合

P390_20220111223701

 客貨車の場合

P391_20220111223701

  Pm' =常用制動の場合の最高制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)(ゲージ圧力にて)

  Po' =所定制動管圧力(キログラム/平方センチメートル)(ゲージ圧力にて)

  Po =所定制動管圧力(キログラム/平方センチメートル)(絶対圧力にて)

85_20220111223801

 第85図は制動管の所定圧力と、最高制動筒圧力との関係を示したもので、もし長い下り勾配線を繰り返し制動して運転したとき、制動管の込めが下手であったため、4キログラム/平方センチメートルまで降下した場合は、最高制動筒圧力は2.9キログラム/平方センチメートルに低下し、5キログラム/平方センチメートルの制動管圧力に相当する制動筒圧力3.6キログラム/平方センチメートルに比し、3.6-2.9=0.7キログラム/平方センチメートル低くなる。


【 例 】

 制動管所定圧力が5キログラム/平方センチメートル、および6.5キログラム/平方センチメートル(ゲージ圧力にて)の場合の、最高制動筒圧力ならびにその場合の減圧量を求めよ。

【 解 】

 制動管所定圧力5キログラム/平方センチメートルの場合

 機関車では

P392

 客貨車では

P392_20220111223901

 この場合、機関車および客貨車共、約3.6キログラム/平方センチメートルで、従って制動管減圧量は 5 - 3.6 = 1.4キログラム/平方センチメートル である。

 制動管所定圧力6.5キログラム/平方センチメートルの場合

 機関車では

P392_20220111223902

 客貨車では

P392_20220111224001

 この場合の減圧量は、機関車では 6.5 - 4.65 = 1.85キログラム/平方センチメートル、客貨車は 6.5 - 4.74 = 1.76キログラム/平方センチメートルとなる。

 

725p390
725p391
726p392


2022年2月 1日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その242)制輪子圧力:制動筒の減圧量から制動筒圧力を求める方法(客貨車の場合)

(2)客貨車の場合

 制動管の減圧を行うと三動弁または動作弁の作用によって、補助空気溜の空気を制動筒へ送る。この場合、制動筒へ流れ込む空気量は、補助空気溜を制動管と等しい圧力まで低下する量で、この減圧量を r キログラム/平方センチメートル、補助空気溜の容積を A リットルとすれば、A × r リットルの大気圧の空気量に等しい事となる。

 しかしてこの補助空気溜から制動筒に流れ込んだ空気が、制動筒の容積 C リットルを P キログラム/平方センチメートルの圧力で満たすものとすれば、次の式が成り立つはずである。

P386_20220111192401

 P は絶対圧力であるが、実際にはゲージ圧力を用いるから、これより1キログラム/平方センチメートルを引き、これを P₁ とすれば

P387_20220111192501

  P₁ =制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)ゲージ圧力

  P =制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)絶対圧力

  A =補助空気溜容積(同一単位にて)

  C =制動筒容積(同一単位にて)

  r =制動管減圧量(キログラム/平方センチメートル)

 しかして C 分のA は補助空気溜と制動筒との容積の比で、これは設計上 3.25 と考えられているから、前式にこの値を代入すれば

P387_20220111192701

  P₁ =制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)ゲージ圧力

  r =制動管減圧量(キログラム/平方センチメートル)

 この式もまた客貨車の制動筒圧力が、やや制動管減圧量に比例して増加する事を示しているが、減圧量がある程度となると、補助空気溜の圧力と制動筒圧力とが釣合って、それ以上制動筒圧力を高め得ない事は、機関車の場合と同様である。

 また制動筒の最高圧力を求めるには、膨張前後の圧力と容積との相乗積が相等しい、という関係を求めることができる。すなわち膨張前には補助空気溜の容積(A)内に、絶対圧力 Po の空気があった状態から、これが補助空気溜と制動筒へ膨張して、その容積( A+C )となり、制動筒圧力 Pm(絶対圧力)を得るものとすれば、これは次のごとく示される。

  膨張前  圧力 × 容積 = Po × A

  膨張後  圧力 × 容積 = Pm ×( A+C )

 すなわち PoA = Pm( A+C )の関係から

P388

  Pm' =最高制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)ゲージ圧力

  A =補助空気溜容積(同一単位)

  C =制動筒容積(同一単位)

 A:C = 3.25:1 であることは先に述べた通りで、また我が国のごとく制動管所定圧力5キログラム/平方センチメートルの場合は、Po = 5+1 = 6 キログラム/平方センチメートルであるから、上式にこの関係を代入すれば

P388_20220111192801

 すなわち制動管の所定圧力が、5キログラム/平方センチメートルの場合における制動筒の最高圧力は、設計上約3.6キログラム/平方センチメートルとなる様になっている。

 従って最大制動筒圧力を得るために有効な、最大制動管減圧量は第204式から

P388_20220111192901

となるから、客貨車の場合でも機関車と同様に、最高制動筒圧力を得るための減圧量は、1.4キログラム/平方センチメートルであることがわかる。

84_20220111192901

 これらの関係を示せば第84図の通りで、この図によれば同一減圧を行っても機関車の場合よりも、客貨車の方が制動筒圧力が低いことがわかる。この主因は、機関車の分配弁作用空気室には、制動前に大気圧の空気が充満しているが、客貨車の制動筒ではピストンが弛め位置にあって、大気圧の空気が入っていないためである。

 非常制動の場合には、客車で AV 制動装置を有するものでは、付加空気溜の空気も制動筒へ進入するので、その圧力は4.5キログラム/平方センチメートルになる。

 また PF あるいは PM 形を装置した客貨車、または K 形を装置した貨車では、補助空気溜から進入するのは常用全制動の場合と同様であるが、この他、急動作用(クイック・アクション)によって、制動管の空気の一部が制動筒へ進入するので、これがためその圧力が高まって、実績上3.6キログラム/平方センチメートル位になる。


【 例1 】

 客貨車において、制動管減圧 0.3、0.5、0.8 および 1.0 キログラム/平方センチメートルの場合における、制動筒圧力を求めよ。

【 解 】

 制動管減圧 r = 0.3 キログラム/平方センチメートルの場合

   P₁ = 3.25×0.3-1 = -0.025 キログラム/平方センチメートル

 すなわち制動筒圧力は大気圧力以下であるから、この様な小さな減圧を行っても無意味である。

 r = 0.5 キログラム/平方センチメートルの場合

   P₁ = 3.25×0.5-1 = 0.625 キログラム/平方センチメートル

 r = 0.8 キログラム/平方センチメートルの場合

   P₁ = 3.25×0.8-1 = 1.6 キログラム/平方センチメートル

 r = 1.0 キログラム/平方センチメートルの場合

   P₁ = 3.25×1.0-1 = 2.25 キログラム/平方センチメートル

 

【 例2 】

 客貨車において、制動管の最小減圧量を求めよ。

【 解 】

 あまり小さな減圧をすると、制動筒圧力は大気圧以下になる。

 いま制動筒圧力が 0 になる様な、制動管減圧 r を求めれば

   P₁ = 3.25r-1 = 0

 故に

P390_20220111193001

 実際には戻しバネの抵抗が、ピストン面積1平方センチメートルに付き0.35キログラム位あるから、制動筒圧力は0.4キログラム/平方センチメートル以上でないと、制動効果がない。

 この場合の減圧を求めれば

  P₁ = 3.25r-1 = 0.35

 故に

P390_20220111193101

 

 

724p386_20220111191401
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