(2)客貨車の場合
制動管の減圧を行うと三動弁または動作弁の作用によって、補助空気溜の空気を制動筒へ送る。この場合、制動筒へ流れ込む空気量は、補助空気溜を制動管と等しい圧力まで低下する量で、この減圧量を r キログラム/平方センチメートル、補助空気溜の容積を A リットルとすれば、A × r リットルの大気圧の空気量に等しい事となる。
しかしてこの補助空気溜から制動筒に流れ込んだ空気が、制動筒の容積 C リットルを P キログラム/平方センチメートルの圧力で満たすものとすれば、次の式が成り立つはずである。
P は絶対圧力であるが、実際にはゲージ圧力を用いるから、これより1キログラム/平方センチメートルを引き、これを P₁ とすれば
P₁ =制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)ゲージ圧力
P =制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)絶対圧力
A =補助空気溜容積(同一単位にて)
C =制動筒容積(同一単位にて)
r =制動管減圧量(キログラム/平方センチメートル)
しかして C 分のA は補助空気溜と制動筒との容積の比で、これは設計上 3.25 と考えられているから、前式にこの値を代入すれば
P₁ =制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)ゲージ圧力
r =制動管減圧量(キログラム/平方センチメートル)
この式もまた客貨車の制動筒圧力が、やや制動管減圧量に比例して増加する事を示しているが、減圧量がある程度となると、補助空気溜の圧力と制動筒圧力とが釣合って、それ以上制動筒圧力を高め得ない事は、機関車の場合と同様である。
また制動筒の最高圧力を求めるには、膨張前後の圧力と容積との相乗積が相等しい、という関係を求めることができる。すなわち膨張前には補助空気溜の容積(A)内に、絶対圧力 Po の空気があった状態から、これが補助空気溜と制動筒へ膨張して、その容積( A+C )となり、制動筒圧力 Pm(絶対圧力)を得るものとすれば、これは次のごとく示される。
膨張前 圧力 × 容積 = Po × A
膨張後 圧力 × 容積 = Pm ×( A+C )
すなわち PoA = Pm( A+C )の関係から
Pm' =最高制動筒圧力(キログラム/平方センチメートル)ゲージ圧力
A =補助空気溜容積(同一単位)
C =制動筒容積(同一単位)
A:C = 3.25:1 であることは先に述べた通りで、また我が国のごとく制動管所定圧力5キログラム/平方センチメートルの場合は、Po = 5+1 = 6 キログラム/平方センチメートルであるから、上式にこの関係を代入すれば
すなわち制動管の所定圧力が、5キログラム/平方センチメートルの場合における制動筒の最高圧力は、設計上約3.6キログラム/平方センチメートルとなる様になっている。
従って最大制動筒圧力を得るために有効な、最大制動管減圧量は第204式から
となるから、客貨車の場合でも機関車と同様に、最高制動筒圧力を得るための減圧量は、1.4キログラム/平方センチメートルであることがわかる。
これらの関係を示せば第84図の通りで、この図によれば同一減圧を行っても機関車の場合よりも、客貨車の方が制動筒圧力が低いことがわかる。この主因は、機関車の分配弁作用空気室には、制動前に大気圧の空気が充満しているが、客貨車の制動筒ではピストンが弛め位置にあって、大気圧の空気が入っていないためである。
非常制動の場合には、客車で AV 制動装置を有するものでは、付加空気溜の空気も制動筒へ進入するので、その圧力は4.5キログラム/平方センチメートルになる。
また PF あるいは PM 形を装置した客貨車、または K 形を装置した貨車では、補助空気溜から進入するのは常用全制動の場合と同様であるが、この他、急動作用(クイック・アクション)によって、制動管の空気の一部が制動筒へ進入するので、これがためその圧力が高まって、実績上3.6キログラム/平方センチメートル位になる。
【 例1 】
客貨車において、制動管減圧 0.3、0.5、0.8 および 1.0 キログラム/平方センチメートルの場合における、制動筒圧力を求めよ。
【 解 】
制動管減圧 r = 0.3 キログラム/平方センチメートルの場合
P₁ = 3.25×0.3-1 = -0.025 キログラム/平方センチメートル
すなわち制動筒圧力は大気圧力以下であるから、この様な小さな減圧を行っても無意味である。
r = 0.5 キログラム/平方センチメートルの場合
P₁ = 3.25×0.5-1 = 0.625 キログラム/平方センチメートル
r = 0.8 キログラム/平方センチメートルの場合
P₁ = 3.25×0.8-1 = 1.6 キログラム/平方センチメートル
r = 1.0 キログラム/平方センチメートルの場合
P₁ = 3.25×1.0-1 = 2.25 キログラム/平方センチメートル
【 例2 】
客貨車において、制動管の最小減圧量を求めよ。
【 解 】
あまり小さな減圧をすると、制動筒圧力は大気圧以下になる。
いま制動筒圧力が 0 になる様な、制動管減圧 r を求めれば
P₁ = 3.25r-1 = 0
故に
実際には戻しバネの抵抗が、ピストン面積1平方センチメートルに付き0.35キログラム位あるから、制動筒圧力は0.4キログラム/平方センチメートル以上でないと、制動効果がない。
この場合の減圧を求めれば
P₁ = 3.25r-1 = 0.35
故に
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